スペースジェット量産停止 国産機開発計画が完全に破産

週刊『三里塚』02頁(1041号01面03)(2020/06/08)


スペースジェット量産停止
 国産機開発計画が完全に破産

(写真 三菱航空機のスペースジェット)


 三菱重工は5月11日決算会見で、スペースジェット(旧MRJ)開発予算を前年度の1400億円から600億円程度に削減し、子会社の三菱航空機の人員を半減することを発表した。国産ジェット開発計画は事実上完全に破産したのだ。
 スペースジェットについては、北米市場向けとする70席クラスの新機種の開発計画を見直すとともに、納入を計画してきた従来機90席クラスの「M90」の量産を停止する。「M90」は、納期をすでに6回延期し、米航空局の型式証明のために試験飛行を行っていたものだ。
 三菱航空機は、「M90」を米国型式証明が出たらすぐに受注に応じられるよう、見切り発車の量産体制に入っていた。「M90」は、全日本空輸(ANA)などで約300機の受注残があると言われているが、世界的な航空会社の経営危機が不可避となる中で、大量の新型機購入など論外となった。

費用累計1兆円

 日帝は、敗戦による航空機生産の解体をのりこえるべく国産機開発を計画したが、60年代のYS11で一度失敗している。それは、時代遅れのプロペラ機が市場で売れなかったというマーケッティングや経営の失敗と言われている。しかし、根底的な原因は先端技術産業での米帝の力量の大きさ、日帝の航空市場の狭さと弱さ、航空産業をめぐる帝国主義的争闘戦の死活性と競争の激しさなどであった。この失敗を取り戻す再度の挑戦がMRJ計画であった。
 MRJの発端は03年度の経済産業省による「環境適応型高性能小型航空機」開発計画だった。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクト募集における三菱重工の選定を経て、08年の三菱航空機の発足、当初の開発費用の総額の3分の1に相当する500億円を国が出した。大型機は米とEUで独占されているため、100席以下のリージョナルジェット小型機でなら食い込むことができるとの見通しだった。
 しかし米航空局の型式証明が得られないこと、「スコープ・クローズ」と呼ばれる労使協定によって設計変更をしたことで、納入を相次いで延期した。当初は13年の納入を計画していたものを泥縄的に6回も延期するという失態だった。このため費用は雪だるま式に増大し、累計1兆円以上となった。今年3月期は100億円の赤字。今やあまりにもデタラメで巨大すぎて、計画を清算することもできない状態だ。これに巨額の国費を投入しつづけた安倍の責任は大きい。
 コロナショックで、航空会社だけではなく、航空機メーカーや航空エンジンメーカーにも壊滅的な打撃が波及している。その矛盾の集中点が、三菱重工である。

危機の三菱重工

 三菱重工はボーイングの航空機に部品を供給している。そのボーイングが主力機「787」の生産を減産。日本では787型機の機体構造の35%を手掛けているが、20年に月産14機から10機に、22年までに7機へと引き下げる。三菱重工では、主翼などを生産する部品工場を1カ月ほど停止した。同社の「民間機事業」の19年3月期の売上高2000億円強のうち、ボーイング向けは約8割。今や在庫の山で二次・三次の下請け企業の経営も危機となっている。ボーイングとの国際分業で上げた利益をスペースジェットの開発費へと回してきた三菱重工の財政が行き詰まった。
 航空産業の経営危機は、大恐慌の爆発の焦点として深刻化する。航空産業という帝国主義の屋台骨をめぐって過剰生産による競争の激化は、各国間の争闘戦として展開されることになる。とくに航空機生産部門は、軍事に直結しており、「国力」の基盤を形成する。したがって、ここでの競争は、帝国主義的「国益」=生き残りをかけた戦争的性格を全面化させていく。
 三里塚闘争は、航空産業部門の土台を形成する巨大空港建設を阻止することで帝国主義の喉元に食らいつき、打倒する闘いだ。大恐慌は、大失業と戦争の攻撃として労働者人民に襲いかかる。世界の労働者は団結し、戦争を内乱に転化しよう。反戦・反権力闘争の砦としてその先頭に立つ三里塚闘争に勝利しよう。

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