大高揚する米階級闘争 トランプ派極右と対決 労働組合がBLM運動の柱に

週刊『前進』04頁(3167号03面01)(2020/10/26)


大高揚する米階級闘争
 トランプ派極右と対決
 労働組合がBLM運動の柱に

(写真 SEIU【サービス従業員国際労組】ローカル1021とCNA【カリフォルニア看護師労組】の病院ストライキ集会【10月8日 カリフォルニア州ヘイワード市】)

(写真 アイオワ州ウォータールー郵便局前で「区分機を返せ」と抗議行動を行う労働者【8月22日】)


 11月3日の大統領選挙を前に、闘う労働組合を中心とするアメリカ階級闘争が歴史的な大高揚を迎えている。その先頭に立っているのは、これまで日本の11月労働者集会にも参加し、日本の階級的労働運動と固い国際連帯の絆を結んできた仲間たちだ。この決起に応え、11・1集会・デモの歴史的成功をかちとろう。

クーデターあおる大統領

 10月1日に新型コロナウイルス感染を公表したトランプは、5日、CDC(疾病対策センター)の指針を無視し、入院先の米軍医療センターから強行退院した。専用ヘリに乗って降り立ち、バルコニーに立って軍隊式敬礼をする映像をツイッターで拡散させた。その演出は、かつてイタリアのファシスト・ムッソリーニが好んで行ったバルコニー演説とうり二つであり、1935年のナチスのプロパガンダ映画「意志の勝利」にそっくりだ。トランプは11月3日の投票日に向かって、国内のネオナチ・白人至上主義者に向けて「武器をとれ」と扇動したのだ。
 すでに昨年から、トランプは自分の勝利以外の結果は「不正選挙だ」「内戦になる」と繰り返してきた。今年4~5月には、各州で自動小銃などで武装した極右のデモが行われ、民主党が多数の議席を持つ州議会や州庁には、武装部隊がビル内部の知事室前に陣取るなどした。クーデターの全米予行演習だ。
 10月8日には極右民兵組織のミシガン州知事誘拐計画をFBI(連邦捜査局)が摘発し、13人を逮捕。他の州での計画も発覚した。17日にはトランプ自身が「知事を監獄に入れろ!」と同州で演説している。
 トランプは、米史上最大かつ最長といわれる現在の労働者人民の闘いに恐怖し、それをクーデター策動の中で圧殺しようとしているのだ。

虐殺のりこえて進む闘い

 5月25日のジョージ・フロイド氏虐殺への弾劾から始まった闘いは、60年代の「長い暑い夏」と呼ばれた闘争をはるかに上回る規模と持続性を持ち、米史上最大の3500万人が参加したといわれる。それは資本主義体制を全面的に問い返す闘いになっている。
 黒人虐殺に対する長年の闘いが、2013年に「#Black Lives Matter」(ブラック・ライブズ・マター)のハッシュタグとともに発展し、ついに今年、爆発的に拡大した。BLM運動は、多くの場所で労働組合運動と協力している。活動家が労働組合員と重なっていることも多い。例えば、1930年代以来「差別はボス(資本家)の道具」をスローガンに闘ってきたILWU(国際港湾倉庫労組)は組合としてBLM運動を推進してきた。UTLA(ロサンゼルス統一教組)のセシリー・マイアトクルス委員長は、以前からロサンゼルス地域のBLM運動のリーダーだった。
 2017年8月、「プラウド・プレヤー」と名乗る白人至上主義者でトランプ支持者のグループが全米動員でサンフランシスコ湾岸地域に登場しようとした時、職場支配権を持つILWUローカル10(第10支部)は、極右集会予定日の労働停止を決定し、集会阻止のために組合員を全力で動員した。この労働組合としての団結を求心力にして地域の多くの団体・個人が集まった。極右勢力はこの組織力に恐れをなし、予定を中止せざるをえなくなった。今年の闘いの爆発的拡大は、こうした闘いの積み重ねの上にかちとられた。
 同じILWUの拠点、オレゴン州ポートランドでも17年以来、「プラウド・プレヤー」「プラウド・ボイズ」などの白人至上主義者の全米動員と対決し、デモ参加者や支持者に対する虐殺を乗り越えて闘いが続いている。今年は、さらに巨大な規模で警察の黒人虐殺弾劾闘争が拡大し、それに対しトランプが国土安全保障省の部隊を使って大弾圧を加えてきた。この部隊は、移民労働者を襲撃・虐待してきた排外主義まみれの凶悪な連中だ。しかし、17年以来の激突で鍛えられたポートランドの人民は、「数の力」と「戦闘に習熟した部隊」によって打ち返した。特に「母の壁」を作った女性たちと「退役兵の壁」を作った反戦帰還兵団体の力が大きい。反戦運動が現在の階級闘争の決定的な柱になっているのだ。
 アメリカでは労働運動も黒人解放運動も19世紀以来、武装自衛の歴史を持っている。今それがよみがえり、国家権力と白人至上主義者たちから運動と組織を守っている。
 トランプは、このような労働組合を軸にした闘いに恐怖し、クーデターを使ってでも暴力的に破壊しようとしているのだ。

医療、教育、郵便でも決起

 現在、コロナとの闘いの最前線に立つ医療労働者のストライキが各地で行われている。9月12日からのイリノイ大学シカゴ校医療センターの1週間スト、アラメダ郡(カリフォルニア州オークランドなど)医療当局下の諸病院、同州のカイザー病院、ニューヨーク市の諸病院など枚挙にいとまがない。新自由主義によって破壊されてきた公立病院制度の中から新たな組織化運動が起こり、大ストライキに結実している。
 オバマ政権による新自由主義的な学校民営化と対決してきた教育労働者も現在、最先頭で闘っている。学校から大量の感染者が出ている状態で開校を急がせる当局に対し、UTLA、シカゴ教組の職場丸ごと決起を先頭に各地で反対の闘いが続いている。数十年来、当局に屈服してきた既成執行部を持つニューヨーク市教組も、組合員の闘いの圧力によってストを通告し、当局は開校延期を発表せざるをえなくなった。
 8月23日のジェイコブ・ブレイク氏に対する警官の銃撃に対しては、NBA(米プロバスケットボール協会)、WNBA(米女子プロバスケットボール協会)の試合ボイコット、ストを先頭に全米アスリートのストに発展する勢いを見せた。オバマ前大統領の介入などで直前に中止されたが、組織化の勢いは止まっていない。大坂なおみ選手も大きな役割を果たした。
 トランプは得票を有利にするため、露骨に郵便投票を破壊している。郵便局を統廃合し、高速区分機の廃棄を進めている。街頭のポストも大量に撤去した。だが、郵便労働者は郵政民営化を長年阻止してきた実績を持っている。さまざまな局で、自動区分機の搬出阻止闘争が行われている。メーン州では、分解されて搬出される寸前になっていた高速区分機を労働者が奪取し、再び機械を組み立てた。ポートランドの諸労組は、郵便労組の8・25全米行動の呼びかけに応え、市内50カ所以上で郵便破壊弾劾闘争を行った。
 大統領選を前に全米を揺るがしているのは、ブルジョア2大政党間の争いではなく、職場と街頭で労働者人民自身が闘っている階級闘争である。この闘いの中にこそ労働者民衆の生きる未来がある。
(村上和幸)

このエントリーをはてなブックマークに追加