SANRIZUKA 日誌 HP版   2002/11/01〜30    

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 2002年11月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 

(11月3日) 成田空港公団の民営化案/関空支援に充当へ/特殊会社3、4年で上場(11/4日経、東京、千葉日報)

 新東京(成田)国際空港公団の民営化案が3日、明らかになった。(1)2004年度に公団から移行する特殊会社の資本金は約1000億円とし、国からの出資金のうち約2000億円を返還する、(2)免税店の直営化などで非航空収入を大幅に増やし、着陸料の値下げを目指す、(3)特殊会社に移行後、3、4年後の上場を見込む――などが柱。公団が返還する出資金は、1兆5000億円に上る関西国際空港会社の債務返済に充てることも可能になる。国土交通省は、返還金を関空支援に回す方針で、財務省と調整する考えだ。
 羽田空港に09年に4本目の滑走路が完成し、国際定期便が就航すれば、同空港にアジアの短距離路線を移し、成田空港は欧米など長距離路線専用の国際空港に特化するすみ分けも視野に入れている。
 公団に対する国の出資金は3000億円。ほかの会社と同様、株主への配当が多くなりすぎないように資本金は資産(約1兆円)の1割程度とする。出資金は既に設備投資などに使っており、新会社は数十年かけて収益から合計2000億円を国に返還する予定だ。
 羽田空港との機能分担は、成田空港の平行滑走路を現在の2180メートルから早期に2500メートルにし、ジャンボ機の発着枠容量を大幅に増やすことが不可欠。長距離路線は着陸料や給油施設便用料などで収益率が高いメリットがある。
 国交省は10月10日に成田、中部、関西の3国際空港の上下分離方式による民営化を白紙撤回し、3空港それぞれ単独での民営化案を検討していた。

【本誌の解説】
 国土交通省は成田空港の民営化を「単独上下一体」案として明らかにした。国交省は3国際空港一体の上下分離案が、関空の借金の肩代わりを成田にさせるという批判で撤回に追い込まれた。そのためか、こんどは、成田に「3空港一体の上下分離案」以上の「関空肩代わり案」を出してきた。
 政府出資金3000億円のうち2000億円を返済させる。また残りの1000億円を額面にした株式を数年後に上場し、その売却益を国の収入とし、国へ返却させる2000億円と合わせて関空返済などに使われる空港特別会計に入れることになる。額面1000億円の株が上場後、どのくらいの売却益がでるかは定かではない。羽田が国際化し、欧米便と貨物便だけが成田になりそうだ。そうすると、大赤字空港になり、配当も見込めず、額面割れということもある。しかし、現時点では、資産価値1兆円(事業コスト総計約1兆5000億円だが)であるが、年間収入が1500億円なので、その株式価値は5000億円と試算されている。
 つまり、国交省は株売却で5000億円(見込み)、出資金返却で2000億円、計7000億円を関空に回そうという算段である。これは、3空港一体の民営化案だと、年間154億円を成田から関空の債務返済に回す計画であったが、一時金と毎年の違いはあるが、金利を無視して計算すると45年分になる。3空港一体より成田単独民営化の方が、関空債務返済の分担が大きいということになる。これでは、関空債務返済の分担をなくしてその分を成田の着陸料の値下げを要求していた航空会社や、地域対策費を維持し、より増やそうとしていた成田市も納得はいかないと思うが、どうだろうか。単独民営化になったので、いいとするのか。それでは国交省の官僚にいいようにあしらわれた結果になりそうだ。
 この発表で羽田のD滑走路の完成が09年と正式発表となった。同時に、国際定期路線のアジア便は羽田に移し、成田は「欧米など長距離路線専用の国際空港に特化」することを「視野に入れている」とさらっと発表しているが、これは重大なことである。
 まず、完成計画を13年から09年に繰り上げたといということは、成田の暫定滑走路の2500メートル化を待てないということである。またアジア便を羽田に移し棲み分けるということは、成田離発着の半分を羽田に持っていくことになる。成田空港をアジア地域のハブ空港に使っているノースウエスト航空を除くと、ほとんどが羽田に移ることになりそうだ。成田は極端に閑散とするだろう。その時は暫定滑走路を使うこともなくなりそうだ。
 数年前に羽田国際化に関係する発表は、ことごとく千葉県が大反発していたが、堂本知事になってからは一言の異議もなくなった。国交省としては、羽田国際化をこの時期に一気に進め、既成事実化していく算段だ。

(11月7日) 木の根の元小川七郎さんの住居強制執行(11/8朝日、読売各千葉版)

 新東京国際空港公団は7日、成田市木の根に空港公団が所有する土地・建物で、成田空港反対の過激派に所属する男性が不法に出入りしている物件について、今月13日にも建物を取り壊す方針を固めた。空港公団が取り壊すのは、85年に公団が元三里塚芝山連合空港反対同盟員から買収した空港用地内の土地(約210平方メートル)にある元同盟員の住居。
 買収後、元同盟員の知人だった過激派の男性が明け渡しに応じなかったことから87年、空港公団は千葉地裁に提訴した。89年に明け渡しを命じる判決が出たが、男性が控訴し、91年に判決が確定した。しかし、男性はその後も明け渡しに応じなかった。
 こうした事態を受けて空港公団は10月23日、千葉地裁佐倉支部に明け渡しの執行申し立てを実施した。男性が応じなければこの13日にも執行官が土地建物の明け渡しを執行する。空港公団は執行を待って速やかに建物を取り壊す方針だ。

【本誌の解説】
 木の根に在住しているのは、反対同盟の小川陽一さんだ。小川七郎さんの次女の照子さんと87年に結婚し、照子さんの実家である七郎さん方に住んでいる。当時、七郎さんは、代替地の富里町七栄に移転する以前で、まだ木の根に住んでいた。
 その後15年間、小川陽一さんは木の根に住んでいる。「不法占拠」を理由に、住居の明け渡しを強制執行し住居を取り壊すことは、居住権の侵害である。
 反対同盟は午前9時、鈴木幸司さん宅の隣に立つ菱田砦前に結集し、断固、集会と抗議のデモンストレーションを行うことを決定している。
 この強制執行は、木の根の工事のためである。公団は工事車両の通路に活用したいといっている。これは横風滑走路の工事のためである。暫定滑走路への連絡誘導路(東峰から天神峰)が片側通行のため渋滞し問題になっているが、木の根の誘導路(第1ターミナルと第2ターミナルをつなぐ連絡誘導路)も片側通行なのである。それは、成田新法によって90年に撤去された育苗ハウスの土地(一坪共有地、木内秀次など)や熱田一さんの田んぼなどが誘導路の建設を阻止しているからである。公団は暫定滑走路開業によって生じた木の根連絡誘導路の渋滞解消のために、横風滑走路予定地に一坪共有地をさけて「曲げてでも、誘導路をつくる」と叫んでいる。そのために、公団は10月23日に明け渡し執行を千葉地裁佐倉支部に申し立てたのである。
 公団の意図は連絡誘導路の渋滞解消を理由にしているが、真の理由は横風滑走路の着工にある。シンポ円卓会議で脱落派は「横風滑走路予定地は、航空機の地上通路として整備する」ということを認めている。地上通路と滑走路では土木工事の違いはない。誘導路=通路の建設と称して滑走路そのものを建設するねらいなのである。

(11月8日)天神峰のフェンス問題/公団2度目の回答

 新東京国際空港公団は、10月10日の質問状(02年10月10日付日誌を参照)に対する回答を11月8日に成田市を通して送付してきた。
 前回の回答は「立体的、平面的に考慮して現在のフェンスの高さで十分効果的」ということであった。それに対する質問状は、公団の説明では滑走路面と市東方畑との高さの段差があることを認識していないこと、また現状のフェンスの高さでは、航空機エンジン噴射口がフェンスの最上部の高さから上に約0・8メートル突き出していること、そのために直接、排ガスの直撃受けること――を公団側は認識しているのか、との内容であった。
 それに対して公団は今回の回答で、「0・8メートル」ではなく「0・6メートル」突き出していると、反対同盟の主張をはじめて認めた。しかし、直撃はないので「ブラスト対策の効果は十分」というものだ。
 しかし問題は、100歩譲って、ブラスト回避板の効果で直撃はなく、ブラストは一定拡散すると仮定したとしても、現場は実際にすさまじい悪臭に覆われている事実である。「直撃」であれ「拡散」(わずかの)であれ、気分が悪いほどの排気ガスに覆われるような状態が、人体や作物に悪影響を与えることは明らかなのである。
 フェンスが数メートルかさ上げされれば、排ガスの影響は激減されることも明白である。にもかかわらず、公団が現状を改善しようとしない理由は、ジェットブラストで市東さんを追い出すためだ。
 公団は「心理的圧迫感等への影響を最小限」にするためにフェンスを低くしたとかいっているが、本人である市東さんが「高くしてくれ」と言っているのである。心理的圧迫などは問題にならないのである。

 添付資料1 公団回答文書

平成14年10月30日
 成田市空港対策部長殿
 新東京国際空港公団
 空港づくり企画室

 ジェットブラストによる排ガス対策フェンスの設置と汚染調査について(回答)

 平素より、新東京国際空港の建設及び運営にご理解、ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、平成14年10月11日付け成空第631号でご依頼のありました標記の件につきましては、平成14年6月28日付け空公用用一第67号等で回答させていただいたとおりであります。
 なお、今回お問合せのフェンス関連事項につきましては、下記のとおり回答いたします。

   記

 (1)市東氏宅周辺のフェンスにつきましては、空港側ではなく市東氏宅畑側の高さに基礎を設置しております。
 (2)市東氏宅畑と空港舗装表面とでは高低差があります。その高さは、フェンス空港側の直近部分で約1.9メートルとなります。
 (3)ブラストフェンスの高さは、市東氏宅畑側の地面の高さを考慮し、高さ3.5〜4.5m(ブラスト回避板付き)のものを設置しております。
 (4)航空機(B777型クラス)のエンジン中心高さは、舗装面から約2.9メートルです。
 (5)誘導路上で停止した航空機(B777型クラス)のエシジン中心の延長線高さとフェンス上端との差は約0.6メートルとなります。
 公団といたしましては、以上の状況も踏まえ平面的、立体的な条件を考慮のうえ検討を行い、日照への問題、心理的圧迫感等への影響が最小限となるよう、フェンスの高さを設定し、ブラスト回避板を設置いたしております。
 フェンス上端より航空機のエンジン中心が上方(約0.6メートル程)にありますが、このような場合は、ブラスト回避板を設置することで、ブラスト対策として十分効果があると考えております。(別図)
 当公団といたしましては、周辺住民の方への影響が最小限になるよう努力しているところであります。貴市におかれましても何卒のご理解をお願い申し上げるところであります。

 添付資料2別図

(11月12日) 暫定滑走路 離陸滑走中に貨物扉開く警告(11/13読売社会面、毎日千葉版、千葉日報)

 12日午後5時20分ごろ、成田空港の暫定平行滑走路を南に向け離陸滑走中の香港行きキャセイパシフィック航空521便(エアバス330、乗員・乗客172人)で、貨物扉が開いていることを示す警告ランプが点灯したため離陸を中止。同機は滑走路南端から約100m付近で停止した。けが人や機体の損傷はなかった。安全点検したうえで約2時間後に離陸した。同航空は警告ランプの誤表示と話している。
 同空港での航空機の離陸中止は、今年4月オープンした暫定平行滑走路では初めて。

【本誌の解説】
 離陸中止の原因は計器の故障で、南端100メートル手前でストップし、事なきを得た。しかし離陸中止が数秒間遅れていたら大惨事になりかねない事態だった。オーバーラン帯を越えて県道(付け替え道)や東峰神社付近に激突する事態もあり得た。
 航空機は離陸時のスピードが時速150〜200キロ。1秒間で約40〜50数メートル進むことになる。暫定滑走路は非常に短いので、離陸機がトップスピードに入ってからの離陸中止は不可能だ。また、暫定滑走路は短いだけでなく、アプローチエリアがゼロに近い。安全性という観点からは論外の設計である。
 通常、滑走路は先端から1000メートル前後はアプローチエリアとして無人帯にする。それは離着陸時の事故防止のためだ。
 アプローチエリアが十分に確保出来ていれば、離陸中止などによる大事故は起きにくい。しかし暫定滑走路の場合は、ただちに大惨事となりかねない。この航空機を操縦していた機長も、暫定滑走路ゆえに、離陸中止の判断にはさぞかしプレッシャーがかかっただろう。

(11月13日) 芝山鉄道の利用者 見込みの2割以下 (11/13朝日千葉版)

 成田空港内の京成東成田駅と芝山町香山新田の芝山千代田駅間(2・2キロ)を結ぶ第三セクター芝山鉄道の1日の利用者が、同社が採算ラインと見込んだ5400人を大きく下回る約1000人にとどまっていることがわかった。
 10月27日に開業して2週間余り。開業初日は芝山千代田駅に3615人の乗降客があり、日本で一番短い鉄道として鉄道ファンらでにぎわったが、その後は伸び悩んでいる。9日の利用者は585人だった。利用者のピークは午前8時からと午後6時からの30分間だが、それぞれ約100人が利用する程度だ。
 同鉄道は空港建設に伴う地域振興策として、25年前に国が約束した。同駅近くの整備場地区には、航空会社などの従業員約4千人が働いているが、マイカー通勤などが多いとみられている。同駅の平日の定期券利用者は500人に満たない。
 同社は、同地区の通勤者たちにまだ浸透していないとみており、今後の利用者の増加に期待している。
 芝山町の相川勝重町長は「まだ全体的に周知されていない。航空博物館などの施設や空港南側の特性をPRして集客に協力したい」と話している。

【本誌の解説】
 予想通りだが“予測以上”の結果が出た(02年10月27日付日誌を参照)。芝山鉄道会社では、採算ラインが1日の乗降客5400人。実際はその半分ぐらいと見込んで、赤字額は月々2000万円前後と予想していた。それが1000人前後とは実に淋しい話となった。整備地区の従業員4千人に向かって鉄道利用を呼びかけるとしているが、不可能な話だ。鉄道通勤といっても、自宅から最寄り駅まではマイカーを使用するため、駅の近くに駐車場を月極で借りなければならない。これは受け入れられるものではない。また、自宅が駅に近い人は、すでに鉄道通勤を始めている。それで上記の数字なのである。
 また、芝山町民は芝山鉄道をほとんど使わないということが明らかになった。今後赤字は、月に2000万プラス1000万程度上乗せされ約3000万円となる。だれがこの赤字分を負担するのか。空港の民営化が決まった中で、開業したのはいいが、先行き真っ暗な鉄道である。

(11月13日) 7都県市首脳会議/羽田再拡張事業 堂本知事「国にビジョンない」自治体負担案を批判(日経、産経11/14)

 東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県の知事と、千葉、横浜、川崎の三政令指定都市の市長が意見を交わす7都県市首脳会議(首都圏サミット)が13日、東京都新宿区内のホテルで開かれた。ディーゼル車排出ガス規制を定める1都3県の条例施行を約1年後に控え、各首長は連携強化を確認、首脳会議の下部組織として「ディーゼル車対策推進本部」を設置することを決めた。
 また、羽田空港の再拡張事業の負担を自治体に求める案が政府内に浮上していることについて、石原知事が意見を求めたところ、千葉県の堂本暁子知事は「そもそも国は成田、羽田、関空をどう位置づけるのかといったビジョンが確立していない」と批判した。
 神奈川県の岡崎洋知事は「筋違いの話」、埼玉県の土屋義彦知事は「国の責任において整備すべき」。構浜市の中田宏市長は「まとまって拒否していくべき」などと反発した。
 これに対し、石原知事は会議終了後、報道陣に対し、「負担に反対と言うだけで計画が遅れてはいけないし、腹案はある」と述べるにとどまった。
 一方、堂本知事は「羽田空港に関して騒音の問題がある地域を回ると騒音に対して住民は神経質になっている。騒音被害のほか電波障害、落下物もある。これらの問題を共有化し、利便性も共有していきたい」と語った。

【本誌の解説】
 堂本知事は「羽田空港の騒音に対して住民は神経質」といっているが、羽田空港の国際化を承認したのは堂本知事本人である。前任者の沼田知事は、羽田国際化に全面的に反対していた。それを堂本知事が、「成田新高速鉄道の早期着工」と国の補助率アップ(18パーセントから33パーセントに)を取引条件に承認に転じたのである。堂本はこれを自慢の種にさえしている。
 しかし、成田新高速鉄道の総事業費は1286億円で、国の補助金は231億円から427億円に増えただけだ。わずか196億円である。これで県に羽田国際化の承認を取り付けられれば「安い買収費」ではある。ちなみに成田新高速鉄道の地方分担金で、成田市が請け負う金額は92億円。その2倍程度の金額で、堂本知事は「羽田空港国際化反対」という千葉県の積年の旗印を引き下ろしたのである。
 千葉県は、羽田の国際化で騒音地区も増大する。自分が蒔いた種を人の責任しているような話だ。一方、堂本知事は「国は成田、羽田、関空のビジョンが確立していない」と毒づいているが、それはその通りだろう。国交省には空港の建設計画と建設過程についての定見がないことは周知の通りで、事実としても大失敗の歴史を重ねてきた。
 ただしこの会合で横浜の中田市長が「アジアなどの短距離の国際線は羽田、欧米便が成田」と発言したが、国交省も現在は同じ考えだ。
 堂本知事がこの期に及んで国交省を「批判」する本当の理由は、成田空港関連の利権で自分が羽田国際化を承認したことへの千葉県民からの批判が怖いからである。

(11月13日) 木の根 土地、建物明け渡し執行(朝日、日経の各社会面、朝日、毎日、東京、産経の千葉版、千葉日報)

 新東京国際空港公団は13日、成田空港用地内にある空港建設反対派の男性が不法に占拠していた公団所有の建物を取り壊した。
 この日午前10時、空港公団の申請を受けた千葉地裁佐倉支部の執行官が明け渡しの執行を開始。まずテレビや布団など建物内にある男性の所有物を撤去した。執行に抵抗して屋根にのぼった男性を執行官5人が抱きかかえて屋根からおろした。男性にけがはなかった。
 執行の終了後、空港公団が重機を使って建物の取り壊しにかかり、午後5時前に作業を終えた。今後、工事用道路などにする予定という。
 一方、執行に抵抗した男性は記者会見し「(空港公団の)話し合い路線がうそであることが証明された。これからも、一坪用地や東峰地区などの住民と共に闘いを進めていきたい」と話した。

【本誌の解説】
 当日、反対同盟は、菱田第1砦に集まり、集会・デモを行い、木の根に近い鈴木健太郎さんの畑に結集、シュプレヒコールなどで小川陽一さんを激励した。北原事務局長と小川原弁護士が現場まで出向き、強制執行への抗議を行った。(詳しくは本紙参照)

(11月18日)「再助成」の必要指摘 共生委(11/19東京千葉版、千葉日報)

 成田空港地域共生委員会(山本雄二郎代表委員)が18日開かれ、暫定平行滑走路が開業した4月から8月末までの間について調査した円卓会議合意事項の点検結果などを議題に討議した。
 点検結果では騒音下住民から要望されている民家防音工事について「恒久的再助成制度の確立が望まれる」と指摘したほか、2つの滑走路にはさまれた谷間地区で現在の騒音評価方法であるW値(うるささ指数)が逆転現象を生じた問題で「解決に向けて方針をはっきりさせる必要がある」とした。
 一方、成田空港の民営化問題では国土交通省の委員から「早ければ来年1月の通常国会に法案が提出される可能性がある」との報告があった。山本代表委員は「かなり早いテンポで進んでいるとの印象」とのべた。また、地域にとって最大の関心事である民営化後の環境・周辺対策の担保策として、法案で義務づけするとの意見について「条文はないよりあった方がいい」としたが、実効性については疑問符をつけた。

 【本紙の解説】
 今回の共生委員会は歴史的な会合となった。騒音問題で恒久的再助成制度の確立と谷間地区でのW値の逆転問題を論議し提言しているが、関心は成田空港の民営化問題である。民営化されると、国の行政を監視するという共生委員会そのものが消滅する運命にあるからである。山本代表も投げやりな態度に終始している。民営化後の騒音問題など担保するための法的義務づけについて、「実効性については疑問符」をつけたとなっているが、その通りである。民営化後の会社が利益追求のために、安全対策費と周辺対策費を削減するのは火をみるより明らかである。担保や法的義務づけ以前的に周辺対策費は限りなくゼロに近くなる。
 民営化という新課題に対して、共生委は自らの原点であるシンポ・円卓会議の合意事項の点検を続けるといっている。しかし、民営化されれば、共生委の運営経費は誰が払うのか。存在そのものが消滅の危機にさらされているといってよい。
 本紙は、民営化が安全対策費と環境対策費を削減するものだと再三再四にわたり述べてきた。このことが今回の共生委で公になったのだ。成田単独上下一体化での民営化を提言してきた小川国彦成田市長は、この問題にどのような見解をうちだすのであろうか。

(11月18日) 日本経団連/羽田国際化を提言/関空二期見直しも(11/19毎日)

 日本経団連は18日、羽田空港の国際化と関西国際空港の二期工事の見直しを求める意見をまとめた。羽田については09年までに4本目の滑走路を完成させ、増加した発着枠を国際定期便に充てるべきだと提言。関空については「1兆円にのぼる有利子負債の圧縮が最重要課題」と指摘し、07年供用開始を目指す二期工事を再考するとともに、関西、伊丹、神戸の3空港の機能分担について政府が地元や関係者と協議するよう求めている。
 意見書は「成田空港を早期に完全民営化し、その売却収入を空港整備特別会計を通じて、羽田の再拡張、そして関空の整備に充当することが妥当」としている。国土交通省の交通政策審議会航空分科会が国際拠点3空港(成田、関西、中部)の民営化を議論しており、意見書はこれに向けた日本経団連の政策提言。

 【本紙の解説】
 日本経団連の意見書は、国交省が国際3空港一体化・上下分離方式から転換した政策の基本的追認になっている。つまり、成田単独民営化、羽田国際化の早期実現、関空二期工事完成時期の変更などである。
 意見書のポイントは成田空港の売却収入を関空の整備に充てることに対する社会的批判をかわし、一方、関空二期工事完成時期を延期しながらも、工事の続行を日本経団連として要望していることである。
 国交省は当初は成田空港の民営化に反対し、それを押し切れないとみるや、3空港一体上下分離を提案した。その3空港一体が成田の利益を関空に回すことだとするマスコミの批判が高まると、こんどは成田単独上下一体を提案した。その売却益は結局、3空港一体(上下分離)で成田の利益が関空に流れる金額の数倍にもなる方式となった。
 関空の二期工事の継続と1兆円を超す有利子負債の返済という点については、国交省と日本経団連の間に立場の違いはない。

(11月21日) 千葉県幹部へのゲリラ戦闘の軍報発表される(11/21朝日、読売、毎日、日経各夕刊、11/22千葉日報)

 今月15日未明の千葉県市原市の千葉県企画部交通計画課主幹宅へのゲリラ戦闘についての「軍報」が報道機関に送られてきた。
 報道によると「千葉県収用委員会再建策動に対する鉄ついであり、暫定開港に対する怒りをこめた実力反撃」としている。(詳しくは本紙参照)

(11月22日) 成田空港の特殊会社化を了承/国交省審議会(11/23全紙)

 国土交通省は22日、交通政策審議会(国交相の諮問機関)の空港整備部会を開き、国際3空港を個別に民営化する基本方針を示した。成田は「できる限り早期に特殊会社化し、早期の株式上場を目指す」ことで委員の意見が一致。国交省は来年の通常国会に民営化法案を提出する。約1兆円の有利子負債を抱える関西の抜本的支援策は、12月にとりまとめる最終答申には盛り込まないことが確実になった。中部は、05年の開業後に改めて完全民営化を検討する。
 成田は暫定滑走路を2500メートルに延伸するという課題を抱えている。新たな投資は民営化の障害になるという見方もあるが、国交省は「全額国出資の特殊会社の下で推進することが可能」と説明し、早期整備の意向を示した。
 地元が強く継続を求めている騒音対策などは、特殊会社の業務として規定する。完全民営化後も継続させるため、指定法人化も検討する。部会では外資規制や料金規制の必要性も確認し、今後の検討課題に加えた。
 成田を運営する新東京国際空港公団は国が100パーセント出資しており、約3千億円の出資金を全額株式化すると株主資本が大き過ぎて、上場が難しくなる。国交省は、特殊会社化する前に2千億円程度を無利子貸し付けなどに振り替え、段階的に引き上げる。回収した出資金は空港整備特別会計に繰り入れ、関空の支援や羽田の再拡張に回す方針だ。

 【本紙の解説】
 22日の審議会の焦点は、@関空の支援策と民営化時期を12月最終答申に盛り込むかどうか、A成田の民営化方式と民営化後の諸問題であった。
 本紙では特に成田空港の今後について、民営化された空港は安全対策費や環境対策費が削減され、採算の合わない設備投資はあり得ないと指摘してきた。この問題が今回討議されたのである。
 問題の焦点は、暫定平行滑走路の当初計画(2500メートル)化だ。これは採算に合わない事業なので、民営化後になるとネグレクトされることは必至である。そのため、平行滑走路の整備は民営化問題と切り離し、国が行うという意見も強かった。
 しかし、結論として決定したのは、国が最大株主の特殊会社なので、国の方針は貫けるとした。ただし、株を売却したら国の権限もなくなる。すると株の売却は平行滑走路(当初計画)の完成後ということになるが、それは何十年先のことになるか不明だ。つまり、完全民営化後は、暫定滑走路を当初計画どおりに完成させる計画は最後的に放棄されることになるのである。
 審議会の議論を通して、暫定滑走路の当初計画化自体が赤字ビジネスであることが改めて浮かび上がった。09年の羽田新滑走路完成後は、成田発着のアジア便は全部羽田に移行する。この流れは市場経済である以上、止められない。21世紀の航空企業の浮沈はアジア市場の開拓がカギだと言われる。膨大な国内線と接続している羽田空港は、あらゆる面で成田より圧倒的に有利で勝負にもならない。
 また、民営化後の騒音対策費について、法的規制のかけ方や指定法人化などが検討されているが、今月18日の共生委(02年11月18日付日誌を参照)でも「実効性については疑問符」がつけられている。これは民営化でゼロ化される運命にある。

(11月25日) 横堀要塞撤去始まる(11/26毎日、朝日各全国版、千葉日報、全紙の千葉版)

 成田空港の開港前、空港反対派の拠点として機動隊と激しい衝突が繰り返された「横堀要塞」の撤去工事を25日、土地所有者だった元反対派農家の男性(49)が始めた。今年3月、新東京国際空港公団と用地売却契約を結んだ男性が更地に戻して明け渡すことになっていた。
 横堀要塞は、頑丈な鉄筋コンクリートの地上3階、地下1階の箱形で高さ約11メートル。開港前、この屋上部分に高さ20メートルの鉄塔が2度建てられ、強制撤去された。機動隊による放水と反対派による火炎瓶の応酬が繰り広げられるなど、多くの死傷者を出した反対闘争の象徴的な存在。その後は成田新法の適用をうけ、立ち入りが禁止され、廃墟となっていた。
 作業は同日早朝から始められ、ショベルカーなどが建物周囲の土を固めた後、取り壊しにかかったが、攻撃に備えて頑丈に造られた要塞の撤去には数日かかる見込み。反対派が集まるなどの混乱はなかった。

 【本紙の解説】
 この土地の所有者は脱落派の三ノ宮広である。三ノ宮が一坪共有地として提供したところに横堀要塞を建設した。今年3月、三ノ宮はこの土地の自分の持ち分を公団に売却する契約を行っていた。横堀要塞は平行滑走路(当初計画)のアプローチエリア予定地にある。平行滑走路が本来の位置に建設された場合、砦上に鉄塔が三度建てられた場合は、滑走路進入表面を破るケースも想定されていた。
 公団は暫定路開港で、騒音直下の地権者の立ち退きは必至との前提にたって、平行滑走路の当初計画工事を計画していた。このなかで三ノ宮との売買契約も成立した。契約内容には、土地明け渡しに際しての要塞解体が含まれていた。しかし、暫定路が暫定に終わったので撤去する必要もなくなったのである。
 この土地は、更地になったとしても一坪共有地である。共有権の25分の1を反対同盟・木内直さんが持っているので、進入灯などの設置はできない。
 三ノ宮広の行為は、現在もなお不屈に闘い続ける反対同盟農民に対する裏切りである。自分は闘争を放棄したとしても、闘いは今も継続しているのだ。兄の三ノ宮文男が政府・空港公団に殺された歴史を忘れたわけではあるまい。「この地に空港をもってきた者を憎む」と書き遺して自ら命を絶った文男も、草葉の陰で怒っているだろう。

(11月25日) 成田空港圏自治体連絡協/500億円を地域対策に(11/26朝日千葉版、千葉日報)

 成田空港の民営化間題で、成田空港圏自治体連絡協議会(会長・小川国彦成田市長、9市町村)は25日、成田市内のホテルで会合を開き、空港圏自治体としての意見を取りまとめた。
 民営化問題では成田空港単独で民営化、新東京国際空港公団に国が支出した出資金3000億円のうち約2000億円を国に返還することなどを、22日の国土交通省の交通政策審議会空港整備部会で正式決定した。
 これに対し同協議会では、成田空港の施設整備、環境対策が極めて不安定・不十分な状況として、「出資金は国に返還せず、1500億円を新会社へ、500億円を成田空港周辺地域共生財団等に配分し、対策に使用すること」を求めた。
 このほか、騒音・大気汚染などの対策の恒久的な制度化と予算確保の明文化、民営化後の新会社に対する地方自治体の出資を可能にすることや「新東京国際空港」の名称を「成田国際空港」に変更すること、さらに2500メートル平行滑走路の早期整備、アクセス鉄道・道路網の整備促進など全部で9項目の意見をまとめた。きょう26日に開かれる「成田空港に関する4者協議会」で小川会長から空港圏自治体の意見として発表する。

 【本紙の解説】
 出資金3000億円のうちの2000億の返済分から、500億円を地元自治体に配分せよなどと虫のいいことを要求している。
 そもそも上下分離案ではなく「上下一体・成田単独」の民営化案に最初に賛成したのは成田市の小川市長であった(02年9月11日付日誌を参照)。このときの小川市長の腹づもりは、上下一体で下物も民営化されると公共施設としての特別減税がなくなり、空港からの税収がアップするからだと言われていた。市長はその時、民営化されると周辺対策費がゼロ化するとは考えていなかったようだ。浅はかというほかない。
 国交省はこの小川市長発言を利用し、一挙に「成田単独・上下一体」の民営化論に傾いた。その結果が出資金の国への返済義務発生と周辺対策費のゼロ化である。
 「500億円」云々を要求する前に、小川市長はどういう理由で成田単独上下一体の民営化を提唱したのかを明らかにする義務があるのではないか。
 結果は、成田空港民営化によって騒音被害だけが残り、周辺対策費も限りなくゼロ化するということである。周辺対策費や地域振興策は、空港建設推進派の動力源であった。それがなくなったらどうなるか。

(11月26日) 4者協議会/「環境対策、共生策を」(11/27毎日千葉版、千葉日報)

 国と県、空港周辺市町村、新東京国際空港公団のトップが会する「成田空港に関する4者協議会」が26日、成田市内のホテルで行われた。現在検討中の公団民営化について県や市町村が「環境対策・共生策の担保を」と求めたのに対し、国土交通省は「周辺対策を義務づける新法を制定する」と説明した。
 同空港の騒音対策や地域振興策については国側と県、一部反対派が空港問題の話し合い解決を図った「シンポ・円卓会議」(91〜94年)で合意し、公団が行っている。
 この日、堂本暁子県知事と周辺市町村長は「民営化に際し対策の維持が保証されなければならない」と強調。国交省の洞駿航空局長は「新法で確保できる。法案作成の過程で県や市町村とも協議する」とした。
 ただ、法案の内容については、洞局長が「微に入りすべて条文に書き込めるわけではない。対策の詳細は法解釈で対応する」としたのに対し、相川勝重・芝山町長が「住宅2〜3次防音工事や谷間地区対策などを恒久的な制度として明文化してほしい」とするなど見解が分かれた。

 【本紙の解説】
 成田空港が民営化されたら周辺対策費はゼロ化する。どう繕っても、この帰結を隠すことはできなくなってきた。
 国交省は周辺対策「新法」を制定し、民営会社に義務付けるといっている。ところがその内容は「微に入りすべて条文に書き込めるわけではない」というもの。「対策の詳細は法解釈で対応する」と逃げの一手である。わずかな形だけの周辺対策費でも適法と「解釈」できるものを考えているわけだ。
 また、4者協の前日に自治体連絡協が決めた500億円の還付要求について、国交省は「特殊法人を民営化するときは国に出資金を返還するのが一般的だ」として拒否。また周辺対策を「恒久的な制度として明文化」することも拒否した。国交省が要求を受け入れたのは、「新東京国際空港」から「成田国際空港」への名称変更だけであった。
 空港周辺に残るのは騒音だけとなり、ますます住みづらく、無人化が加速しそうだ。利権欲しさに空港建設を推進してきた結果である。

(11月28日) 公団/2000億返還困難(11/29毎日、千葉日報)

 新東京国際空港(成田空港)公団の黒野匡彦総裁は28日の記者会見で、同公団の民営化にあたり、国の出資金3000億円の一部を返還することについて「2000億円の返還は難しい。大変な重荷になる」と語った。同公団が今後の資金調達が難しくなることなどを懸念したもので、来年の通常国会への民営化法案提出に向け、国土交通省と公団側との綱引きが展開されそうだ。
 国交省は国の出資金のうち、1000億円を資本金とする方針。残る2000億円は、財源が不足している空港整備特別会計に繰り入れる考えだが、公団側はできるだけ資本準備金などとして残すよう主張している。

 【本紙の解説】
 黒野総裁は自説をクルクル変える。これでは公団首脳陣もついていくのは大変であろう。
 民営化問題でも黒野総裁は3空港一体・上下分離案を提唱していた(02年8月20日付日誌を参照)。理由は 「成田も力に相応したコスト負担は必要」「民営化された3空港が競争可能な状態にならないと民営化の意味がない」というもの。そのため「上下分離方式には合理性がある」としていたのである。
 しかし、世間で3空港一体上下分離が関空支援策だとの批判が強まると、成田単独上下一体化が望ましいと自説を翻した(02年10月31日付日誌を参照)。その理由は「組織としての効率性と職員の士気から上下一体が望ましい」とのことであった。そして、国交省が成田単独上下一体化を決め、2000億円の出資金を国に返還する方針にも賛成していた。
 ところが黒野総裁は、地元自治体や県が2000億円の出資金引き上げをストップし「1500億円を新会社の資本準備金、500億円を自治体へ」と提案したことに乗じて「(返還は)大変な重荷」だと言い始めた。
 2000億円の返還は「新会社は数十年かけて収益から合計2000億円を国に返還する」ということだった。上下分離案では1年間に成田の営業利益のうちの165億円を関空と中部空港に回すというものだった。上下分離と一体化では空港整備費や周辺対策費の出所が違うので一概に比較できないが、出資金の返済は借入金とは違って無利子であり、20年間返済としても年間100億円である。黒野総裁は「大変な重荷」と言うが、上下分離案で自分が主張した「相応したコスト負担」とどう違うのか説明してもらいたいものだ。
 黒野総裁は暫定滑走路の延長問題で、当初は用地の取得に「期限を設ける」として、取得が無理なら即刻「北側延伸」だと叫んでいた。しかし、それが地元の批判をうけるとすぐ、「現時点では反対派農家との交渉に期限を設けない」(02年10月31日付日誌を参照)と態度を変えた。自説を頑迷にまでに変えなかった中村総裁とはあまりに対照的といえる。
 また黒野は今回、出資金のうちの500億円を地元の地域共生財団などに配分することについて「法律論として難しい」と即座に却下した。このように民営化論議は常に利権配分の論議である。その結果、残るのは安全性と周辺住民対策の軽視だ。鉄道、道路、空港民営化すべてで同じである。

(11月27日) 羽田空港など着陸料値上げへ 国交省方針(11/28朝日、千葉日報、11/29毎日)

 国土交通省は27日、空港整備特別会計(空整特会)の財源不足を補うため、03年度から羽田など全国27空港の着陸料軽減措置を一部見直し、値上げする方針を固めた。当初は騒音問題を抱える大阪(伊丹)空港を値上げし、年間約100億円の環境対策費を捻出(ねんしゅつ)する方針だったが、航空各社の反発が強いため伊丹は小幅の値上げにとどめ、不足分を羽田などの値上げで補う。
 国交省は27日、02年度補正予算で国際3空港の整備費など空港関係で594億円の国費を要望したが、「補正を織り込んでも、03年度の空整特会には100億円強の財源不足が生じる」(航空局幹部)としている。
 着陸料を3分の2に軽減する措置は、地方路線維持のため、新千歳や福岡など国が管理する地方空港(2種A)などで99年度から実施している。01年度からは羽田も、幹線をのぞき軽減対象になっており、値上げすれば羽田発着のすべての地方路線に影響が及ぶ。02年度の軽減額は292億円に達する見込みで、うち羽田分が約80億円を占める。
 値上げ幅などについて国交省は27日、航空各社に複数の試算を示した模様だ。「伊丹の環境対策費の名目で関西空港を救済するより、羽田再拡張に協力する形の方が利用者の理解を得やすい」(大手幹部)との見方もある。着陸料が値上げされれば、運賃値上げの可能性が高い。

 【本紙の解説】
 空港整備特別会計(空整特会)の財源不足は深刻である。同会計の借入金総額が1兆円を超え、返済金の額が現状からさらに年間100億円程度増える見込みだからである。
 その財源として、当初は伊丹の着陸料値上げを提案していた。理由は、空港特会の借入金の最大項目が関空建設であり、その関空の赤字の要因は、伊丹を廃港せず運営しているからだとしている。それで伊丹の利用者1人あたり500円から600円の負担増を決めた。しかし、この方法への批判が強く、結局羽田に地方空港から乗り入れている地方路線の「着陸料軽減措置の一部見直し」に行き着いた。
 軽減措置とは、幹線をのぞく地方路線の維持のために現在行われている措置である。これを早期に撤廃すると、離島などの地方路線から空港会社の撤退を促進することになる。
 伊丹―羽田などの幹線は運賃値上げになるが、そもそも赤字の地方路線は運賃値上げでは対処できず、かなりの路線が廃止になる。
 国交省の空港整備の破産・失敗を離島などの交通不便な利用者に押しつけることになりそうだ。この間の国交省の航空政策、空港整備計画は、批判されるとすぐ撤回する。そうして批判がでにくい離島路線などの廃止とか、騒音対策費などの削減に政策転換し、年間100億円の増収を確保しようという、とんでもない結論に近づいている。

(11月28日) 空港制限エリア出入パス統合へ(11/29朝日、読売各千葉版)

 新東京国際空港公団が、成田空港の「制限エリア」に出入り可能な職員パスを統合するため、IC化を検討している。折しも警備員らが、職員パスを悪用して覚せい剤を密輸していた事件が発覚したばかり。IC化では密輸の防止に不十分なため、同公団などは引き続き、制限エリアの出入り方法を検討していくという。
 空港公団は今年1月、パスの画一化などを目指し、税関や入管などと協議を開始。紛失時の不正使用防止や記録を残すことなどを目的に、IC化を決めた。
 IC化の時期は未定で、パスの使用者による密輸防止には不十分だ。このため空港公団などは事件後、担当者らが対策会議を始めた。空港公団は「今回の事件を教訓に総力をあげて見直す」としているが、具体的な検討はこれからだ。

 【本紙の解説】
 職員パスをIC化しても密輸は防げないが、それを理由にIC化をいそぐ理由はゲリラ対策である。イラク戦争開始情勢の中でアルカイダが、ターゲットは米国だけでなく、米国の友好国にもゲリラ戦を行うと宣言し、すでにイスラエルなどにゲリラを敢行している。次はもっぱら日本と言われており、その具体的ターゲットの第一候補は成田空港となっているのである。そのために職員の空港内部施設の出入りを厳しくすることが喫緊の課題になっている。

(11月29日) 地方11空港、新設・拡張を凍結(11/29日経)

 国土交通省は03年度から、地方空港の新たな建設や拡張を停止する。びわこ空港など建設が計画されているが未着工の11空港は事業を取りやめる。中長期的に採算が合わないため。空港整備の財源を羽田の再拡張や中部国際空港など効率の高い都市部の拠点空港に集中的に投下する。
 白紙に戻す事業は新設がびわこ(滋賀県)、播磨(兵庫県)、小笠原(東京都)、新石垣(沖縄県)の4空港、滑走路の延伸や増設といった拡張が新千歳(北海道)、秋田、山形、福島、新潟、佐渡(新潟県)、福井の7空港。一方、神戸、静岡などすでに着工済みの4空港の新設と、高知など13空港の拡張事業は予定通り進める。空港建設費の財源である空港整備特別会計は、主に航空会社が支払う着陸料が支えている。収入が維持費を下回るような地方空港が増えれば、特会の資金繰りが苦しくなる。地方空港の利用状況は低調で、半分以上が国交省の予測を下回っている。

 【本紙の解説】
 空港整備特別会計の破綻で、11空港の建設や拡張が取り止めになるようだ。デタラメな需要予測データに基づいて空港建設を行ってきたつけが回ってきたのである。
 成田空港の周辺対策費がゼロ化するのも、空整特会の破綻が原因である。とりわけ成田空港の周辺対策費は累計3000億円を超える。地方空港が2つぐらいできる金額だ。それは周辺自治体、住民を空港建設賛成派に仕立てるためであった。その財源が枯渇し始めたわけである。周辺自治体などは、住民を犠牲にした成田空港建設を積極的に推進してきた責任をどうとるのであろうか。
 内陸空港は海上埋め立て空港より建設費が安くすむ。その分を周辺住民への騒音対策費に回して騒音を「我慢」してもらったのである。しかし、その対策費が枯渇してきた。「我慢」が限界を突破し怒りに転化するまでに、そう時間はかからないようだ。空港と周辺住民とが相容れないことがますます明らかになる。成田市・小川市長もそれを「500億円」で売り込もうとしているが、むなしい努力に終わりそうだ。

(11月29日) 堂本千葉県知事、成田民営化で要望/地域の実情に配慮を (11/30読売、毎日、日経、東京各千葉版、千葉日報)

 成田空港の民営化問題で堂本暁子知事は26日、総理官邸に福田康夫官房長官を訪ね、知事と空港周辺9市町村長連名の小泉総理あての要望書を手渡した。要望書は、民営化に当たって国が一方的に決めるのではなく、地域の実情への配慮を求めている。
 この中で、成田空港の民営化についてはやむを得ないとしながらも、民営化によって従来から進められてきた基本的な姿勢が変わることのないよう強く求め、暫定滑走路も本来の計画である2500メートルの早期完成に支障をきたさないよう要望した。
 また、地域住民の犠牲の上に成り立ってきた成田空港の過去の歴史にも言及し、地域との間に取り交わされた約束が、民営化で損なわれないよう要望。今後も周辺市町村や住民の意見を尊重し、環境対策や地域共生策の確実な実施を法令に明記することなどを求めた。

 【本紙の解説】
 11月26日に4者協議会(02年11月26日付日誌を参照)の会合を行い、成田空港の民営化にともなう周辺対策について協議し、その法制化を要求することを決めた。にもかかわらず、堂本知事を先頭に首相官邸に陳情に行ったということは、4者協の結論では千葉県や周辺自治体が納得できないということを示している。堂本知事の肝煎りで発足した4者協も、実績を上げないうちに終わりそうだ。
 一方、この陳情で堂本知事が「暫定滑走路の2500メートル化」を強く要望したことを弾劾しなければならない。堂本知事は国交省、公団以上に暫定路の完全化を要求し推進している。建設利権による公共事業の要求と同じであり、地権者の苦しみを全く考えていない。堂本知事は「地域住民の犠牲の上に成り立ってきた成田空港の過去の歴史にも言及」との脈絡で周辺対策を要求したようだ。しかし、住民の犠牲は「過去の歴史」ではなく、現在の問題だ。周辺対策を要求するために「住民の犠牲」を持ち出し、自分は暫定路2500メートル化のために住民への犠牲を上乗せしようとする知事の姿勢は欺瞞に満ちている。

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