日本郵便運送許可取り消し 合理化と安全破壊進めた郵政民営化の最後的破綻
週刊『前進』04頁(3403号02面04)(2025/07/07)
日本郵便運送許可取り消し
合理化と安全破壊進めた郵政民営化の最後的破綻
日本郵便の運転手への「不適切点呼」(点呼業務不備)問題をめぐり、国土交通省関東運輸局は6月25日、同社に対し貨物自動車運送事業法に基づいて「一般貨物自動車運送事業許可」の取り消し処分を出した。郵政民営化に伴う合理化・安全破壊攻撃が、日本における郵政事業始まって以来の崩壊的事態を引き起こしたのだ。
3万5千人削減の大合理化を進める
この処分により、日本郵便は今後5年間、許可を再取得できず、集配拠点間の輸送を担う1㌧以上のトラックやバン約2500台が使えなくなる。軽バンなど約3万2千台は今回は処分対象外となっているが、国交省は軽バンの点呼についても立ち入り監査を続けており、今後「車両使用停止」処分が科されると見られている。この事態に際し、日本郵便は使えなくなる約2500台のうち約24%分の輸送を子会社に委託(そのうち9割以上を郵政グループ外に再委託)、その他約34%分をヤマト運輸や佐川急便など同業他社に委託、残り約42%分を自社の軽貨物車で代用するとしている。
起きていることは、2007年に強行された郵政民営化の最後的大破綻だ。
旧郵政省時代、郵便車両は「国民生活に必要な業務を円滑に進めるため」として「通行禁止除外指定車標章」を掲示して集配業務にあたり、シートベルトの装着義務は免除されていたが、郵政労働者は職場で団結して闘い、安全を守る取り組みを続けてきた。
しかし、そうした職場環境は郵政民営化攻撃の中で一変した。01年の「郵便事業新生ビジョン」で1万3千人、03年の「アクションプラン」で1万7千人、05年の「アクションプラン2」で1万人と、すさまじい要員削減が強行されてきた。この大合理化に伴って事故は増え、安全問題が深刻な職場課題となった。だが郵政当局は「民営化されないために」と称して現場の労働者に合理化への屈服を迫り、事故と隣り合わせの極限的業務を押しつけてきたのだ。
結局、郵政民営化は07年に強行されたが、その過程では実に4万人の人員削減が進められた。赤字のつけはすべて現場に押しつけられ、「JPビジョン2025」では3万5千人削減の大合理化が進められている。そして当局は、現場からの安全問題の指摘にも耳を貸さずおざなりにしてきた。そうした中で、運行前点検・点呼の問題が浮上したのだ。
屈服を深め資本を免罪するJP労組
日本郵便の千田哲也社長(当時)は6月17日の記者会見で「不適切点呼はいつ頃からか」という質問に「想像するに、相当前、民営化直後から」と答えた。問題の核心は民営化に伴う人員削減にあり、当局自身が安全を破壊してきたことを認めたのだ。現在、崩壊的な人員不足の中、点呼執行者は各班の班長・副班長であり、彼らも配達に出るのに点呼業務に追われ自分の作業に入れない。一方の管理者は、職場に張りめぐらした監視カメラで点呼状況を涼しい顔で見ているだけだ。現場の怒りは爆発寸前である。
こうした中、郵政資本への屈服を深めているのがJP労組本部だ。JP労組本部は6月の第18回全国大会で、「会社の責任だけでなく、点呼を受ける社員の側にも甘さなどの問題があった」などと民営化に伴う合理化・人員削減を免罪している。だが、郵政労働者はJP労組本部の制動を突き破って必ず立ち上がる。
今後、これまで以上の合理化・外注化が現場を襲うとともに、「赤字」を口実とした郵便事業そのものの切り捨ても加速することは間違いない。その本質は、JRでの大再編攻撃と一体の、国力のすべてを傾注しての戦時体制づくりだ。
「戦争と大合理化の時代」への突入にあたり、郵政資本は労働者の誇りも心身も破壊し、生産性向上に駆り立て、帝国主義の侵略戦争に動員しようとしている。郵便労働者は日本帝国主義・郵政資本への屈服を深めるJP労組の支配を打ち破り、中国侵略戦争阻止の反戦闘争の先頭に立とう!
(革共同郵政労働者委員会)