日印会談と中印協力 50%関税発動を契機に米印の矛盾が露呈 中国侵略戦争へインドのつなぎ止め・取り込み狙う日帝・石破
週刊『前進』04頁(3412号03面02)(2025/09/08)
日印会談と中印協力
50%関税発動を契機に米印の矛盾が露呈
中国侵略戦争へインドのつなぎ止め・取り込み狙う日帝・石破
石破は8月29日、2年ぶりに来日したインドのモディ首相と首脳会談を行い、日本帝国主義による対印民間投資10兆円、5年間で50万人の双方向の人材交流などで一致した。インドの人口は中国を上回る世界1位の14億人超であり、年6~7%の経済成長を続ける。今年の名目国内総生産(GDP)は日本を抜いて世界4位になる見込みだ。日帝はこのインドの経済成長の取り込みを狙いつつ、中国侵略戦争に向けた軍事も含む日印の協力関係強化を図ろうとしているのだ。
インド西部での高速鉄道建設計画をめぐっては、JR東日本が開発中の次世代新幹線車両を導入する方向性も確認した。日帝が車両輸出をめぐる国際競争で敗北する中、唯一ともいえる大市場がインドだ。
また、重要物資の安定供給に向けた協力枠組み「経済安全保障イニシアチブ」の新設でも合意。中国に依存しない半導体サプライチェーンを構築するため「安保協力に関する共同宣言」を17年ぶりに改定し、兵器の共同開発や生産に向けた協力強化も打ち出した。
体制的危機の突破をかけ中ロに接近
しかし、世界的な争闘戦の中で日印関係も重大な危機にある。会談では、直前の27日にトランプがインドへの50%関税を発動して米印の亀裂が深まる中、石破がインドを必死に米日帝の側につなぎ止めようとする構図があらわになった。米帝は中国と国境を接する巨大国家インドとの関係を重視し、戦略的に位置づけてきた。2007年以来、共和党・民主党両政権を通じて日米豪印の戦略対話「QUAD(クアッド)」を強化。東アジア・太平洋地域を管轄する「太平洋軍」の名称も18年から「インド太平洋軍」に変更し、クアッドの合同演習を積み重ねてきた。
だが、22年2月からのウクライナ戦争と米帝による対ロ制裁が事態を一変させた。戦後の独立以来、政治・経済・軍事にわたってソ連・ロシアとの関係が深かったインドは、米帝が中国包囲網のために必要とする自国に対しては強い圧力をかけられないことを見透かしてロシア産原油を大量輸入し、欧州などへ再輸出して巨利を得た。一方で中ロも加わる新興国グループ「BRICS」にも加盟し続け、対立する両者から利益を得ようとしてきた。
これは単なる政策ではなく、モディ政権の体制的危機に規定された動きだ。
モディ政権はヒンドゥー至上主義組織を基盤とし、モディ自身、グジャラート州首相時代に反ムスリムを扇動して2千人以上のムスリム虐殺事件を引き起こした。ファシスト的暴力・国家暴力を背景に「新自由主義改革」を進め、民営化・労組破壊、強搾取を行ってきたのだ。
しかし、こうした強権支配を打ち破って数億人のゼネスト決起が数度にわたって闘われ、今年8月にもタミル・ナドゥ州で民営化反対のゼネストが行われた。
こうした中で突きつけられた50%関税にモディは猛反発し、中国・ロシアへの急接近を始めた。8月中旬には王毅・中国共産党中央政治局委員兼外交部長(外相)を招いて会談し関係強化を取り決めた。
中国包囲網の破綻インド失った米帝
日印首脳会談に続いてモディは8月31日に訪中し、天津で開催された上海協力機構(SCO)の首脳会議に出席。習近平との首脳会談では「ライバルではなくパートナー」として、関係を大転換・発展させていくことを内外に示した。8億人が貧困にあえぎ、青年の失業率が23%という状態の中でトランプ関税に追い打ちをかけられたモディは、中国との経済関係拡大に活路を求めるしかないと判断したのだ。ウクライナ戦争勃発時からクアッドは事実上ほとんど機能していないが、モディは訪中後にもこれを維持していくと述べている。狙いは、建前上「西側」の国として、米帝からの攻撃激化を回避することにある。
一方の米帝は、インドが中国包囲網の戦略的鍵であるにもかかわらず50%関税を発動した。そこには、インドを中国包囲網に取り込みたい米帝の戦略と、対ロ制裁の最大の抜け穴となることで延命するインドとの矛盾がある。米帝基軸の戦後世界体制の大崩壊、すなわち米帝の世界支配力の大崩壊が、事実上の「インド失陥」として現れたのだ。
しかし、米帝・トランプの破産と危機の激化は、米日帝の絶望的凶暴化と中国侵略戦争―世界戦争を加速させる。中国・アジア人民との連帯を強めて闘おう。