トランプがNSS全面発動 戦後体制破壊し世界戦争へ
週刊『前進』04頁(3431号03面01)(2026/01/26)
トランプがNSS全面発動
戦後体制破壊し世界戦争へ
昨年1月20日の第2次トランプ政権発足から1年、トランプは記者会見で「これほどのことを成し遂げた政権は他にない」と自賛したが、まさにこの1年で米帝・トランプは、米帝自身の桎梏(しっこく)となった戦後世界体制を徹底的に破壊し、移民襲撃・追放など国内支配のあり方も一変させた。そして今やこの「破壊」から「力による」世界の再編、米帝の世界支配の再確立(「力による平和」)に決定的に踏み出した。それが昨年12月に公表した国家安全保障戦略(NSS)の全面発動=中国侵略戦争―世界戦争だ。ベネズエラへの侵略戦争と中南米全体への拡大、グリーンランドの帝国主義的「領有」による西半球全体の支配、イラン体制転覆の策動。これらは、すべて中国をたたき出し、その力をそぎ落とすものとして行われている。一切は、中国から台湾を奪い取り、中国のスターリン主義体制を転覆する中国侵略戦争の全面的遂行に向かっているのだ。
グリーンランドを巡り欧州帝と激突
トランプは1年前の就任演説で「再び成長する国家となり、富を増やし、領土を拡大し、新たな美しい地平線に米国の旗を掲げていく国家になる」と宣言。「米国は中国からパナマ運河を取り戻す」と強調し、「メキシコ湾の名称をアメリカ湾に変更する」大統領令に署名した。「領土拡大」=侵略戦争を露骨に掲げ「軍事力こそがすべて」と世界に突きつけたのだ。これと一体でトランプは直ちにカナダ、メキシコへの25%関税、中国への10%追加関税の検討を発表。同盟国・隣国を含む全世界の諸国に対して次々と関税をエスカレートしていった。これは、砲艦外交・こん棒外交と一体で他国を米帝のもとに組み敷く手段としての戦争そのものだ。
今年1月3日にはNSSの発動としてベネズエラを急襲し、中国と関係を深めてきたマドゥロ大統領を拘束し拉致し去った。そしてNSSで掲げた「モンロー主義のトランプ版」を「ドンロー主義」と言いなしてコロンビア、メキシコ、キューバへの介入・侵略も公言し、中南米への経済的・政治的影響力を強めてきた中国スターリン主義を軍事力によって一掃し、西半球全体を米帝の完全な勢力圏として打ち固めようとしている。それは中国侵略戦争―世界戦争そのものとして推進されている。
さらにトランプは、米本土防衛の軍事拠点、レアアースなど戦略資源確保において重要だとするデンマーク自治領グリーンランドを必ず米国の領土にすると宣言し、軍事力の行使の可能性も示唆して米欧帝国主義間の対立が一気に深まった。英独仏やスウェーデン、ノルウェー、フィンランド、オランダなどの欧州諸国は相次いでグリーンランド派兵に踏み切った。建前は「ロシア、中国の侵略抑止の演習」だが、欧州帝国主義の米帝に対する軍事的対抗であり、かつてない歴史的事態だ。これをトランプは「米国への挑戦だ」とし、米帝によるグリーンランド領有に応じないことへの措置としてデンマークや英独仏など欧州8カ国に2月1日から10%の追加関税を課すと発表した。
NATO存続さえ問題となるような米・欧帝国主義間の激烈な争闘戦の中で、1月19日から世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)が開かれ、トランプ自身も乗り込んだ。トランプ到着前の20日には、フランス大統領・マクロンが「帝国主義の台頭」「領土の主権に対する圧力」「欧州を弱体化させ、従属させようとしている」とトランプを批判し、EUのフォンデアライエン欧州委員長は米国の追加関税に「結束して断固措置を取る」と述べて「欧州自身の安保戦略の準備」を訴え、カナダ首相のカーニーは「世界秩序の断絶、残酷な現実の始まり」と危機感をあらわにした。米・欧帝国主義間での「領土」をめぐる全面的対立というかつてない事態に世界の株式・金融市場は大動揺し、米帝自身が株安・債券安・ドル安のトリプル安に見舞われる中、トランプは欧州8カ国への関税発動は見送り、「武力行使は必要ない」と述べた。NATO事務総長との会談では「グリーンランドを含む北極圏全体に関する将来の枠組みを構築することで合意した」としている。米帝・トランプはグリーンランド領有の強行方針をいったんは「転換」したが、中国(およびロシア)を完全にたたき出し、グリーンランド・北極圏を米帝の勢力圏として固めていく基本戦略は不変だ。
この一連の過程で重大なことは、基軸国・米帝による戦後世界体制の破壊が、「領土」をめぐる米帝と欧州帝国主義間の軍事も含めた対立を出現させたことだ。米帝のNSS全面発動=中国侵略戦争―世界戦争への突入は、欧州、そして日本の帝国主義に対し、独自の強力な軍事力を形成し行使する力を持たなければ帝国主義として存続できないことを強烈に突き付け、帝国主義間の争闘戦をますます激化させていく。それは当面は米帝の中国侵略戦争―世界戦争を各国自身の戦争として遂行していくこととして展開されるのだ。
イランの体制転覆とガザ植民地支配
こうした中で狙われているのが、中東の「地域大国」であり巨大な産油国であるイランの体制転覆だ。米英帝国主義によるクーデターで誕生したパーレビ王朝を打倒した1978~79年の労働者人民によるイラン革命はイスラム宗教勢力に簒奪(さんだつ)された。だが、米帝の中東支配の決定的一角を切り落とした革命の上に立つイランの現体制は、米帝にとって許しがたい存在なのだ。特に中国へのエネルギー供給を断つためには、イランへの攻撃が戦略的意味をもっている。だからこそトランプは、昨年末に始まったイランの労働者人民の抗議デモに介入し、体制転覆のために利用しようと策動している。軍事介入はひとまず中止されたが、すでに空母打撃群は中東へと移動を開始している。現段階は次の攻撃への準備期間にすぎない。
これと並行してトランプは、パレスチナ自治区ガザの「和平計画」の第2段階として、一方でイスラエルの爆撃や人道支援の妨害を支えつつ、他方で、自らが議長を務める暫定統治機関「平和評議会」を発足させたと発表した。メンバーにはルビオ米国務長官やブレア元英首相が名を連ね、国際安定化部隊の司令官には米軍の少将が就くことも発表された。まさにガザの植民地支配そのものだ。こうしたパレスチナ人民の民族解放闘争の根絶を進めるためにも、米帝にとってはイランの体制転覆が不可欠なのである。
軍事制圧と対決しゼネストで反撃へ
米ミネソタ州ミネアポリスでは、トランプによる都市の軍事制圧、その中での37歳の女性レネ・グッドさん虐殺(前号既報)に抗議する実力闘争が爆発し拡大している。反乱法の発動も示唆して連邦軍に出動準備命令を出す中、トランプ就任1年の1月20日には全米で抗議行動が闘われた。こうした中でミネアポリスの労働組合は1月23日に統一ストライキを設定。米労働総同盟・産業別組合会議(AFL―CIO)州本部や大規模労組の反対にもかかわらず、ランク・アンド・ファイル(現場組合員)の闘いは前進し、体制内労組幹部も「個人・支部が参加することは止められない」と言わざるをえなくなった。1934年にトラック運転手の組合・チームスターズを主体としてゼネスト・市街戦に決起したミネアポリスの闘いが、再び米階級闘争を牽引(けんいん)しているのだ。
実力で闘う米労働者階級と連帯して闘おう。