異次元の少子化対策 戦時の「産めよ殖やせよ」政策

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週刊『前進』04頁(3282号03面03)(2023/02/20)


異次元の少子化対策
 戦時の「産めよ殖やせよ」政策


 岸田文雄首相は施政方針演説で「急速に進展する少子化により……わが国は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際」だとして「出生率を反転させる」「次元の異なる少子化対策」を打ち出した。

全世代に高負担強いる

 防衛力の抜本的強化のための財源確保は「今を生きる国民の責任」(=義務)だと述べた岸田は、演説でも「こども・子育て政策」は「すべての世代、国民皆にかかわる課題」であり「みんなが支えあう」ことを求めた。「国家の危機」を叫び全世代に今まで以上の高負担を強いる宣言だ。
 大軍拡と一体の少子化対策予算をめぐり「負担増は避けられない」「岸田政権の本気度が問われる」という主張がされている。しかしそうした「財源論・政策論」自体がわなでありペテンだ。
 その結論は税・社会保険料と医療・介護負担の増額、年金・社会保障給付の削減とセットである。資本主義が行き着いた、子どもを産み育てることもできない労働者の超低賃金・貧困の現実の上に、岸田の言う「円滑な労働移動」=解雇自由、「職務給の確立」=評価制度による労働者分断・賃金引き下げと一体で、社会全体の貧窮と生活破壊は一層進む。

結婚と出産を迫る国策

 しかしそれだけではない。異次元の少子化対策とは、戦時下の国家・資本の労働力・兵力確保のために「結婚・出産・子育て」を労働者に迫る国家政策への転換だ。
 2月6日、岸田は自民党役員会で「支援の範囲や金額を変えるにとどまらず、子育てに関する社会の意識変革を目指すことが、次元が異なるこども・子育て政策だ」と力説。資本主義の根本問題を「国民の責任」にすり替える「社会の意識変革」を強く求めた。中国侵略戦争が全面化した1939年9月、厚生省(当時)が「産めよ殖やせよ、国のため」とうたい、国を挙げて社会を覆う大宣伝を行った「富国強兵」の「戦時期人口政策」とうり二つだ。
 性的少数者は「子どもを作らない、『生産性』がない」などと主張し差別暴言を繰り返した総務政務官・杉田水脈は激しい弾劾の中で辞任に追い込まれた。しかし自民党副総裁・麻生太郎は1月15日、「少子化の最大の原因は女性の晩婚化」と放言し、首相秘書官・荒井勝喜が性的少数者への差別発言で更迭された2月4日に先立ち、岸田自身が、同性婚法制化は「家族観や価値観、社会が変わってしまう」と答弁していた。社会の意識変革とは、国家が個人の生き方に介入し、結婚・出産・子育てを迫る戦時型国家・社会への転換であることは明白だ。

怒りの爆発は不可避だ

 2月5日付東京新聞は「少子化は『問題』か」と題して、30代の女性記者の意見を掲載。「子育てが賛美され……選択肢の一つであるはずの子育てをさせようとするこの圧」を問題にし、「子どもの有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく生きられる社会……社会保障の制度設計はそこから考えるべき」であり「国は、いつまで一方的に決めた家族像を押しつけるのだろう」と述べている。
 「少子化対策」の破産は必至だ。岸田の戦争と生活破壊、強負担と新たな「産めよ殖やせよ」政策への転換に対する怒りの爆発は不可避である。帝国主義戦争を内乱へ! 大軍拡・戦争国会粉砕へ闘い、4月統一地方選決戦に勝利しよう。
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