人民から収奪し資本に減税 生活壊す「与党税制改革大綱」

週刊『前進』04頁(3096号02面04)(2019/12/23)


人民から収奪し資本に減税
 生活壊す「与党税制改革大綱」


 政府は、消費税の税収を過去最大の20兆円以上と見積もって来年度予算案を編成しつつある。消費税は今や、税収の中で最大の項目を占めている。
 他方、来年度予算案では、企業が負担する法人税の税収は12兆円程度と見込まれる。資本は、労働者を非正規職化し低賃金に追いやることで膨大な利潤を上げている。それに加えて安倍は、「日本を世界で企業が一番活動しやすい国にする」と叫んで、企業に大減税を施してきた。
 今年10月、消費税の税率が10%に引き上げられ、労働者人民の生活はさらに苦境に追い込まれた。消費税は、所得の低い人ほど、その懐から奪い去られる税金の割合が高くなる。これは、人民から収奪する一方の最悪の税制だ。
 政府が策定した今年度補正予算案は、税収が当初予算での見積額に達せず、2兆2千億円の赤字国債の発行に追い込まれた。
 にもかかわらず政府は、この秋の台風被害をも口実に、来年度予算案に大規模な公共投資費を計上しようとしている。さらに、来年度予算案に過去最大の5兆3223億円もの軍事費が盛り込まれることも、すでに決定されている。そのつけは、労働者人民への増税と、社会保障の切り捨てとして襲い掛かるのだ。

IT化で雇用破壊

 自民・公明の与党は12月12日、来年度の税制改革大綱を決めた。その柱は、またも資本への大減税だ。
 その一つは、「オープンイノベーション税制」と称して、大企業が設立10年未満のベンチャー企業に1億円以上の出資をした場合、出資額の25%を非課税とする制度だ。
 もう一つは、第五世代(5G)移動通信システムの整備に向け、通信会社が計画より早く設備投資をした場合、投資額の15%を法人税から差し引くとしたことだ。これによりNTTドコモやKDDI、ソフトバンク、楽天などの通信事業業者の税負担は、120億円程度減ると見込まれる。
 安倍政権は、この資本減税で「企業がため込んだ内部留保を投資に回す」と言う。仮にそれが効果を発揮したとしても、大企業からベンチャー企業に資金が流れるだけだ。結局それは、ITなどのベンチャー企業のもと、一層の雇用破壊を促進するものになるのだ。

富裕層に優遇措置

 この秋、金融庁・金融審議会がまとめた「老後のためには年金以外に2千万円の蓄えが必要」という報告書は、激しい怒りにさらされた。報告書は撤回されたが、その中身は安倍の基本政策として貫かれている。
 今回の税制改革大綱は、年120万円までの投資に対する運用益を非課税にする少額投資非課税制度(NISA)について、低リスク商品に対する年20万円までの投資への運用益を非課税にする制度に変更した上で、5年間延長するとした。年120万円もの投資ができるのは超富裕層だ。
 他方、20代の青年層の43・5%は、貯蓄を持てていない。安倍は、富裕層への減税は継続する一方で、貯金する余裕もない低所得者から無慈悲に消費税をむしり取っている。
 安倍政権は、近日中に全世代型社会保障検討会議の中間報告をまとめようとしている。そこで強調されるのは、「70歳までの就業機会確保」だ。労働者は年金に頼らず、死ぬまで働けということだ。
 改憲・戦争、大軍拡と資本の延命のために労働者人民の命と生活を踏みにじる安倍政権を、2020年決戦で必ず倒そう。

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IT化を叫んで大資本に減税
オープンイノベーション税制 大企業がベンチャー企業に投資した場合、出資額の25%を課税対象の所得から差し引く
第5世代(5G)移動通信システム税制 通信事業者が5Gシステム工事を早く実施した場合、投資額の15%を法人税から差し引く
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