全国農民会議がG20農相会合を斬る 「スマート農業」宣伝の場 高額機材、農家には手届かず

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週刊『三里塚』02頁(1018号02面04)(2019/06/24)


全国農民会議がG20農相会合を斬る
 「スマート農業」宣伝の場
 高額機材、農家には手届かず

(写真 G20農相会合で披露された無人田植機【5月12日 新潟市】)

(写真 クボタが開発する農業用ドローン )


 5月11〜12日、新潟市でG20農相会合が行われた。34の国と国際機関が参加した。関係者からは「G20初の会合で失敗できなかった。討議のテーマはあらかじめ対立する問題を避けた」との評価が漏れ聞こえてくる。
 G20会合は何ひとつ内容のない宣言文を上げ、2日間の日程を「滞りなく」終了した。
 一方で、異様なほど「スマート農業」を強調した。会合終了後、新潟市内の田んぼで自動運転トラクターの実演を行い、魚沼産コシヒカリのおにぎりを振る舞う「おもてなし」を行った。ここに農水省の狙いがあったのである。政権の推し進める重要政策であり、新潟市は「農業特区」という事情である。
 地元紙の新潟日報が主催する関連シンポ(11日開催)に参加した。市民100人と関係者100人以上と会場は盛況だったが、シンポの内容はクボタとJAXA(宇宙航空研究開発機構)の宣伝の場に過ぎなかった。農民からの視点などほとんどない、ドラマ「下町ロケット」の世界のオンパレードであった。クボタが自動運転トラクターを1500万円で販売している(担当者は1100万円とリップサービス)。肥料・農薬散布のドローンは200万円と説明すれば、JAXAも「人工衛星からの位置情報などを活用して農業収入をアップしてほしい」と、ばら色の夢を振りまく。
 「年に数回しか使わないのに、どれだけの農民がスマート農機を買えるのか」とあきれ果てながら聞いていると、シンポの提起者の地元大学の学者が的確に批判した。「新潟県内の農家の平均所得は百数十万円でしかない」と、果たして現場の農民の手に届くのか?
 「スマート農業」が高齢化・人手不足の農業の手助けになることは間違いない。しかし、資本主義である限り、資本の利潤拡大のために「スマート農業」が行われる。本当に必要としている農民は、借金を増やしてでも機械化に踏み切るか、機械化を断念する=農業を断念するかしかないのである。
(全国農民会議 山口敏昭)

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