振り回される現場 感染対策に疲弊/先が見えない 怒り充満 学校統廃合やめろ! 正規職の人員増やせ!

週刊『前進』04頁(3140号02面02)(2020/06/15)


振り回される現場
 感染対策に疲弊/先が見えない
 怒り充満
 学校統廃合やめろ! 正規職の人員増やせ!


 学校再開後の現場はどうなっているのか。公立小・中学校の教員にお話を伺った。(本誌 都築悠人)

労働強化もう限界

 「緊張感が増し労働が強化されている。一日中、感染対策に時間と労力を費やしている感じ」
 そう語るのは大阪の小学校教員・佐藤聡子さん(仮名)。学校は午前と午後に分けての分散登校だ。教職員は勤務時間30分前倒しで出勤し、児童を検温。昼は総出で簡易給食の配膳、児童の下校後は教室、トイレ、廊下の手すりを20〜30分かけて消毒。授業準備も会議もできない。定時にはとても退勤できない。現場は疲弊し、過重労働への怒りやいら立ちが募る。
 子どもたちも大変だ。歌えない、接触しないでは音楽も体育もできない。国語、算数が中心だ。「詰め込みでアップアップしていくんじゃないか」と佐藤さんは心配する。
 その一方で、大阪では都構想が狙われ、生野区では公立小・中16校が四つの小中一貫校に統廃合されるという。しかもその特色は、昨年開校した中高一貫の公設民営学校のような、産官学が連携し教育、IT産業が次々参入する学校である。佐藤さんは「密がダメだと言っているのに統廃合はないだろう」と憤る。加速する民営化に対し、地域の小中学校統廃合反対運動とつながり闘う決意だ。

入試はどうなる?

 「きついですね。時間がつまっていて」
 神奈川の中学校教員・高橋浩二さん(仮名)の学校も分散登校だ。いつもはやらないことへの対応に疲れがたまる。自分が感染していないか、それも心配だ。現場は3カ月間の休校による「授業の遅れ」を取り戻そうと気持ちばかりが焦っている。何より「先を見通せないことが一番のいらいら」だ。特に高校入試。「塾でつめこまれた人だけが有利になるのは許されないとみんな思っている」。ある地方では、現場の闘いで入試範囲を早々に決めさせたというが、高橋さんの地域の教育委員会は方針を示せない。
 ただ「よかった」こともある。1クラスの生徒数半分の18人学級を経験したことだ。同僚も「これぐらいの人数がいいよね」と語っている。
 オンライン学習がコロナ危機の救世主のように宣伝されているが、高橋さんは「オンラインでできることはほんの一部。絶対に解決しない。直接向き合ってやりとりしながらじゃないと伝わらない」と疑問を呈し、「結局、効率、効率ばかりでやってきて行き詰まった。学校から病院から全部がそうじゃないですか。民営化だ、コストパフォーマンスだとか言っていると、ろくなことにならない。それより正規職の教員を倍にして、1クラスの生徒数を半分に減らせば何だって実現するのに」と実感を込めて語った。

職場の声こそ必要

 中四国の小学校教員・斎藤茜さん(仮名)は「必要なのは現場の声です」と断言。
 教育委員会の感染対策に現場は振り回され、怒りが渦巻いている。それは科学的根拠に根差した対策ではなく、保護者受けするためのアリバイづくり、責任逃れのためだからだ。給食の自校方式からセンター化にした民営化も、柔軟な対応を阻んでいる。
 こうした矛盾は全部現場に集中する。例えばフェイスシールドを一律に教員に配られても、暑くて声も聞こえにくいから不評だ。ただ、仮にフェイスシールドが職場から出た要求なら話は別だ。斎藤さんは「どの学校も一律に対策を押しつけることが問題だ。大切なのは、職場に基づいた要求と、声を上げていける職場の団結だ」と強調する。
 そうした中、ある学校では、医療従事者に感謝の拍手を送る「フライデー・オベーション」の放送が流されているという。斎藤さんは「がんばれ兵隊さんみたい。現場の要求を抑え込み、医療従事者を『殉職』させるものではないか」と危惧を抱く。挙国一致体制が敷かれ学校現場の声も圧殺されかねない。
 職場全体で知恵を出し合い、声を上げることが何より重要だ。その中に労働組合の復権もある。
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