危険!羽田新ルート ■急角度進入ルートをパイロットに強制 ■都心を襲う落下物・騒音・大事故の恐怖

週刊『三里塚』02頁(1036号02面03)(2020/03/23)


危険!羽田新ルート
 ■急角度進入ルートをパイロットに強制
 ■都心を襲う落下物・騒音・大事故の恐怖

(写真 羽田新ルートで国立競技場の上空を低空飛行するテスト機【2月2日】)

国際航空協会が中止要請

 3月29日に強行されようとしている羽田空港新飛行ルートについて、国際航空運送協会(IATA、世界約290の航空会社が加盟)が国土交通省に対し、「急角度着陸」の中止・変更を求めている。
 IATAのアジア太平洋地域の安全施策責任者のブレア・コール氏、同協会に加盟する米デルタ航空のパイロットらが1月に同省を訪れた。担当者と会談し、都心上空を通ってA・C滑走路に着陸する新ルートの特に3・45度という降下角度について、「世界の空港に例のない特別の操縦技術を求められる」「この角度で着陸するパイロットはいない」との懸念を伝え、世界標準の3・0度に戻すよう要請した。
 この「現場からの声」に対し国交省側は、「3・45度の着陸の安全性は確認されている」「騒音軽減対策として必要だ」と居直り、事実上拒絶した。そして、2月2日からの都心上空での実機飛行試験を強行するにいたった。デルタは「安全性が確認されていない」と、実機試験への参加を見合わせた。また、エアカナダ機も試験初日に羽田着陸をとりやめ、目的地を成田に変更した。

背景に横田基地空域問題

 反対の声を踏みにじり、国交省は東京五輪を口実に羽田の国際線発着枠を一日50便増やすために、都心を超低空で飛行する「新ルート」を3月29日から開始すると発表している。好天・南風時の午後に着陸機が新宿・渋谷などの都心上空を飛ぶ。
 その運用に伴って、国交省は「騒音対策」と称して、各航空会社に対し、着陸角度を3・0度から3・45度へと引き上げることを無理強いしようとしているのだ。数字ではわずか0・45度の差だが、パイロットにとっては着陸時に「滑走路の見え方が違う」という恐怖を感じるほどの激しい緊張を強いられる。「世界一着陸が難しい」と言われた香港の啓徳空港(現在は廃止)でさえ、3・1度だった。まさに事故発生に直結する重大問題なのだ。
 「3・45度」は、実際には騒音とは関係なく、「米軍横田基地の軍用機が飛ぶ空域に抵触しない」という条件によって定められたことが明らかにされている。そして、国交省自身がその危険性を重々承知しているのだ。
 赤羽一嘉国交相は3月4日、「実機試験」を経験した日航と全日空の機長らを呼んで意見を聴いた。そこで機長側が「降下中に着陸角度を徐々に変更する柔軟な着陸方法の運用」(図の破線=曲線)を要望し、国交省がこれを認めたと報じられている。
 いったん急降下したあと最後には3・0度にして着陸するというわけだが、この「角度を変える」着陸ルートは、昨年から国交省航空局の資料にも「イメージ図」として載せられていたもので、何ら目新しいものではない。
 これが意味するのは実際には以下のようなことだ。
 パイロットは「新宿駅上空」で自動操縦を解除し、手動でスラスト(逆推力)レバーを引いて減速させ、高層ビルが立ち並ぶ大都会の風景を目で確認しながら手加減で高度を次第に落としていく。そして、「大井町上空」あたりで羽田からの3・0度の進入誘導電波を受けて着陸にいたる。

猛暑時はさらに急降下に

 当然にも、非常に高い技量と東京都心の空を熟知していることが、パイロットに求められる。
 航空評論家で元日航機長の杉江弘氏は、「これは国交省による『こうしてくれたらうれしい』という期待に過ぎない。日本に慣れていない外国人パイロットでこれができる人はわずかだろう。腕のいい人を基準にするのではなく、下手な人でも着陸できるように進入ルートをつくるべき」と、厳しく批判している。まったくその通りだ。
 また、着陸回数増加に応じて落下物事故は確実に増える。これまでは海上に落ちていた氷塊、機体部品などが、「成田並み」に東京の街を襲う。バードストライク(鳥衝突)事故増加も懸念される。
 真夏の猛暑時には上空の空気が薄いことで、高度計の表示と実際の高度にずれが生じ、3・45度のはずが例えば3・7度などの急降下にもなりうるという。着陸時の騒音はむしろ激化し、住民生活を破壊するだろう。
 巨大な航空機が東京上空にテスト飛行で現れた時、多くの人が感じた恐怖は、至極真っ当なものだ。都心上空新ルートは、大事故・大惨事へと直結している。安全無視の都心新ルートは百害あって一利なし。絶対に許してはならない。
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