明日も耕す 農業問題の今 水田リノベーションとは 農民に「自助」迫る菅政権

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週刊『三里塚』02頁(1057号02面03)(2021/02/08)


明日も耕す 農業問題の今
 水田リノベーションとは
 農民に「自助」迫る菅政権


 前号で、反対同盟の新年旗開きであいさつした全国農民会議・小川浩共同代表の発言を紹介したが、その時語られた「小さい農家がどんどん切り捨てられる」とはどういうことか。菅政権の農業政策を見ていきたい。

 「来年度は本当に大幅な減反を強制されようとしている」。旗開きで小川浩さんは、怒りを込めてこう語った。
 小川さんの言う「大幅な減反」とは、菅政権が「水田リノベーション」と銘打って進めている政策だ。リノベーションとは修復とか刷新という意味で、主食用米から輸出・加工用米や麦、大豆、野菜・果樹等への転換に10アールあたり4万円を助成するという。

1万円切る米価

 農林水産省は、2021年産の主食用米の需給に見合った適正生産量を693万トンと推測し、需給バランスを保つには20年の生産量と比べて全国で36万トン、約5%減らさなければならないとしている。「過去最大規模の作付転換ができなければ、需給と価格の安定が崩れて、危機的な状況に陥る」(野上浩太郎農水相)というのだ。
 とはいえ、米の主要産地での作付削減は、なかなか進んでいないのが実情だ。いくら助成金が出るといっても、主食用米ほどの収益も見込めないし、転換がうまくいくかどうかリスクも伴う。
 しかし、これができなければ、「2014年の時のように米価が1万円以下に下がるようなことになりかねない」(小川さん)のだ。この状況を小川さんは、「自分で気をつけろというコロナ対策と同じで、農民も何とか自分で勝手にやっていけ、減反しないで米価が下がったら、それは農民の責任だというようなものだ」と批判した。

輸出拡大一辺倒

 たしかに、食生活の変化や高齢化、人口減少などで、米の消費量は減ってきた。だが、米作農家を守る立場があるなら、作付転換や削減以外にもやれることはある。
 例えばアメリカでは、過剰農産物を市場から切り離すために政府が買い入れて困窮者に配っているという。農業、食料をどうするのか、その考え方が対策にあらわれてくるのだ。
 菅首相はといえば、施政方針演説で農業政策の柱に農林水産物・食品の輸出を改めて提起し、2030年に輸出額を5兆円とする政府目標に向けた実行戦略の推進に意欲を示した。輸出拡大一辺倒で、農業政策についての具体的な話は、ほぼこれに尽きるものだった。「美しく豊かな農山漁村を守ります」とも述べたが、どうやって実現するのか何の説明もない。
 他方で、有機農業や小農・家族農業が見直されている。どちらの方向に向かうのか、今年は日本農民の正念場の年だ。
 「三里塚農民が55年間真っ向から闘いぬいている、やっぱりここに労働者農民の生きていく道がある」(小川さん)。この道を進もう。菅農政にノーを突きつけ、菅政権を打倒しよう。
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