廃線と軍事輸送進めるJR デジタル化掲げ戦時体制づくり

週刊『前進』04頁(3329号02面02)(2024/01/29)


廃線と軍事輸送進めるJR
 デジタル化掲げ戦時体制づくり


 動労千葉はJRの3月ダイヤ改定阻止―24春闘勝利へ、ストライキを構えて闘おうとしている。2・11国鉄集会に結集し、ストライキを復権させて反戦春闘に立ち上がろう。

一切を戦争に集中

 国土交通省は1月12日、芸備線の廃線に向けてJR西日本と地元自治体で構成する「再構築協議会」の設置を正式に決定した。JR東日本も久留里線の廃止を全面的な廃線の突破口にしようとたくらんでいる。
 かつてなく強まったローカル線廃止の攻撃は、中国侵略戦争に向けた国家改造の一環だ。この攻撃は22年12月の安保3文書の閣議決定を機に本格的に始まった。岸田政権は5年で43兆円の大軍拡に踏み込むとともに、軍事をすべてに優先させる社会への再編に乗り出した。岸田はまた、14空港・24港湾を「特定重要拠点空港・港湾」に指定して整備し、平時から自衛隊が利用して、有事に備える計画を具体化しつつある。
 廃線化は、これと表裏一体の関係にある。地域住民にとって必要なものでも、戦争に役立たなければ切り捨てる。他方、赤字路線でも軍事利用できるものはなくさない。例えばJR東日本の羽越本線は年間88億円の赤字を抱えるが、東北本線が使えない場合は軍事輸送のルートになるから、廃止の対象にされていない。
 動労千葉は22年6月、新・戦争協力拒否宣言を発した。戦争協力拒否はどの産別でも重大な決戦のテーマになっている。軍事輸送による延命を狙うJRと全面対決する闘いに、動労千葉は立とうとしている。

相次ぐバスの廃止

 国交省とJRは、住民と自治体に廃線を押し付けようと躍起になっている。だが、鉄道をなくしてバスに転換すればいいという話は通らない。バスの運行も成り立たないほどの深刻な地域の崩壊が、各地で明らかになっている。昨秋、大阪市近郊の富田林市で、バス運行会社の金剛自動車が全路線を廃止すると発表したことは衝撃を与えた。札幌市では北海道中央バスが路線の一部を廃止し、長野市では長電バスが日曜日の運行を取りやめた。いずれも運転手を確保できないことが運行廃止の理由だ。運輸業は賃金が安く、若年退職が続いて労働者は高齢化している。連合が一切の闘いを放棄し、日本の労働者は30年以上も賃下げを強いられ続けた。それが運転手不足による公共交通の崩壊をもたらしたのだ。

国交省が攻撃主導

 それでも廃線を強行するために、国交省は昨年9月に「地域の公共交通リ・デザイン(再構築)実現会議」を発足させた。メンバーはJR東日本会長の冨田哲郎や日本郵政社長の増田寛也らだ。同会議は、病院や介護施設への患者・利用者の送迎やスクールバスによる通学を一般の交通利用と統合し、需要がある時だけ運行するオンデマンド交通の形にすれば、輸送は効率化されて運転手不足は解消できるという。こうした交通の縮小再編の先にあるのは、すでに大幅に廃止・統合されている病院や学校の消滅だ。地域を切り捨てる側のJRは、廃線後の事態に何の責任も取らない。
 これは同会議が「デジタル田園都市国家構想実現会議」の下部に位置付けられていることの必然的な結果だ。「デジタル田園都市国家構想」は、オンライン診療やオンライン教育による病院や学校の徹底した縮減を唱えてきた。同構想はまた、地域を成立させる最低の単位は人口10万人だとして、「コンパクトシティ化」の名のもと、いわゆる「限界集落」から人々を意識的に撤退させる政策を進めてきた。
 能登半島地震の被災地では、それが全面的に行われようとしている。交通が遮断され集落が孤立する中、救いの手も差し伸べられず多くの命が奪われたことはまさに人災だ。地震で通信も途絶した。デジタル化で人口減少や地方の衰退を乗り切れるというのは絵空事だった。住み慣れた地域を離れて2次避難せざるを得ないのは、災害に対応できる地域の機能が新自由主義によってすでに奪われていたからだ。
 戦争国家への改造にとって必要な内政面での転換を、岸田は「デジタル田園都市国家構想」として押し出してきた。デジタル化の狙いは、マイナンバーカードが典型的に示すように、人民の戦争動員であり、反戦闘争圧殺のための人民監視だ。同構想はまた、労働力を再生産できなくなった資本主義の末期的な危機をデジタル化・AI化で突破するという、極限的な新自由主義の攻撃だ。
 JRはこの構想に基づいて廃線化と業務融合化の攻撃をかけている。これにストライキを構えて立ち向かう動労千葉の闘いは、戦時国家改造を粉砕し、戦争を阻止する重大な決戦だ。
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