NAA「環境対策」を批判する 気候変動阻むには成田廃港を 空港拡張は最悪の環境破壊だ 世界に拡大する「飛び恥」運動

週刊『三里塚』02頁(1081号01面02)(2022/02/14)


NAA「環境対策」を批判する
 気候変動阻むには成田廃港を
 空港拡張は最悪の環境破壊だ
 世界に拡大する「飛び恥」運動

(写真 爆音と排ガスをまき散らして東峰神社上を飛行)

 NAAは昨年3月、成田空港の環境対策として「サステナブルNRT2050」を策定した。
 CO2排出量の削減、「気候変動に対応」とカーボンニュートラルの姿勢を強調し、「50年度CO2排出ゼロ」「脱炭素化をはじめとした持続可能な社会の実現に貢献」とアピールする。
 概要は、30年度目標(中期)を 成田空港が排出するCO2を2015年度比で発着回数1回あたり30%削減、2050年度目標(長期)で50%削減の数値目標を設定、そのプランを列記する。
 具体的には、①NAA本社ビルをカーボンニュートラル化する(電力の再エネ化・空調に伴うCO2排出量のオフセット〔=相殺〕)、②NAA社員のCO2ゼロ出張(テレワークの推進や低炭素交通への転換)を促進、③航空灯火のLED化、④SAF(CO2排出が少ないジェット燃料)の導入、その他。すべてにおいて特筆すべきものはなく、凡庸なものばかりだ。
 だが、NAAの「カーボンゼロ宣言」は、極めて悪質だ。あたかもNAAが環境保護に配慮し、気候変動を阻止する闘いの担い手となるかのように粉飾するものであり許すことはできない。
 また、これはESG投資・グリーン投資を呼び込もうとするNAAの必死のあがきでもある。

農民殺しの烙印

 温暖化ガスを大量排出するジェット機での移動を忌避する「飛び恥」運動がヨーロッパで定着し、全世界に拡大している。「サステナブルNRT2050」はこれを意識し、日本における環境保護意識の高まりから先行的に防衛し、空港拡張を進めるためのイメージ戦略である。浅知恵だ。NAAに「環境」を語る資格はない。
 そもそも成田空港建設そのものが、千葉県の北総地域一帯の環境を破壊するものであった。日本有数の農業地帯を空港建設によって破壊し、茨城県の一部を含む利根川流域から九十九里海岸一帯の広大な地域を航空機騒音下にした。NAA(前身の空港公団)が、自然を破壊し、住民を追い出し、国家権力を発動して土地を奪ったのだ。この「農民殺し」「農地収奪者」の烙印は、消えることはない。
 空港による住民の生活破壊は今も激しく続いており、市東さんの農地の取り上げ攻撃はその最大のものだ。
 そして今日、NAAは、「さらなる機能強化」として今秋B滑走路延伸工事着工、来年度C滑走路建設のための高谷川改修工事に踏み出そうとしている。これ自体、これまでの空港建設を凌駕する大規模工事であり、環境破壊そのものである。
 「サステナブルNRT2050」は、工事中の環境負荷低減として「排出ガス対策型建設機械等の使用を徹底」「低炭素化工法を採用(ICTの活用による省人化・高度化・効率化、重機台数の低減等)」など挙げるが、大規模自然破壊を前に問題にもならない。

CO2排出増大

 環境破壊を食い止め、気候変動を阻止するためには、成田空港拡張阻止・廃港以外にない。全世界で排出されるCO2総排出量の約24%を占める運輸部門の中で、国際航空輸送でのCO2排出量は2016年に世界全体の総排出量の約1・7%に相当する。COP25では、各国の温暖化ガス削減目標を引き上げることが合意され、増加傾向を辿っている航空機からのCO2排出量も削減対象だ。しかし民間航空の排出量だけでも、2050年までに約2〜5倍になると予想されている。07年度の「国土交通白書」には、東京と福岡の間で貨物を輸送する場合、航空機を使うとトラックに比べ輸送費が8倍、CO2排出量は10倍に増えると試算された(1月30日付「日経ビジネス」)。エンジンの改良などでは排出量を削減することはできない。「世界中を頻繁に行き交う飛行機に、気候は耐えられない」と、NPO国際クリーン交通委員会(ICCT)飛行プログラムのリーダーは言う(19年11月25日付「GLOBE+」)。
 航空部門のCO2排出量増大を背景にヨーロッパでは、鉄道輸送が見直され、航空政策そのものの変更が始まっている。鉄道における乗客1人当たりの二酸化炭素排出量は航空機の15〜20分の1以下であることを理由に、フランスでは、2020年から航空券に1人当たり最大18ユーロ(約2200円)の環境税を課し、飛行機以外の交通インフラの整備に充てる。また、ドイツでも航空券への課税を増やし、鉄道運賃への課税額を減らすことが閣議決定された。
 フランスでは、環境保護団体なども加わった40年以上の反対闘争によって18年ノートルダム・デ・ランド空港の建設計画が白紙撤回された。さらにコロナによる航空需要の減少を契機にパリ=シャルル・ド・ゴール空港、ロンドン・ヒースロー空港の拡張が見直された。
 全世界で巻き起こる空港建設阻止闘争・「飛び恥」運動とともに、NAAの環境対策のペテンを弾劾し、空港拡張・工事開始を阻止しよう。
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