やまゆり園裁判傍聴者と交流 労働者階級の団結奪い返す闘いを

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週刊『前進』04頁(3108号04面02)(2020/02/17)


やまゆり園裁判傍聴者と交流
 労働者階級の団結奪い返す闘いを


 2月5〜7日の3日間、横浜地裁で開かれた津久井やまゆり園事件の公判の傍聴券を求めて列に並んだ。3日目に抽選に当たり、短時間だったが間近で植松被告を見ることができた。植松は30歳のどこにでもいる青年だったが、反省は1ミリもなく異様に落ち着いている。障害者虐殺という彼の階級的犯罪への報復を誓うと共に、植松を打倒する労働者階級の底力をつくり出さなければと思った。
 今回の傍聴は20倍以上の確率と言われていたので、最初から列に並ぶ人から署名を集めることにした。
 10時半開始の公判に20枠の一般席を求めて毎回400人位(初回は2千人)が抽選に集まる。そこで相模原市の佐藤みちえさんが呼びかけている「障害者の65歳介護保険移行強制反対」の署名を訴え、70筆を集めた。署名を通して、傍聴希望者がどういう思いで来たのかも聞くことができた。

関心の高さ示す

 傍聴希望者はマスコミ関係が多かったが、福祉施設職員、病院看護師、ヘルパーはもとより、休みを取って来たという会社員が何人もいて関心の高さを示した。「報道だけじゃわからない」「植松と同じ空気を吸ってみたい」「福祉職員がなぜ障害者を殺さなければならなかったのか知りたい」という。
 愛知から来たという体育大学の男女3人組は、卒論でやまゆり園事件を取り上げたいとのこと。神奈川県は福祉が充実していると聞いていて、教員の志望先は神奈川だと言う。「事件はやっぱり幼い頃からの教育の中の能力主義が問題。何か役に立ちたい」と言うが、教員になってもその志が本当に貫けるか、やはり職場の団結が問われないかと討論になった。
 高校生は社会勉強を兼ねて友人同士で来ていた。法学部をめざすという。
 障害者の当事者では、肢体不自由者の会、知的障害者団体のピープルファースト、在宅の精神障害者と出会い、署名してもらった。

民営化が問題と

 また「津久井やまゆり園事件を映画化する制作集団」に出会い、署名とともに上映運動を案内された。
 2006年の指定管理者制度への移行を機に退職した元やまゆり園職員で、殺害された入所者をよく知る方とも出会った。民営化後の園の体質を問題にしていることを含め、事件から多くの教訓をくみとらなければいけないと教えてくれた。やまゆり園事件に限らずこうした福祉職場からの提起は、社会の縮図としてある現実を、さらに掘り下げることが必要だ。
 途絶えることのない障害者虐待事件の報道がありつつ、しかし施設に頼らざるを得ない労働者家族の実態も同時に存在する。
 本来社会性のある介護を社会から切り離し、金融や不動産業等と一体となって金もうけの道具にし、障害者抹殺に行きつく自滅と破綻の現実----この一切を「現場労働者の責任」に押しつけてきた資本の攻撃が事件の引き金だった。
 だから労働運動を柱に社会的・階級的団結を取り戻すことが死活的であり、そこに希望があるのではないか。

くり返させるな

 植松は今なお自分の行った「障害者抹殺の正当性」に固執している。「安倍やトランプなら認めてくれる」とすがりつき、自分は「国家権力の側」にいると過信している。戦争動員に向け改憲攻撃を加速する中で植松が見本とするまでに至った安倍は恥を知れ!
 神奈川県議会ではやまゆり園が先行させた指定管理者制度を2年後には県立さがみ緑風園に広げ、通所障害者リハビリ部門の廃止も提案されている。佐藤さんの「障害福祉を守る」署名はこの攻撃との攻防の渦中だ。やまゆり園事件をくり返させない闘いと一体で勝ちぬこう。
(関東障害者解放委員会・K)

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▼津久井やまゆり園事件  
 2016年7月26日未明に神奈川県相模原市緑区千木良にあった神奈川県立の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」で発生した大量殺人事件。元施設職員・植松聖(当時26歳)が施設に侵入して入所者19人を刺殺し、入所者・職員計26人に重軽傷を負わせた。今年1月8日に横浜地裁で公判が始まり、2月5日に第10回公判が開かれた。

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