明日も耕す 農業問題の今 戦時に国の権限を強化 食料有事法が狙う国家統制

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週刊『三里塚』02頁(1132号02面06)(2024/03/30)


明日も耕す 農業問題の今
 戦時に国の権限を強化
 食料有事法が狙う国家統制


 今回は「食料供給困難事態対策法」(食料有事法)の条文を取り上げる。前号で取り上げた食料・農業・農村基本法の第24条(不測時における措置)を具体化しようとしているこの法律の狙いは何か。
 「食料供給困難事態対策法」は7章24条で構成されていて、「食料供給困難事態対策の実施に関する基本的な方針の策定、食料供給困難事態対策本部の設置、特定食料の安定供給の確保のための措置等について定め」(第1条)たものだ。
 だが、24という少ない条文には、ひととおりのことしか書いていない。具体法でありながら、条文自体は全然具体的ではない。実はそこに意味がある。
 とりわけ許すことのできない2つの条文を取り上げたい。

地方自治を解体

 ひとつめは第11条で、国の権限強化を定めたものだ。
 6条の「食料供給困難事態対策本部の設置」を定め、本部長には内閣総理大臣がなるのだが、11条2項では「本部長は、……地方公共団体の長、……その他の関係者に対し、資料又は情報の提供、意見の表明その他必要な協力を求めることができる」としている。
 そして、「所要の措置が実施されない場合」は「必要な指示をすることができる」(第13条)とより強い規定を設けている。
 地方自治法の改悪と一体で地方自治を解体し、国が強大な権力を行使できるようにしようというものだ。

拡大解釈可能に

 そして何よりも看過できないのが第20条だ。
 「……特定食料等の価格の高騰又は供給不足が生じ、又は生ずるおそれがあるときは、実施方針で定めるところにより、関税定率法(明治43年)、生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律(昭和48年)、国民生活安定緊急措置法(昭和48年)、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成6年)、物価統制令(昭和21年)その他法令の規定に基づく措置その他適切な措置を講じなければならない」
 敗戦後の食料難の時に作られた法律など、他のさまざまな法律に具体的な内容をゆだねている。「その他適切な措置」というあいまい表現と合わせて、どこまでも拡大解釈できる措置を国の強権で行えると定めたのがこの法律なのだ。条文が少ないのも具体的でないのもそのためだ。
 そして20条の2項では具体的な措置として「配給」にも踏み込んでいる。23条では「違反行為をした者は、20万円以下の罰金に処する」と罰則規定も設けている。「協力」「指示」というソフトな言葉を使っているが、実質的には「命令」だ。
 まさに中国侵略戦争に向かって食料国家統制をはかる戦時体制づくりそのものだ。
 徹底的に暴露・弾劾し、食料有事法を廃案に追い込もう。
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