戦争のための補正予算粉砕を 「成長戦略」の名で社会を戦時再編 軍事経済化進める「危機管理投資」

週刊『前進』04頁(3424号02面05)(2025/12/01)


戦争のための補正予算粉砕を
 「成長戦略」の名で社会を戦時再編
 軍事経済化進める「危機管理投資」


 高市は「台湾有事は存立危機事態」発言に対する中国の当然の反発や対抗措置を逆手にとり、中国への敵意をあおって戦時「国民統合」を一気に成し遂げようと策している。その一環として、「成長戦略」の名のもとでの経済と社会の全面再編が狙われている。

戦争突入へ全面的にかじを切る予算

 日本帝国主義の中国侵略戦争への突進を財政面から裏付けるものとして、高市政権は11月21日、総合経済対策を発表した。「『強い経済』を実現する総合経済対策」と題された閣議決定文書は、「日本には底力がある。そのスイッチを押し、日本列島を強く、豊かにすることを目指す」「『日本と日本人の底力』を信じ、『日本再起』を目指す」と言う。これは日帝の絶望的危機の裏返しだ。中国侵略戦争に突進する以外に延命の道はないからこそ、日帝は激烈な排外主義と一体で「日本人・日本民族の優秀さ」をわめかざるを得ないのだ。
 高市はこの総合経済対策に基づいて、今臨時国会に補正予算案を提出する。その眼目は、防衛費の対国内総生産(GDP)比2%化の今年度中の達成だ。
 総合経済対策についての閣議決定文書は、「生活の安全保障・物価高への対応」と「危機管理投資による強い経済の実現」「防衛力と外交力の強化」を一体で進めると言う。物価高対策なども、徹底して戦争の観点から行われるのだ。
 今年9月に出された「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」の報告書は、「安全保障と経済成長との間の好循環を追求する」として、軍需産業を軸とした経済の軍事化を求めた。11月4日には高市を本部長とする日本成長戦略本部の初会合が開かれ、「危機管理投資」の重点対象に人工知能(AI)・半導体や量子コンピューター、航空・宇宙、サイバーセキュリティー、資源・エネルギー、防災・国土強靭(きょうじん)化、重要鉱物、防衛産業などの17分野を打ち出した。「危機管理投資」とは国の財政支出と民間企業の投資をともに戦費として位置づけるということだ。
 こうした方針で編成される補正予算案は、中国侵略戦争の遂行へ決定的にかじを切るものになる。
 補正予算の一般会計支出は17兆7千億円、うち「物価高対策」に8兆9千億円、「危機管理投資」に6兆4千億円、「防衛力と外交力の強化」に1兆7千億円が充てられる。高市は労働者人民の生活苦に配慮しているかのように装って、電気・ガス料金負担への補助や自治体を通じた「おこめ券」配布、子ども1人当たり2万円の給付などを打ち出した。だが、それを超える金額が戦争に使われる。今年度当初予算で8兆7千億円だった防衛費は、10兆4千億円に膨らむ。
 軍事費増大は決してそこにとどまらない。アメリカ帝国主義・トランプは日本に対し防衛費をGDP比で3・5~5%にも引き上げることを迫っている。自民党政調会長の小林鷹之は「防衛費はGDP比2%では到底足りない。上積みが必要」と言い放った。高市は「責任ある積極財政」を掲げ、「予算編成の単年度主義からの脱却」と「複数年度での財政運営」を叫ぶ。これは、各年度の税収などの制約にとらわれず、際限のない大軍拡を行えるようにしろということだ。
 軍需産業が維持されるためにも、軍事費の確実な拡大は必要だ。だが、生産力の上昇をもたらさない兵器の生産を軸にした「経済成長」とは、財政赤字の拡大と労働者人民への大増税を構造化するものになる。労働力の再生産もできず、すでに成長の余地を失った日帝にとって、それは絶望の道だ。だが、帝国主義は必然的にそこにのめり込まざるを得ないのだ。

中国に依存しない体制づくりを追求

 大軍拡は経済と社会の全面再編を不可避とする。総合経済対策についての閣議決定文書は、「主要各国の経済政策の潮流は、市場原理に過度に依存する新自由主義的発想から……戦略的な国内投資の拡大を通じて国力の増大を目指す新たな時代の政策へと大きく転換している」と述べる。
 米帝・トランプを典型に、帝国主義各国は軍需産業を国内に確保しようと必死になっている。同時に、資源や部品の供給、市場において中国に極力依存しない体制をつくることに血道を上げている。高市も、中国との対立が中国政府によるレアアース輸出の禁止に至ることにおびえながら、そうした事態への対応策を見いだそうと躍起になっている。閣議決定文書は、「レアアース等重要鉱物の鉱山開発・製錬事業への助成」や「南鳥島周辺海域でのレアアース生産に向けた研究開発」を強調した。

戦時動員推進する連合・芳野を倒そう

 こうした戦時体制づくりを高市とともに進めているのが連合だ。日本成長戦略本部が打ち出した「大胆な危機管理投資」を全社会に貫徹することを目的に、日本成長戦略会議の初会合が11月10日に開かれた。同会議には、経団連会長の筒井義信や日本商工会議所会頭の小林健とともに連合会長の芳野友子が加わっている。
 同会議では、「生産性の高い分野への円滑な労働移動」に向けた「労働市場改革」も議論の対象になった。これは解雇の自由化と一体で、軍需部門に労働力を強制的に移動させることが狙いだ。総合経済対策には「労働時間法制の多角的検討」が盛り込まれた。兵器を増産しなければならない戦時下で、労働時間規制などなくすべきだというのが高市の本音だ。連合はこれを容認し、「賃上げのためには戦争も認めろ」と労働者に屈服を迫る最悪の役割を果たしている。
 翼賛化した連合や野党を踏みしだき、戦争国会粉砕・高市打倒の12月決戦に立とう。戦争遂行のための補正予算を許さず、中国侵略戦争を阻止しよう。
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