SANRIZUKA 日誌 HP版   2003/04/01〜30    

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 2003年4月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 


(4月1日) 新東京国際空港公団新年度予算/総額2529億円に(4/2毎日、産経各千葉版、千葉日報)

 新東京国際空港公団は1日、03年度予算を発表した。3月31日に国土交通省の認可を受けた。総額は前年度より185億円多い2529億円(前年度比7パーセント増)。うち建設事業費は951億円で過去5番目の高水準になった。4年ぶりに概算要求した平行滑走路整備費73億円が認められたほか、昨年の暫定平行滑走路オープン以降の増便にともなう誘導路・駐機スポット新設や第1旅客ターミナルビル増築の本格着工が重なったためだ。
 公団によると、予算の内訳は建設事業費に加え借入償還費517億円、業務費942億円。建設では本来計画の2500メートル平行滑走路の整備費73億円を計上した。今年度中に未買収地が取得できた場合、敷地造成、舗装に着工するためで、「用地取得交渉がまとまるまで他の名目では使わない」としている。
 また誘導路・駐機スポットの新設に98億円。暫定滑走路オープン以降「地上で飛行機が渋滞する」と指摘されているため、本来の横風用滑走路を未買収地を避ける形で延伸し誘導路として整備する。

 【本紙の解説】
 まだ、用地確保もできていない暫定滑走路の延長工事のために、予算を早々とつけた。空港建設は地権者の合意を得て用地を確保してからするとしたシンポ・円卓会議の確約はどこへいったのか。
 また3月28日に公にした黒野総裁の書簡(03年3月28日付日誌を参照)で暫定滑走路建設について「計画を一方的に策定し、賛否も問わない一方的な手法でした。身勝手な手法で多くの問題を作り出したことをおわびしなければならない」と謝罪したことは、一体何だったのか。また「早期に暫定滑走路の北側延伸に踏み切る考えはない」との明言は何だったのか。
 これで黒野書簡は、暫定滑走路の2500メートル化のための話し合いのきっかけづくり、そのためのウソの「謝罪」であることが明白になった。黒野総裁は、自分が動けば農民の怒りがますます膨らんでいる現実を理解していないようだ。

(4月1日) エア・カナダが破綻(4/2朝日、毎日、日経各夕刊)

 カナダ最大の航空会社エア・カナダは1日、トロントの裁判所に債権者調整法に基づく会社更生手続きを申請した。
 イラク戦争などに伴う航空需要の大幅減少で採算見通しが悪化したためとみられる。イラク戦開始以来、世界の主要航空会社の経営破綻は初めて。戦争の長期化で旅客の減少が続けば、さらに破綻企業が増える公算が大きい。
 エア・カナダの昨年末時点の負債総額は長期・短期合わせて約70億カナダ・ドル(約5700億円)。定期便の運航やマイレージ・サービスなど顧客向け営業は続けるとしており、裁判所の監督下で再建を目指す。
 同社はカナダを代表するいわゆる「フラッグ・キャリア」。北米を中心に世界約150都市に乗り入れ、成田、関西両空港とバンクーバー、トロントとの間に1日計3往復の直行便もある。

 【本紙の解説】
 全米2位のユナイテッドエアが倒産し、全米1位のアメリカンエアがかろうじて倒産を回避した直後に、カナダのナショナル・フラッグ、カナダエアが倒産した。イラク戦争の開始で世界の航空会社の半分が倒産すると言われるが、それが始まったのである。今後、各国のナショナルフラッグは倒産するか、政府支援による国家管理の航空会社になるか、どちらかの道しかない。
 現在、全世界の航空資本は、実質的な航空需要の2倍近い輸送力(旅客・貨物の双方で)を持っている。したがって、航空資本の半分が倒産するまで、この事態は続く。
 しかし、ナショナルフラッグと言われる大航空会社は、それぞれの国で軍隊を構成する巨大な要素となっている。民間航空会社なしに、現代戦争の兵員と物資の輸送はできない。戦争の開始・継続に民間航空は絶対に必要なのである。米国でアメリカン航空を破産させなかったのは、そのことが大きな要因である。

(4月2日) 米航空会社支援/米大統領、議会に航空業界の支援見直しを要求(4/3日経、毎日各夕刊、4/4日経)

 フライシャー米大統領報道官は2日の記者会見で、イラク戦争が米航空業界に及ぼしている影響について「まだ深刻な状況にはなっていない」と語った。米議会で進んでいる30億ドル(約3570億円)規模の業界支援法案については「支援額が過剰ではないか」と述べ、米議会に支援内容の見直しを求めた。
 米議会では上院が小委員会段階で35億ドル(約4170億円)、下院でも32億ドル(約3800億円)の航空業界救済のための関連法案を承認。委員会や本会議での審議に進む見通しだ。これに対し、フライシャー報道官は「税金の使い道には注意が必要だ」と強調。原油価格の下落で直近ではジェット燃料の価格も低下していることなどから「大統領は30億ドル規模の支援策を行き過ぎと判断している」と語った。今後の審議での修正を求めているが、議会側がこれに応じるかどうかが焦点になる。仮に議会が30億ドルの支援策を両院で可決した場合、大統領が拒否権を発動するかどうかは不透明だ。

 【本紙の解説】
 民間航空会社が巨大な軍事力であることをブッシュ政権は知っている。そのために、航空会社の政府支援はイラク戦争の戦費から支出しようとしている。ブッシュが3月24日にイラク戦費として総額747億ドル(約9兆円)の補正予算を議会に要請した。航空会社への支援もこの中に含まれているのである。航空会社が軍隊のひとつだとしても、航空業界が要求している90億ドルは現在の米国の財政赤字の中で出せる額ではない。上院共和党指導部は28億ドルまでを容認していたが、イラク戦局の長期化の中で、イラク戦費として第2次・第3次の補正予算要請がすでに問題になっている中で、そのレベルも出せなくなっているのである。
 これは、ブッシュ政権が航空資本全体を倒産から守るといういままでの方針を転換させたことを意味している。数社が生き延びればいい、半分は倒産させるという方針に転換したのである。これは米国だけでなく、全世界の航空業界全体が厳しい大再編過程にたたき込まれたことを意味する。
 航空資本、空港、旅行業界の全体が、これまで通りに立ちゆかなくなったのである。
 成田空港の民営化計画は、このような航空業界の巨大な再編・変転を考慮していない。空港収入も半減する情勢である。成田空港の民営化は、失敗か延期の道を歩んでいるようだ。

(4月3日) SARS、厚生労働省/新型肺炎を新感染症認定、外務省/広東、香港の渡航延期を勧告(4/3、4/4全紙)

 新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)が世界的に広がっている問題で、日本政府は3日、患者の強制入院も可能となる「新感染症」として取り扱う一方、感染の中心地である香港と中国広東省への渡航延期を勧め、国内空港の検疫体制を強化するといった緊急対策を決めた。
 厚生労働省がSARSを「新感染症」として取り扱うことを決めたことで、患者を診断した医師は厚労省への届け出が義務づけられる。患者が診察や入院を拒んだ場合は、都道府県知事の権限で強制的な健康診断や入院などの措置もとることができる。
 厚労省はまた、香港と広州空港から日本に到着するすべての航空機の乗客に、発熱や激しいせきなどの症状の有無を記入する問診票や、帰国後10日以内に症状が出た場合、医療機関が受け入れ態勢をとれるように受診前に連絡することを求めるカードを配る。
 地方空港を含め、国際線の発着がある空港での検疫体制も強化する。
 一方、外務省は3月中旬から、渡航にあたって注意を呼びかける「スポット情報」を出していたが、今回初めて「危険情報」に切り替えた。危険情報は通常、治安情勢の悪化などが理由で出され、感染症だけで出すのは今回が初めて。
 同省は今回の危険情報について、中国の広東省と香港について「渡航の是非を検討し、不要不急の渡航は延期を勧める」と付け加えた。4段階のうち危険度は下から2番目だが、従来の第2段階より強めた表現だとしている。
 同省では2日、世界保健機関(WHO)が渡航延期を勧告したことを受け、関係省庁と対応を協議したが、同日の段階ではWHOの渡航延期勧告を紹介するスポット情報にとどめていた。

 【本紙の解説】
 先月末の黒野空港公団総裁の定例記者会見で成田空港は「イラク戦争の影響で公団収入が1割ダウン」(03年3月27日付日誌を参照)といっていた。その段階ではSARSの影響はあまりなかったはずである。
 WHOはすでに3月12日の段階で、「原因不明の肺炎に関するWHOの緊急情報」を出し、「医療従事者における重症肺炎のまん延」として警告していた。しかし一部マスコミに紹介されただけだった。
 ところが3月27日に「海外旅行にともなうSARSの拡大防止対策」が出され、全世界的に問題になってきた。
 その後、日本でも外務省が「渡航延期勧告」を出した結果、カナダ、香港、中国、台湾、シンガポール、ベトナムへの路線の乗客は激減し、とりわけ、香港と広東への旅行者はゼロ化した。各旅行会社もこの2地域へのツアーを全面中止した。その結果、成田―香港線はは1日で13便もあるが、すでに半減している。まだ運航している便もガラガラである。
 イラク侵略戦争だけでも日本の航空会社と成田空港会社は青息吐息なのに、このSARSが致命的打撃になることは確実である。
 すでに暫定滑走路を使っている便は激減している。当然のことだ。中型機近距離便しか使えない暫定滑走路は、ほとんどが中国を中心にした路線で占められている。その中国路線が半減しているのである。この傾向はもっともっと進むであろう。
 また旅行業界も同じである。9・11以降、アメリカツアーは2割以上の落ち込みが回復していない。イラク戦争の開始で欧州ツアーも極端に落ち込みはじめた。唯一の活路が暫定滑走路をつかった中国旅行にあった。その中国旅行が全滅状態となってしまったのである。
 SARSはまだ原因もはっきりせず、ワクチンの生成に数年かかるともいわれている。それまでに日本の航空会社と旅行会社の倒産は間違いないだろう。
 それにしても、昨今の成田空港は異様である。イラク戦争の警備のために空港内は警官とガードマンであふれている。職員は全員、医療用マスクをしている。SARS感染で日本で一番危険なところは成田空港である。しかし、同じ成田でも空港に隣接しているホテルの従業員はマスクをしていない。空港を降りたかなりの人が成田のホテルを利用している。ホテルもSARS感染のもっとも危険なところである。にもかかわらず、商売柄とはいえマスクなしで接客している。WHOも「伝播確認地域から出発した旅行客」が感染源だといっているのだ。成田のホテルも含め空港関連は日本でSARS感染のもっとも危険なところである。
 これで成田空港の大赤字は確実になった。民営化プランにも影響しそうだ。このままの収支では民営化ができないことは明らかである。

(4月4日) 欧米航空各社、3月の輸送実績が大幅悪化(4/4日経)

 イラク戦争に加えた「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の影響で、欧米航空各社の業績不振が一段と深刻になる可能性が強まってきた。各社が相次ぎ発表した3月の旅客輸送実績はいずれも大幅に低迷。今月に入って世界保健機関(WHO)がSARSの広がる香港や中国・広東省への渡航延期を勧告したことで4月以降、さらに状況は悪化が予想される。
 米3位のデルタ航空の3月の輸送実績(有償旅客距離=乗客数×距離)は前年同月に比べ8・1パーセント減った。国際線では大西洋路線の23・8パーセント減に加え、太平洋路線も21・3パーセント減となった。5位のコンチネンタル航空は全体で8・3パーセント減、太平洋路線が21・9パーセント減だった。最大手アメリカン航空は全体で4・8パーセント減にとどまり大手の中では比較的打撃が小さかった。
 英最大手ブリティッシユ・エアウェイズ(BA)の3月の輸送実績も前年同月比で11・4パーセント減と2ケタの落ち込み。座席稼働率は6・6ポイント低下した。SARSは予約状況にも影響を与えており、BAは「現時点では収益などの見通しが不透明になった」と指摘している。
 KLMオランダ航空も座席稼働率が77・1パーセントと7・4ポイント低下。中東路線の輸送実綴が32パーセントの大幅減となったのに加え、「SARSによる需要減少が響き始めた」という。なかでもアジア路線の座席稼働率は10ポイントも低下した。
 米業界団体の米航空輸送協会(ATA)は3月前半時点で、1991年の湾岸戦争の経験をもとに、イラク戦の影響が最も大きく出るのは大西洋路線とみていた。実際にはアメリカン航空を除けば、予想以上に太平洋路線が打撃を受けていることが分かった。
 各社はすでにイラク戦争の影響を見込んで人員削減などを進めているが、SARSの影響が広がれば、さらなるリストラを迫られる可能性がある。KLMは近く数千人規模の人員削減を打ち出す考え。

 【本紙の解説】
 米国につづいて、欧州もイラク侵略戦争で航空業界への打撃は相当のようだ。欧州の航空業界はBA、エア・フランス、ルフトハンザの3社に統合されるといわれていたが、それ以上の再編になりそうだ。3社の中で生き残れるのは1社ともいわれだしている。米国でも全米第1位と第2が倒産したか倒産の憂き身をみているのである。これは3月のデータであり、イラク戦争がはじまった影響は3月の後半しか表れていないのである。これが4月には全期間、欧州―中東便の減便が影響してくるし、SARSの影響も出てくる。いずれにしろ、4月から全世界の航空会社は一変する情勢にたたき込まれることは確実である。日本の2社は欧米以上にアジア路線に依拠しており、その危機は凄まじいものになる。

(4月6日) 反対同盟、団結花見の会

 反対同盟は恒例の花見の会を三里塚第一公園でおこなった。花冷えもあり、桜は五分咲きであった。(詳しくは本紙参照)

(4月8日) 日航国際線減便(4/9朝日、日経)

 日本航空システム(JAL)グループは8日、イラク戦争や新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の影響による旅客減に対応、国際線の減便を大幅に拡大すると発表した。東京―香港線など26路線が対象で、5月の座席数は当初計画に比べ16パーセント減る。今期の大幅な減収が必至の情勢となってきた。
 特に減らすのはSARSの影響が著しい中国路線。東京―香港線は現在週21便運航、今月末から28便に増やす予定だったが、来週から7便に減らし、5月も14便にとどめる。週7便運航の福岡―香港線は来週から運休。東京―広州(広東省)線は週7便から4便に減便、大阪―広州線は運休する。イラク戦争の影響が出ている欧米・アジア路線も軒並み減便。東京発ではソウル、バンコクのアジア路線、ホノルル、グアム、ロサンゼルスの米国路線、ロンドン、パリの欧州路線などを減らし、東京―チューリヒ線は4月末に運休する。

 【本紙の解説】
 日航の減便は5月で週100便である。座席数で16パーセントの減少とは、便数としては約2割の減便となる。減便の中心が中国方面であり、成田の暫定滑走路を使った中型機が多いからである。2割の減便とは航空会社にとって、これがこのまま1年もつづけば倒産確実という数字である。しかし、この程度で収まるものではない。海外出国者などの減少率予測が様々出ているが、「日本人の中国・香港への訪問者数は、9・11対米ゲリラ後の米国への訪問者数と同程度の減少率」として前年比で最大60パーセントとしているのが多い。
 実際はもっとすごいレベルで減少している。香港便はゼロに近い形で進行している。JTBのゴールデンウイークの香港ツァーの予約も前年比12パーセントとなっている。まだキャンセルしていない人が多数いて、実際はツァーが中止になり、ゼロ化することは確実である。つまり、会社の出張その他で「決死の覚悟」でしか、いま香港に行く人はいない。
 イラク戦争の進展と朝鮮侵略戦争が現実化し、SARSのまん延で海外旅行は歴史的に例がない激甚な減少となることは確実である。
 そのために、昨今の天神峰、東峰の騒音地獄もすこしは弱まっている。

(4月8日) 厚生労働省が対策本部/空港に検疫医師を増員(4/9日経)

 厚生労働省は8日、重症急性呼吸器症候群(SARS)対策本部(本部長、坂口力厚生労働相)を設置、香港など感染地域からの便を受け入れている空港で検疫の際に帰国者の相談や診察にあたる医師を増員することを決めた。
 同省によると、現在、感染地域からの便を受け入れている空港は新千歳、仙台、成田、名古屋、関西、福岡の計6空港。広島空港は5月1日まで運航を中止しているという。
 こうした空港では帰国者からの相談で列ができるケースが多く、同省は国立病院の感染症に詳しい医師などを6空港に配備し、便が到着する時間帯に合わせて勤務させる方針。

 【本紙の解説】
 日本におけるSARS感染の最前線の位置にあるのは成田空港である。先週の4月3日で成田空港は異様であるとしたが(03年4月3日付日誌を参照)、今週はさらにエスカレートしている。さながらSARS戦争最前線のようである。堂本千葉県知事も7日の定例記者会見で、「成田空港を抱えているので感染者が出る可能性が高いと危ぐしている」と語っている。
 香港などの海外旅行がSARS感染の危険があることは確実だが、成田空港とそのエリアの立ち入りも危険きわまりないものになりつつある。成田はSARS問題でも、また米英日のイラク侵略戦争に対するゲリラ戦争のターゲットとしても、最も危険な場所になっている。公団の黒野総裁が3月の定例記者会見で成田空港の3月の収入が1割ダウンと嘆いていた(03年3月27日付日誌を参照)が、4月は何割のダウンになるのか。
 このままいけば、前年比で30パーセント近いダウンになることは確実である。来年4月からの民営化が発表されているが、予定通りにはいかないようだ。

(4月9日) IATA、成田空港着陸料引き下げを求める(4/10朝日、日経)

 航空会社273社が加盟する国際航空運送協会(IATA)は9日、成田空港の国際線の着陸料について、「新東京国際空港公団のデータによると、適正水準を大幅に超えており、ただちに引き下げるべきだ」との見解を表明した。現在の着陸料は1トン当たり2400円と世界最高だが、適正水準は1850〜1950円だと試算した。
 IATAは引き下げを求める理由として、公団は利益を計上している、暫定滑走路の供用開始で運航量が35パーセント増加しており、利益率も向上している、利益はさらに拡大すると予測している――などを理由にあげている。その上で、「着陸料の引き下げは公団の民営化前に行い、民営化後はさらなる引き下げにつながらなければならない」と指摘している。
 IATAと公団との交渉は昨年4月に決裂して以来、進展していない。

 【本紙の解説】
 IATAの主張もイラク戦争、SARS騒動前の見解ならもっともなものだった。しかし、今年度の成田空港の大赤字は確実で、国交省も空港公団もこのIATAの見解は無視できそうだ。

(4月9日) 三重苦の海外旅行、香港は88パーセント減/JTBのGW見通し

 大手旅行会社JTBは、ゴールデンウイーク期間(4月24日〜5月4日)の旅行動向見通し調査をまとめた。曜日配列に恵まれなかったことや長引く不景気、イラク戦争や重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響で、海外旅行者は前年比35.9パーセント減の約31万4000人と推計。同社が調査を開始した69年以来、過去最大の落ち込みとなった。特にSARSが流行している香港は、同88パーセント減だった。
 調査は、3月上旬に約2200人を対象に行ったアンケートのほか、イラク戦争やSARSによる渡航延期勧告の影響などを加味した。
 海外旅行先別でみると、香港が前年比12パーセントだったほか、カナダが同50パーセント、米国本土が同51パーセント、台湾が同54パーセント、中国が同63パーセントなどと低調。同社は「曜日配列の悪さがもっとも大きな要因だが、方面によってはSARSもかなり影響した」とみる。ただし、SARSの原因や対策が明確になったり、イラク戦争の見通しがはっきりしたりすれば、間際の申し込みもあるのでは、と期待をかける。

 【本紙の解説】
 JTBや航空会社の海外旅行見通しは9・11以降、景気後退と会社経営の困難さから願望が強く出過ぎており、甘すぎるものが多い。この間の予測は全部はずれている。01年9・11反米ゲリラの航空需要の落ち込みは昨年の02年の冒頭では下半期には回復するとすべての航空関係者が言っていた。それは91年の湾岸戦争による航空需要の落ち込みが約1年で回復したことを理由にしていた。実際は、回復基調にはほど遠い段階で、イラクと北朝鮮への米帝の侵略戦争の現実化で再び落ち込みはじめた。
 このJTBの見込みデータも、SARSが本格化する前のアンケートにSARSによる渡航延期勧告の影響を加味しただけのものである。したがってもっと下回ることになるであろう。
 それにしても、香港は当然として、米国、台湾、中国などが半分前後になっているのは激しい落ち込みである。
 また「SARSの原因や対策が明確になったり」「イラク戦争の見通しがはっきりすれば」などという期待に望みをかけるのははなはだしく甘い。
 SARSの病原体もまだはっきりしていないのだ。病原体の特定は非常に難しいとのこと。またウイルスを検出できても、その遺伝子分析には時間がかかる。エイズウイルスの場合は特定までに約5年かかった。
 またSARSの主因と有力視されているコロナウイルスは遺伝情報が変化しやすい。そのために、変化して人に感染しやすい姿になる可能性もある。また、今回のSARSはいままでの感染症とも比べて異常な広がりを示している。感染の仕方はまだ不明なのだ。せきやくしゃみ、つばなどの飛まつ感染だけでなく、空気感染や下水経由の感染などが疑われている。密封された飛行機内は患者がいた場合にはもっとも危険な場所と言われている。
 また、航空路線で香港便でなく、比較的安全と言われている欧州便にも、運休になった香港便で使われていた機体が回されている。どこにいっても危険はつきまとう。
 ここ数年間の規模でSARSは大流行しそうである。航空業界はこれで一変するであろう。

(4月10日) 米航空各社一斉値下げ(4/10日経)

 米航空各社が一斉に大幅な運賃値下げに踏み切っている。デルタ航空が先陣を切り、アメリカン、ユナイテッド、コンチネンタルなどが追随した。イラク戦争に加えSARSのまん延で乗客数の減少が深刻化。各社は大幅な人員削減を進める一方、1人でも多くの乗客を獲得しようと懸命だ。米国内線では片道44ドル(約5280円)と、格安航空券並みの低運賃が登場。旅行代理店によると、国際線ではアメリカンとノースウエストがシカゴ―成田便で往復475ドル、ユナイテッドとデルタが480ドル前後で販売している。この時期は例年なら600ドル台が中心で、値引き率は約2割にのぼる。SARSの感染拡大がつづいている。

 【本紙の解説】
 米国航空業界は投げ売りの状況を示してきた。日本でも国内線の安売り状態で満席でも赤字ということが言われていた。その是正で国内線チケットは若干の値上げとなっている。米国の状況はそれ以上である。80年代米国の航空戦争の様相を示してきた。80年代の米国航空業界は規制緩和に端を発してさまざまな資本が航空業界に参入し、資本の体力がつづく限り安売りし、競争相手を倒産に追い込むことで独占路線をつくり、チケットを前よりも高値にして利益をあげるものであった。
 しかし今回はそれとは違う。他の業種の資本参入はない。それは航空資本が過剰であるだけでない。先行きの見通しがないからである。いまの競争は航空資本の半数が倒産する情勢で、1日でも長く倒産を回避するための投げ売りとなっているのである。大赤字会社が2割もの割引を行っているのである。倒産覚悟の割引である。

(4月10日) 中華航空乗務員が新型肺炎感染か(4/11毎日、産経)

 台湾の中央通信などによると、台湾の衛生当局は10日、中華航空の女性乗務員(31)が新型肺炎に感染している疑いが強いとみていることを明らかにした。乗務員は発熱などの症状を示した後、東京発台北便に搭乗勤務したという。
 乗務員は3月31日の東京発ハワイ便、4月1日のハワイ発東京便、同3日の東京発台北便に搭乗勤務。2日に38度の発熱とせきの症状を示したという。
 日本の厚生労働省は成田空港検疫所を通じ事実関係を調査。女性乗務員は2日に成田空港の診療所で受診していたが、別の病気と診断されており、新型肺炎の報告基準に当てはまらなかったとしている。

 【本紙の解説】
 SARSでないという診断はウソである可能性が高い。成田空港の診療所と中華航空が一緒になってウソをついているのである。
 成田の診療所でも「新型肺炎の報告基準には完全には当てはまらないところがある」として、しかし「SARSに感染した疑いが強い」と診断したのである。その結果として乗務にはつかず、隔離され3日の中華航空便で成田から台北に戻っているのである。
 中華航空の成田空港支店長は「成田、台北の病院でいずれも風邪との診断を受けた。SARSではない」と否定している。また成田空港の診療所も問題を曖昧にしている。
 SARSの発生が広東省で発生したときに中国政府が曖昧にしたことから、感染が一挙に広がったのである。またWHOが警告を出したときに、中国と香港は観光客の減少と経済活動の停滞に陥ると抗議までしている。それと同じ態度を成田の診療所と中華航空がとっているのである。

(4月12日) 航空2社 減収計1000億円/イラク戦と新型肺炎で(4/13読売)

 日本航空システムと全日本空輸の航空大手2社で、2003年度上半期(4―9月)の当初計画に対する減収幅が計1000億円近くに達する見通しであることが12日、明らかになった。イラク戦争と新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)のダブルパンチにより、海外旅行客が急減、回復には時間がかかると見られるためだ。
 日本航空システムは需要の減少に対応するため、アジアやハワイ方面の減便を中心に、5月の供給座席数を当初計画比16パーセント減としており、上半期に600億―700億円の減収を見込んでいる。全日空も200億―300億円の減収に陥るとの見通しを立てている。
 イラク戦争は早期終結が見込まれるものの、両社とも影響は上半期を通じてつづくと予測しており、SARSによる海外旅行の手控えと合わせ、国際線旅客が全体で当初計画比で3割程度減少すると想定、一部の国内線も減収となる見込み。

 【本紙の解説】
 日本の航空2社も需要予測を厳しくしたようだ。「回復には時間がかかる」という表現はいままでにないことである。それは、米国の航空会社の倒産と危機、カナダのナショナルフラッグであるカナダエアの倒産、またオーストラリアのナショナルフラッグのカンタス航空の倒産の危機を反映している。欧州の航空会社も危機だが太平洋路線を軸にする航空会社も倒産が出始めそうだ。カンタス航空は需要が2割ダウンし、社員の1400人削減、2500人の自宅待機の継続を発表している。それでも危機は脱しきれないと言われている。
 JALは減便のために客室乗務員を対象に、「リフレッシュ休職」といってレイオフの募集を始めた。便数がこの5月で2割減だが、さらに多くなりそうである。乗務員の2割が余剰なのである。つまり1人の乗務員が1年のうち2カ月以上「リフレッシュ」をとることが「義務」づけられた格好である。
 「休暇」ではなく「休職」ということで、当然無給となる。20年勤続などでの「リフレッシュ休暇」は休暇であり有給だ。言葉が一字違いであるが、天国と地獄ほどの違いがある。事実上の解雇に近い、休職、レイオフ、自宅待機である。

(4月16日) 海外旅行予約が半減/イラク、SARS アジア深刻(4/17日経、産経)

 日本旅行業協会は16日、JTBなど大手5社が主催する海外パック旅行の4―6月の予約状況を発表した。イラク戦争や新型肺炎(重症急性呼吸器症候群、SARS=サーズ)などの影響で落ち込みは深刻さを増しており、ゴールデンウイークを含む5月出発分の予約数は昨年の50・1パーセントに減少。特に香港などアジアは34・8パーセント、中国は41・9パーセントと激減している。
 5月出発分の方面別予約状況は、ヨーロッパ(昨年同期比48・9パーセント)、北米(同55・1パーセント)など。最も堅調なオセアニアでも64・1パーセントと低迷しており、海外ツアーの冷え込みぶりが鮮明だ。海外ツアー実績は、一昨年9月の米中枢同時テロをきっかけに急落したが、昨年秋から回復に転じていた。だが、3月にイラク戦争が開戦し、84・9パーセントと再ぴ昨年を割り込んだ。

 【本紙の解説】
 新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の原因ウイルスは、新種のコロナウイルスのゲノム(全遺伝情報)と一致すると発表された。世界保健機関(WHO)が16日、各国の専門家をジュネーブに招集し、オランダ・エラスムス大においてサルの感染実験などを行って検討し、これがサーズの原因ウイルスだと断定した。「SARSウイルス」と名付けられた。
 未知の病原体がこれほど早く確認されたのは、感染症対策史上初めてといわれている。そのため、SARSウイルスはすでにRNAの塩基配列も解読され、世界各国の研究機関が協力して対策確立を目指している。しかし「治療薬やワクチン開発には時間がかかるのではないか」ともいわれている。
 ワクチン開発が急がれるところだが、ここ30年くらいの間に、動物が媒介する病気が世界的に広まっている。原因は複合的だが、流行の条件としては世界的規模の開発と自然破壊、地球温暖化などが指摘されている。一地域に限られた病気でも、その地域の人は抗体をもっていてあまり流行しないものが、航空機などの交通機関の発展で急激に全世界的に伝播するという現象も無視できない。
 今回のSARSは、世界的伝播力の早さが問題となったが、その決定的原因のひとつが航空輸送手段の発達にあることは明らかだ。
 民間航空運輸業は、軍事産業を経済的に支える要素が大きい。そのため、各国の民間航空産業の設備規模は実需を大きく上回っている。その結果、各国の航空会社は旅行会社などと提携し、航空需要を人為的に高めようとしてきた。
 今回の事態で、行楽だけを目的にした海外旅行が激減している。それはあながち悪いことではない。

(4月17日) 成田空港・利用者/前年比GWは3割減見通し(4/17日経夕刊、4/18毎日)

 成田空港を運営する新東京国際空港公団は17日、ゴールデンウイーク期間中(4月25日―5月6日)の同空港の利用者が53万5000人と前年比で30・6パーセント減るとの見通しを発表した。
 今年は曜日の配列が悪く長期休暇がとりにくいうえ、イラク戦争を受けたテロの心配、香港などで流行している重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響で海外旅行を手控える人が多いと分析している。
 期間中で出発のピークは26日の3万1600人、到着のピークは5月5日の3万7200人と予想している。

 【本紙の解説】
 国土交通省や公団の需要予測は常にはずれることが常識化している。国交省の需要予測で建設された地方空港は多い。翌18日に発表された国内航空会社が発表したゴールデンウイークの予約状況は国際線前年比36・1パーセント減、国内線前年比3・5パーセント減になっている。旅行会社のツアー用の航空チケットはすでに発券しており、それは予約計算になっており、実際の予約状況はさらに下回りそうだ。
 旅行会社の海外旅行が前年比約50パーセント減であり、航空会社の予約が36パーセント減であるにもかかわらず、空港利用者数が30パーセント減ですむはずはない。国内線も後退しており、国際線の減少を補うことにはならない。
 このような経営感覚では来年4月に予定されている民営化はおぼつかないと感じるのは本紙だけだろうか。

(4月18日) 危うさ抱え2年目 成田空港暫定平行滑走路(4/18読売千葉版、千葉日報)

 成田空港の暫定平行滑走路の供用開始から、きょう18日で1年になる。発着回数や旅客数は大きく増えたが、未買収地の影響で本来計画より長さが短く、ジャンボ機が発着できない制約は残されたままだ。オーバーランなどの事故も起き、短い滑走路が持つ安全面の課題も浮き彫りになっている。
 昨年4月から今年2月までの発着回数は前年同期間比36パーセント増の約16万回に上った。うち暫定滑走路での発着は約4万回。年間総枠(6万5000回)の6割を超え、空港公団は「1年目の実績としては、予想を上回る順調な数字」と評価している。
 暫定滑走路を利用できるのは、近距離線の中・小型機に限られるため、中国線は2・2倍、韓国線は1・4倍に増加。同期間の旅客数も20パーセント以上伸びた。
 ただ、イラク戦争や新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の影響で、3月の出発客数は前年同月比2パーセント減。暫定滑走路供用後、前年実績割れは初めてだ。
 一方、深刻な問題としてクローズアップされたのが構造面。同空港ではこの1年、1978年の開港以来、前例のない事故が相次いだ。
 昨年12月には、誘導路で離陸待ちしていた日本エアシステム機と、着陸して後方の誘導路を通過したルフトハンザ機が接触。今年1月には、着陸したエアージャパン機が約70メートルオーバーランし、黒野匡彦総裁は「2500メートル滑走路の必要性を痛感した」と言わざるを得なかった。
 しかし、本来計画の平行滑走路の予定地では、未買収地取得のめどが立っていない。公団は先月、予定地の成田市東峰地区の反対派農家に総裁名で謝罪と直接対話を求める書簡を出したが、農家側は「言葉だけの謝罪は信用できない」と冷淡だ。
 ジャンボ機や欧米線などの長距離便は発着できず、中・小型機が農家宅の約40メートル上空を飛行する状況が続いている。
 発着ダイヤの乱れも深刻。公団が2月にまとめた調査では、旅客ビルを出た旅客機が誘導路を通って暫定滑走路から離陸するまでに最大で37分かかった。未買収地の影響で誘導路に一方通行区間や湾曲区間があり、地上走行する旅客機が待機を強いられている。
 安全性への不安や運航面での制約を解消できないまま、暫定滑走路は2年目に入る。あまりに問題が多い滑走路であることが明るみに出て、空港公団は暫定滑走路開港1周年のセレモニーを取りやめてしまった。

 【本紙の解説】
 本紙では、暫定滑走路は使い勝手も悪く、それ以上に危険きわまりないものだと開港前から指摘してきた。その通りになった1年であった。公団は飛行機を飛ばせば騒音被害で地権者は出て行くと判断していた。公団はそのためにのみ、2180メートルという国際空港としては異常に短い長さで滑走路の供用開始に踏み切ったのである。
 暫定滑走路が2500メートル(当初計画)に延長されると、開港時の北側800メートル“ずらし”分を合わせて実質3300メートル滑走路になる。こうしてはじめて本来の平行滑走路として意味をもつことになる。
 国交省は羽田の4本目の滑走路建設で、アジア便は羽田、欧米便は成田と棲み分けを計画している。09年の羽田の新滑走路完成で成田の欧米への乗り継ぎ便以外のアジア便のほとんどが羽田に移ることになる。成田は欧米便が主要な空港になる。しかし、暫定滑走路はそのままではジャンボ機は使えない。中型機でも燃料を満載すると離陸できず、近距離便でしか運航できない。
 一方、羽田のA滑走路、C滑走路は3000メートルなので、ジャンボ機は北米大陸まで直行する燃料を積み込めない。羽田空港の沖合展開の計画でも、羽田はアジア便と国内便、成田は欧米便という計画で進めていた。北米大陸への直行便は最低3300メートル滑走路が必要なのである。
 したがって、羽田の新滑走路ができても、欧米便は首都圏第3空港ができるまでは成田発着になる。また首都圏第3空港建設計画は凍結されてしまった。つまり、成田は欧米便中心の長距離航空便空港に特化される計画だ。暫定滑走路はいまの長さでは店ざらし状態になってしまうだろう。
 数年後に店ざらしになるより、いま閉鎖する方が経済的である。SARSによる航空需要の後退は3割以上から5割に迫りそうな勢いだ。3割減として計算しても、暫定滑走路を使う必要はない。
 成田の年間発着回数は暫定滑走路供用開始で16万回になった。そのうち、4万回が暫定滑走路使用である。昨年度まではA滑走路で13万回運航させていたが、A滑走路に1万回もの余裕を持たせて、暫定滑走路を中型機以下に使わせたのである。現在、便数が2割は確実に減っているし、すう勢としては3割減少が確実な情勢だ。そうすると、16万回の3割で4万8000回となり、暫定滑走路を使用しなくても成田空港は百パーセント運営できるようになる。
 不経済なうえ、騒音被害で住民をたたき出す目的の暫定滑走路使用を直ちに中止せよ!

(4月21日) 成田経由で帰国のフィリピン女性、SARSで死亡の疑い(4/22朝日、産経)

 カナダから成田空港経由でマニラに帰国したフィリピン人女性の介護労働者(46)が死亡し、新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)に感染した疑いがあることが分かった。フィリピン保健省が21日、発表した。同国ではSARSによるとみられる初の死者。
 発表などによると、この女性はトロントの老人ホームで働いていた。トロントで、友人の母親から感染したらしい。この母親は、SARS患者を診察後に死亡した、かかりつけの医師から感染したとみられている。
 女性は今月3日にエア・カナダでトロントを出発し、翌4日に成田に到着。2、3時間後、日航745便に乗り換えて成田をたち、同日夜、マニラに戻った。ルソン島北部パンガシナン州の郷里にいたところ、6日、発熱し、せきの症状が出始めた。その後、病状は悪化し、14日、マニラの病院で亡くなった。
 フィリピンで感染の疑いがあると世界保健機関(WHO)に報告されたのはこれが2人目。19日現在、カナダでは感染の疑いがあるのは132人、死者12人とWHOに報告されている。

 【本紙の解説】
 この死亡したフィリッピン女性が乗った航空便の乗客などからSARSの「疑い例」や「可能性例」の都道府県からの報告はないと厚生労働省は発表している。しかし、その真偽はさだかでない。報告がないだけであって追跡調査をしたわけでない。感染し発病しても一般的な風邪とされ回復した可能性はある。
 しかし、SARSはウイルスが解明されても、その感染の勢いはますます激しくなっている。中国衛生省がSARS感染者数と死者数を大幅に訂正したこともあり、4月23日までに死者は世界で計251人となっている。感染者は27カ国、4288人、死亡率は5・9パーセントである。現在でもっとも恐ろしい病気のひとつとなった。
 死亡者は体力の衰えている老人や糖尿病の患者などと発表され、健康体の人は発病もしないとも言われている。しかし、5・9パーセントの死亡率はかなり高い。この病気の恐ろしいところは、感染して発病までに10日間以内の潜伏期間があることである。この発病までの間、SARSのキャリアーでありながら健康なので、動き回ることで他の人に感染させてしまうことである。ある人材派遣会社では、SARS感染地域からの帰国者は10日間出勤させない措置をとっている。SARS対策としては正しいかもしれないが、人材派遣会社なので出勤させければ賃金も支払わなくて済むことからできることである。

(4月22日) JAL減便/SARSで香港、広州線など追加減便(4/22朝日夕刊)

 日本航空システム(JALグループ)は、イラク戦争と重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響に伴う需要減で、成田−香港間や成田−広州間など中国路線を中心に6路線について、減便の継続や減便幅の拡大に踏み切る。22日中に国土交通省に申請し、発表する。
 成田−香港間は14日から月内いっぱいは週7便に減らしているが、5月中も減便を継続する。成田−広州間は14日から週7便を4便にしているが、さらに減便幅を拡大する。関西−広州間、福岡−上海間、名古屋−グアム間なども減便したり、運休したりする見通しだ。このほかに、米国方面などへのアメリカン航空とのコードシェア(共同運航)便についても減便する。
 同グループは、今月8日に中国や米国、欧州など14路線について大幅減便を発表したばかりで、イラク情勢が緊迫化した3月以降、すでに3回にわたり減便している。

 【本紙の解説】
 日航システムは今年度の減収規模は900億円と予想している。9・11の反米ゲリラがあった2001年度の減収は1100億円であり、それより少ないと予想している。2001年度の総収入が1兆6000億円前後であり、約6・5パーセント減である。9・11の影響は2001年度の後半期であり、年間での影響としてみると、その倍の13パーセント近い減少になる。
 イラク戦争、SARSの影響をそれ以下としているが、それで収まることはない。アメリカの航空大手は1−3月は軒のみ赤字で、アメリカン航空が10億ドル(約1200億円)の赤字となっている。また欧州の航空会社も破綻寸前であり、航空会社への各国政府の援助を嫌っていた欧州連合も支援に乗り出している。
 全世界的に、イラク戦争、SARSで航空需要が3割ほど後退している。この落ち込みはさらに続き、構造化する傾向にある。つまり、航空運輸業は過剰投資であり、3割から5割が倒産する見込みである。米国でも欧州でも航空業界の大再編、倒産、合併、吸収がおこることになる。日本の航空会社も空港も例外ではない。

(4月22日) SARS対策、成田空港で体温計測機能付きカメラ試行(4/23朝日、毎日)

 重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染者が中国などで増加していることを受け、厚生労働省は22日、成田空港の検疫ブース付近に、中国などから到着した乗客の体温を測定できる機能が付いたカメラを試行的に設置することを決めた。
 厚労省は中国の北京市、広東省、香港から日本へ到着するすべての航空機内で問診票を乗客に配布し、空港内の検疫ブースで検疫所の職員が問診票をチェックしている。しかし、問診票に発熱の症状などを記載しなければ、せき込んでいない限り素通りできてしまう。そこで、熱のある部分を赤く映し出すカメラを使って、一定以上の発熱をしている人を見つけ、空港内の診療所での受診を勧めてみるという。
 厚労省は「人権侵害にならないよう慎重に試してみたい」としている。

 【本紙の解説】
 人権侵害そのものであるが、これではSARSの侵入は防げない。感染したとしても発病前の人の体温は平熱だからである。外務省は22日に北京への渡航者への危険情報を「十分注意」から「渡航延期勧告」に1ランク引き上げた。さらに24日にはカナダのトロントも「渡航延期勧告」に引き上げた。渡航しなくても済むような観光旅行などを取りやめることがこのSARSのような感染症への最大の対策である。
 これまで、政府と航空、旅行業界にあまりにも踊らされて、また格安チケットに誘われ、いかなくてもいいような海外旅行が多すぎたのである。航空需要の3割から5割減が適正需要なのである。

(4月24日) 成田空港/新型肺炎で「非常事態」宣言(4/25朝日、産経各千葉版、千葉日報

 成田空港を管理する新東京国際空港公団の黒野匡彦総裁は24日、定例記者会見で、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)で航空旅客が激減、公団の収支を直撃しているとして「非常事態」を宣言した。同公団としては初めて、役員の本給自主返納に踏み切り、新規工事を次々凍結するなど支出削減策も打ち出したが、SARSの影響は予想を超えて拡大しており、民営化直前に大きな難間を抱えた形だ。
 同公団によると、3−9日の運航状況による試算では収入の15パーセント、月額約15億円の減収となる見通し。航空機の着陸料や、旅客の空港使用料などが急速に落ち込んでいるためで、黒野総裁は「当面、この影響は6カ月は続くと考えており、総額90億円は減収になる」として、減収分を補うために支出削減策を打ち出した。
 削減するのは第2ターミナルビル北側の駐機場新設工事などの新規工事予算で35億円分を凍結、さらに事務経費の削減などを実施する。また同公団で初めて、総裁や副総裁などの役員の本給を5−10パーセント自主返納することも決めた。
 この削減策で減収を補うが、黒野総裁は、「現在も減便は続いており、減収規模は試算の2倍にはなりそうだ」としており、減収が収入の3割に達する可能性があると指摘している。
 同公団は04年度に特殊会社となり、民営化のプロセスに入るが、「直前の大幅減収は、大きな試練となる」(同公団幹部)としており、さらに影響が拡大すれば、追加の支出削減策も必要になりそうだ。

 【本紙の解説】
 黒野総裁が「減収は試算の2倍にはなりそうだ」としているが、その通りである。4月3−9日の運航状況は15パーセント減であったが、4月17−23日では、37パーセント減となっており、急速な落ち込みに歯止めがかからなくなっている。月に15億円の減収にとどまらず、30億以上40億円までいきそうだ。半減になることもあり得る航空情勢である。
 6カ月で90億円の収入源という試算で、経費削減も90億円を予定している。これは完全に破綻する計画である。6カ月で200億円の減収は確実である。また、6カ月をメドとしているが、この航空需要の後退は数年間の規模で続くこともいわれている。このことは、日本の空港整備計画の抜本的見直しまでいくであろう。SARSがいつ治まるかという問題もあるが、アメリカの世界戦争政策はさらに拡大しそうだ。朝鮮侵略戦争情勢の切迫の中で成田空港も民間的需要はさらに激減し軍事空港専用になりそうだ。

(4月25日) ゴールデンウィークの成田空港利用者3割減(4/26産経)

 成田空港で25日、大型連休を海外で過ごそうという旅行客たちの出国が始まった。今年はイラク戦争やSARSの影響が海外旅行を直撃。例年なら旅行者でごった返す連休前日も平日並みの静けさで、様変わりとなった。中にはマスク姿で出国する家族連れの姿もあった。
 新東京国際空港公団などによると、4月25日から5月6日までの大型連休期間中に、成田空港を利用する旅客数は約53万5100人、前年比31パーセントの大幅減。この日の出国旅客も前年比28パーセント減の約2万7600人にとどまったもようだ。帰国のピークは5月5日だが、これも約3万7200人で、前年比31パーセント減と大きく落ち込みそうだ。

 【本紙の解説】
 02年4月18日に暫定滑走路が供用開始され、発着便数が約5割アップした。しかし、開港直後の02年のゴールデンウィークでの成田空港の利用者数は、過去最高の63万7738人だったが、01年の前年比で2万5692人増の約4パーセントの増加にとどまったのであった。それも海外出国者数は前年同期比で2・3パーセント減となったものを国内線がカバーした数字にすぎなかった。
 昨年が前年比約104パーセントで今年が前年比約69パーセントと予想していることは、暫定開港前の01年と今年を比べると、約71パーセントとなる。暫定滑走路がないときと比べて、3割減ということは、暫定滑走路はやはり必要ない滑走路であることがあらためて明確になった。
 成田空港の滑走路の運用状況は、イラク戦争、SARS問題がおきるまでは、1日にA滑走路が330便前後、暫定滑走路が110便前後で推移していた。現在そのうちの3割に当たる1日約130便近くが運休し、1日に300便を若干上回る程度になっている。この数ならば、暫定滑走路を使わずにA滑走路だけで運用できる。直ちに、暫定滑走路の使用は中止すべきである。その方が、公団経営の経費削減になる。それを実行しないのは、ただただ地権者と周辺住民を騒音で追い出したいからである。

(4月27日) 成田市長選 小林氏 挑戦4度目、接戦制する(4/29千葉日報)

 新人の三つどもえで争われた成田市長選は大激戦の末、4度目の挑戦となる元市議の小林攻氏(60)が、元市議の小泉一成氏(46)と元航空会社員の相馬攻氏(60)の二人を破り初当選を果たした。選挙戦は事実上、小林−小泉両氏の一騎打ち。旧態依然とした「町なか政治」からの脱却と行財政改革を訴えた小林氏が、ニュータウンの新住民はじめ農村部からも幅広く支持を集め、中心市街地を地盤にする小泉氏の追い上げをかわした。新市長の小林氏は2日、初登庁する。
 「これが最後」と背水の陣を敷いて臨んだ小林氏。投開票日の日付が変わる午前零時前、詰めかけた支持者を前に「厳しい選挙だったが手応えは十分あった。つらさから逃げださずに成田のことを思い挑戦してきた結果だ。これから新しい成田が始まる」と、うるんだ目で喜びをかみしめた。
 選挙戦では「今こそ古い政治体質を破る最大の機会。過去のなれ合いやしがらみから脱却し、大成田市を作りたい」と訴え、税の無駄遣いや市長退職金5割カットなど思い切った行財政改革の断行を公約に掲げた。
 元航空会社労組幹部の経験を踏まえ「成田空港の完全化と幕引きは私にしかできない。滑走路延長には新たな騒音対策が伴う。誠心誠意つくしたい」と残された空港問題の課題解決に全力を傾けるとした。
 市議3期、過去3回の市長選出馬の知名度をべースに選挙戦を先行。自治会組織や成田ニュータウンの新住民層を着実に固め、成尾政美県議の支援を得て農村部にも支持を広げた。同市で成田山参道地区の「町なか」以外から首長が誕生したのは初めて。

 【本紙の解説】
 小林氏は元日航の社員であり、労組の推薦を受けて成田市議会議員を務めた人である。空港建設を第一に推し進めることを目標に掲げていた。
  成田の門前町以外の人が市長になったのは初めてのことである。成田市も「門前町」から「空港都市」となり、空港一辺倒の町になるのか。成田商工会議所の会頭もすでに地元の商工業者ではなく、空港関連の機内食最大手のティーエフケー(千葉県成田市)の社長の野間口氏に移っている。その成田商工会議所は昨年の7月に公団に暫定滑走路の北側再延長を進言している(02年7月23日付日誌を参照)。空港関連企業の立場だけで、暫定滑走路の北側延長を主張していたのである。
 そのため、直ちに当時の小川国彦成田市長は02年8月26日、下総町の司瀬力町長とともに国土交通省、県、新東京国際空港公団を訪れ、暫定平行滑走路の北側延伸には騒音地域住民から反発の声が出ていると抗議した。それで黒野公団総裁は、北側延伸計画は「ない」と言明するしかなくなった(02年8月26日付日誌を参照)。
 小林市長も野間口氏と立場は同じだ。「空港づくりは最重要課題」として、「騒音下の住民に配慮して誠心誠意努力する」といっている。しかし、この立場は成田市や住民側からのものではなく、空港建設を推し進める立場から「騒音下の住民に配慮する」というものである。公団の言葉と同質の響きを感じるのは本紙だけではないだろう。
 「騒音下住民の生活を守ることに全力をあげる」とか「騒音下の生活防衛のために公団に環境対策を強く要求する」というのが空港周辺自治体の首長の立場であろう。「誠心誠意努力する」のは平行滑走路の完全化であり、「騒音下住民の配慮」はそのための飾り文句でしかない。立場は公団と同じで、住民は“対策”の対象だ。これでは決して住民の長とはいえない。

(4月28日) 成田空港/貨物取扱量、200万トン超す(4/29朝日)

 新東京国際空港公団は28日、02年度の成田空港の貨物取扱量が203万0149トンだったと発表した。200万トンを超えたのは開港以来初めてだ。
 米国同時多発テロの影響を受けた01年度より、約40万トン多かった。
 空港公団によると、同空港は昨年4月、2本目の暫定B滑走路が供用され、航空機の1日の発着回数は約360回から約490回になり、経済が好調な中国などアジア路線を中心に増えた。このため、電子部品の輸出が前年度比約30パーセント増となるなど底上げした。また昨年、米国西海岸の港湾封鎖で航空貨物の比重が高まったことも要因という。
 来月、開港25周年を迎える空港公団は200万トン突破を歓迎しているが、今年度は「中国での重症急性呼吸器症侯群(SARS)の影響が貨物にどう影響するか心配だ」(担当者)という。

 【本紙の解説】
 公団・黒野総裁は、このような貨物量の増大を根拠に東峰貨物基地構想をでっち上げ、東峰の地区全体の移転を構想していた。しかしこの東峰貨物地区構想騒動は、黒野総裁が三里塚闘争を土地買い上げ要求闘争としてしか理解していないことが端なくも暴露されただけで終わってしまった。それは、現在の貨物地区の建設計画があまりにも巨大な規模で進行していることを本紙が中心になって暴露したことによる。
 現在、天浪地区の貨物地区が増設されて20万トン増え、計220万トン/年が成田空港の最大貨物取扱量である。さらに成田市桜台にあった日航グランド跡地の施設が建設中で、その上に天浪地区と隣接する成田市取香地区に千葉県の成田国際物流複合基地が建設中である。これらを総計すると、500万トン/年近くの取扱量に膨れあがる。
 このような巨大な成田の貨物地区増大は何を意味するか。それは羽田の新滑走路増設と国際化に大いに関係がある。近い将来、アジア便の大半が羽田に移るので、成田の発着便数は現在の航空需要がそのままでも半減する。航空需要も下がり始めた。
 そのため、成田空港を欧米便と貨物便の専用空港に特化する計画が着々と進行している。民営化がもてはやさされたのは昨年までのこと。しかしその民営化も、航空需要が3割以上後退したのではおぼつかない。

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