労働者の歴史的反撃が始まった 米大統領選が示したもの コロナ下で労働運動の新たな力 青年先頭にトランプ打倒へ決起 革共同に冬期大カンパを

週刊『前進』04頁(3171号01面01)(2020/11/23)


労働者の歴史的反撃が始まった
 米大統領選が示したもの
 コロナ下で労働運動の新たな力
 青年先頭にトランプ打倒へ決起
 革共同に冬期大カンパを

(写真 1週間のストライキに突入し、プラカードを掲げてデモするイリノイ大学シカゴ校医療センターの労働者たち【9月12日 シカゴ】)


 アメリカ労働者人民は、大統領選挙でトランプを打倒する勝利をかちとった(前号既報)。この勝利を実現した力は、青年層を先頭とする米労働者階級人民の新自由主義に対する根源的な怒りだ。そしてその基礎には、2018~19年の全米教育ストに端を発する労働組合の闘いがある。冬に向かってさらに激化するコロナ危機下で、ILWU(国際港湾倉庫労組)やUTLA(ロサンゼルス統一教組)、さらに全米の医療労働者を先頭とする実力行動が不屈に闘われ、地域丸ごとの団結が生まれている。何よりも求められているのは、アメリカにおける労働者階級自身の党の建設である。勝負はこれからだ。なおも権力の座にしがみつこうとするトランプを引きずり下ろし、民主党・バイデンと対決してアメリカ帝国主義・新自由主義打倒へ闘う米労働者階級と固く連帯して進もう。

階級対立が極限的に激化

 新型コロナは、アメリカにおいて最も激烈に、新自由主義がもたらした社会の崩壊をあぶりだし、階級的矛盾・対立を極限的なものにした。二十数万人もの労働者人民の命がコロナで奪われ、貧困と失業による打撃を集中的に受けている黒人たちが警察権力によって「日常的に」殺されていく。この現実への激しい怒りが、青年層を先頭にしたBLM(ブラック・ライブズ・マター)運動として爆発し、アメリカにおける階級的労働運動の新たな潮流を呼び起こし始めている。
 今回の大統領選挙は、こうした現実に対する労働者人民の総決起として闘われた。前回の選挙との最大の違いは、アメリカ労働者人民がこの間担ってきた闘いの蓄積にある。18年にウェストバージニア州から始まった全米教育ストライキ、全米―全世界で労働者階級が立ち上がり「世界史的反乱の年」となった19年の闘い、そしてアメリカ史上最大の運動として現在も発展するBLM運動の上に、今回の勝利があるのだ。
 全米総得票数は、11月16日現在、バイデンが約7860万票、トランプが約7310万票で、08年大統領選でオバマが得た約6950万票をはるかに上回る。民主党が圧倒的に有利なカリフォルニア州などで開票が続いているため、最終的には700万票差にもなるといわれる。
 これら一票一票が、労働者人民の意識的な決起によって闘いとられたものだ。今回、トランプ政権は郵便投票を妨害し、共和党州政は投票所を削減した。とりわけ黒人やラティーノなど有色人種の住民が多い地域で意識的な削減が行われた。期日前投票でさえ、遠くまで出かけて何時間も行列に並ばなければならない。ダブルジョブ・トリプルジョブで疲れ果てた労働者や求職に必死の失業者も多いなか、多くの人々がトランプをたたき落とすために多大な労力と時間を費やして投票したのだ。

バイデンとの激突は必至

 米労働者人民の怒りは、決して「共和党か民主党か」という二大政党制の枠組みにとどまるものではない。とりわけ、この数カ月間で1千万人規模の大衆の階級意識が大きく変化した。労働者階級は、バイデンが資本家の代表であることを見透かしている。コロナ感染者が急増するなかで教育労働者や医療労働者などへの大量解雇攻撃が始まり、格差はますます拡大している。バイデンのもとでも、生きられない現状は何一つ変わらない。来年1月の政権移行を待たずに、命と生活をかけた労働者の闘いが必ず巻き起こる。
 とりわけ、労働者階級の怒りが社会保障をめぐって爆発していくことは必至だ。バイデンは8月民主党大会での大統領候補指名受諾演説で、メディケア(65歳以上に適用される公的保険制度)を全年齢に適用し、国民皆保険を導入するという「メディケア・フォー・オール」を2度にわたって否定した。コロナ下で医療崩壊に直面する労働者人民の要求をはねつけ、医療を食い物にする保険会社(金融資本)の要求を通したのだ。一方で、7月には7410億㌦という空前の軍事予算を民主党主導の下院で可決している。
 また、副大統領に就任するカマラ・ハリスはサンフランシスコ地区検事長、カリフォルニア州司法長官を歴任し、労働者人民の弾圧を担ってきた。BLM運動のなかで、バイデン政権と労働者階級との非和解性はいっそう鮮明になる。

労組活動の経験を生かす

 今回の選挙では、トランプによる露骨な投票妨害に怒る人々が広範な統一戦線的運動によって結びついた。そこで存分に発揮されたのが、労働組合運動とBLM運動を通じて得た経験だ。とりわけ、2010年代のランク&ファイル(現場労働者)派による教組執行部奪取、18~19年の教育労働者の大ストライキの基礎となった「組織化型労働運動」で培われた経験が、各地で大きな力となった。 コロナの影響で戸別訪問が難しくなるなか、一部の運動員だけでなく一人一人の労働者が投票依頼をする主体となり、組織者を組織した。討論に基づき、各自が創意工夫をこらして選挙運動を展開した。
 また、黒人だけでなく白人、ラティーノ、アジア系などあらゆる人々が参加する闘いとしてBLM運動が発展するなかで、5月から運動を組織したBLMの創始メンバーたちがつくった「BLMグローバルネットワーク」による投票呼びかけが、とりわけ青年層に大きな影響を与えた。
 こうした選挙運動を通じて労働者人民の結束が深まり、自らがもつ力への確信が生み出されたのだ。

労働者階級の党の建設へ

 トランプは許しがたいことに、3月ごろから「選挙で負けたら不正選挙のせいだ」とし、絶対に政権移行を拒否する態度を明らかにしていた。郵便制度破壊を強行し、自動小銃などで重武装させた極右勢力に全米一斉州庁占拠の予行演習をさせた。州、市町村警察の警察官組合は早くからトランプ支持を表明し、選挙集会に大結集した。
 しかし、これに対して全米で労働者の反撃が始まっている。その多くが、この間不屈に職場闘争を継続し、BLM運動を積極的に担ってきた労働者たちだ。トランプの恫喝は体制内労組も含めて労働者階級を結束させ、闘いを新たな段階へと押し上げている。
 10月8日、ニューヨーク州ローチェスターの労組評議会(AFL―CIO〔米労働総同盟・産別会議〕の地域組織)は、「全米のAFL―CIO及び加盟労組、加盟労働者組織に全労働者によるゼネラルストライキの遂行を準備するよう呼びかける」決議を上げた。同労組評議会の議長は、UAW(全米自動車労組)による去年のGMの長期スト後の裏切り妥結に圧倒的多数で反対したUAWローカル1097の委員長でもある。この支部が先頭に立ち、全労組が反対できない大義をもって地域すべての労働組合員の戦闘的団結をつくりだし、全米での決起を呼びかけたのだ。
 さらにシアトル教組は、選挙への不当な介入があった場合は組合員投票をして「職場行動」(政治ストは違法なので、各組合次元では遠回しに表現している)を起こす決議を上げた。それを受けてシアトル労組評議会もゼネスト組織化の討議を開始する決議を上げた。ラストベルトの中心であるデトロイトのAPWU(アメリカ郵便労組)も「クーデターに抵抗する」指令を全組合員に出した。
 この闘いは、ブルジョアジーによる二大政党制を乗り越え、労働者階級自身の力で社会を根底から変革する、まったく新たな挑戦として前進している。その主軸を担う階級的労働運動の求心力がかつてなく高まり、青年をひきつける闘いとして発展している。ここからさらに、米労働者階級自身の党をつくりだすことが真の勝利の道だ。
 日本でも構図はまったく同じだ。階級的な労働組合が力ある存在として前面に登場したとき、必ず歴史を動かす闘いを巻き起こすことができる。米労働者人民とともに菅政権を打倒し、世界革命へ!

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