成田・国家戦略特区の破綻 航空バブル崩壊し「絵に描いた餅」に

週刊『三里塚』02頁(1081号01面03)(2022/02/14)


成田・国家戦略特区の破綻
 航空バブル崩壊し「絵に描いた餅」に

(写真 1月20日にオープンした新成田市場)

(写真 国際医療福祉大学成田病院)

輸出手続き完結の新市場

 1月20日、成田市の新しい公設地方卸売市場がオープンした。元は「花植木センター」があった場所で、反対同盟の春の全国集会を何度か開催した市東さんの畑の真向かいになる。
 新しい成田市場は、全国で初めて輸出に必要な大半の手続きをこの場で完結できる「ワンストップ輸出機能」を備えている。植物防疫官や税関職員が市場に出向いて検査し、業者は市場内で輸出や衛生、原産地の各証明書などを受領できる。手続きの時間短縮で販路拡大しようというものだ。
 なぜ全国初の手続き簡略化ができたのか。実は新しい成田市場は、国家戦略特区の構想に基づく事業だからだ。
 成田市は国際医療学園都市構想とエアポート都市構想という2つの提案で2014年5月に国家戦略特区に指定された。国際医療学園都市構想のもとにつくられたのが国際医療福祉大学成田キャンパス(2017年4月に「医学部」を開学。医学部新設は国家戦略特区の規制緩和による例外)と国際医療福祉大学成田病院(2020年3月開院。土地は成田市がすべて取得した上で無償貸与)だ。
 そして、エアポート都市構想の中の農産物輸出拠点化としてつくられたのが今回オープンした成田市場だ。

「医療の海外輸出」を狙い

 たしかにハコ物はできてきた。だが、国家戦略特区は順調に進んでいるとは決して言えない状況だ。
 国家戦略特区は、2012年末に発足した安倍政権がアベノミクスと称して打ち出し成長戦略の柱として、2013年12月からスタートした。「世界で一番ビジネスしやすい環境を作ることを目的に、地域や分野を限定し、大胆な規制・制度の緩和や税制面の優遇を行う規制改革制度です」(内閣府のパンフレット)というものだ。
 これに名乗りを上げた時の成田市の資料を見ると、エアポート都市構想の中では、訪日外国人旅行者の誘致促進、スポーツツーリズムの推進、国際物流拠点としての機能強化、国際企業も含めた企業誘致促進をうたっている。国際医療学園都市構想では、医療の国際展開をはかるための人材を養成し、政府の成長戦略を強力にサポートするとか、日本型の優れた医療・介護システムの輸出に資する人材を育成するとうたわれている。ねらっていたのは医療の海外輸出であり、医療ツーリズムへの参入だ。
 その後の歴史はどうなったか。アベノミクスの破綻は誰の目にも明らかだ。国家戦略特区も、兵庫県養父市の農業特区で企業の農地所有が進まず破産しているように、はかばかしい話を耳にしない。
 何より、成田の場合は、国際医療学園都市構想にしてもエアポート都市構想にしても成田空港と一体であり、航空需要の右肩上がりの増加が前提だ。

なお金儲けにしがみつく

 だが、コロナ禍をきっかけに航空需要は激減し、成田空港は廃港の危機にある。「巨大空港建設の時代」は終わったのであり、構想に掲げられたさまざまなプランは絵に描いた餅になろうとしている。
 追いつめられてなお、国家戦略特区にすがりつこうというのが昨年千葉県が内閣府に行った「成田空港周辺9市町の国家戦略特区区域指定に向けた提案」だ。
 空港周辺の9市町の広範囲に民間資本を導入した貨物基地等開発を目的に、農地や外国人労働者に対する規制を緩和させようとするもので、①成田空港周辺9市町のインターチェンジや空港ゲート等、交通の要衝周辺では土地利用規制を緩和し、物流施設等の整備を促進する、②在留資格「特定技能」に新たに倉庫業を位置づけ、外国人材を活用するとしている。
 これは、航空バブルの崩壊によって破綻しつつある成田空港の機能強化計画を後押しし、成田空港の貨物空港化を追認して、それによる利権獲得と開発利益の獲得をもくろむものだ。だが、貨物便とて右肩上がりに需要が増える展望はどこにもない。
 国家戦略特区と同じ2013年にスタートした空港機能強化は、歴史的にも現実的にも一体であり、何の展望もない。千葉県の提案がまかり通れば、機能強化は空港敷地を2倍化するだけではなく、膨大な空港周辺地域の農地を奪い、勝手に使えるものになる。
 あくまでも金もうけにしがみつく国家戦略特区と空港機能強化を徹底的に弾劾して闘おう。

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