北総の空の下で 笑いと感動 笑えない吉本騒動

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週刊『三里塚』02頁(1022号02面05)(2019/08/26)


北総の空の下で
 笑いと感動
 笑えない吉本騒動


 遅い梅雨明けと同時に猛暑に襲われて、天気予報で「暑熱順化」という耳慣れない言葉を聞くようになりました。徐々に体を暑さに順応させるという意味で、順化すると汗腺の機能が高まり、汗に塩分が出なくなり消耗が少ないそうです。農家は畑仕事で暑熱順化を自然に体得してきましたが、今年は気温の急上昇が順化を上回りました。皆盆休みまで何とか乗り切った中、焼き鳥職人で鍛えた市東孝雄さんが暑さに強いのには毎年脱帽です。
 さて、恒例の8月集会のお楽しみは松元ヒロさんのコントです。年々内容が先鋭化して政権も皇室も笑い飛ばします。「テレビに呼ばれない」芸人の面目躍如です。一方で、闇営業問題に端を発した吉本興業の騒動は、ブラック企業の内実と、安倍政権との蜜月ぶりをあぶり出しました。お笑いで身を立てたい若者から搾り取り、G20への協力など国家から多額の資金を引き出して、芝居小屋から総合商社にのし上がった吉本興行。若者に絶大な人気があるだけに、そこから生み出される笑いに笑えない末恐ろしさを感じます。
 有吉佐和子さんは、小説『出雲の阿国』で登場人物に「芸能とは木戸銭払って中に入り、後に楽しんだ心が残るもの」と言わせています。歌舞伎は現在と違い、川原小屋で傾き(かぶき=はみ出し)者・阿国が民衆のエネルギーと一体化して開花させた芸能でした。腹の底から湧き上がる笑いと感動こそが、私たちの財産であり力です。
北里一枝
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