焦点 非正規職格差裁判 法文も無視し最高裁が反動判決

週刊『前進』04頁(3167号03面02)(2020/10/26)


焦点
 非正規職格差裁判
 法文も無視し最高裁が反動判決


 非正規労働者が労働契約法20条(現在はパートタイム・有期雇用労働法8条)に基づき、正社員との賃金や労働条件の格差是正を求めた裁判で、最高裁は10月13日と15日、三つの判決を出した。
■まともな理由のない判決
 13日に出されたのは、大阪医科大学(現在の大阪医科薬科大学)の非正規の女性労働者が賞与の支払いを求めた件と、東京メトロの駅売店(メトロコマース)の非正規の女性労働者が退職金の支払いを求めた件だ。大阪医科大の件について、最高裁は「正職員は試薬の管理などに携わり、アルバイトとは業務内容に違いがあった」として、非正規職への賞与不払いを是認した。しかし、正職員が試薬を管理していたことは、それに応じた手当を正職員に支払う理由にはなっても、非正規職に賞与を支給しない理由にはならない。およそ理屈の通らない判決で、最高裁は非正規職の権利を否定した。メトロコマースの件では、正社員とほとんど同じ業務に10年近くも携わった女性労働者への退職金の不支給を是認した。
 パートタイム・有期雇用労働法8条は「(非正規職と正規職との間で)基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて......不合理と認められる相違を設けてはならない」と定めている。最高裁はこの法文をあからさまに無視した。
■資本の意思を絶対化
 そこにあるのは「法の支配」ですらない。最高裁は「非正規労働者の待遇はこの程度でいい」という資本の意思を絶対化し、その専制支配を認めたのだ。
 当然、この判決には労働法の観点はまったくない。労働基準法は同法に定める基準以下の労働条件を無効にし、労働組合法は個別の労働契約より労資間の労働協約が優先すると定める。パートタイム・有期雇用労働法8条も、実際にはその適用を阻む様々な制限が意図的につけられているとはいえ、正規職と非正規職の賃金・労働条件に不合理な格差があれば、それを是正するとした規定だ。
 だが最高裁は、法律に基づき賃金や労働条件を是正することを否定した。個々の労働契約を至上のものとし、労働法を葬り去った。
■正社員をなくす攻撃が本格化
 他方、郵政の非正規労働者の訴えに対して15日に出された最高裁判決は、扶養手当、年末年始勤務手当、祝日給の支給を認め、病気休暇、夏期・冬期休暇のない処遇は不合理な格差だと断じた。郵政職場はすでに非正規職労働者が6割を占める。露骨な格差に対する郵政非正規労働者の反乱を、国家権力は明らかに恐れている。
 だが、経団連をはじめとする資本家たちは、この判決も逆手にとって、全労働者を非正規職にする攻撃に踏み込んできた。彼らは「正社員の特権はもう維持できない」とけたたましく叫ぶ。だが、労働者の生活を維持するに必要な一時金のどこが特権なのか。
 2007年に成立した労働契約法には、「正規職と非正規職の均等待遇」を名目にして、正規職の賃金・労働条件を非正規職並みに切り下げるという意図が初めから込められていた。その攻撃がついに本格的に始まったのだ。
 全日空や旅行業大手のHIS、JTBは一時金をゼロにした。コロナに便乗した大幅賃下げだ。正社員でも一時金がないことを当たり前にしようとしているのだ。
 労働者が団結を取り戻し、実力で資本と対決する以外に、大幅賃下げを食い止める道はない。そうした闘う労働組合を再生する場が、11・1労働者集会だ。

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