長射程ミサイル配備阻止を 防衛省、過去最大の軍事費要求

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週刊『前進』04頁(3412号02面02)(2025/09/08)


長射程ミサイル配備阻止を
 防衛省、過去最大の軍事費要求




 防衛省が8月29日、2026年度の防衛費=軍事費の概算要求を発表した。その額は8兆8454億円(前年度比3706億円増)となり、過去最大である。中国侵略戦争のために日本全土をミサイル基地と化すことがその柱だ。

日本全土ミサイル基地化をもくろむ

 今回の概算要求の主要なポイントは、第一に「反撃能力」と称する中国本土を直接に攻撃できる長射程ミサイルの配備とその取得の強化で、1兆246億円が盛り込まれた。
 概算要求の発表と同日に公表された長射程ミサイルの配備先は、射程1千㌔メートル超の「12式地対艦ミサイル能力向上型」の地上発射型を25年度中に健軍駐屯地(熊本県)、27年度に富士駐屯地(静岡県)に。その艦艇発射型と航空機発射型は、運用開始が1年前倒しされて横須賀基地(神奈川県)の護衛艦や、百里基地(茨城県)の戦闘機に配備される。
 さらに「島しょ防衛用高速滑空弾」も運用開始を前倒しして、25年度に富士駐屯地に配備し、26年度には上富良野駐屯地(北海道)とえびの駐屯地(宮崎県)に配備する計画だ。
 島しょ防衛用高速滑空弾はいわゆる極超音速ミサイルであり、音速の5倍以上の速度で飛行するだけでなく、空中を滑空することで軌道予測を困難とする最新鋭ミサイルである。自衛隊が開発するこのミサイルは、対艦・対空ミサイルと違って貫通力に優れ、基地などの堅い構造物にも有効となるよう設計された対地ミサイルである。つまり実際には、「島しょ防衛」ではなく敵の拠点を攻撃するための兵器なのである。
 配備が発表された高速滑空弾は「早期装備型」で射程500㌔ほどだが、23年から開発が進む「能力向上型」の射程は3千㌔に達し、中国の内陸部を直接攻撃できる。さらにこのミサイルは発射機ごと輸送機で移動させることができ、日本各地に展開させることができる恐るべきものだ。
 第二のポイントは、航空自衛隊を「航空宇宙自衛隊」にすること=「宇宙作戦集団」の新編だ。宇宙作戦集団は、①衛星を利用して偵察や情報収集を行い、②複数の軍種・広範囲にわたる戦場における指揮統制の統合に不可欠な衛星通信の確保を行う部隊である。①は遠く離れた目標へのミサイル攻撃を可能とするためであり、②は中国侵略戦争が自衛隊の全部隊を動員する大戦争となることを想定しているからこその役割だ。また、無人機の遠隔操作のためにも衛星通信の確保・防衛は重要だ。内閣衛星情報センターや宇宙航空研究開発機構(JAXA)、国策企業「スペースワン」などによる人工衛星の打ち上げ能力強化と一体で構築された、現代の侵略戦争の必須部隊が宇宙作戦集団なのである。
 第三に、無人機の大量取得に過去最大の3128億円を計上。目玉として無人機群による「沿岸防衛体制(SHIELD=シールド)」の構築を打ち出した。これはウクライナ戦争における無人機の活用にヒントを得た米軍が、「台湾海峡を無人の地獄絵図にする」(米インド太平洋軍司令官パパロ)と語る「レプリケーター」構想と同様の作戦を、日本帝国主義自らが遂行しようとするものだ。「沿岸防衛」と言うが、実際には大量の無人機を投じて台湾海峡とその周辺海域一帯を丸ごと戦場化する計画にほかならない。その際に最前線で「地獄」になるのは、沖縄を中心とする南西諸島である。
 総じて、防衛省概算要求が示すことは、北海道から九州、沖縄まで日本全土をミサイル基地・軍事要塞(ようさい)と化し、丸ごと戦場にたたきこむことで中国侵略を果たそうとする日帝の戦争意思である。

人民犠牲にさらに拡大続ける軍事費

 実際の軍事費はさらに膨らむ。25年度の軍事関連予算(海上保安庁予算や安保に利用できる公共事業費や研究費などを加算)の総額は9兆9千億円となり、22年度の国内総生産(GDP)比1・8%に達した。「特定利用空港・港湾」の増加や軍事研究の拡大を踏まえれば、26年度の実際の軍事費が10兆円を優に超えていくことは明らかだ。
 日帝は22年に策定した安保3文書で、23~27年の軍事費を総額43兆円とし、それ以前の規模から倍増させることを方針化した。また、アメリカ帝国主義は日帝の軍事費をGDP比5%へと引き上げることを求めており、日帝はこの「外圧」すらも利用して中国侵略戦争の遂行へ突き進もうとしている。
 その矛盾はすべて労働者人民にのしかかる。26年4月に「防衛増税」で法人税とたばこ税が上がる予定となっており、所得税の増税も検討されている。中国侵略戦争に加担する野党や連合など帝国主義労働運動のもとで、法人税の増税分も労働者の賃金低下に転化されることは必至だ。
 物価騰貴をしりめに拡大する軍備増強に怒りを燃やし、反戦闘争の爆発で中国侵略戦争を阻止しよう。

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