複線化費用だれが負担? 「鉄道アクセス」で矛盾・対立深まる 成田機能強化・検討会
週刊『三里塚』02頁(1161号02面04)(2025/06/09)
複線化費用だれが負担?
「鉄道アクセス」で矛盾・対立深まる
成田機能強化・検討会

(写真 国交省で第3回会合【6月5日】)
国土交通省航空局は6月5日、「今後の成田空港施設の機能強化に関する検討会」の第3回会合を非公開で開いた。会合では、NAA「ワンターミナル」化構想にもとづく新たな空港駅の整備、新貨物地区の整備などの中間とりまとめを行った。中でも鉄道による空港アクセスが、中心テーマだったが、大筋確認という以上にならず、次期開催は未定とした。
成田空港の弱点であるアクセス問題が再び焦点化している。田村明比古NAA社長は「悠長なことは言っていられない」と焦りを露わにする。
成田空港へのアクセスの不便さは新空港建設での位置決定の誤り、ずさんな計画の結果であり、成田空港の欠陥性、反人民性を端的に示している。これまでも空港アクセスをめぐっては各鉄道会社や国交省、NAA、関係自治体などの利害が対立し続けた。今後の協議でも対立は激化する。
そもそも成田空港への鉄道アクセスは 1976年までに成田新幹線を整備するという計画だった。71年に基本計画が決定された。国は、74年に空港駅の工事に着手し成田市土屋~空港間高架橋やトンネル等の土木構造物を造ったが、沿線住民の反対でとん挫した。
破綻続けた歴史
開港以降空港への鉄道アクセスを担ったのは京成電鉄だった。現在の東成田駅を空港駅として開業。しかし同駅と第1旅客ターミナルは直結しておらず、バスの利用が必要であり不評を買った。成田新幹線については、1983年を最後に工事が凍結され、87年の国鉄分割・民営化に伴って整備計画は失効した。88年6月、石原慎太郎運輸大臣(当時)は、成田新幹線施設だった高架橋やトンネル等を活用し、上下分離方式により、JR及び京成電鉄の旅客ターミナルへ乗り入れを図ること提案。91年3月に、同じく第1旅客ターミナル地下に現成田空港駅が開業し、JR東日本が成田駅から空港まで、京成電鉄は空港手前で分岐して成田空港駅まで、それぞれ乗り入れを果たした。翌92年12月には第2旅客ターミナルが完成し、空港第2ビル駅が開業した。
NAA「新しい成田空港」構想では、新ターミナルに鉄道新駅をつくり、各鉄道をこれに直結させるとともに、空港近くにある約9㌔の単線区間を複線化し、スピードアップを図ろうとする。新駅は新ターミナルの北側半分が供用開始となる2030年代中ごろまでに開業し、現在の成田空港駅を閉鎖。その後、新ターミナルの建設が進むステップ2の段階で、空港第2ビル駅も閉鎖する計画となっている。
資金不足が露呈
目下最大の問題は、この複線化の費用をだれがどれだけ負担するのかだ。国交省の試案では、工事費だけでJR・京成ともに複線化した場合に約1400億円、1社のみ複線化した時の最低が700億円かかるという。これには用地買収費等は含まれていない。この検討会には、NAA、全日本空輸、日本航空、日本貨物航空、JRや京成など鉄道6社、千葉県が利害関係者として参加しているが、いずれも費用を拠出できる財政状態ではない。NAAはC滑走路の建設費がすでに超過。19年度の計画時点で5125億円を見込んでいたが、24年度の試算では約3割増え6707億円に。用地補償や、道路など周辺環境に配慮する項目ということなので、これからの工事費はさらに増加する。さらに5月29日に発表した25年3月期通期連結決算では、純利益351億円。2期連続で最終黒字というものの、26年3月期の業績見通しは、老朽化施設の更新による安全対策などのコスト増により大幅な減益を予想。来年度営業利益は33%減の283億円、経常利益は40%減の241億円、純利益は61%減の137億円だ。
全日本空輸、日本航空、日本貨物航空などは鉄道の直接の利用者とは言えず、出資そのものが不明だ。したがって単線区間の複線化は、JRと京成の両社が実施する可能性とともに、1社のみになる場合も考えられると報道されている。
「新しい成田空港」構想は、老朽化した設備をろくに更新できないNAAが、C滑走路用のターミナル建設費用が出ないことを逆手とった起死回生のばくちに他ならない。
用地取得未完の見切り発車のあまりの破綻性に、NAAは着工儀式を工事予定地内では行えず、空港内NAA本社で行うという体たらくだ。
戦争反対、農地死守・実力闘争でNAAをさらに追い詰めよう。
(大戸剛)