米価急騰は農民切り捨ての結果 減反続け農業破壊した 日帝農政の歴史的破産

週刊『前進』04頁(3398号02面02)(2025/06/02)


米価急騰は農民切り捨ての結果
 減反続け農業破壊した
 日帝農政の歴史的破産


 江藤拓農林水産相は5月18日の佐賀市での講演で、「私も米は買ったことはありません、正直言って。支援者の方々がたくさん下さるもので。まさに売るほどあります、私の家の食品庫には」と発言した。現にこの社会に、今日明日の食料に困窮する人々が無数にいる中で、「農政の総責任者」と称する地位にある江藤の発言はあまりにも無神経で恥知らずなものであり、米価格の高騰に苦しむ人民、米作りに励んできた農民の怒りに火をつけた。
 批判が集中すると江藤は「受け狙いだった」「宮崎弁的な言い方だ」と意味不明な言い訳を重ねた上に、21日に辞任に追い込まれた。後任の農水相は小泉進次郎となった。

価格急騰の原因は米の生産量の不足

 政府による「備蓄米放出」にもかかわらず、店頭での米の値段はおおむね5㌔4000円台半ばで高止まりしている。1年前の2000円前後から倍以上に跳ね上がったのだ。メディアや農水省は当初、「隠し持っているのは誰か」と犯人捜しに躍起になったが、見当外れだった。
 結局、生産される米の絶対量が足りていなかったのだ。この米不足は自民党農政が歴史的に招いたものであり、減反政策で農家を痛めつけ、水田を破壊し、農民の生産意欲まで奪ってきた結果である。
 農水省は、2024年産米の収穫量が前年比2・7%増の679万2千㌧と発表しているが、酷暑による品質低下もあり、一昨年から増大に転じていた米の需要を満たすには明らかに不足していた。現場の農業関係者の間では、その不足は顕著に感じられていた。そこで、農協とは別に数多くの卸売業者が農家から直接米を買い付けることに奔走する事態に至っていたのである。農協の集荷力の低下と相まって、店頭からはいったん米が消え、再び現れた時は消費者が驚く「高値」にまで瞬く間に上昇した。
 政府は「米の生産量は十分足りている」との建前を崩さず、備蓄米の放出にも当初から消極的であったが、放出しても価格は上がり続け、その無力ぶりに怒りの声が日に日に高まった。そうした窮地に追い詰められた状況の中で飛び出したのが、江藤の暴言だったのである。
 政府は国内での米消費量は年々10万㌧減少すると見込んで、ひたすら減反を農家に強いてきた。減反政策は名目上2018年に廃止されていたが、農水省は需要予測に基づく「生産量目安」を示したり、転作への補助金を出すなどで、事実上の減反を続けてきた。
 これは米農家に回復困難な打撃を与え続けた。農家の作る米は大手の小売り業者の主導によって年々買い取り価格を引き下げられ、機械や肥料・燃料などの高騰によって、「時給10円」と計算されるほどの苦境を農家に強いてきた。廃業する米農家は後を絶たず、採算度外視で作り続ける人々の多くが、「自分の代で主食の生産を途絶えさせない」との使命感で自分を支えているとも言われる。

小泉の随意契約策は戦時統制への道

 この事態は、労働者への賃金抑制の攻撃(およびその破産)と一体のものだ。「安い米、安い食料」が「安い賃金」を可能にしてきた。今回の事態は、そのような階級支配がもはや成り立たないことを明らかにしたのだ。帝国主義のもとでは、労働者・農民はもはや生きられない。
 しかし日本帝国主義は自らの歴史的破産すらもテコに、野党も巻き込んで「食料安保」を叫び、米価格に直接介入する戦時的な食料価格の統制にすら踏み出そうとしている。
 4月1日、食料供給困難事態対策法(食料有事法)が施行された。「大規模自然災害や戦争」の時、政府は農家に芋などの高カロリー作物への転作を「要請」することができ、そのための計画の提出を「指示」できる。計画を提出しなければ罰金だ。中国侵略戦争をにらんでの農民への戦争動員法であり、米価急騰に伴って進められている事態と一体である。小泉新農水相が打ち出した政府備蓄米の大手小売り業者への随意契約による販売も、食料品の価格や流通機構に対する戦時国家統制への移行をにらんだ動きにほかならない。
 三里塚闘争のように労働者と農民は今こそ固く連帯し、差し迫る中国侵略戦争に反対し、生きるために帝国主義打倒の革命的反乱に共に立ち上がる時だ。
このエントリーをはてなブックマークに追加