明日も耕す 農業問題の今 「米の適正価格」とは? 労働者・農民、今こそ連帯を

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週刊『三里塚』02頁(1161号02面05)(2025/06/09)


明日も耕す 農業問題の今
 「米の適正価格」とは?
 労働者・農民、今こそ連帯を


 小泉進次郎農水相が推し進める備蓄米の随意契約による安値放出は、その場しのぎで見え見えの参院選対策だ。マスコミはこぞってこれをあおり立てる一方で、では「いくらが適正なのか」という議論も起こしている。
 先月、全国の新聞19紙が合同アンケートで、店頭での米の「適正価格」を尋ねた。
 「消費者の立場」で回答した人の中で最多だったのは、5㌔当たり「2000円~2500円未満」。一方「生産者の立場」での回答は「3500円~4000円未満」が最多だったという。
 また、全国約2100社の農業法人などが加入する「日本農業法人協会」の齋藤一志会長は、「私たち農家としてできれば3000円ですね。3500円を要求すると輸入がバンバン入ってきます」と述べている。3000円で良いわけはないが、高ければ輸入米に負けるという危機感だ。

大規模化の空論

 他方、元農水省官僚は、「1700円以下でも農家は十分やっていける」と言う。
 「30㌶以上耕作する農家は全体の2・4%だが、面積は44%を占めている。大きい農家のコストは小さい農家の3分の1ぐらいで、大きな農家は低コストで低い米価でも十分やっていける」。
 とんでもない机上の空論だ。
 そんな大規模経営が日本で80%、90%に拡大できるとでも言うのか。それに「実際には規模拡大すれば収入が伸びるということにはまったくならず、大規模化した農家ほど米価が下落したときの打撃が大きい」(小川浩全国農民会議共同代表)のが実態だ。

対立あおるため

 前述のアンケートを踏まえて、伊藤亮司・新潟大学農学部助教は「農家の収益確保を考えると、望ましい生産者米価の価格帯は60㌔当たり2万円が基本。これを実現するには店頭価格で60㌔5万円前後、5㌔換算で4000円超」だと指摘する。
 そして「欧州型の生産者所得補償、低所得者の食料購入を補助する米国の栄養支援プログラム(SNAP)のような「農家を支えた上で、買いやすい価格を目指すという政策ニーズが見えてくる」と説く。
 だがこれらも、農民の反乱、貧困にあえぐ労働者の反乱を抑える階級支配のための制度だ。
  日本では農業切り捨てで農民を弱体化させ、「安い米、安い食料」で労働者の「安い賃金」を可能にしてきた。
 今回の事態はそのような階級支配がもはや成り立たないことを明らかにした。中国侵略戦争に向かう中ではなおのこと、十分な農民保護(補償)、労働者支援(賃上げ)を日帝が実行することなどあり得ない。
 「適正価格」なる概念は労働者と農民を対立させ、「両者痛み分け」で抑え込むためのプロパガンダだ。「食料安全保障」ではなく、革命的祖国敗北主義の立場で、労働者と農民は「生きていける賃金」「生きていける収入」を求め、連帯して立ち上がろう。
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