明日も耕す 農業問題の今 飢餓輸出の道を進む日本 「世界で真っ先に飢える国」

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週刊『三里塚』02頁(1100号02面04)(2022/11/28)


明日も耕す 農業問題の今
 飢餓輸出の道を進む日本
 「世界で真っ先に飢える国」


 物価高が私たちの生活を圧迫している。肥料や飼料の高騰は農業の現場を直撃し、「やっていけない」という悲鳴があがっている。食料危機を通り越した飢餓(きが)が世界的に問題になっているが日本はどうか。
 11月21日付日本農業新聞で「飢餓輸出」という言葉が目に入った。百姓・思想家を肩書きとする宇根豊氏の論考で、宇根氏は「『高いものを生産し、自給できるのに安いものを買う』のは飢餓輸出になりかねない」と指摘する。
 飢餓輸出をネットで検索すると、「必需物資の輸入に必要な外貨を獲得するために、国民生活を犠牲にして輸出を強行すること」とある。
 飢餓輸出の大半は、帝国主義による植民地支配で現地農業が破壊され、換金作物に変えられ、食料輸入せざるを得なくなるという話であり、今に続く経済構造だ。
 また、14億人の人口を抱えるインドは、自国で国民に食料をまかなえるだけの生産規模を持っているにもかかわらず、貧富の格差拡大から起こる食料需給のアンバランスで、2億人が栄養不足の状態にあるという。IT産業の輸出で高い経済成長を遂げているが、富裕層の飽食の一方で、労働者階級は日常生活に必要な食料が高くて買えない状況が生まれている。これは他人事だろうか。
 11月8日、食料安保の強化や物価高騰対策など農林水産関係で8206億円を盛り込んだ22年度第2次補正予算案が閣議決定された。

輸出拡大の果て

 麦・大豆の国産化や肥料の国産化、飼料自給率の向上などに重点が置かれた内容もあるが、TPP関連対策として2704億円が計上され、2030年の輸出目標5兆円の実現に向けた「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」実施に約430億円が盛り込まれている。まさに「高いものを生産し、自給できるのに(できなくして)安いものを買う」農政だ。
 以前紹介した『農業消滅』の中で、東京大学大学院教授の鈴木宣弘氏は「日本でも飢餓になる」と問題提起した。
 鈴木氏はさらに深刻化した情勢を踏まえて、『世界で最初に飢えるのは日本』という本を著し、「食料がお金で買える時代は終わった」「日本にとって、食料危機は他人事ではまったくない。それどころか、食料自給率が低い日本は、世界で真っ先に飢える国の一つだということを、きちんと認識すべきである」と警鐘を鳴らす。
 「これを機に廃業」という農家の話もたびたび耳にする。

農業は命の源だ

 前述の宇根氏は農業や食料を工業並みの価値観で捉える「産業主義」の問題だと言う。利潤追求ではなく、命の源として農業を支えなければ、文字通り消滅の危機だ。
 本当に農地と農業を大事にしなければならないこの時に、強制的に農地をつぶすことなど断じて許されない。強制執行を阻止しよう。
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