「軍民一体の総力戦」を提言 笹川財団 安保3文書改定に向け

週刊『前進』04頁(3464号04面02)(2026/09/21)


「軍民一体の総力戦」を提言
 笹川財団 安保3文書改定に向け


 日本帝国主義は中国侵略戦争を遂行するための総力戦体制を早期に確立しようと必死になっている。これに道筋をつけるため、笹川平和財団は9月2日、「新たな時代における国家安全保障モデル~防衛力の人的基盤強化の視点から~」と題する提言を防衛相の小泉進次郎に提出した。それは「自衛隊と民間力の連携・一体化」の名で、社会を全面的に軍事統制下に置こうとするものだ。

戦争訓練くり返し全社会を戦時統制

 提言をまとめたのは、元防衛事務次官の黒江哲郎、元統合幕僚長の山崎幸二、元海上幕僚長の村川豊、元防衛省情報本部長の宮川正らだ。黒江と山崎は、安保3文書の改定に向けて設けられた「総合的な国力から安全保障を考える有識者会議」のメンバーである。自衛隊トップの元幹部を中心に策定されたこの提言は、国家政策として直ちに実行に移される性格を持つ。
 笹川平和財団は昨年6月、非核三原則のうち「持ち込ませず」を「撃ち込ませず」に変え、アメリカ帝国主義との「核共有」に踏み出すべきだという提言を出した。「総合的な国力から安全保障を考える有識者会議」でも同様の議論が行われ、それは年末に改定される安保3文書に盛り込まれようとしている。笹川平和財団は、今回の提言も安保3文書改定に反映させるよう、強く求めている。
 この提言はまず、戦時には国と地方自治体、指定公共機関(武力攻撃事態法によって規定された電力・ガス、交通・運輸、通信・放送などの民間企業)が一体となって対処すべきだと述べる。自治体や指定公共機関には国が定めた戦時対処措置を実施する義務が課されているが、具体的な行動計画は策定されていない。提言はそれを問題視し、あらかじめ策定された計画をもとに定期的な訓練を繰り返すことで、「省庁間や官民の協力関係を緊密化する」べきだと言う。自治体と住民を巻き込んだ訓練を繰り返して、社会全体を戦時統制下に置くのだ。
 これは自治体を戦争遂行の機関へと完全につくり変えなければ成り立たない。沖縄県知事選で日帝は、中国侵略戦争の前面に立つ沖縄を、戦時統制に全面的に従う自治体へと転換させるために全体重をかけた。
 これは人民の反戦意識を根絶する攻撃と一体だ。提言は「学校教育などを通じて安全保障に関する知識の普及に努め、市民レベルでの意識向上を図ることが急務である」と言う。
 これが実際には反戦闘争への暴力的な弾圧として発動されることは明らかだ。

労働者を前線に送り兵器補修を強制

 提言は「新たな戦い方」に対応した継戦能力の構築に不可欠なものとして「自衛隊と民間力の連携・一体化」を強調する。軍需産業はもとより電力、通信、物流、医療などの産業でも、民間企業は戦時における自衛隊との連携計画を策定し、平素から共同訓練を行うべきだと言っている。
 提言はまた、自衛隊による強制収用などに関する自衛隊法の規定を、さらなる強権発動が可能となるように改悪することを求める。これは、自衛隊の陣地構築などを想定した強制収用の規定を、民間企業による軍需工場や通信施設の設置に際しても発動できるようにすることが狙いだ。
 これが表しているのは、「新しい戦い方」では前線と後方の区別はないということだ。提言は、「防衛装備品が民生品と大きく異なる点は、装備は戦いの中で『壊れ』『傷つく』ことを前提として運用されることである」「ウクライナでは防衛産業従事者も前線に派遣され……有事に装備品の維持・整備等に必要な民間企業職員を動員する仕組みが設けられている」と言う。兵器の補修のために民間人も戦場に送られる。実戦で使われた兵器を戦場で補修する作業は、兵器の性能を迅速に高めることにも直結する。
 こうした限りない「軍民融合化」を進めるために、提言は「セキュリティ・クリアランス制度」の改定も唱えた。この制度は、軍需産業で軍事機密に接する業務に携わる者は、適性要件を満たさなければならないというものだ。戦争に反対する労働者を排除することがその目的である。だが、個別の案件ごとに軍需企業が適性評価の対象となる者を選定し、その都度、審査するという現在のやり方では、総力戦に対応できない。軍需工場が至る所に分散配置され、軍需産業が経済の軸になる社会では、すべての労働者が常に監視にさらされることは避けられない。
 自衛隊の中央情報隊が身分を隠して個人の思想信条に関する情報を組織的に収集していたことが発覚しても、防衛相の小泉を先頭に自衛隊は「不適切な活動はない」と居直っている。国家による人民の思想調査は、総力戦体制の構築にとって不可欠だからだ。

自衛隊業務の外注化と外国人の動員

 中国侵略戦争の遂行にとって、自衛隊の深刻な要員不足は絶対に放置できない課題だ。提言は、自衛隊の「士クラス」の充足率が60・7%という現実への危機感をあらわにする。
 これへの対応策として、提言は自衛隊への入隊を希望する学生への給付型奨学金の増額を打ち出した。まさに経済的徴兵制だ。提言は自衛隊員の給与体系の改定にも言及するが、これは戦死を前提とした補償給を創設するということだ。
 これに加えて提言は、外国人も自衛隊員にする措置を唱えた。「公権力の行使や国家意思の形成」に関わる業務からは徹底的に排除した上で、同盟国や同志国、武器輸出の対象国の国籍を持つ者を、機密に接する程度が低い部門で採用するという。この構想は、自衛隊業務の徹底した外注化とも一体だ。限りなく軍事行動に近いことも「後方支援業務」に位置づけて民間委託し、民間企業が外国人を雇って、命の保証はない業務に就かせるのだ。
 かつて日帝は敗戦が確実になった1944~45年、植民地支配下の朝鮮と台湾でも徴兵制を敷き、侵略戦争に動員した。その歴史を繰り返してはならない。
 高市政権は今秋の臨時国会と年末の安保3文書改定で、さらに激しく中国侵略戦争にのめり込もうとしている。これに立ち向かう今秋決戦を全力で闘い、11・1労働者集会と11・22反戦闘争を、歴史を分かつ大闘争としてかちとろう。
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