公教育の破壊に怒りの反撃 カナダで20万教育スト 米の闘い、国境を越えて波及

週刊『前進』02頁(3113号02面03)(2020/03/05)


公教育の破壊に怒りの反撃
 カナダで20万教育スト
 米の闘い、国境を越えて波及

(写真 2月12日、スト突入を前に「子どもたちのため共に立ち上がろう」と訴えるトロントの教育労働者)

(写真 「子どもたちを放置しないで」「学校はどうなるの?」など手作りのボードを持ったスト参加者【2月21日 トロント】)


 2018年から全米を覆っている教育ストライキの波が、国境を越えてカナダでも広がりつつある。
 カナダ中東部のオンタリオ州で2月21日、20万人の教育労働者がストライキに立ち上がり、公立の小中学校5千校が休校となった。参加者たちは手作りのプラカードを掲げて「教育予算を削減するな」「公教育を守れ」「クラス規模の拡大をやめろ」と訴え、雪が積もる街へデモに出た。
 この闘いに大きな支持が寄せられ、多くの保護者や市民がともに声を上げた。 州都トロントでの集会には教育労働者と支援者約3万人が集まり、2万人が加わったピケットラインは数㌔メートルにも及んだ。州南西部の都市でも、1万人規模の集会が行われた。
●教育予算削り雇用奪う
 怒りの的となっているのは、州首相ダグ・フォードによる緊縮政策のもとで進行する公教育の破壊だ。
 フォードは米大統領トランプの信奉者として知られる大富豪で、「ビジネスに開かれたオンタリオ」をスローガンに新自由主義攻撃を進めている。フォードの方針により教育予算は1年あたり数十万㌦減らされ、高校のクラス規模が急激に拡大した一方で教育労働者1万人の職が奪われた。
 州政府は「未来の世代のために持続可能な公的機関をつくる」という口実で公務員労働者の賃金を低く抑える一方、大企業や富裕層に減税措置をとってきた。
 こうした攻撃に対して、四つの教員組合が共同でクラス規模の縮小、専門サポートスタッフや補助教員らの低賃金の是正などを求めて昨年9月から州政府と交渉を続けてきた。
 昨年11月からは順法闘争やストライキも行われ、今回の一斉ストで怒りがあふれ出たのだ。
 オンタリオ州はカナダで最大の人口を擁する政治・経済の中心だが、教育現場の実態は驚くべきものだ。教室や席の数が全く足りないため、一つの教室に二つのクラスの生徒が入って2人の教員が同時並行で授業を行うこともある。立って授業を受けなければならない生徒もいるという。予算の不足により、教員が自費で教室の備品や教材を購入している状況だ。
 また同州は移民が多く人種的・文化的な多様性で知られており、昨年までは外国語の授業が小中学校の必須科目だった。しかし、予算削減によって今年から廃止されてしまったという。
●国際連帯を求め闘う
 フォードは許しがたいことに、こうした教育労働者の闘いを「犯罪」とみなし、メディアなどを使って「ストライキは公教育への襲撃」というキャンペーンを展開。さらに「反ストライキ法」の制定やストへの罰金導入、警察による介入まで計画している。
 しかし、ストライキに立ち上がった教育労働者の決意は固い。それを支えているのは、世界の闘いへの強い関心と連帯の思いだ。教育労働者たちは、自分たちの闘いが公教育を守るために全世界で巻き起こる闘いの一環であるという強い意識を共有している。2月21日にトロントで行われた集会では、2018年に米ウェストバージニア州での教育ストライキで歌われた歌が響いた。
 国境を越えた労働者の闘いこそが教育現場を守る力だ。日本でもこれに続く闘いをつくり上げよう。

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