台風21号で関西空港が水没 新自由主義の崩壊が安倍を直撃

発行日:

週刊『前進』04頁(2973号03面02)(2018/09/17)


台風21号で関西空港が水没
 新自由主義の崩壊が安倍を直撃

(写真 滑走路まで浸水し使用不能になった関西空港【9月4日】)

 9月4日、開港からちょうど24年目、台風21号で関西空港が完全に水没し使用不能に陥りました。国鉄分割・民営化と一体で4千㍍滑走路を持つ日本初の24時間海上空港、民間活力導入第1号、軍事空港として進めてきた巨大プロジェクトが根底から崩壊を始め、安倍政権を直撃しています。
 大恐慌と戦争の開始、アジア市場をめぐる激しい争闘戦の激化の中で、関空は関西財界のみならず日本帝国主義にとって、なくてはならない大動脈、国際物流・観光の拠点でした。軍事空港=有事の兵站(へいたん)の拠点としても、成田空港と並ぶ位置です。
 安倍はこの事態に驚愕(きょうがく)し、6日には運航再開を発表しました。しかし埋め立て時から1期島で平均13・25㍍(最大15・7㍍)、2期島で平均15・85㍍(最大18・31㍍)も沈下しており、護岸のかさ上げやジャッキアップ、止水壁などの沈下対策も今回の台風で完全に破産しました。軟弱地盤の上に造った海上空港の根本的脆弱(ぜいじゃく)性から逃れることはできません。空港機能の要をなす地下の電源には海水が洪水のように押し寄せ水没。主要航空会社が使用する1期空港の完全回復はままなりません。
 伊丹空港や神戸空港に国際線機能を移すことには住民の反対運動が起こり、振り替えたとしてもせいぜい70便増やせるにすぎず、一日平均約460便あった運航の回復は絶望的です。
 2016年のコンセッション(運営権の民間売却)方式による民営化以降、技術者が次々と辞めざるをえない状況になっています。ジェット燃料タンクに海水が入っていたこともわかりました。安全点検も不十分なままの運航強行は、必ず大事故につながります。
 命より金の安倍を今こそ打倒する時が来ました!

これは人災だ!闘う労組が必要

 泉佐野市内は風速50㍍超の暴風が吹き荒れ、民家数千軒の屋根瓦が飛び、1万1720軒が停電。市役所は被災者でいっぱいになりました。関空島と陸地をつなぐ唯一の連絡橋には2500㌧のタンカーが激突。最大横4㍍ものずれが起こり、鉄道も道路も使用不能になりました。
 許しがたいのは、関空島に8千人もの人々が取り残されているのに、当初千数百人と発表し、3千人、5千人とウソの報道を続けていました。関空で働く労働者の命や安全のことなどどうでもいいのか! 関空の閉鎖はなんと午後3時でした。その時すでに8千人の労働者と乗客は移動する手段を奪われていました。
 すさまじい暴風が予測されたのに、労働者に出勤を命じた資本は許せません。知人の娘さんはこの日も出勤し、バスで島から脱出できたのは翌日の夕方です。その間、島内では電源水没でアナウンスも流れず携帯電話もつながらず、恐怖におののきながらバスを待ち続けたそうです。
 大阪府の松井一郎知事は9日、「タンカーの衝突さえなければよかった。関空が今の状況に至っているのは人災」などと表明しましたが言語道断です。このタンカーは4日に製油所で燃料を積み込む予定でしたが、台風で5日に延期されたためそのまま停泊していました。暴風雨にもかかわらず運航を続けるために燃料を運ばせようとしたことに一切の原因があります。
 暴風で横転するトラックが続出し、電柱や大木が倒れ信号もつかない中で、関空島の労働者をはじめ多くの会社が労働者に仕事をさせました。会社に責任を取らせることが必要です。労働者の命と安全を守るためには闘う労働組合が絶対必要だと痛感します。ストライキで闘う労働組合の闘いこそが労働者と住民の命と生活を守るのです。災害を口実とした解雇、休業補償なし、住宅立ち退きなどが予測されます。闘う労働組合への結集を全力で呼びかけたいと思います。

安倍の関空再開は改憲の先取り

 暴風雨の中、関空島に取り残された労働者や命の危険があるのに仕事をした労働者、停電・断水・家屋損壊の住民、休業補償も払われない非正規職労働者など労働者階級は「政治は労働者住民が生きるためにこそある」と感じています。命や安全より金もうけに走る安倍や松井の正体を見抜かないはずがありません。
 安倍の関空再開強行は改憲攻撃です。自民党改憲案にある「緊急事態」条項の先取りです。それは「戦争突入下での決断」と言えます。自民党総裁選から秋の臨時国会での改憲発議策動と一体です。今こそ労働者住民の怒りを安倍、資本家階級にたたきつける時です。被災で生み出された怒りと結びつき、改憲阻止の決戦に立ち上がります。
(関西新空港絶対反対泉州住民の会代表・中川育子)
このエントリーをはてなブックマークに追加