NAA環境アセスに国交省が「意見」 機能強化進める茶番劇だ

週刊『三里塚』02頁(1016号02面04)(2019/05/27)


NAA環境アセスに国交省が「意見」
 機能強化進める茶番劇だ

「生活環境の悪化を懸念」!?

 5月8日、NAAの「機能強化にかかる環境影響評価書」(アセスメント)に対する国土交通大臣意見なるものが出された。これは、NAAの第3滑走路工事実施計画申請の環境アセスメントにお墨付きを与えるためのものである。国交省は、この中で「本事業の実施に伴う重大な影響が生ずるおそれがある」とあえて指摘し、「環境影響を最大限、回避及び低減するため対策を検討し、環境保全措置の具体化と地域住民等への説明を講ぜよ」とNAAに宣(のたま)っている。しかし、言うまでもなく成田空港の機能強化策は、国交省の決定であり、国交省のNAAへの提言や指導も自作自演の茶番劇である。国が中立的な立場であるかのように演じ、環境アセスメントの客観性・科学性の体裁を取り繕っているだけのものであり、怒りを抑えることができない。
 具体的に見てみよう。国交省意見書は、「航空機騒音の環境基準の達成状況が2017年度時点で65・2%であり、滑走路の新設および航空機の発着回数の増加等に伴い騒音レベルの増大が生じ、周辺の生活環境がさらに悪化することが懸念」と述べている。
 行政の調査ですら、開港後40年たっても過半の地域は、国の環境基準すら達成されていないし、生活を脅かす航空機被害は実際にもっと増大している。であるなら、騒音被害を拡大させる機能強化など認められないはずだ。殺人行為である夜間飛行は、直ちにやめるべきである。国交省は、それにふたをして「生活環境がさらに悪化することが懸念」と人ごとのように述べている。被害住民を愚弄するものだ。
 では、これに対して、国交省の指導は何か。

深夜飛行機騒音は殺人行為

 「環境基準の達成の具体的な数値目標等を設置したロードマップに基づき、計画的に取り組め」とNAAに言っているにすぎない。そもそも国交省意見書での騒音対策の取り組みとは、「関係者の意見等を踏まえつつ、可能な限り最大限の対策」としている。このように政府・NAAにとって騒音対策は、「可能な限り」で住民を懐柔するためのものなのだ。
 この「可能な限り」の騒音対策が、空港利権のバラマキと防音工事だ。しかし、NAAの公表でも、A滑走路の運用時間延長に伴う内窓設置工事の申請は、3月25日現在で対象874件のうち124件でしかない。芝山町では、さらに低い。設置対象者の約230戸のうち申請は、4カ月で14件、6%にすぎない。あまりの低調さに「残りの皆さんの意向を確認すべきではないか」との議会質問に、相川勝重町長は「全員から聞くことは困難」と答弁している。厚木爆音訴訟判決でも「防音工事の効果は達成できるとまでは認めがたい」と否定された室内防音工事、これで航空機騒音を防ぐことなどできないことが住民にとって周知の事実となっているからだ。
 成田空港周辺では、午後10時台で睡眠中の人の割合は約4割。午前0時では9割の人が眠っている。こんな時間帯に飛行機を飛ばすこと自体殺人的行為で許されない。「騒音は、有害物質ダイオキシンより危険」というのが欧州WHOの健康被害の指標だ。

第3滑走路が地域を大破壊

 第3滑走路(C滑走路)は芝山町北東部と多古町の一部の広大な地域に、農村と山林をつぶして建設する。空港敷地は現状の約1・7倍、1千㌶の敷地拡大で約2400㌶となる。移転対象は空港敷地拡大部分だけで約200戸(うち芝山町は150戸、住民約800人が対象)、騒音影響も含めると約1240戸(うち芝山町の騒特法に基づく移転は217戸)に上る。NAAの環境影響評価書やそれに対する県・国の意見書は、これらの人の生活を無視し、「水・土壌」「動植物の生態系」などを論じているが、本末転倒だ。空港予定地の潰廃はもとより、周辺および移転地建設による環境破壊も不可避だ。
 「空港絶対反対・農地死守・実力闘争」の原則を貫く反対同盟がある限り、第3滑走路建設、騒音地獄の拡大は阻止できる。
 市東さんの農地取り上げを阻止し、三里塚闘争に勝利しよう。

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