沖縄戦の美化を許すな 防衛相「牛島辞世は平和願う歌」
週刊『前進』04頁(3393号02面04)(2025/04/28)
沖縄戦の美化を許すな
防衛相「牛島辞世は平和願う歌」
中谷元・防衛相は4月18日、衆院安全保障委員会での答弁で、沖縄戦を指揮した旧日本軍第32軍の牛島満司令官の「辞世の句」について「先の大戦で犠牲になった方々に心から哀悼の意を表し、その教訓を生かしてこれからの平和をしっかり願う歌」との解釈を述べ、那覇駐屯地を拠点とする陸上自衛隊第15旅団が公式サイトで掲げていることを「適切」だと擁護した。
新たな戦争構え皇国史観を賛美
これは、日本帝国主義が中国侵略戦争に向かって沖縄戦と同じことを繰り返すという意思表示だ。断じて見過ごせない。沖縄戦は、中国・アジア侵略戦争の果てにアメリカ帝国主義との戦争で敗勢を重ねた日帝が、沖縄を「国体護持」のための捨て石として「長期持久」の凄惨(せいさん)な地上戦を強いたものである。沖縄県民の4人に1人が命を落とし、日本軍による住民虐殺や強制集団死、略奪は「軍隊は住民を守らない」ことを明らかにした。
牛島は「軍官民共生共死」を叫び住民を巻き込んで沖縄戦を展開した。1945年6月に追い詰められて自殺する直前、残存部隊に「最後まで敢闘し悠久の大義に生くべし」と命令し、降伏して捕虜になることすら禁じて戦闘を続けさせた張本人だ。その辞世の句は「秋を待たで枯れゆく島の青草は皇国(みくに)の春に甦(よみがえ)らなむ」というもので、玉砕して全員死に絶えても天皇の世は甦るという意味だ。降伏を禁じた命令と一体であることは明白である。
昨年6月、この牛島の辞世の句が陸自第15旅団の公式サイトに掲載されていることが暴露され大問題となった。第15旅団は10月に「サイトを見直す」として辞世の句が載ったページを閲覧停止にしたが、今年1月にサイトをリニューアルした際に再掲載したのだ。この再掲載強行を防衛相が開き直って擁護したのである。
中谷は3月末のヘグセス米国防長官との会談で、中国への対抗を念頭に、東中国海や南中国海、朝鮮半島を中心とした地域を一体の「戦域」としてとらえる「ワンシアター(一つの戦域)」構想を伝えていた。ヘグセスが「日本は西太平洋で最前線に立つことになるであろう」と言明している通り、日帝は中国侵略戦争の矢面に立とうとしている。牛島の歌を「適切」と言うのは現に新たな戦争を構えているからである。
「戦後80年」として、天皇の沖縄、広島、長崎の歴訪が、4月の硫黄島訪問を突破口に行われようとしている。中国侵略戦争を開始しようとしている中での天皇の歴訪計画は、まさに「慰霊」を掲げた新しい戦争のための攻撃にほかならない。膨大な数の住民・兵士の死を「皇国の春に甦らなむ」という皇国史観から賛美する中谷らと一体で、天皇が中国侵略戦争の表舞台に登場しようとしているのである。絶対に許すことはできない。
戦争翼賛勢力に転落した共産党
問題となった中谷の国会答弁は、日本共産党・赤嶺政賢衆院議員(沖縄選出)の質問によって引き出されたものだ。沖縄地元紙では翌日からトップで扱われ、社説でも取り上げられて中谷及び陸自第15旅団への沖縄の怒りが報道されている。ところが、当の質問をした共産党は機関紙「赤旗」紙上でこれについて1週間近く言及を避けた。共産党は2000年11月の党大会で「自衛隊を国民の安全のために活用する」と宣言して以来、一貫してその立場を繰り返し主張してきた。自衛隊が琉球弧で基地の建設・拡大を進め、それに対して宮古島や石垣島など現地住民の闘いが巻き起こるなか、22年4月の参院選に際しても当時の志位和夫委員長は「自衛隊を含めて、あらゆる手段を行使して国民の命と日本の主権を守り抜く」と強調したのだ。自衛隊擁護の戦争翼賛勢力に転落した共産党は、自衛隊の侵略軍隊化を見据えられず、争点にすることを避けているのだ。
日本共産党スターリン主義の屈服を乗り越え、沖縄戦を繰り返させないために、今こそ反戦闘争を爆発させよう!
