焦点 大川原化工機事件 「経済安保」を掲げ事件を捏造
週刊『前進』04頁(3403号03面02)(2025/07/07)
焦点
大川原化工機事件
「経済安保」を掲げ事件を捏造
軍事転用可能な機器を中国に輸出したとして社長らが逮捕・起訴された「大川原化工機事件」は、初公判前の2021年7月に起訴が取り消されるという異例の事態となった。その後、長期勾留された社長らが国(東京地検)と東京都(警視庁)を相手取り損害賠償請求訴訟を起こしていたが、5月に東京高裁で捜査が違法であったことが認定され、都と国に1億6600万円の賠償を命ずる判決が出され、都と国が上告しないことで確定した。警視庁公安部外事課による組織的なでっち上げであり、安倍政権下の中国侵略戦争に向けた排外主義攻撃として捏造(ねつぞう)された「事件」が完全に破綻し、その犯罪性が全人民の前にさらけ出されたのだ。
経済安保かざした攻撃
警視庁公安部は、大川原化工機が製造している噴霧乾燥機が「生物兵器の製造に転用可能」だと言いがかりをつけ、「輸出規制に触れる」として家宅捜索、逮捕を強行した。研究者から聞き取った報告書は警察に都合のいいように改変され、警察に不利な証拠は徹底的に排除され、「不正輸出」を強弁して立件した。これを認めて起訴を強行した検察も同罪である。国賠訴訟の控訴審で暴かれた警視庁公安部の「総括文書」では、「中国の国家戦略の脅威にさらされる中で、中国による海外先端技術獲得工作の実態を解明した」と立件の「意義」が強調されている。まさに日本帝国主義の中国侵略戦争という国策に沿った中国敵視のでっち上げだったのだ。
警察庁は、2021年版の警察白書に「大量破壊兵器関連物資等の不正輸出事件」の事例としてこの事件を記載し、経済安全保障の取り組みとして自賛していた(後にこの項目を削除)。また、後に返納されたが警察庁長官賞と警視総監賞を公安部に与えていた。
14年の集団的自衛権合憲の閣議決定、15年の安保・戦争法の強行成立と続いた安倍戦争政治のもとで、警視庁公安部、東京地検ならびに東京地裁も加担した重大な国家犯罪だったのである。
でっち上げと人質司法
一連の経過は、日帝の警察支配の破綻と危機をさらけ出した。架空のストーリーはあまりに無理があり、国賠訴訟の一審、二審の法廷に捜査に携わった3人の警察官が立ち、「捏造」という言葉で立件の不当性を証言した。検察は追い詰められながら、捜査の違法を認めた一審判決に控訴し、その判決が出るまで非を認めず悪あがきを続けた。
否認したり黙秘したら保釈しない、典型的な人質司法も行われた。逮捕・起訴された3人とも保釈請求を却下され続け、大川原化工機顧問の相嶋静夫さんはがんが発見された後も保釈が許可されず、検察の起訴取り消しの前に亡くなった。保釈を許可しなかった裁判官の犯罪性は重大だ。
警視庁公安部によるでっち上げは、闘う労働者人民に対して繰り返されてきた。1971年11・14渋谷暴動闘争に対する星野文昭同志への無期懲役、大坂正明同志への懲役20年の一審判決をはじめ数々のでっち上げを重ねてきた。
われわれはあらためて、帝国主義の侵略戦争が警察権力を突き動かして事件を捏造まですることを徹底暴露しなければならない。公安警察は、労働者人民の闘いを圧殺するためにあらゆる卑劣な攻撃を繰り返してきた絶対に許せない階級敵だ。中国侵略戦争を内乱に転化し、帝国主義を打倒しよう。