パンフ「近代の部落差別 と水平社の闘い」を読んで 全学連 戸川健二

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週刊『前進』04頁(3266号04面02)(2022/10/24)


パンフ「近代の部落差別
 と水平社の闘い」を読んで
 全学連 戸川健二

(写真 編集・発行/全国水平同盟杉並支部 東京都杉並区久我山1―8―9―111、頒価300円)

 全国水平同盟杉並支部から水平社創立100周年を記念してパンフレット「近代の部落差別と水平社の闘い」が再刊されました。2014年の解放講座で柏木俊秋さんが行った講演レジュメをもとにした本パンフは、岸田政権が戦時下に狭山再審棄却策動を強める情勢の中で、今日的意義をますます大きくしています。
 著者は前半部で、近代以降の部落差別が資本主義の産物であることを徹底的に明らかにしながら「封建遺制」論の誤りを指摘します。西欧に遅れて登場した日本資本主義・帝国主義は、急速な近代的中央集権国家建設の矛盾を天皇制による強権的、暴力的支配で突破しようとしました。この過程で封建的身分制度の解体の上に形成されたのが近代の部落差別です。日帝は、慢性的過剰人口の最下層に突き落とされた被差別部落民が一般民と階級的に団結することを何よりも恐れ、その分断に全力を注いだのです。
 後半部では、スターリン主義の思想的・路線的誤りの断罪に力点を置いて水平社運動を総括しています。「水平社解消論」をめぐる混迷と挙国一致体制への敗北は、日本共産党スターリン主義の破産と屈服そのものでした。二段階革命論を路線化したことで悪名高いコミンテルン32年テーゼは、水平社運動とプロレタリア革命を切断する反動的役割を果たしました。「封建的身分制度を内包した遅れた資本主義」なる日本資本主義の規定は、「身分闘争か階級闘争か」という硬直した捉え方と闘いの分断を生み出しました。解放運動の路線的総括において最大の焦点となるのは、やはり「封建遺制」論批判です。本パンフは一方で、戦前の日本階級闘争を最深部で支えた水平社運動を生き生きと描き出し、その「挫折」を乗り越えて、新自由主義と対決する解放運動を発展させようと訴えます。
 「人の世に熱あれ、人間に光あれ」——水平社宣言は、部落民自身が自己解放的に闘う主体であることを宣言した、階級的団結を求める叫びです。今日的にこの立場を受け継いで闘うということは、部落差別の核心が階級分断であるとはっきりさせることにほかなりません。狭山闘争は差別・分断を打ち破る最前線の闘いです。10・31狭山行動を、戦時下の差別・排外主義の強化を粉砕する闘いとして勝ち取ろう!
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