〈寄稿〉 大学入試 「英語民間検定」も「記述式」も破綻 高校生の怒り、安倍を痛撃 元神奈川県立高校教員 鈴木 一久

週刊『前進』08頁(3097号08面02)(2020/01/01)


〈寄稿〉
 大学入試 「英語民間検定」も「記述式」も破綻
 高校生の怒り、安倍を痛撃
 元神奈川県立高校教員 鈴木 一久


 本紙第3085号に大学入試「英語民間検定」問題を寄稿してから約1カ月、萩生田光一文科相の「身の丈」発言への怒りが世論を動かし、次々と不備・問題点が暴露されていった。「私たちは実験台か」という高校生の悲痛な叫びが安倍政権を痛撃し、大学入試改革の2大柱とされた英語民間検定は導入延期(11月1日)、国語と数学の記述式を中止(12月17日)に追い込んだ。高校生の怒りの決起は、自由と解放へ闘う香港の学生・青年、地球環境破壊を鋭く告発したスウェーデンのグレタさん(16歳)の思いと通底する社会変革への希望の輝きです。
 問われているのは私たち。高校生の怒りに応え、安倍の新自由主義「教育改革」と対決しよう!
 私は学校現場を訪ね、英語担当教員を招いた地域学習会を企画しました。
■英語教員と学習会を企画
 英語学習は早くから学習時数を多くとればモノになるとか、英語力を身に着ければ将来は明るいなんて言うのは虚構にすぎない。英語4技能の判定を7種の民間検定に委ね、それらを欧州言語共通参照枠(CEFR〔セファール〕)に当てはめ6段階(A1~C2)に評定すると言うが、そもそもCEFR作成当事者が「選抜には適さない」と明言している。加えて検定試験の日程が種々バラバラのため、3年生は文化祭や公式戦などに参加できないといった具体的な問題点が出されました。定時制や障害を抱える生徒を排除する制度設計になっているとの鋭い指摘もありました。
 怒りはあれど声に出せないと現場は呻吟(しんぎん)している。ならば学習会を組織し、共に学び団結しよう。
■利権まみれの入試改革
 英語民間検定導入が、教育の民営化による財界と官邸の結託の産物であることが明らかになっています。
 発端は2013年にIT産業大手「楽天」の三木谷浩史会長が経済同友会で提言し、産業競争力会議と教育再生実行会議(本部長は下村博文文科相・当時)の提言と中央教育審議会答申を経て、15年に「大学入試の高大接続改革プラン」として打ち出されました。実行会議には英語教育の専門家は一人もいない。制度設計を担当した文科省・有識者会議も同様で、官邸の意向を忖度(そんたく)する「モリ・カケ問題」と同じ利権・癒着がらみの代物です。「政財界の思惑で人生を振り回されてたまるか」という高校生の怒りこそ真実です。安倍は24年度実施を画策しています。撤回に追い込もう!
■突破口は開かれた!新自由主義「教育改革」葬ろう
 萩生田文科相の「身の丈」発言こそ、「グローバル人材」「エリート選別」を狙った新自由主義「教育改革」の本質を言い当てた「本音」です。英語民間検定導入は「高大接続改革」の要の施策です。戦後教育体系を解体し、戦前の「複線型教育」に再編する改憲・戦争攻撃です。すでに高校では「普通科解体」と「複線型教育」への再編・統廃合が進められています。あらゆる矛盾が職場に蓄積し、教育労働者を多忙化と強労働に追い込んでいます。民間検定導入阻止を突破口に受験生・家庭・地域の怒りと結び、闘う労働組合をつくりだそう!

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