明日も耕す 農業問題の今 「適正価格」で労農を分断 「食料システム法」が成立
明日も耕す 農業問題の今
「適正価格」で労農を分断
「食料システム法」が成立

「農畜産物の適正な価格」形成に向けた「食料システム法」が6月11日、参院本会議で可決、成立した。政府は売り手が価格交渉の材料にできる「コスト指標」など制度の詳細を詰めるという。適正な価格はあるのか。
この法律は「食料システム全体に関して再生産可能な価格による食料の安定供給を目指す」というものだ。農家ら売り手と買い手側に、価格交渉へ誠実に臨むことを求める努力義務を課す。
生産から小売りまでのコストの内訳を明らかにすることが土台で、コスト指標は資材費などの費用の変動を示す。
法案の審議過程では、備蓄米放出に絡めて米の適正価格を問う質問が相次いだ。
随意契約で放出した備蓄米の店頭価格約2000円が適正だと消費者が考えれば、生産者にとって「合理的な価格形成が遠のく」との指摘に対して、小泉農水相は「そうならないよう説明を丁寧に続けている」と述べた。
コスト量れるか
この論議のように、労働者と農民を対立させる。それぞれに「適正価格を決めたから我慢しろ」と飲ませるものだ。適正な価格を維持することで農家の収益も守ると言うが、「コストを計算して適正価格を決めたのだから、それでダメなら農家が怠けている」と言いなすものだ。
そもそも農産物が資材費などのコスト計算だけで推し量れるのか。多くの作物は気候に左右され、作付けも年単位。豊作、不作の波もある。それでも継続して営農できる仕組みが必要だ。何でも金に置き換えて、コストで計算するという考え方自体資本家の論理だ。
地域支援型農業
その一方でいま、地域支援型農業(CSA)に注目が集まっていると6月22日付日本農業新聞が取り上げた。
CSAとは、主に地域の中で、消費者が野菜や米などの代金を生産者に前払いし、消費者と農家がつながる仕組み。農家は営農が安定し、消費者は農家と直接関わり信頼が深まる。
市場価格とは一線を画し、CSAの農家は消費者とつながりながら再生産可能な米価を模索する。これまでは市場より高い米価だったが、逆転したケースも多い。
宮城県大崎市の農家は「長年消費者と、売って終わりという価格だけではない関係を築いてきた」と語り、神戸市の農家も「市場価格ではなく、再生産価格で売る。消費者とのつながりを大切にしているから、米価は変えない」と話す。
農業新聞の記事は価格形成の面でしか報じていないが、CSAは産直同様、生産者と消費者がつながり合うという理念こそが重要だ。だが、連携だけにとどまればこの先、食料有事法のような侵略戦争体制づくりに抗することはできない。
価格による分断をうち破り、米を農民・労働者の手に取り返し、連帯して石破打倒に立ち上がることが米問題の解決だ。