SANRIZUKA 日誌 HP版   2002/09/01〜30    

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 2002年9月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 

(9月2日) 香取郡5町長、成田市を訪問/合併の意向示す(9/3千葉日報)

 香取郡の下総・神崎・大栄・多古・栗源の5町の首長が2日、成田市役所を訪れ、小川国彦市長と懇談した。
 訪問したのは市町村合併問題に対する5町としての現状での考えを伝えるため。今回は「あいさつ程度」(司瀬力・下総町長)というが、非公式ながら成田市との合併の意向を周辺自治体が直接伝えたのは、これが初めて。
 5町では香取郡市町村会の中で合併間題について協議している。県の結びつきパターンでは、成田空港圏自治体ということで、「成田・富里・栄・下総・神崎・大栄・多古・芝山」の組み合わせ案が示されている。今回の懇談は、その方向での合併を進めるに当たって「成田市に一度もあいさつしないでは先に進めない」として申し入れた。
 栗源町と成田市の合併は県の組み合わせ案になく、空港公団が主催する「騒音対策委員会」のメンバーでもないが、空港に反対する過激派の拠点があるなど「広い意味での空港圏。五町で同一歩調でやってきたので、成田市との合併を進めたい」(齋藤豊・栗源町長)としている。
 5町では9月定例議会の中で議会・町民の考えを煮詰め、「12月定例議会までに合併協議会の設立を成田市に正式に申し入れたい」(司瀬町長)という。

【本誌の解説】
 市町村合併案として、県は成田市に印旛郡市として「成田・八街・富里・酒々井」案、空港圏都市ブロックとして「成田・富里・栄・下総・神崎・大栄・多古・芝山」案の2つの構想を提案している。
 しかし成田市は当面、合併を積極的に進めようとしていない。第3案として現状維持を主張している。その理由は成田空港から入る固定資産税だけでも年間64億円、その他の税収入をあわせると100億円を超えることにある。成田市の人口は10万人であり、1人あたり10万円になる、これをあくまで、成田市だけで享受したいということである。また、成田市との合併を望む近隣市町村の理由もこの空港からの税収入にある。
 香取郡の5市町村のなかで栗源町を除く下総・神崎・大栄・多古の4町は、空港圏都市として構想されているので、成田市訪問も理由はある。しかし、栗源町にその理由はないはずだ。栗源町は本来佐原市を中心とした、佐原市、小見川町、山田町、東庄町などの佐原・香取郡ブロックに組み入れられている。
 栗源町は町の財政難の解決策として、00年から01年にかけてボートピア(競艇場外船券売り場)の設置に動いた。その戦術として、空港反対派の拠点撤去運動を組織し、これに町民を巻き込んでボートピア設置運動にスライドしようとした。しかし、これが大誤算だった。
 まず、ボートピア業者が空港反対派との対立を恐れ、尻込みしてしまった。肝心の運輸省(当時)も、町当局が空港反対派との対立をこの問題に持ち込んでしまったことで認可できなくなり、手を引いてしまった。空港反対闘争を利権獲得に利用しようなどという、あまりにも浅はかな栗源町の思惑ははずれた。
 そもそも空港反対闘争とボートピア反対運動は別次元の問題だ。それを栗源町が利権欲しさに結びつけてしまったのだ。ボートピア誘致で動いた議員たちは地団駄を踏んだが、利権屋としても三流以下、自業自得としかいいようがない。
 99年に、空港反対派の拠点があることを口実に、栗源町の円藤章町議が「過激派排除サミット」の開催を成田市、芝山町、多古町、栗源町の4町に提案したこともあった。しかしこの提案は、成田市の小川市長に軽くいなされた。理由は、空港利権参入を画策する栗源町の下心があまりに露骨だからだ。
 今回、成田市との合併に動いた目的も空港利権にある。しかし栗源町は結局、佐原市ブロックになりそうだ。栗源町当局の旧態然とした体質が、他の市町村からも嫌われているからだ。何しろ栗源町長・齋藤豊は、ボートピア失敗の腹いせで、町民への暴力行使事件を引き起こすほどの体たらくなのである。

(9月3日) 民家の防音拡充など求め要望書/空港から郷土とくらしを守る会(9/4朝日、東京各千葉版、千葉日報)

 成田空港周辺の住民で構成する「成田空港から郷土とくらしを守る会」は3日へ民家の防音拡充と暫定滑走路の北側延長を行わないよう求める要望書を、新東京国際空港公団の黒野匡彦総裁に提出した。要望書では「空港周辺の環境基準達成率は達成期限を19年すぎた現在も35パーセント未満で推移している。民家防音対策を一日も早く達成してほしい」と要望。
 また、暫定滑走路問題については「再度北に延長されると、飛行高度が低くなる上、ジャンボ機の運航が可能になり、より大きな騒音に住民が一層悩まされることになる」としている。
 同会の木内昭博会長は「第2滑走路の延長には賛成だが、従来計画の実現を目指してほしい」と話している。

【本誌の解説】
 同会は日本共産党系の団体である。日本共産党は、空港反対闘争の初期に入り込みながら、空港建設に賛成するという歴史的大裏切りを行った政党だ。
 こんども、北側延伸反対とはいっているが、平行滑走路の当初計画の2500メートル化には賛成といっている。暫定滑走路が北に800メートルずらして作られたので、「当初計画」は実質的に3300メートルになる。これが「北延伸」以上の騒音被害拡大をもたらすことは明らかなのだ。当初計画に賛成する日本共産党の裏切り体質は相変わらずだ。

(9月5日) 成田空港国際線と国内線兼用のスイングゲート設置(9/5千葉日報)

 成田空港に国際線と国内線のゲートを兼用して使えるスイングゲートがほぼ完成、25日から使用が始まる。成田空港の国内線は、第2旅客ターミナルビルの南側にあり、出発客はバスゲートからランプバスに乗って飛行機に向かう仕組みになっている。
 そのために、バスに乗る手間や搭乗まで時間がかかるなど、旅客ターミナルビルからボーディング・ブリッジ(搭乗橋)を通して直接搭乗する国際線に比べると不便。その対策として、新東京国際空港公団は、既存の国際線ゲートを国内線と兼用できるスイングゲートの整備を進めてきた。国内線利用者もターミナルビルから直接機内に搭乗でき便利になる。

【本誌の解説】
 国内線利用者がバスでなく、ターミナルビルから直接航空機に乗り込めるようになり、便利になると言われている。しかし、現在の成田空港の最大の混雑と遅延の原因は第1ビルと第2ビル間、および第2ビルと暫定滑走路間の航空機の移動にある。スイングゲートの完成で国内線の航空機が第2ビルの南側のボーディング・ブリッジから出発しなければならなくなった。これで混雑がより拡大することになりそうだ。

(9月5日) 発着機の低周波音調査(9/5読売新聞千葉版)

 成田空港を発着する航空機からの低周波音の被害実態を把握しようと、空港公団はきょう5日まで、周辺の住宅10戸を対象に調査を行っている。12月までに、学識経験者ら5人でつくる専門委員会に調査結果を評価してもらう予定で、「必要があれば対策も検討したい」としている。
 調査は2日から始まった。地点は、A滑走路や暫定平行滑走路の飛行ルート下にある5地区など周辺4市町にまたがる。A滑走路西側の成田市三里塚地区では、公団から委託された専門家が、住宅の中と外で、上空を通過した航空機の低周波音を測定、窓ガラスや建具の振動も調べた。
 低周波音は人には聞こえにくい100ヘルツ以下の音だが、頭痛やイライラなど健康に及ぼす悪影響があるとされており、周辺住民からも被害を心配する声があがっている。

【本誌の解説】
 空港は大音響の騒音だけでなく、人には聞き取れない低周波音の巨大な音源でもある。
 公団は今年の5月に航空機による低周波発生の調査を公表している(02年5月20日付日誌参照)。そのとき、住民から「夏場での振動が多発する」といわれ、夏季に再調査すると約束していたものを今回行ったのである。低周波音が身体に重大な影響を与え、頭痛、吐き気など、健康を害することが明らかになっている。
 1〜20Hzを超低周波音、100Hz以下は低周波音と呼ばれ、両者は共に低周波音としている。1秒間に振動する回数を周波数と呼ぶ。1ヘルツの周波数の音の波長は350メートルであり、100ヘルツの音では3・5メートルになる。物体には固有な共鳴周波数というのがあり、人間にもある。ほぼ5ヘルツのときに背骨が振動するといわれている。この背骨が低周波に共鳴すると、その振動が脳に伝わり交感神経が影響を受け不眠、不快、頭痛などになり、ひどくなると自律神経失調症になる。
 低周波音は、飛行機の離陸の時だけでなく、航空機エンジンテストなどの整備点検のときも発生する。これは深夜、長時間つづくものであり、離陸時の低周波音より、その被害影響は大きいものである。
 巨大騒音も許せないが、この低周波音については、音が聞こえないことからあまり問題になっていない。しかし、健康にはより大きな悪影響がある。この低周波音から空港問題を見直す必要がある。また、その調査も、航空機が飛行していない深夜もすべきであり、飛行コースとは関係ないところでも低周波音被害があるといわれているので、飛行コース直下だけでなく、もっと広範囲で行うべきである。

(9月4日) 反対同盟/10・13全国集会の招請状を全国に発送

  招請状    三里塚芝山連合空港反対同盟

 闘う仲間のみなさん。小泉内閣は臨時国会で有事関連法案を再度強行しようと策動する一方、成田空港暫定滑走路の延伸を公然とうちだしました。私たちは十月十三日に全国集会を開催します。有事法制・改憲攻撃と闘うすべてのみなさんとともに、暫定滑走路延伸攻撃を粉砕し軍事空港建設を阻止する決意です。
 黒野匡彦空港公団新総裁が打ち出した暫定滑走路の延伸計画を絶対に許すことができません。黒野新総裁は、二五〇〇メートル平行滑走路の完成を掲げて敷地内農家に「話し合い」を強要しています。他方で「地権者との交渉と北側延伸を両にらみで進めたい」と語り、農家が「話し合い」に応じなければふたたび計画を変更し、暫定滑走路をさらに北側に延長すると脅迫しています。国交省は農家の移転を前提にした七十三億円の「平行滑走路整備費」を、来年度予算の概算要求に盛り込みました。
 暫定滑走路は平行滑走路の破綻をなんとか取り繕うとした運輸省(現・国交省)と空港公団の窮余の一策でした。民家にジェットブラストを浴びせ、上空四十メートルでジェット機を飛ばすなどは常軌を逸した暴挙です。それでも用地が強奪できないとわかると、ふたたび計画変更を口走り「こんどはジャンボ機を飛ばすぞ」と脅して移転を迫っているのです。北側に延長しても、ジャンボ機は連絡誘導路の欠陥と限界によって滑走路に来ることができません。生活破壊と脅迫による追い出し攻撃は粉砕あるのみです。
 不況は深刻さを深め、リストラと賃下げ、増税と社会保障制度の改悪が私たちの生活を脅かしています。すべてが戦前に舞い戻ろうとする動きの中で、言論を統制し、労働運動を弾圧し、土地を徴発して人民を戦争に駆り立てる有事法制の立法化が強引に進められ、朝鮮半島有事の際の兵たん・出撃基地として成田空港が指定されているのです。
 私たちは「国策」に対して闘うことの正義を確信します。「国策に歯向かうなら代執行だ」という三十年前の言葉は、「国のために土地と命を差し出せ」という戦時の言葉に替わって全国民に向けられようとしています。暫定滑走路開港の前日、読売新聞社説は「個人の権利は国益に従属する」と主張し「用地での居座りは国民的迷惑だ」と敷地内の農家を攻撃しましたが、これこそ有事法制と侵略戦争の論理なのです。
 「国益」のもとに他国を侵略して人々を殺害し、自らも殺される悲惨な戦争を絶対に繰り返してはなりません。そのために今、体を張って闘うべきなのです。
 十・一三全国集会は、朝鮮・中国、アジアに侵略するための有事立法攻撃と闘い、暫定滑走路延伸攻撃を粉砕する総決起集会です。イラク侵略戦争と自衛隊の派兵を阻止しよう。ジェットブラスト被害を防ぐための対策フェンスをなんとしても設置させ、天神峰の生活を守り抜こう。東峰神社裁判の支援を強化し勝利しなければなりません。
 暫定滑走路の開業で成田空港は矛盾をさらに深めました。空域問題と「へ」の字に曲がった誘導路に象徴される暫定滑走路の欠陥によって、航空管制の混乱と遅れが日常化しています。この現実から逃れたいという公団のあがきが暫定滑走路延伸攻撃です。
 反対同盟はこのぶざまな滑走路を閉鎖させ、軍事空港を廃港に追い込む決意です。十・一三全国集会に総結集されるよう呼びかけます。
  二〇〇二年九月四日

   記

【集会名称】
暫定滑走路延伸阻止、有事立法粉砕 10・13全国総決起集会
【日時】10月13日(日)正午
【会場】成田市東峰 反対同盟員所有地
【主催】三里塚芝山連合空港反対同盟
(連絡先)事務局長・北原鉱治 成田市三里塚115
 TEL 0476(35)0062

(9月8日) 反対同盟/一坪共有地を調査

 9月8日午後、反対同盟と顧問弁護団は空港敷地内にある一坪共有地6カ所の立ち入り調査を実施した。暫定滑走路開業後初めて調査である。
 北原事務局長、萩原進、市東孝雄、鈴木幸司、鈴木謙太郎、木内秀次、伊藤信晴さんら反対同盟員と葉山弁護士、一瀬弁護士ら計10人が立ち入り調査に参加した。滑走路運用中の調査であり、公団は管制塔と無線連絡しながらの対応であった。
 その後、市東さん宅の離れで総括会議。「闘いの拠点がまだまだあることを実感した」と北原事務局長。葉山弁護士は共有地一つ一つの現状を報告し「この調査活動は反対同盟が占有し守り抜くものできわめて意義深い」と話し、一瀬弁護士も「木の根は滑走路が寸断され誘導路も曲げられ混雑していて共有地の力を見た」と報告した。「一坪の効果をあらためて実感」(鈴木幸司さん)、「たかが一坪というが、空港用地を支配している」(伊藤信晴さん)、「『へ』の字のところは現場で見ると90度に曲がっていた。一坪運動の意義がわかった」(市東孝雄さん)、「守り続けることが勝利の道」(木内秀次さん)、「現地確認は引き続きやりたい」(鈴木謙太郎さん)と勝利を実感する報告が続いた。
 最後に萩原事務局次長が、天神峰のジェットブラスト対策フェンスの設置要求に対する成田市の対応状況を報告し、無責任な対応に終始する成田市の姿勢を批判。あらためて市の姿勢を問う質問状を届けることを確認した。(詳細は本紙参照)

(成田市に提出した質問状の全文を添付します)
………………………………………………………………………………
●質問状

2002年9月10日
成田市長・小川国彦 殿

三里塚芝山連合空港反対同盟
事務局長・北原鉱治
成田市三里塚115

ジェット噴射による排ガス対策フェンスの設置と汚染調査の件

 標記に関する8月21日付回答書を拝受しました。しかし文面には、残念ながら協議の前提をなす成田市としての誠意が感じられません。足立議員に口頭でその旨お伝えいただきましたが、書面で市の姿勢を問いたいと考えます。

 市東孝雄宅畑と誘導路には2メートルの段差が存在する事実は、小泉部長をはじめ成田市空対部が現認したとおりです(別紙図面)。
 6月28日付の公団回答書は、エンジン高が2・9メートルに対してフェンスは4・5メートルであり「現状で十分」とするものでした。回答書は2メートルの段差を考慮していません。このため現にジェット噴射はフェンスに遮られることなく、市東宅を直撃しています。段差を考慮すれば、公団の計画からしてもブラストを防ぐためにさらに最低2メートルは必要なのです。
 実態を目の当たりにした成田市としては、フェンスの高さがエンジン噴射部分に達していないこと、対策を講じるべきとの姿勢を回答書において明らかにすべきです。
 また、大気質調査についても「環境基準に適合している」と公団は回答していますが、東峰地区のおける「光化学オキシダント」と「非メタン炭化水素」は成田市データで環境基準を上回っており、成田市として問題にすべきだと考えます。

 以上、成田市回答書には自治体としての責任が感じられず、協議の前提を欠いていると考えますので、再度この問題についての主体性ある成田市の回答を、9月20日までに要望するものです。
 なお協議の場所は、農作業上時間をとることが大変厳しく、天神峰にすること、芝山町の住民が同席することは、反対同盟として取り組んでいることでもあり併せてご理解願いたいと思います。

(9月11日) 成田市長/成田空港の単独一体で民営化を主張(9/12読売千葉版、千葉日報)

 成田市の小川国彦市長は11日、成田空港を単独で全面的に民営化すべきだとの考えを明らかにした。県と成田市を含む空港周辺9市町村はこれまで、滑走路整備などを行う公的法人(下物)と、空港を運営・管理する民間企業(上物)に分離する「単独上下分離方式」を求めていたが、これとは明確に一線を画した。
 9月定例議会の一般質問の質問に答えたもので、小川市長は「上下一体の民営化が空港と地域の将来に必要。上下一体の完全民営化によって、空港機能の充実と柔軟な環境対策が取れる」と述べた。

【本誌の解説】
 国交省の「上下分離3空港一体の民営化案」は関空救済と国交省の官僚的権限の防衛という狙いがあまりに露骨なので、再検討を余儀なくされている。
 そのために、国交省は「上下分離3空港一体の民営化案」とともに、「上下分離で成田の単独民営化」、「中部を除いて成田、関空を先行実施する方法」など検討を開始した。関空の需要喚起のために、大阪空港の国内線の一部を関空に誘導する施策なども検討しているといわれている。
 しかし、国交省が検討しているいくつかの民営化案の特徴は、国交省の空港運営権限を絶対に手放さないことにある。
 成田の単独民営化といっても、上下分離論であり、事実上、空港整備・運営の権限は土地や施設という不動産を所有しているものにある。
 それに対して、成田市長の上下一体の単独民営化は国交省と対称の位置にある考え方である。空港の利益は空港整備と地元の周辺対策や環境対策に全額使うべきという主張である。成田単独であっても上下分離では、下物法人は公的法人であり、その利益の分配権限は最終的に国交省の管轄になる。その点では3空港一体でも、成田単独でも基本的構図は変わらない。
 そのために、国交省が「成田単独」の検討を開始したので、小川市長は地元に利益を還元する立場からのみ、「上下一体単独民営化」を主張しているのである。空港建設や空港運営についての見識があってのことではない。

(9月12日) <航空業界>テロの影響、深刻化 米旅客離れ止まらず(9/12朝日、読売、読売千葉版、9/10毎日)

 9・11の直撃を受けた世界の航空業界では、スイス航空とサベナ・ベルギー航空が昨年に破綻し、8月には米US航空が事実上倒産した。世界2位のユナイテッド航空も経営危機の瀬戸際に立たされるなど、状況は深刻化している。
 ユナイテッド航空は、「政府から18億ドルの債務保証が得られなければ、自力再建の道はなくなる」と異例の声明を発表した。値下げ競争による収益悪化に加え、テロ後の旅客の激減で02年1〜6月は10億ドル近い最終赤字を計上している。資金繰りは厳しく、10〜12月期に期限をむかえる約9億ドルの借金返済のカギを政府保証が握る。「倒産は必至」との観測が日増しに強まっている。
 業界は当初、今春には需要回復と期待していたが、旅客離れは歯止めがかからず、7月まで11カ月連続で前年実績割れだ。イラク攻撃への不安などから、さらに冷え込む懸念があり、「回復は03年後半以降」との見方も広がっている。
 需要不振は、航空業界だけでなく、ディズニー・ワールド(フロリダ州)などの観光地やホテル業界などにも打撃を与えている。「需要を取り戻そうと値下げして、一層、経営を圧迫する悪循環」(旅行会社幹部)を生んでおり、9・11後遺症は長引きそうだ。
 日本の航空・旅行業界も、9・11の影響を引きずったままだ。日本航空は10月から、成田―ホノルル線を従来の1日4便から3便に減便する。夏休みの需要回復を見込んで8月に増便したばかりだが、乗客数は前年実績を19パーセント下回った。成田―ダラス、関西―シカゴ線などは昨秋から運休中だ。
 7月の日本人出国者数は前年比11・1パーセント減(国際観光振興会)と低迷しており「中国線などの好調な路線もあるが、景気低迷もあり、全体の回復までもう少しかかりそうだ」(兼子勲日航社長)という。

【本誌の解説】
 9・11一周年をむかえて、世界全体の航空業界は本格的危機がやってきた。今年の春には日本の航空業界、旅行業界は9・11による需要の落ち込みは02年下半期には回復すると期待していた。その見込みに基づいて暫定滑走路供用開始から中国を中心に増便をめた。しかし、航空需要は前年比で10パーセント前後のマイナスで推移している。空港運賃は約10パーセント下落している。これは国内・国際線を合わせた概算だが、日米ともにこの数字である。
 米国では、対テロ支出が1000億ドル超で米財政悪化の要因になっているといわれているが、そのうち米航空業界への支援に80億ドルが使われている。80億ドルというのは純粋の援助額で、総額では150億ドルの支援を行っている。それにもかかわらずに米航空業界は全体で2001年度120億ドルの損失になっている。実質的には支援額を合わせて270億ドルの損失である。
 日米欧ともに、航空業界全体が破綻し、倒産の現実にさらされている。日本においては、成田空港の暫定滑走路の運航状況も10月からの冬ダイヤから、減便が相次ぐ模様だ。開港当初は冬ダイヤから増便と予定していたが、そのようなことにはなっていない。
 暫定滑走路は供用開始の4月末時点では、1日約100回の発着回数で運用枠の57パーセントであった。半年後の10月末には、利用率は1日約130回強の発着で74パーセントに達すると予測していた。しかし、そのようなことはまったくあり得ない事態に、航空業界と旅行業界は陥っている。暫定滑走路はますます必要のないものになっている。

(9月17日) 定期航空協会「上下分離」重ねて批判/「成田空港は単独民営化を」(9/18朝日、東京、日経、千葉日報)

 国士交通省の交通政策審議会空港整備部会が17日に開かれ、同部会が8月に出した中間とりまとめに対する意見を航空関係団体から聞いた。航空会社でつくる定期航空協会は、成田、中部、関西の国際3空港の民営化について、同省が推す「上下分離」方式では「成田空港の企業価値が大きく減じられる」と批判し、成田単独での民営化を先行することを主張した。
 定期航空協会は部会で「上下分雄」方式をあらためて批判。関空は、成田、中部と切り離し、「完全民営化を図る方策を検討する必要がある」とし、2007年度予定の二期工事完成時期の見直しも求めた。

【本誌の解説】
 国交省の「3国際空港一体の上下分離」案はあまりに官僚的利害と権益をむき出しに防衛するものであり、評判が悪い。賛成しているのは、関空関係者と関西選出の国会議員だけである。
 それでも国交省は8月16日の交通政策審議会の空港整備部会(02年8月16日付日誌を参照)では「3国際空港一体の上下分離」を「強行突破する腹づもり」(02年8月23日付朝日新聞社説)だったらしい。しかし、強行突破は失敗し、「中間とりまとめ」では反対意見を「別添」の形で明記し、最終結論を年末まで持ち越すことになった。
 その結果として、その後、3空港一体の民営化論はほとんどの関係者が主張し、関空関係者も声をひそめている。
 国交省は3空港一体でなくとも、成田単独でもいいが、「上下分離」は譲れないらしい。「下もの」を公的法人で保持しておけば、実質的経営権と資金の流れをつかむことができるとの考えである。
 そこで、定期航空協は、「上下分離」ではなく、「単独、完全」を主張している。定期航空協にとって、成田の着陸料を何が何でも値下げしてほしいのである。そうしなければ、激しさが一段と増している航空業界の生き残り戦争で惨敗しかねないからである。国交省と公団は、9・11以降の航空業界の競争が激変していた最中の昨年10月17日に、成田空港着陸料値上げをIATAに申請した。航空情勢のきびしさにまったく無自覚なのだ。(01年10月18日付日誌を参照)
 民営化問題では「3空港一体」は棚上げされ、完全民営化か上下分離かの争いになった模様である。
 しかし、民営化問題も、経営問題と資金問題だけからそのスキームが論議されており、第一義的に考えなければならない空港の安全問題は論議のテーマからはずれている。
 国交省は本来、民営化反対なのである。しかし、それは安全基準からではなく、資金の流れを国交省が官僚的につかむという目的のためである。それを成田、関空、かなりの数の地方空港の空港整備計画の失敗や経営破綻から主張できないのである。そのために、民営化反対の変形である「上下分離論」を唱えているにすぎない。
 経営の合理化、営利だけで空港を問題にした先には航空機の大事故しか待っていない。

(9月18日) 羽田―成田空港間特急打ち切り/利用者低迷で来月11日撤退(9/19東京千葉版)

 成田空港から羽田空港へ乗り換えなしで行ける京成電鉄、都営地下鉄、京浜急行電鉄の3社直通の特急(京急線内は快速特急)が、利用者の低迷から来月11日で運転を打ち切られることが18日までに決まった。
 両空港間の特急は、京急が羽田空港に乗り入れた1998年11月に運転を始め、最短1時間46分で1日4往復走っている。しかし、本数が少なく、所要時間もリムジンバスに比べ約30分長いため、京成によると、羽田空港までの利用者は1日100人足らずだという。
 10月12日のダイヤ改正で成田空港からは乗り換えが1回必要になり、約2時間かかる。羽田空港発成田空港行きの直通電車は残るが、京成線内の運転が特急から快速に変わるため、途中で別の特急に乗り換えた方が早くなる。

【本誌の解説】
 3社直通の特急電車が渋滞している高速道路を走るバスより、30分も遅い理由は、地下鉄で普通電車を追い抜く手段がないからである。
 「東京駅から直行電車が成田空港へ、羽田空港へ」というのが、次のアクセス問題であるといわれている。都営地下鉄宝町と東京駅でつなげ、直通電車を出すという計画である。しかし、このアクセスが完成しても、成田新高速鉄道とつなげる成田空港直行特急は、この京成、都営地下鉄、京急の直行電車と同じ運命になる。地下鉄区間では、特急といっても普通電車と同じなのである。
 そのために、東京(宝町)から青砥まではどうしても25分前後かかり、東京駅からの直通は便利だが、高速化は無理なようだ。すでにJRが50分台で直通電車を運転しているので、建設しても採算がとれることはない。
 成田新高速鉄道も同じ運命を歩んでいる。

(9月18日) 団結小屋5か所の使用禁止命令1年延長(9/19読売、東京各千葉版)

 国土交通省は18日、成田空港の建設に反対する三里塚芝山連合空港反対同盟と現地支援勢力の団結小屋5か所について、「新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法」(成田新法)に基づく使用禁止命令の適用期間を来年9月18日まで1年間延長すると官報で公告した。対象となるのは「天神峰現地闘争本部」(成田市天神峰)、「岩山団結小屋」(芝山町岩山)、「横堀要塞」(同町香山新田)、「三里塚野戦病院」(同町朝倉)、「菱田現地第一砦」(同町菱田)。

【本誌の解説】
 岩山団結小屋は78年5月、横堀要塞は79年2月、天神峰現闘本部は89年9月、野戦病院と菱田現地第1砦は90年2月から成田新法が適用されいる。すでに、25年、24年、13年目に入った。天神峰現闘本部は立ち入り禁止になっているが、誘導路を逆くの字にへし折っている。無人で闘いつづけている。成田新法適用の継続は、三里塚闘争が闘いつづけていることの証拠でもある。この情勢は永遠につづきそうだ。国交省と公団に三里塚闘争を解体し、暫定滑走路を当初計画の2500メートル(実質的な3300メートル)にする力はすでにない。

(9月24日) イラク攻撃/米航空大手首脳 国に支援求める(9/26朝日、千葉日報)

 業績不振に苦しむ米航空大手の首脳が24日、米下院航空小委員会で、税軽減や安全対策費への補助など救済措置の拡充を求めた。昨年9・11以降、旅客減、保険料の高騰、安全対策費の増加によって、「支援なしにはこれまでのコスト削減の取り組みが無駄になる」(最大手アメリカン航空のカーティー最高経営責任者)と訴えた。
 米航空業界では、今年8月に米6位のUSエアウェイズが破綻したほか、米2位のユナイテッド航空も親会社のUALが連邦破産法11条(会社更生法)の適用申請の可能性を示唆するなど、業績悪化が深刻化している。米国がイラク攻撃に踏み切れば燃料価格の上昇や旅客減などで業績不振に拍車がかかると説明。「そうした事態は業界にとって、いくつかの航空会杜が破綻に迫い込まれかねない」(カーテイー氏)と述べた。

【本誌の解説】
 イラク侵略戦争の開始直前情勢になって、全世界と米国の航空業界は倒産危機の大波に再度襲われそうだ。9・11以降、欧州のメガキャリアのスイス航空、サベナ・ベルギー航空などが倒産した。一年たち、米国第6位のUS航空が倒産、第2位のユナイテッド航空も米政府の援助がなければ倒産が避けられない状態だ。そこに対イラク戦争が開始されれば、収益は10%前後落ち込むと予想されている。これは湾岸戦争時と同じ落ち込み比率だ。
 昨年の9・11以来、米国政府は航空業界へ80億ドル(約9760億円)を直接援助した。借り入れ金保証や税の優遇などを計算に入れれば、この数倍の援助額となる。米航空業界は開戦を前に、この援助拡大を要求している。
 米政府も、戦争遂行には民間機の軍事チャーターによる兵員・軍事物資の空輸が不可欠だ。地上軍部隊の9割は民間チャーター機で空輸される。イラク侵略戦争への投入兵力は25万から10万人と予想されている。航空運輸業界の協力は絶対的で、政府としてもこの支援要求は軍事支出として出さざるを得ない。
 9・11以前は、米国はオープンスカイ政策を他国に強要し、航空業界の完全自由競争をうたっていた。いまやそんなことはお構いなしである。

(9月26日) 出発便11% 離陸に30分以上 成田空港 (9/27朝日千葉版、9/28産経千葉版)

 空港公団は26日、暫定滑走路供用スタート後、航空機が駐機場と滑走路を行き来する所要時間を調べた結果を公表した。8月の出発便の1割余りが、駐機場から実際に離陸するまでに30分以上かかっていた。誘導路の一部が狭く、航空機がすれ違うことができないといった成田空港の問題点が改めて浮き彫りになった。
 8月に離陸まで30分以上かかったケースは11%あった。昨年同月にA滑走路で同様に時間がかかったケースは2・2%だった。また、着陸してから駐機場まで20分以上かかったケースは昨年8月の1・5%に対し、3・2%あった。
 離着陸の全体平均は出発が20・7分(昨年同月のA滑走路18・7分)、到着が9・4分(同8・4分)だった。
 B滑走路が供用開始されて空港の1日あたりの発着回数は482回となり、前年より32%増えた。しかし、駐機場とB滑走路を結ぶ誘導路は1本で、航空機がすれ違うことができない。また、2本の滑走路から同時に離陸できないなどの制約もある。このためB滑走路の供用開始後、航空会社から改善を求める要望が空港公団に出ていた。

【本誌の解説】
 航空機の駐機場と滑走路間の所要時間の調査であるが、30分以上の遅れが1割となっている。成田空港全体の航空機で1割だが、実際は、そのほとんどが暫定滑走路使用の航空機である。成田空港の全体の発着便は1日約480回であり、暫定滑走路は120回前後である。つまり、暫定滑走路使用の航空機の4割が30分近くかかっている計算となる。
 2ビルの駐機場から暫定滑走路への滑走路までの渋滞と1ビルと2ビルをつなぐ木の根の誘導路も実際は1本半という状態であり、ここも渋滞がひどい。
 そのために、1ビルから暫定滑走路への2カ所の渋滞を通るために、確実に30分以上かかるらしい。
 この点からも、暫定滑走路は使い勝手が悪く、これ以上の発着便増加は無理である。
 暫定滑走路は年間6万5000回の発着ができると公団は公表している。しかし、この8月に1日120回前後で運行に支障をきたした。黒野公団総裁も「1日120回で発着枠は、ほぼ満杯」と言っている(9/28産経千葉版)。年間で約4万3000回だ。これも暫定滑走路の惨状を示すデータである。

(9月26日) 公団総裁、定例会見/公団民営化「単独」で国に求めることも(9/27読売、東京各千葉版)

 空港公団の黒野匡彦総裁は26日の定例会見で、空港公団を単独で民営化するよう国土交通省に求めることもあり得るとの考えを示した。
 民営化を巡っては、同省が成田、関西、中部の3空港を一括して扱う上下分離方式を提案しているほか、県は公団の単独上下分離方式、成田市や県経済同友会は単独の上下一体民営化を求めている。
 黒野総裁は、「それぞれ一長一短がある。公団の将来展望を踏まえ、周辺(地域)の方々の意見を参考にして意見を申し上げたい。単独民営化を主張することも、ひとつの選択肢としてあり得る」と述べた。
 また、民営化の条件として、騒音対策や共生策が担保されることや、民営化された会社が投資家に魅力のある経営形態に整備されることを挙げた。
 このほか、暫定平行滑走路の北側延伸案については、「選択肢として否定しない」としたものの、「しばらくトーンを下げておきたい」と述べ、現段階では本来計画の平行滑走路整備に全力を尽くす考えを示した。

【本誌の解説】
 国交省出身の公団総裁が、国交省の方針と異なる政策を述べるのは難しい問題である。黒野総裁が成田単独一体の民営化論を「ひとつの選択肢」としたことは、国交省と公団の政策のくい違いであり、例がないとして、新聞報道された。しかし翌日、国交省が「上下分離、3空港一体」の民営化方針を撤回、合意の上での黒野発言だったようだ。
 黒野総裁は、「周辺地域の方々の意見を参考」が、近頃口癖らしい。これは、暫定滑走路の「北延伸」問題で大失敗したことによる。
 黒野総裁は着任早々、用地交渉が進展しない場合には「北延伸」でジャンボ機が飛べる2500メートルにするとぶちあげた。しかしその後、成田市、下総町などの周辺市町村や、騒音対策協議会などから手厳しい批判を浴びた。堂本千葉県知事からも「住民の理解を得ないまま空港を建設して成田闘争が起きた。住民ときちんと話し合って方針を決めてほしい」とクギを刺された(9/14読売千葉版から)。黒野総裁は「予想と違った。北延伸が地域に浸透していると思っていた」ともらいている(同読売千葉版)。
 黒野総裁は「周辺地域(地元)の方々の意見を参考」にしなければ、右も左もわからず意見も言えない状況らしい。しかし、記者会見で「(北延伸を)選択肢として否定しないが、しばらくトーンを下げておきたい」とは、弱々しい言い訳でもある。

(9月27日) 国土交通省/国際3空港民営化、「上下分離」を白紙撤回 (9/27日経、毎日夕刊、9/28朝日、産経、千葉日報)

 国土交通省は27日、成田・関西・中部の国際3空港を上下分離方式で民営化する計画を白紙に戻す方針を固めた。成田と中部は単独民営化を軸に年内に枠組みを固める。関空は国の関与を残しながら民営化する方法を探る。成田民営化による株式売却収入を関空などの整備に回すため、空港整備特別会計(空整特会)の見直しも検討している。
 国交省は、「上物」の経営は各民営化会社が行い、「下物」は公的法人が一体的に整備、保有する計画だった。しかし、成田法人の利益で関空の負債を穴埋めするプール制で、航空各社などは「収益力のある成田の株式上場や着陸料値下げを妨げる関空救済策だ」と反発してきた。
 一方、関空会社は1兆円を超える負債と1900億円の累積赤字を抱えており、単独民営化は難しい。国交省は「下物の整備は今後も国の責任で行う必要がある」として国の関与を残す方針だ。関空単独の上下分離方式のほか、空整特会を活用した新方式も検討している。
 新方式は、空整特会のうち国際3空港整備の歳出入を別枠にすることで、将来見込まれる成田の株式売却収入やこれを担保とする借入金を関空などの整備にあてる案。いわばプール制の変形で、別枠を活用して関空の土地と負債を国が実質保有する仕組みも検討している。成田民営化の果実は羽田空港再拡張に回すべきだとの声もあるため、「羽田も4本目の滑走路完成後は国際化される」として、別枠活用の余地を残す。

【本誌の解説】
 国交省案の「上下分離、3空港一体」の民営化論はあまりに評判が悪く、計画の白紙撤回となった。このことは本誌でも予想していた(02年9月17日付日誌参照)。
 しかし、国交省としては官僚的権益を防衛するために、3空港は別個にするが、上下分離は譲らないとしていた。しかし、国交省はこの上下分離も事実上の国交省管理になるとの批判に抗しきれなかったようだ。今度は上下分離ではなく、空港整備特別会計に3国際空港の別枠を設け、それで成田の利益を関空に注入することを狙っている。上下分離による「上物」管理の民間会社がレンタル料を支払う形ではなく、一括売却でそれを空整特会の3国際空港の別枠を通して関空に回そうという案である。
 これも「買い取りとレンタル」の違いでしかなく、向こう30年から50年間、国交省が成田空港の利益を管理することには違いはない。
 国交省も民営化一方の風向きのなかで、空港の官僚的権益を守るのは大変なようだ。しかし、空港は安全性の確保が第一であり、民営化はなじまないとなぜ言えないのか。それは、これまでの空港整備があまりにデタラメで、巨大な赤字を出しつつ、ゼネコンと官僚、与党政治家が権益を享受しすぎたからである。

(9月27日) 天神峰フェンス問題/成田市回答

 9月10月付で成田市に提出していた質問状(02年9月8日付日誌参照)に対する回答が9月27日に北原さん宅に郵送で届けられた。
 内容は、成田市民の生活に関する成田市としての責任回避でしかない。
 反対同盟は質問状で、市東さん宅のフェンス問題で「成田市としての誠意」と「自治体としての責任」を質してきた。しかし、成田市は「(フェンスは)空港設置者であります新東京国際空港公団が対策すべきものと考えております」とだけ回答し、成田市民である市東さん宅の生活破壊の現状をまったく顧みない態度をとった。フェンス設置の責任が公団にあるとしても、成田市としてこの騒音とジェット排ガス被害の現状をどう考えるかを、反対同盟は質問したのだ。それに対する実質的な回答を一切拒否し、成田市あての質問状を公団にたらい回しにしただけなのである。
 公団は「平面的、立体的な条件を考慮」し「フェンスの高さを設定し、ブラスト回避板も設置」と称しているが、どう、立体的、平面的な条件を考慮したかを図面で具体的に示すことができない。市東さん宅のフェンス設置場所が、誘導路の高さより約2メートル低いという事実について説明していないのである。公団の説明(フェンス高は十分だという)に「事実と違いますね」と疑問を呈していたのは成田市空対部だったではないか。
 反対同盟は、この成田市の無責任な姿勢に対して、10月10日に成田市役所を訪れ、再度強く市としての責任を追及する。
 以下、成田市と公団の回答文書を掲載する。
………………………………………
■成田市回答文
 平成14年9月26日
 三里塚芝山連合空港反対同盟 事務局長北原鉱治様
 成田市空港対策部 部長小泉孝

 ジェット噴射による排ガス対策フェンスの設置と汚染調査について(回答)
 標記の件につきましては、再度新東京国際空港公団へ要望いたしましたところ、別紙のとおり回答がありましたのでご報告いたします。
 市といたしましては、平成14年8月21日付け成空第279号にて回答いたしましたとおり、空港設置者であります新東京国際空港公団が対策すべきものと考えております。
 なお、成田市として東峰地区の方に対し「光化学オキシダント」が環境基準を達成できない日があることの説明は行っております。
………………………………………
■公団が成田市に回答した文書
 平成14年9月20日
 成田市空港対策部長殿
 新東京国際空港公団 空港づくり企画室長

 ジェット噴射による排ガス対策フェンスの設置と汚染調査について(回答)

 平素より、新東京国際空港の建設及び運営にご理解、ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、平成14年9月13日付け成空第511号でご依頼のありました標記の件につきましては、平成14年8月14日付け空公空技一第1001号で回答いたしたとおりであります。
 既に下記の対策を講じているところでもありますので、ご理解を賜りますようお願いいたします。

 記

 市東氏宅周辺のフェンスにつきましては、平面的、立体的な条件を考慮のうえ検討を行い、日照への問題、心理的圧迫感等への影響が最小限となるようフェンスの高さを設定し、ブラスト回避板も設置いたしております。
 当公団といたしましては、周辺住民の方への影響が最小限になるよう努力しているところであります。
 貴市におかれましても何卒のご理解をお願い申し上げるところであります。

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