自衛隊「皇軍化」狙う防衛白書 「中国の軍事活動」を強調し 隊員不足解消へ対策を列挙

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週刊『前進』04頁(3406号02面02)(2025/07/28)


自衛隊「皇軍化」狙う防衛白書
 「中国の軍事活動」を強調し
 隊員不足解消へ対策を列挙

(写真 2025年版の防衛白書)

 防衛省が7月15日、2025年版「防衛白書」を閣議で報告、発表した。米日帝国主義が中国侵略戦争への突進を加速させる中で公表された今回の白書は、新たな大戦争を構える日帝の「本気さ」と同時にその矛盾、特にますます深刻化する自衛隊の人員不足に対する日帝の危機感が強く反映されている。

存立危機事態=武力行使を意識

 2022年の安保3文書は中国について「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と定義した。25年版白書ではこれに加え「中国による活発な軍事活動がわが国の安全に深刻な影響を及ぼし得る状況となっており、強く懸念される」としており、この記述は「そのまま放置すれば……わが国の平和および安全に重要な影響を与える事態」と定義される「重要影響事態」に近い。重要影響事態では自衛隊は後方支援しかできないが、「存立危機事態は概念上、重要影響事態に包含され……事態の推移により重要影響事態が存立危機事態の要件をも満た」すことは政府の公式見解である。つまり、明確に「存立危機事態」=武力行使を意識した踏み込みとしてこの記述は追加されているのだ。
 日米共同図上演習「キーン・エッジ24」では「台湾有事」を存立危機事態として認定し、航空自衛隊の戦闘機が中国軍艦をミサイルで攻撃する想定があったことがわかっている。中国の脅威をあおって重要影響事態の認定にこぎつけ、「台湾有事」を騒ぎ立てながら存立危機事態に移行し、南西諸島を中心に中国軍へのミサイル攻撃を展開する――そのようなシナリオを防衛省・自衛隊が考えていることは明白だ。
 実際、「中国の脅威」は一方的にあおられている。たとえば、白書は「24年8月の中国軍機による領空侵犯」を挙げるが、これは中国政府が再発防止の約束をしているように明らかに事故で、意図的なものではない。そのことには一切触れずに書き立てているのだ。
 白書は他にも、中国軍空母が沖縄本島―宮古島間や与那国島―西表島間を通過して太平洋で演習をしていることに触れている。だが、狭いところでは130㌔メートルほどしかない台湾海峡で「航行の自由」を主張して軍艦を繰り返し通行させてきた米日帝や欧州帝に、約300㌔の距離がある沖縄本島―宮古島間や約170㌔ある与那国島―西表島間の中国軍による通過を非難する資格など一切ない。
 さらに白書では24年11月のロシア・中国軍機の共同飛行について「核ミサイルを搭載できるH6N爆撃機の参加」と記述し、当時の防衛省発表では触れていなかった核搭載能力についての記述を追加。数十年も前から核搭載能力を持つ爆撃機をアジアに展開してきた米軍の活動には一切触れず、一方的に「中国の核」の脅威をあおっているのである。それは6月2日に笹川平和財団が「核共有」や日本への核ミサイル配備を提起したことと一体だ。
 中国スターリン主義による反人民的な軍事的対抗は、帝国主義に侵略戦争を正当化する口実を与えている。しかしそれでも、軍事的応酬をエスカレートさせてきたのはあくまで米日帝の側なのである。

士(一般隊員)の充足率は7割弱

 防衛省は24年12月に「人的基盤の強化について」と題する資料をまとめており、25年版白書ではこれを全面的に踏まえて自衛隊の処遇改善に関する記述をさらに強調、独立した章にまで格上げした。各種手当の引き上げや新設、隊舎などの生活空間にまでわたる設備改善、定年延長や再就職支援など多岐にわたる方針が打ち出されている。
 背景にあるのは深刻な自衛隊の人員不足だ。防衛省の資料によれば、24年度の採用者数は昨年からさらに減り9724人に。充足率が1999年以来25年ぶりに9割を切る状況となった。しかもその内訳は一般隊員である「士」に偏っており、士だけの充足率では67・8%と7割にも届かない。いくら弾薬を備蓄し、兵器をそろえても、このままでは中国侵略戦争で日本に求められる役割を果たせないことが突きつけられているのである。
 白書では自衛官採用策の一環として、「自衛官であることに誇りと名誉を得ること」のために「功績にふさわしい叙勲」を記述。すでに2016年に幹部自衛官全員が叙勲対象とされたが、防衛省は27年度中に対象を拡大する方針だ。
 叙勲の受章者は勲章をつけて天皇に「拝謁」することになる。自衛隊幹部による靖国神社への参拝が拡大していることや、天皇による戦後80年の「慰霊の旅」と一体で、自衛隊を再び「天皇の軍隊(皇軍)」とし、国の命令による侵略戦争で進んで命を差し出す侵略軍隊へとつくり変えようとしているのだ。絶対に許さず、反戦闘争・反軍闘争を爆発させよう。
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