明日も耕す 農業問題の今 家族農業は世界の流れか 矛盾と混迷の国連採択

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週刊『三里塚』02頁(1020号02面04)(2019/07/22)


明日も耕す 農業問題の今
 家族農業は世界の流れか
 矛盾と混迷の国連採択


 本紙前号掲載の全国農民会議による「G20農相会合を斬る」の中から、「小農保護」についてもう少しスポットを当てて考察してみたい。国連の舞台で、家族農業や小規模農業が注目され、見直されているのはなぜか。

 2017年12月20日の国連総会で、2019〜28年を国連の家族農業の10年とすることが全会一致で可決された。日本も104カ国の共同提案国に名を連ねていて、この10年間に国連加盟国は具体的な政策対応を迫られることになる。
 2018年12月には「小農と農村で働く人びとに関する権利国連宣言」が国連総会で採択された。
 この宣言の土台となったのは、世界的な農民運動組織ビア・カンペシーナが2008年に発表した「小農の権利宣言」だ。その他、多くの農民運動や闘争の積み重ねをベースにして宣言が勝ちとられていることを、まずは押さえなければならない。
 こうした運動をしてきた人びとからすれば「農業の大規模化や効率化、企業化を促進する政策から小規模な家族農業を重視する政策に国際社会は大きく舵を切った」と言えるような内容だが、現実はそう単純ではない。

新自由主義破綻

 なぜ国連で「家族農業の10年」や「小農の権利宣言」が採択されるに至ったのか。
 こうした動きが始まったのは08年頃で、背景には、07〜08年の世界的な食糧危機やエネルギー危機、気候変動、そしてリーマンショックによる金融危機がある。
 新自由主義の破綻の中で、農業も大規模化や効率化、企業化による弊害が露呈し、これを乗り切るために家族農業や小規模農業に目を向けざるを得なくなった。
 昨今、環境問題やエネルギー問題などで、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」なるものが取りざたされているが、農業においてこれを実現するものとして、家族農業がクローズアップされているのだ。
 しかし、現実には世界全体で農業の後継者不足が深刻化し、グローバル企業に土地や種が奪われ、家族農業は危機にさらされている。農業をめぐる現況は暗中模索の中だ。だからG20農相会合でも「小規模農家の保護」と「企業の投資拡大」という矛盾した方向を論議することもできず、安倍政権の「骨太方針」も総花的な表現(前号)であがくしかないのだ。

宣言の実現には

 国連や政府の取り組みは、聞こえが良くても支配の枠の中に押しとどめるものでしかない。労働者と農民が連帯した共同の取り組みとして闘い取ることが、真に小農の権利宣言を実現する道だ。 ともあれ、全世界の農民と団結するためにも、きちんと知っておきたい動きである。
 『国連「家族農業の10年」と「小農の権利宣言」』(農文協)の一読をお勧めする。
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