明日も耕す 農業問題の今 新法の狙いは公的種苗解体 「気候対策」、実は企業支援
週刊『三里塚』02頁(1184号02面04)(2026/05/25)
明日も耕す 農業問題の今
新法の狙いは公的種苗解体
「気候対策」、実は企業支援

(写真 一粒ずつ大切に植える)
前号では高市の成長戦略を取り上げ、「勝ち筋を定めた官民投資」という勝ち残りをかけた日帝のあがきを明らかにした。こうした姿勢は、前々号で取り上げた種苗法改悪と育苗新法にも貫かれている。
問題のひとつ、育苗新法は正式には「重要品種の育成及びその種苗の生産の振興に関する法律案」という。
「気候変動等による農業生産への悪影響が顕在化する中、我が国の食料の安定供給を確保するためには、産官学の連携の下、高温耐性・耐病性、多収性等の形質を有する重要品種を育成・普及させることが急務」だとして、政府は法案の通称を「気候変動等対応品種法案」としている。
「気候変動対策ならいいんじゃないの」という話ではない。どういうしくみをつくろうとしているのかが問題なのだ。
この法案は一言で言うと種子法廃止のさらなる改悪に他ならない。
種子法廃止後に
種子法は米、麦、大豆、その地域の特産物の種に関する法律で、優良な品質の種を安定して農家に届けるのは行政の責務だとの認識で、公的種苗の責任を明確にしたものだった。これが企業参入の障壁になるとして2017年に廃止されたが、その後も企業の参入は進まなかった。
公的種苗事業は相当な時間と労力をかけながら、比較的安く優良な品種を届けてきた。
同じことを民間企業がやれば採算があわない。
典型的な例は三井化学の「みつひかり」という品種で、種もみを作るのがうまくいかず、品種を偽って違うものを混ぜて販売していた。それがスキャンダルになり2023年に大問題になった。 この結果、三井化学は「みつひかり」の事業から撤退した。
世界に売る種を
公的種苗の中では、都道府県別に主要農産物種子計画を立て、地域に必要な種をつくってきた。多くの都道府県が種子条例のかたちで今もこれを続けている。
育苗新法では国が基本方針を出し、国家機関や地方自治体、さらに民間企業(法案には「種苗生産者」としか書かれていない)でも都道府県基本計画を作成、変更提案することができる。
計画が認定されれば、民間企業でも国の施設を自由に使え、種の登録料が減免されるなど優遇される。
新しい種を開発し、生産するのは大変なことだが、基本計画に参入することで、企業は国の力、公的種苗を担ってきた都道府県の力を存分に活用することができるのだ。
気候変動に対応した「高温耐性・耐病性、多収性」で狙うのは、地域のためではなく、世界中に売れるグローバルな種だ。公的種苗を解体してその力も活かし、企業を全面支援して世界で勝ち抜ける種を作る、成長戦略と同じ発想、めざすのは食料支配だ。
次号では、法案と共に進められている新たな育種方法を取り上げたい。