五輪反対特集 命と生活ふみにじる安倍倒せ

週刊『前進』02頁(3089号02面01)(2019/11/28)


五輪反対特集
 命と生活ふみにじる安倍倒せ

福島の現実隠蔽
怒り圧殺を狙う

20㍉地帯に帰還強制許すな

(写真 11月3日、東京・日比谷野音での全国労働者集会後のデモ)

 安倍首相が「(原発事故の)状況はコントロールされている」として招致した2020年東京オリンピックは、福島第一原発と福島の放射能汚染の現実を徹底的に隠蔽(いんぺい)し、原発事故を「終わったこと」にすることが目的だ。その象徴が福島市あづま球場でのソフトボールと野球の試合の開催であり、聖火リレーのJヴィレッジ(楢葉町・広野町)からのスタートだ。
 Jヴィレッジは福島第一原発から南に約20㌔メートルの地点にあり、原発事故後しばらく、復旧にあたる作業員の除染や食事・宿泊の場所として事故対策の拠点となったところだ。言わば福島原発事故対応を象徴する場所のひとつである。ここで華やかなセレモニーを行い、聖火リレーの走者が拍手に送られてスタートすることで、福島原発事故がもはや過去のものとなり、放射能の危険も消え去ったとして、「福島復興」を全国・全世界にアピールすることが目的だ。来年3月までの常磐線全線開通も、そのために狙われている。

今も緊急事態宣言下

 だが、福島の「復興」など真っ赤なうそだ。福島第一原発事故は収束しておらず、危険な状態が継続している。事故当日に政府が発令した「原子力緊急事態宣言」は解除されていない。福島も日本も、依然としてこの原子力緊急事態宣言下にあるのだ。福島第一原発は収束のめどはまったく立っていない。1号機、2号機、3号機は炉心が溶融し、溶け落ちた核燃料がどんな状態でどこにあるのかさえ分からない。しかも再臨界を防ぐために大量の水をかけ続けざるをえず、放射能汚染水は増え続ける一方だ。
 さらに深刻なのが、福島の放射能汚染だ。福島原発事故では、広島原爆の約168発分のセシウム137を大気中に放出した。それが福島などに広範囲に降り注ぎ、大地・海洋を汚染している。「除染」と言っても、福島県全体の約7割の面積を占める森林は手付かずのままだ。そこから風に乗り、雨によって、住民の住む地域に放射性物質が運ばれる。この秋の台風19号による洪水では放射性物質を含んだ大量の水や土砂が住宅地を襲った。一度「除染」しても、すぐ放射性物質によって汚染されてしまうのだ。
 政府と福島県は年間20㍉シーベルト以下の地域に住民を帰還させているが、到底許されない。放射線の業務に従事する人だけが立ち入りを許される「放射線管理区域」でさえ、その区域の放射線の基準は3カ月間につき1・3㍉シーベルトだ。分かりやすく年間にすると、年5・2㍉シーベルトである。ここでさえ普通の人は絶対に立ち入ってはならない。
 年間20㍉シーベルトとは、この放射線管理区域の実に約4倍の放射線量にもなる。まして、子どもは、放射線への感受性が大人の何倍も高い。高線量下で生活する福島の人たちの避難こそ切実に求められており、とくに子どもたちを被曝から守ることが必要なのだ。

五輪より避難・保養を

 2020年東京五輪・パラリンピックの経費の総額は3兆円を超えるとも言われている。オリンピックなど直ちに取りやめるべきだ。福島県民の避難や保養・医療にこそ公費が当てられるべきであり、ましてや、「自主避難者」を住宅から追い出すなど断じて許されない。
 安倍が「復興五輪」攻撃を進めるのは、福島の労働者民衆の怒りのマグマを封じるためだ。一部の支配階級だけが裕福な生活を享受し、大多数の人が貧困や過労死、非正規職の現状、基地被害、被曝に苦しめられている現実に怒り、韓国や香港のように、日本の労働者民衆が闘う時代が始まろうとしている。安倍政権の目的は、沖縄とともに福島の労働者民衆がその先頭で立ち上がるのを圧殺することだ。それとともに各地の原発を再稼働させ、原発政策を推進し、改憲と戦争(核武装―核戦争)に突き進もうというのだ。絶対に許してはならない。
 東京オリンピックに反対し、福島の人たちとともに立ち上がろう。そのために来年の3・11反原発福島行動に全国から集まろう。

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放射線管理区域はこれほど厳格
●法律で、放射線量が3カ月で1・3㍉シー
 ベルトを超える区域を「放射線管理区域」と制定。一般の人は立ち入り厳禁。
●放射線業務に従事する成人だけが入れる。
 女性、とくに妊娠中の女性は、線量の限度がさらに厳しく定められている。
●この中では食事も水を飲むことも禁止。
―安倍政権は、これより約4倍も放射線量が高い地域に住民を帰還させている―

ボランティア強制
国が教育に介入

新たな「学徒動員」を打ち破ろう

11万人がただ働き

 東京五輪による「学徒動員」への怒りが爆発している。
 五輪ボランティアは11万人。五輪史上においても、日本のイベント史上でも最大の規模だ。まさに「国家総動員」である。
 ボランティアの内訳は、大会運営にあたる「大会ボランティア」の8万人と、交通案内や観光案内にあたる「都市ボランティア」の3万人である。大会ボランティアは、研修に加え1日8時間、10日以上活動する。だが報酬はゼロ。1日あたり1000円の交通費と1日1回の飲食以外は自己負担だ。暑さで倒れても自己責任。80社のスポンサー企業のための究極の「ただ働き」「やりがい搾取」だ。
 五輪には大学生も動員される。文科省は2018年7月に全国の大学と高専に対して〝五輪の期間中は授業・試験を行わないように〟と通知を出した。組織委員会は19年9月1日現在で大学・短大810校と「連携協定」を結んでいる。しかもボランティア参加を単位認定する大学も多数出現している。
 動員は中学・高校にも及ぶ。
 昨年、都市ボランティアの応募人数が危ぶまれたため、東京都教育委員会が都立高校の2、3年生に10万枚の応募用紙を配布。「全員出して」と生徒に強要した高校もあったという。
 さらに今年11月、NHKの報道で、都教委が中学2年から高校3年の6千人に都市ボランティアへの参加を要請することが暴露された。1校あたり5人の生徒と引率教員1人が割り当てられており、「ボランティアではなく動員だ」と教員から怒りの声が上がっている。

学校に観戦強いる

 学校の観戦動員も大問題だ。
 すでに学校では16年度から年間35時間の「オリンピック・パラリンピック教育」が課され、「日本人の自覚と誇り」(実践事例集)を子どもたちに刷り込もうとしてきた。都教委は「オリ・パラ教育の集大成として観戦の機会を提供する」として100万枚のチケットを購入、幼稚園から高校の全校に無償で割り当てようとしている。
 都教委は「強制ではない」というが、これも実質強制だ。断る校長がいても、「観戦しないのは、あなたの学校だけです」と教育委員会が圧力をかけているという。また観戦は授業として扱われているので、休めば欠席になってしまう。
 全校丸ごと観戦するか一部の学年かは様々だが、数百人以上の子どもたちを連れて電車や徒歩で移動することになる。雑踏の中での引率は子どもの安全を考えない暴挙だ。ちなみにバスは使えない。交通混雑とバス不足のため、文科省が「オールジャパンの取り組み」として控えるよう要請しているからだ。これにより夏休みの臨海学校も中止になった学校もある。
 何よりも、昨今、暑さでプールも中止になるというのに、酷暑の中に子どもたちをさらすことは殺人行為だ。また、過労死レベルで働く教職員にも、下見、事前指導、引率など過重労働が課されることになる。
 事故が起きても「観戦は希望制」としているから、責任は現場に押し付けられる。観戦動員をやめさせ、子どもたちと教職員の命を守ろう。
 国の一大事として国威発揚のために国が教育現場に介入する姿は戦前と同じ。これこそ改憲攻撃だ。怒りと危機感が渦巻いている。現場から「強制するな」の声を上げ、教組を先頭に「学徒動員」を粉砕しよう。

終電時間を延長
殺人的労働強化

怒り噴出 反撃に立つ東交労組

 労働組合の反撃が始まった。東京五輪は交通の現場に殺人的な労働強化と安全崩壊をもたらす。今ですら都営地下鉄・バスは要員不足で危機的な状況だ。その上さらに終電延長、バスの増便なんて冗談じゃない! 東交(東京交通労組)組合員から激しい怒りが噴き出している。しかし当局は労働組合を無視し、いまだに運行計画も示そうとしない。それ自体が組合破壊だ。東交は東京五輪に対する全力の闘いを開始した。

要員不足は深刻だ

 都営地下鉄は欠員が発生し運行自体が困難になっている。増員が絶対に必要だ。だがその養成には一定の期間を要し、非正規職では務まらない。都営バスでは運転手の4分の1が拘束13時間を超え、4時間連続乗務を強いられている。人員不足と過重労働、病欠者の続出で悲鳴が上がっている。地下鉄の保守点検、工事を担う技術職場は、際限のない効率化・削減の結果、慢性的な要員不足で技術継承もままならない状態にある。
 そうした現状に追い打ちをかけるのが東京五輪だ。来年7月24日から8月9日まで17日にわたり、各会場周辺で毎回数万人が移動する。花火大会のような混乱が連日繰り返されるのだ。これに事故や台風などの災害が重なったら、運行は完全に破綻(はたん)する。
 JR山手線、都営地下鉄、東京メトロの午前2時過ぎまでの終電延長が言われ、始発繰り上げ、開会式・閉会式当日の終夜運転案も出ている。保守点検はいつやるというのか。都営バスは海の森水上競技場(江東区)へのシャトルバス運行に加え、競技場、宿泊施設の集中する地域の路線バスの大幅な増便も必要となる。海の森水上競技場だけでバス約300台分の観客が来ることが予想されている。
 あらゆる負担・重圧が現場にかかる。現状の深刻な要員不足のままでは絶対に不可能だ。オリンピック後には8月25日から9月6日までパラリンピックが続く。この長丁場を労働者の出退勤のシフトを変え、休みなく働かせて済ますことなどありえない。重大な健康被害と業務破綻、安全の崩壊をもたらす。

労働改悪の水路に

 小池都政は五輪時の「混雑緩和」を口実に、テレワーク(在宅勤務)や就業時間枠を固定しないフレックスタイム制、時差出勤・早朝出勤を、都庁労働者を水路に民間を含む全労働者に広げようとしている。労働改悪と団結破壊の攻撃である。
 テレワークは労働者の個人事業主化が最大の狙いだ。労働者としての権利を奪い、最低賃金と8時間労働制、労働災害補償の縛りをなくしてしまう。フレックスタイム制、時差出勤と同様、職場の労働者全員が顔を合わせることを困難にするとともに、超長時間労働を可能にする変形労働時間制と併せて8時間労働制の解体に行き着く。早朝出勤は時間外労働の温床だ。労働改悪絶対反対で闘おう。
 当局は組合に五輪時の運行の詳細を示さず、ダイヤは3月末に公表するとしている。来年度予算の交通局要求にも要員の大幅増は明示されていない。「時間切れ」を口実に逃げ切ることなど絶対に許されない。東交は電車部、自動車部、技術部、事務部の全部門で闘いに入った。電車部は「増員なくして増発はあり得ない」立場を鮮明にさせている。労働組合の否定を許さず、殺人的労働強化・安全破壊と真っ向から対決する闘いだ。団結を固めて闘いぬこう。

入管が長期収容
奴隷労働も蔓延

外国人を犠牲に何が祭典か

(写真 6月20日、「外国人労働者を収容するな」と訴え東京入管へデモ)

 「オリンピック前に無理やり帰すと言っている。12月中に帰されるかも、怖い」----こう話していた韓国人のEさんが11月14日、強制送還されてしまった。
 Eさんは1990年代末、日本に留学しようとブローカーに70万円を支払って手続きを頼んだが、だまされ暴力団風の男たちに引き渡され、スナックで無理やり働かされた。パスポートも取り上げられ、何とか逃げ出したが在留資格がないまま21年、日本で働いてきた。日本人と結婚しようとしていた矢先の2018年6月、入管に捕まり収容。その後、結婚した夫は仕事の合間に週に何度も面会に通い、彼女の解放に全力を尽くしていた。
 「人身売買」の被害者でありながら、保護されるどころか期限のない長期収容を強いられた上、愛する夫と引き裂かれて強制送還されたのだ。彼女は「日本が労働力不足というなら、なぜ私たちに働けるビザを出さないのか、日本語もわかるのに」と訴えていた。

〝世界一安全〟の正体

 安倍政権は、13年9月に東京五輪・パラリンピック開催を決定するや、12月には「『世界一安全な日本』創造戦略」を閣議決定し、「不法滞在・偽装滞在者の積極的な摘発を図り、在留資格を取り消すなど厳格に対応する」と警察庁・法務省・厚生労働省の連携強化を進めてきた。
 これに対応し昨年2月28日、和田雅樹入管局長(当時)が全国の収容施設長らに仮放免(保証人と保証金、制限住所により収容施設を出ることができる)の厳格化を指示する文書を送付した。
 公開された文書は大部分墨塗りだが、「仮放免を許可することが適当とは認められない者は、送還の見込みが立たない者であっても収容に耐え難い傷病者でない限り、原則、送還が可能となるまで収容を継続し送還に努める」と書かれている。「仮放免が認められない者」には「仮放免の条件違反のおそれ」や「トラブルが見込まれる者」も含まれており、入管の裁量のままに運用できる。
 「収容に耐え難い傷病者」は配慮するかのように書かれているが、心身の異常を訴える被収容者に対し、入管はまず「詐病」を疑い、経過観察するのが常だ。診察を申請しても医師に診てもらうまで数週間もかかる。14年3月30日、東日本入国管理センター(牛久入管)で収容中に亡くなったカメルーン人男性(43)の場合、監視カメラが設置された部屋で床を転げ回って苦しみ、「アイム ダイイング(死にそうだ)」とうめき声を上げたが放置され殺された。今年6月24日には長崎県大村入管センターでハンストをしていたナイジェリア人男性が飢餓死に追い込まれている。

事実上の予防拘禁!

 11月8日、衆院法務委員会で初鹿明博議員(立憲民主党)が法務省に対し、入管収容所での長期収容について、「(法務省の)『わが国の安心安全を確保する観点から仮放免を認めるべきではない』という理屈はおかしい。これは事実上に予防拘禁だ」と法務省を問いただした。そして、戦前・戦中の治安維持法でも予防拘禁の期限は2年、更新する場合は裁判所の判断を要したと明らかにし、「外国人の場合、期限もないし、長期収容する判断も第三者が入らず、全て入管当局が行っている」「治安維持法でも2年以上拘禁された人は4人。ところが入管の収容者は今年6月1日の時点で2年以上が251人もいる」と追及した。
 安倍政権が進める「世界一安全な日本」とは治安弾圧強化であり、差別・排外主義で在日外国人の人権を踏みにじる改憲の先取りそのものだ。
 長野冬季五輪では施設建設で多くの外国人労働者を使っておきながら、完成すると同時に「ホワイトスノー作戦」と称して非正規滞在の外国人労働者を摘発・退去強制した。今回も、技能実習生をはじめとする外国人労働者が安全対策など二の次の建設現場で命を削って働いている。
 オリンピックに殺されてたまるか! 外国人労働者、難民・難民申請者、仮放免者と団結し、改憲・戦争の安倍政権もろとも東京五輪を葬り去ろう!

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