INF条約失効 米ロ中、核軍拡競争に突入 米がミサイル実験

週刊『前進』04頁(3062号03面03)(2019/08/26)


INF条約失効
 米ロ中、核軍拡競争に突入
 米がミサイル実験


 射程500〜5500㌔の地上発射型ミサイルを禁止していた米国・ロシアの中距離核戦力(INF)全廃条約が、アメリカの脱退通告から6カ月過ぎた8月2日に失効した。脱退したトランプ政権は失効からわずか2週間後の18日、カリフォルニア州のサンニコラス島で地上発射型の中距離巡航ミサイルの発射実験を行った(写真)。1988年に条約が発効して以降、30年以上行われてこなかった実験が再開されたのだ。

侵略戦争体制構築

 ミサイルは500㌔以上離れた標的めがけて発射された。実験したのは海上発射型巡航ミサイル「トマホーク」を地上発射型に改良したもの。アメリカはさらに11月に射程3千〜4千㌔の中距離弾道ミサイルの発射実験を行う計画だ。
 ロシアは「緊張を高めているのはアメリカだ」と反発しており、米ロに中国を含めた軍拡・核軍拡競争の激化・拡大は必至である。歴史的没落にあえぐ米帝は、中国に貿易戦争を仕掛けると同時に、アジア・太平洋地域に地上発射型中距離ミサイルを配備して対中国・北朝鮮の侵略戦争体制を築こうとしている。
 ところで、今回使われた地上発射型巡航ミサイルは、安倍政権が秋田と山口で計画している地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」からも発射が可能である。つまり、イージス・アショアの基地は「防衛用」と言いながら、実際には中国・北朝鮮へのミサイル発射の基地にもなるものだ。
 INF全廃条約の失効で米ロ間の核軍縮条約は、核弾頭や大陸間弾道ミサイルの数を制限する新戦略兵器削減条約(新START)だけとなった。これは2021年が期限だが、トランプが再選されれば、延長されずに失効する可能性が強い。ボルトン米大統領補佐官は7月に「延長の可能性は低い」と述べた。失効すれば、米ロ間の核軍拡の歯止めは、何もなくなる。
 こうした情勢の中で米トランプ政権は、核戦力・通常戦力の更新に力を入れている。とりわけ「より使いやすい核兵器」の開発を進めている。重大なことは、実際に小型核兵器を使った戦争を想定していることだ。米統合参謀本部が6月にまとめた内部文書「核作戦」は、「小型核」の使用を念頭において、「核兵器使用を通常戦力部隊や特殊作戦部隊と一体化させる」「陸上部隊や特殊作戦部隊は核爆発後の放射線環境下でも、すべての作戦を遂行する能力を持たなければならない」と述べている。

ロシアで重大事故

 ロシアも対抗的な軍拡・核軍拡に全力を挙げている。8日にロシア北部のミサイル実験場で爆発事故が起き、ロシア国防省職員2人と原子力企業の職員5人が死亡した。広大な地域が放射能で汚染されたとみられるが、プーチン政権は大事故の隠蔽(いんぺい)に躍起になっている。
 この実験は原子力推進巡航ミサイルの「ブレべスニク」の実験と見られる。このミサイルは核弾頭の搭載が可能であり、また原子力推進なのでプーチン大統領は「射程は事実上、無限」と述べている。

開発を進める中国

 また、核保有国でありINF条約に縛られず90年代からミサイル開発を進めてきた中国は、条約が禁止した射程に近いミサイルを1400発以上保有しているという。
 こうした核軍拡競争の激化は全世界的な軍拡と戦争・核戦争の危機を深める。
 日帝・安倍政権は8・6広島―8・9長崎でも、被爆者の平和への願いを踏みにじり、核兵器禁止条約への参加を拒否し続けた。そして、日帝自身の核武装化すら狙っている。安倍政権の改憲・戦争攻撃と真っ向から対決し、労働者の国際連帯で帝国主義を打倒し、核戦争の道を阻止しよう。

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