感染防止より金もうけ 「GoTo」補助金は大手旅行代理店に

週刊『前進』04頁(3152号02面02)(2020/07/27)


感染防止より金もうけ
 「GoTo」補助金は大手旅行代理店に


 安倍政権は7月22日、国内での旅行を促すために旅行費用を補助する「Go To トラベル」キャンペーンを当初の予定を前倒しして開始した。

困窮する旅館へは支払われない

 キャンペーンは、地方で休業を余儀なくされて、困窮する旅館や観光客用の事業者を支えるためと宣伝されてきた。
 しかし、実際はまったく異なる。価格が低く設定されている宿はほとんどが旅行代理店のツアーに組み込まれておらず、キャンペーンの対象外にされている。キャンペーンの補助金は一部の大手の旅行代理店に支払われ、大資本がさらに金をもうけるだけだ。
 キャンペーン自体が自民党幹事長・二階俊博の利権のためだ。事務業務の委託先はJTBや日本旅行業協会などの大手でつくる共同事業体で、委託費は1895億円だ。この共同事業体に加わる観光関連の14団体から、二階俊博をはじめ自民党議員37人が少なくとも約4200万円の献金を受け取っていたことがわかった。国政を私物化し、労働者人民をかえりみない醜悪な姿だ。

労働者の生活や医療危機顧みず

 このコロナ情勢で、膨大な労働者人民は旅行どころではない。解雇や休業による自宅待機が数百万人の規模で吹き荒れ、さらに非正規職・低賃金の労働者には旅行のための金銭的な蓄えなどない。またコロナ対策でこれまでの労働に消毒作業が追加されていながら賃金も人員も増やされないなど、体力も奪われ、旅行どころではない。
 さらに、医療・介護職場の労働者や公務員労働者など、職業によって移動を制限されている人も多い。
 加えて、この間の大雨・洪水による被災地では、行方不明者の捜索や復旧作業が続いている。いまだに通れない道、流された鉄橋、寸断された線路。建物も復旧の途中だ。自らが旅行者になる余裕も、旅行者を受け入れる余裕もない。
 コロナウイルス感染が第2波ともいえる拡大を示す中で、青森県むつ市の市長は「人が動かなければ、ウイルスは動かない。Go To キャンペーンは人を動かす。これで感染が拡大すれば人災だ」と批判した。むつ市は感染症に対応した病院は1カ所、4床しかない。新自由主義のもとで切り捨てられてきた地方からの切実な訴えだ。
 感染が拡大する東京では、21日時点で入院患者数は949人にまで急増した。都の感染症対策ベッド数は約1千床のため、すでに危機的な状況だ。
 キャンペーンの開始時期を無理やり早め、東京を補助の対象からはずすことや、キャンセル料をめぐる議論が報道されるが、現場でコロナと必死に格闘し続けている労働者に見向きもしない安倍政権の本性が表れている。

検査数の抑制は依然として続く

 キャンペーンは、緊急事態宣言中の4月30日に成立した補正予算によるものだ。今年度予算で病床削減に644億円をつけ、さらに補正予算で医療対策より経済・IT投資を優先させ批判を浴びた。
 ウイルス対策として明示された予算は4千億円弱。他方で、「コロナ収束後に実施する」とした「Go To キャンペーン」に1兆6794億円だ。
 安倍はPCR検査を「1日2万件可能に」と言い、「第2波に備える」と繰り返してきた。しかし、現実はどうか。7月10日時点で3万件の検査が可能になったと言われるが、7月14日の実際の検査数は1万1千件。行政の姿勢は、検査数を抑えて感染者を見つけないという、春の対応と変わっていない。
 安倍は、労働者と小中零細業者の怒りに恐怖して、6月18日の通常国会閉会後の会見以来、1カ月にわたって記者会見も開かず、国会の閉会中審査にも出席を拒否し続けている。しかし、だからこそ夏から秋の過程で改憲・戦争国家化へ突進することで、支配の危機を突破しようと狙っている。安倍打倒の夏―秋決戦に総決起しよう。
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