世界戦争へNATO新戦略概念 「核同盟」への参加明言した日帝 加速する大国間の核軍拡

週刊『前進』04頁(3253号02面03)(2022/07/18)


世界戦争へNATO新戦略概念
 「核同盟」への参加明言した日帝
 加速する大国間の核軍拡

日本が最前線基地

 6月末の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に日本を筆頭にアジア太平洋4カ国(日韓豪ニュージーランド=AP4)が参加した。このことによってNATOは名称通りの「北大西洋条約機構」からアジア太平洋をもカバーする世界的規模の軍事同盟に性格を一変させた。この拡大NATOに日本が入っていることは決定的だ。NATO+AP4の一方の要は日米安保同盟であり、日本帝国主義である。迫り来る中国侵略戦争の最前線基地となるのは日本―沖縄だからだ。米帝は日帝を最大限に動員する以外に中国との大戦争を行えない。しかし、肝心の日帝は帝国主義の最弱の環であり、戦争国家になれていない。逆に日本階級闘争は巨大な反戦闘争の可能性を秘めている。日本の階級闘争こそが世界戦争、核戦争を阻止する国際階級闘争の鍵を握っている。
 拡大NATO―日米同盟として米帝とともに中国侵略戦争に向かう日帝・岸田政権を日本の労働者人民自身の闘いで打倒しよう。その最大の突破口は8・6広島—8・9長崎反戦反核闘争だ。

即応部隊30万人に

 NATO首脳会議は、NATOをアジア太平洋地域と結びつけ、拡大すると同時に、欧州に展開するNATO即応部隊を4万人規模から30万人規模に増強することで合意した。NATOのストルテンベルグ事務総長は、重火器をNATO加盟国の国境付近に配備し、兵力を迅速に移動させて使用できるようにすると、即応部隊の新たな戦略を説明した。
 この実戦的合意のうえに新たに「戦略概念2022」が採択された。その内容は四つの特徴を持っている。
 一つ目は、 NATOの北大西洋地域からインド太平洋地域を含む全世界への拡大を確認していることだ。「インド・太平洋は、この地域の動向が直接に欧州・大西洋の安全保障に影響するのであるから、NATOにとって重要である」と述べている。欧州・大西洋地域とインド・太平洋地域を結びつけてとらえる考え方は、米帝バイデン政権の安全保障戦略の核心だ。米帝は、全NATO諸国とAP4の拡大NATOなど世界を巻き込んで当面する脅威・ロシアとの戦争を進め、さらに最大の難敵・中国との戦争に向かっている。

露を敵国にし非難

 二つ目は、ロシアを「現実の最大の脅威」と明記したことである。ロシアのウクライナ侵攻をもってNATOは公式にロシアとの関係を見直した。ロシアが参加した2010年のNATO首脳会議で採択された戦略概念は、ロシアを「地域の安定のために協力するパートナー(相手)」としていた。しかしプーチンがロシアとNATOとの合意に反するとして激しく非難したミサイル防衛システムの東欧への配備を進めると明記していた。
 それを超えて今回の新戦略概念は、ロシアを「脅威」とし、ウクライナ侵略戦争を始めたロシアを強く非難している。その敵国ロシアを軍事的に包囲し、またウクライナ戦争の「欧州大戦」化に備えたのが、フィンランドやスウェーデンの新たな加盟と即応部隊30万人大増強である。

中国侵略戦争狙う

 三つ目に、戦略概念としては初めて中国に言及した。該当箇所の分量も多い。
 「中国が宣言している、野心的で強要的な諸政策は、われわれの利益、安全保障、及び価値観に挑戦するものである」
 「中国は、鍵となる技術部門、産業部門や決定的なインフラ、戦略物資やサプライチェーン(供給網)を支配しようとしている。中国は、その経済的なテコを使って戦略的な依存をつくりだし、その影響力を強化しようとしている」
 バイデン政権はこの間、中国を「最大の競争相手」と規定し、中国に打ち勝つことを「地政学上の最大の試練」としてきた。この難敵に米帝単独で立ち向かうことはできないため、中国問題を拡大NATOの中心課題に据えたのである。
 そのうえで中ロの提携関係を打ち砕くことを重要課題としてしている。
 「中華人民共和国とロシア連邦の戦略的パートナーシップの深化と、ルールに基づいた国際秩序を妨害しようという試みを彼らが相互に強化していることは、われわれの価値観と利益に反するものである」
 ウクライナ戦争過程でロシアとの関係を強める中国は、米帝にとってますます難敵であり、米帝はあらゆる同盟国・友好国を総動員して中国侵略戦争に向かおうとしている。

先制核使用を想定

 四つ目は、核兵器、核武装を強調していることだ。ロシアがウクライナ戦争で核使用をちらつかせているが、米帝・NATOこそ先制的に核戦争をしかけようとしているのだ。
 新戦略概念の序文は「核兵器が存在する限り、NATOは核同盟でありつづける。……われわれは核兵器なき世界のための安全保障環境をつくりだすことを追求する」
 これは09年のオバマ米大統領(当時)のプラハ演説とほぼ同じ表現である。
 さらに新戦略概念は述べている。
 「核武装して同等なライバル(中ロ)に対しては、われわれは高強度・多領域戦争遂行をはじめとして、抑止と防御に必要なあらゆる範囲の戦力、能力、計画、資源、インフラを個別的・集団的に提供する」
 「同盟の戦略核戦力、特に米国の戦略核戦力は、同盟の安全の最高の保障である。英、仏の独自の核戦力は、それ自体の抑止の役割を有しており、同盟全体の安全保障に大きく貢献している。……NATOの核抑止態勢も、欧州に前方配置された米国の核兵器と当該同盟国の貢献に依存している」
 米帝と同盟国(準同盟国)の通常戦力が危機になればなるほど、核戦力使用への衝動が高まる。米統合参謀本部の「核戦争」は、小型核を投下した後で、陸上部隊が侵攻するシナリオを描いている。米帝・NATOこそ最大の核戦争態勢を築き、先制的な核戦争を想定し準備している最凶悪の核同盟なのである。
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