進む安保・軍事政策の大転換 戦闘機輸出を解禁自衛隊の権限強化

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週刊『前進』04頁(3339号03面01)(2024/04/08)


進む安保・軍事政策の大転換
 戦闘機輸出を解禁自衛隊の権限強化


 3月26日、岸田政権は国家安全保障会議(NSC)で防衛装備移転三原則の運用指針を改定、イギリス・イタリアと共同開発する次期戦闘機の第三国への輸出の解禁を閣議決定した。これを受け、「ある防衛相経験者」は「これで日本から戦闘機が輸出できる。防弾チョッキとかではなく、戦闘機だよ。本当によかった」と興奮を抑えきれない様子で語った、などと報じられている(3月27日付朝日新聞)。この輸出解禁が示す事態は、中国侵略戦争に向かっての戦後日本の安保・軍事政策の歴史的大転換である。

最新鋭の殺傷兵器を開発

 今回輸出が可能とされた戦闘機は、日本の三菱重工業、英BAEシステムズ、伊レオナルドという名うての軍事企業を中心として共同開発し、2035年までに配備を目指す「第6世代戦闘機」と呼ばれる最新鋭機である。第6世代戦闘機は近年のミサイルなど長距離兵器の発展を踏まえ、それに対抗する高度なステルス性、センサー機能、長距離兵器の搭載など重武装、長い航続距離を特徴としていて、そのコンセプトは後方の敵基地や道路・港湾などのインフラ破壊を目的とする爆撃機に近い。従来のような、「領空を侵犯してくる戦闘機と機関砲などで戦う」といった任務はほぼ想定されない、まさしく攻撃用の兵器だ。さらには最新のドローン技術を取り入れ、様々な機能を持った無人機を搭載してネットワークでつなぎ「子機」として使うことで、敵の迎撃をかいくぐって任務を果たすという代物なのである。
 岸田は武器輸出の「歯止め」として「『三つの限定』と『二重の閣議決定』という厳格な決定プロセスを経る」と強調している。「三つの限定」とは、①解禁対象は今回の次期戦闘機のみ②輸出先は「防衛装備品・技術移転協定」などを結んでいる「パートナー国」③現在戦闘が行われている国には輸出しない、というものだ。だが、こんなものは何の歯止めにもならない。そもそも2014年に当時の安倍政権が武器輸出三原則を破棄して以来、日本帝国主義の武器輸出を実効的に「制約」する規定は何もなく、政府・与党の合意だけでいくらでも規制を緩和できるようになっており、いつでも都合よく変更できるものなのである。
 実際に岸田政権では防衛装備移転三原則の運用指針改定はこれで3回目だ。1度目はウクライナ戦争の開始を受けて22年3月に改定、防弾チョッキや戦闘車両に容易に転換できる高機動車のウクライナへの輸出を解禁した。2度目は昨年12月、ライセンス生産品(他国企業にライセンス料を払って国内で製造したもの)のライセンス元国への輸出を解禁し、地対空ミサイル「パトリオット」の米国への輸出を可能とした。米国が自国のパトリオットをウクライナに輸出し、日本産のパトリオットがその穴を埋める形だ。「パートナー国」への武器輸出とは現実には戦争当事国への軍事支援に直結するのだ。そして3度目となる今回の改定では、明白な「殺傷兵器」の輸出解禁に踏み込んだのだ。
 進行している事態は、中国侵略戦争への日帝の突進のプロセスにほかならない。公明党や野党のような「どこまでの武器なら、どの国なら輸出が許されるか」などという議論自体、日帝の手のひらの上なのである。

中国本土狙える航続距離を要求

 22年末に制定された国家安全保障戦略は、武器輸出を「我が国にとって望ましい安全保障環境の創出」のための「重要な政策的な手段」と位置づけている。
 また、今春闘で「満額回答」を打ち出した三菱重工業やIHIは次世代戦闘機の開発に参画している。「満額回答」(物価上昇にも届かない額!)と戦争動員は表裏一体なのだ。
 日帝はこれまで、単独で最新鋭の戦闘機をつくりあげようとしたものの、部品の9割以上を国産としたX2は実験機にとどまらざるを得なかった。技術力の低さと戦後憲法下での軍需産業基盤の弱さゆえに、中国侵略戦争に求められる水準の戦闘機の純国産化は断念を余儀なくされた。ゆえに22年12月、英伊を引き込んでの共同開発体制により次期戦闘機の製造を行う計画を発表したのだ。
 具体的な輸出先はまったく決まっていない。にもかかわらず輸出解禁を決めたのは、次期戦闘機に日帝が求める性能(特に中国本土を狙える航続距離の長さ)の要求を反映させるため、英伊が求める輸出拡大の要求をのまなければならなかったからだ。日帝の狙いはあくまでも中国侵略戦争の遂行にある。

米軍と自衛隊が連携強化

 4月10日に予定されている日米首脳会談での最大の焦点は、在日米軍と自衛隊の指揮統制の連携強化である。そのことは4月1日の参院決算委員会での岸田の「指揮統制の観点から日米間の連携強化は相互運用性と即応性を高めるためにも非常に重要な論点だ」という答弁からも明らかだ。
 安保3文書で明記された「陸海空自衛隊を束ねて作戦を行う常設の統合司令部」構想の実現として、2024年度末に自衛隊内に「統合作戦司令部」が創設されようとしている。これを見越して、日米首脳会談では在日米軍の指揮統制も見直し、強化する方向であることが明らかにされている。在日米軍の主力である横須賀基地(神奈川県)の第7艦隊や沖縄の米軍海兵隊の指揮権が、日本から約6千㌔メートルも離れたハワイの米インド太平洋軍にある現状では「台湾有事」に対応できないことは以前から明らかだった。中国侵略戦争への突入をリアルに見据えた体制強化が決定されようとしているのだ。
 ウクライナ戦争でも証明されたように、ミサイルや重火砲を撃ち合い、そのために敵軍の正確な座標の把握が重要となるのが現代戦だ。自衛隊は米軍の圧倒的な監視・偵察能力のもとで作戦を遂行するしかない。こうして、アメリカ帝国主義は遠征前進基地作戦(EABO)などの激しい作戦を自衛隊にも担わせ、自国の損害を減らしながら中国侵略戦争をやり抜こうとしているのである。また日帝は、「軍服を着た労働者」である自衛隊員や南西諸島の住民をはじめとした労働者人民にすさまじい犠牲を強いながら帝国主義としての飛躍をなそうとしている。何重にも腐った戦争が中国侵略戦争の実態なのである。
 また、そもそも自衛隊の「統合作戦司令部」の創設ということ自体、大問題だ。かつての戦争が天皇・軍部の強大な権限のもとで遂行されたことへの「反省」と称して、戦後の自衛隊は、少なくとも建前上は「文民統制」のもとに置かれた。「(政府・議会からの)統帥権の独立」を禁じられ、かつての大日本帝国陸軍における参謀本部、海軍における軍令部のような政府から完全に独立した機関をつくることはできなかった。「統合作戦司令部」とは、陸海空自衛隊全軍の指揮権を持つ組織の誕生であり、大日本帝国のような軍部の権限の肥大化へ道を開こうとするものだ。この創設自体が事実上の改憲攻撃なのである。このような組織が登場し、米軍と共に再び南西諸島を戦場とし、中国侵略戦争をやろうとしているのだ。
 絶対に許さず、4・9岸田訪米阻止闘争に立とう。
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