SANRIZUKA 日誌 HP版   2002/07/01〜31    

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 2002年7月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 

(7月1日) 羽田/26発着枠拡大(7/1日経)

 羽田空港の航空機発着枠が1日から、各地と羽田を結ぶ26便が増加し、航空各社は新しい路線を開設したり、主要路線を増やすなど、新たな競争が始まった。
 発着枠の拡大は、航空需要の増加に応えるため昨年から段階的に行われている。国土交通省によると、今回の拡大で1日当たりの発着回数は800回を超える見込み。
 これまで全日空の単独路線だった羽田―富山、岡山、山口宇部に、日航は増便枠を使って新たに乗り入れを開始。羽田の出発ゲートで1日朝、各県の関係者を招いて就航祝賀式を開催。全日空は札幌、福岡など8路線で1便ずつ増やした。日本エアシステムも8路線で増便する。

 【本紙の解説】
 羽田の離発着回数は2000年7月に1日62回分増加し、1日の発着回数は計702回になった。今回は52回分増加し、754回になった。これは深夜・早朝チャーター便を含まない回数だ。深夜・早朝チャーター便は「週35便」となっており、1日の発着回数は10回。羽田空港での1日の最大発着回数は、計764回になる。羽田は滑走路が3本あるが、横風滑走路のB滑走路は通常は誘導路として運用されており、事実上2本の滑走路である。
 また、羽田A滑走路は北側進入コースを使用していないが、2本の滑走路でこれだけの発着便を運用できる。
 それに比べ、成田はA滑走路が1日最大で370回、暫定滑走路が約180回(後者は公称)であり、計550回となっている。しかし、1時間枠で最大30回という制限があり、朝6時から夜の11時まで、運用時間の17時間を隙間なく目一杯発着させたと仮定(不可能だが)しても、30回×17時間で510回/日が最大運用回数となる。暫定滑走路の1日の制限枠は180回となっているが、成田空港の1日の限度回数が510回であり、A滑走路を制限まで使用すると暫定滑走路分は、最大限で140回しか使えない。
 問題は他にもある。現在、暫定滑走路は1日100回前後の使用だが、第2ターミナルビルのサテライトから滑走路まで移動し離陸するまで40分から50分もかかっている。理由は、誘導路が東峰部落のわきで片側通行になること、天神峰現闘本部のわきが「逆くの字」になっており、航空機の離着陸時は信号で停止させられるためである。これ以上便数が増えると、離陸までに1時間以上かかるといわれている。
 暫定滑走路の使い勝手の悪さは予想をはるかに超えている。やはり建設しても意味のない滑走路だった。便数を増やしたいなら、羽田空港の国際化と運用効率アップをはかる方がよほど現実的だ。しかし、航空需要の長期的落ち込みでその必要もなくなってきたようである。

(7月1日) ドイツで航空機が空中衝突、乗員乗客71人絶望(7/2全紙)

 ドイツ南西部とスイス国境にあるボーデン湖近くの上空で1日午後11時40分ごろ(日本時間2日午前6時40分ごろ)、旅客機と貨物機が衝突、墜落した。両機には乗員乗客合わせて少なくとも71人が乗っていたが、全員、絶望視されている。
 衝突したのは、ロシア・バシコルトスタン共和国バシキール航空のモスクワ発バルセロナ行き旅客機(ツポレフ154型機)と、国際宅配便会社DHLのバーレーン発ブリュッセル行き貨物機(ボーイング757型機)。旅客機は事故の前、ミュンヘンを経由し、貨物機は経由地の北イタリア・ベルガモを飛び立った後だった。
 事故当時、両機はスイスの航空管制当局の管理下にあったという。地元の独警察によると「スイスの管制官が旅客機に高度を下げるよう指示したが応答がなく、貨物機が高度を変えようとしたものの間に合わなかった」という。衝突は1万2000〜1万3000メートル上空で起きた。
 目撃者によると、両機による爆発が起きた後、空が真っ赤に染まったという。別の目撃者によると、オレンジ色の火の玉が見え、轟音(ごうおん)が響き渡った。

 【本紙の解説】
 悲惨な航空機事故である。原因はこれから解明されていくだろう。管制ミスとロシア機側が直前の管制指示に従わなかったこと、3度目の指示で降下したことと、ドイツ機が空中衝突防止装置(TCAS)の指示で降下したことが重なって衝突したようだ。
 最近、航空機の事故が多いと報道されているが、統計的にみれば航空機事故は一貫して多い。
 空中衝突防止装置の指示と操縦士の目視のどちらを優先させるかが事故のたびに問題になっている。基本的には空中衝突防止装置の指示を優先させる考え方だ。しかし、今回の事態では、ドイツ機が目視を優先させれば惨事には至らなかったかもしれない。
 また事故地点は、欧州で最も過密な空域のひとつといわれる。過密空域での運航の仕方も問題になっている。欧州各国の航空管制方式はそれぞれ微妙に違う。欧州全体の統一管制方式「シングルスカイ」の導入を04年に計画している。しかし各国の軍事機密や航空会社の権益でぶつかり合い、「シングルスカイ」方式の導入は難航している。
 日本の空も過密という点では欧州に引けを取らない。その日本でも、空港管制では様々な意見があり、地域によって主張は微妙に違う。(1)飛行経路を複線化させ、一方通行にすることで交通容量を拡大させるRNAV(広域航法)の運用、(2)関西空域で既に行われている広域レーダー進入管制(複数の空港への航空機の進入を一括して管制する方式)を関東空域で採用など、さまざまな意見がある。民間航空機の運航はまだ発展途上であることから、まだまだ大事故はなくならないだろう。
 9・11以降、航空機事故の報道が増えたことで、ますます航空需要の回復は遅れるであろう。

(7月2日) IATA/空港民営化「上下分離」方式反対表明(7/2毎日)

 世界の航空会社でつくる国際航空運送協会(IATA)は1日、成田、関西、中部の3国際空港民営化で「上下分離」方式を採用することに反対すると発表した。IATAは、上下分離方式では「成田の利益が損失に苦しむ関西、中部の運営を補てんするために利用される」ため、世界で最高水準の成田の着陸料引き下げが難しくなると判断した。空港の最大利用者である航空会社の反対は、今後の空港民営化論議に波紋を広げそうだ。
 上下分離方式は、3空港の土地や滑走路すべてを建設・保有する「下物法人」と、空港ごとに管理・運営に当たる「上物法人」に分離し、上物を民営化する計画。国土交通省の試算では、上下分離採用後は、成田の負債返済負担額が年間154億円重くなり、関西、中部はその分負担が軽くなる。

 【本紙の解説】
 IATAは成田の着陸料の引き下げだけを問題にしているが、波紋が広がっている。千葉県や地元自治体では、騒音対策費や地域振興を名目にした見返り利権が減るという反発である。単独民営化では国交省の官僚的権益がなくなる。国交省はそもそも民営化反対だったが、時代の波に抗しきれず、その官僚的権限を3空港の下物法人一体化で守ろうとしている。
 自民党内では成田単独民営化論も強い勢力になっている。3空港一体化に賛成しているのは、関空の利害関係者だ。
 空港が諸グループの利権争いの場になっては航空安全など守れない。安全を軸に経営問題は考えなければならない。

(7月2日) 市東さん方への排ガス対策への訴えに公団拒否回答よこす

 反対同盟は5月30日、市東さん方へのジェットエンジン噴射による排ガス被害への抗議と、その対策を成田市に要請した(02年5月30日付日誌参照)。また6月7日、この問題を市民に明らかにするため、成田駅頭でビラ配布を行った。
 これに対する公団の回答(6月28日付)が7月2日、成田市を通してあった。内容は、市東さんと反対同盟の要求を完全に拒否する許し難いものだ。反対同盟は公団の回答に対する抗議の成田駅前宣伝と、成田市への抗議行動をあわせて準備している。
 公団の回答の内容は、東峰地区のフェンス高が7・5〜9・5mとなっている(市東方より高い)理由を「当該箇所に影響を及ぽす航空機(DC10型クラス)のエンジン高(約9.6メートル)をもとに設定した」とし、天神峰のフェンスが3・5〜4・5mである理由を「影響を及ぽす航空機(B777型クラス)のエンジン高(約2・9メートル)をもとに、3・5〜4・5mとしました」となっている。
 これでは回答になっていない。DC10型クラスの航空機(暫定路では飛ばしていない)を東峰地区だけで問題にすること自体が的外れだ。天神峰と東峰でのフェンス高の違いについての説明にはなっていない。

 ※公団の回答書を資料として添付します。(詳しくは本紙参照)
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 平成14年6月28日
 天神峰住民よりの要望について(回答)
 新東京国際空港公団
 総裁中村徹

 記

1 市東孝雄氏宅周辺フェンスの嵩上げ等について
 暫定滑走路の供用にあたり、公団といたしましては、暫定滑走路供用に伴う近接区域への環境変化を最小限にするための対策を採ることが必要であると考えてまいりました。
 特に、航空機のエンジンから排出されるブラストにつきましては、ブラストフェンスを設置することで、これに起因する風及び騒音の低減を図るとともに、自然風の流れ、日照問題、心理的圧迫感等への影響も最小限にとどめることができるよう、検討を重ねてまいりました。
 その結果、フェンスの形状につきましては、空港外へのブラストの影響を最小にするための形状として、別図のブラスト回避板を取り付けることとしました。
 また、フェンスの高さにつきましては、供用される誘導路の線形、住民の方々の土地との離隔等の条件により必要な高さは異なってまいりますが、運用開始後に想定される航空機の運航状況をもとに、航空機が静止したままでブラストを発生させるとの条件で検討し、ブラスト対策としては十分なものを設置しております。
 市東孝雄氏宅周辺については、最も影響が及ぶと想定される東側約75m、のブラストフェンスの上部にブラスト回避板を設置しており、さらに、フェンスの高さにつきましても、当該箇所に影響を及ぽす航空機(B777型クラス)のエンジン高(約2・9メートル)をもとに、3・5〜4・5mとしました。
 なお、東峰地区につきましては、高さが7・5〜9・5mのブラストフェンスを設置しておりますが、これは、当該箇所に影響を及ぽす航空機(DC10型クラス)のエンジン高(約9・6メートル)をもとに設定したものです。
 これらの対策により、フェンスを設置しない場合に比べ、ブラストの影響が大幅に軽減されております。
 以上のことから、市東孝雄氏宅周辺における環境対策につきましては、現在設置しておりますブラストフェンスで十分対応できるものと考えております。

2 市東孝雄氏が耕作されている畑周辺フェンスの嵩上げ等について
 1と同様、当該地区の環境対策につきましても、当該箇所に係る航空機の運航状況を検討した結果、現在設置しておりますフェンスで十分対応できるものと考えております。

3 大気質調査の実施について
 公団は、空港周辺で昭和49年より随時大気質調査を実施し、現在では空港内外の6箇所に大気質測定局を設置して年間を通じて24時間体制で大気質調査を行っており、その結果、大気質に影響を及ぼす事実は確認されていないところであります。
 また、暫定滑走路供用後については、飛行コースの直下にあたる東峰地区におきまして、貴職とともに大気質調査を行っているところであり、その分析結果にもとづいて今後対応してまいりたいと考えております。(別紙については省略)
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(7月3日) JAS、香港路線撤退/激戦区避け国内優先(7/4産経)

 日本エアシステム(JAS)は3日、今年11月からの冬期ダイヤで、国際線のうち成田―香港線(週7便)を休止することを明らかにした。日本航空との事業統合に向けた事実上の撤退の前倒しで、香港線の機材や人員を国内線に移すことで統合効果を一層高めるねらいだ。JASは今年3月に関西国際空港から国際線を撤退。4月からは拠点を成田空港に一本化し、香港、上海、広州、西安、昆明(以上中国)、ソウルへの計6路線を飛ばしている。
 成田―香港線は4月に再開したばかりで、4月には63・4%の利用率を確保した。しかし、香港線は成田空港の暫定B滑走路開業に合わせて、日航、全日空、キャセイパシフィックも大幅に増便し、激しい競合路線となっている。
 JASは2004年春までに日航と完全統合する。このため、1日2―5往復を飛ばす各社と競合する香港線を維持するよりも、撤退を早め、全日空や新規参入航空会社との競争が激化する国内線の基盤強化を急ぐ方が得策だと判断した。
 ただ、今後の利用者増が確実視される上海線や、JASが唯一国内航空会社で路線を持つ広州、西安、昆明線は最終統合まで維持していく。香港線と同様に供給過剰となっているソウル線も見直しの検討対象となっているが、冬期では運航を維持していく方向だ。

 【本紙の解説】
 成田空港の暫定滑走路が近距離便しか使えないため、アジア便が供給過多で夏以降の減便、撤退が相次ぐと「本紙の解説」でも予想していた。
 「大増便した成田空港発のアジア路線の搭乗率はゴールデンウイーク期間中でも68パーセントであった。これでは採算ぎりぎりである。通常期間では赤字運航は確実となった。暫定滑走路の便数も減便になるのは時間の問題である」(02年5月9日付日誌参照)
 「中国便は供給過剰なので、2〜3ヶ月か夏休みまでで息切れするだろう。増便分の大半が運休になるのが関の山だろう」(02年2月13日付日誌参照)
 その予想が現実となってきた。日航は「中国事業推進本部」という事業部まで新設し、北米路線での需要の後退を中国便で補おうとしている。その日航との統合となるJASの中国便が供給過多でこの秋からの撤退となった。「4月には63・4%の利用率」とかいっているが、暫定滑走路の供用開始が4月18日からであり、事実上、ゴールデンウイークだけの実績であり、この数字でも採算割れである。その後の5月、6月が散々な数字だったのであろう。
 各社とも、他社が採算割れで撤退するまで、赤字でもなんとか運航をつづけている状態である。暫定滑走路をつかった中国便をはじめとするアジア便は完全に供給過多である。

(7月5日) 公団回答に反対同盟、直ちに抗議行動

 排ガス問題の公団の回答書に対して、反対同盟は直ちに抗議行動を開始。成田駅頭と市役所前での宣伝活動とビラ配布を行った。
 反対同盟のビラと資料として添付します。(詳しくは本紙参照)

■「民家への排ガス直撃かまわぬ」/被害農家の訴えに空港公団が拒否回答
■「(回答は)現実と違いますよね」と空対部長/成田市は空港公団に対策フェンスをつくらせよ

 暫定滑走路の開業で天神峰地区の農家は、誘導路を走るジェット機の排気ガスが直撃する被害を受けています。これを避けるため、農家は空港公団に高さ10メートルの対策フェンスをつくるよう要求しました。
 空港公団から届いた回答は「いまのままで十分」「対策フェンスはかさ上げしない」というものでした。絶対に許せません。

◆役にたたない4mの「対策塀」
 排気ガスのひどさは、空気のよどむときには吐き気がするほどです。試験的に貼った紙が、わずか2日で茶色くなりました。
 公団が建てた今のフェンス(塀)の高さは約4メートル。誘導路の表面は地面から3〜4メートルかさ上げされており、フェンスの頭とほぼ同じ。そもそもフェンスは何の役にもたたないのです。しかもジェットの噴射口は誘導路の上3メートルにあるのですから、排気ガスはフェンスに遮られることなく民家を直撃します。

◆汚染調査は成田市独自で!
 十余三や東峰地区のフェンスの高さは10メートルです。
 天神峰だけ「現在のフェンスで十分」という公団の回答は、わざと住民に苦しみを強いるものです。これは住民に「排気ガスを吸え」というのと同じです。
 さすがに、回答書を届けに来た成田市空対部の小泉部長も「(回答は)現実と違いますよね」と話しました。被害実態を調査した成田市は、住民の立場にしっかりたって、10メートルフェンスをつくらせるべきです。
 また成田市は、排ガスの汚染調査を、公団のカネによるヒモつきではなく、独自に行うべきです。
 空港公団は10メートルの対策フェンスを設置せよ。成田市は責任をもって、公団にフェンスをつくらせなければなりません。
2002年7月5日
三里塚芝山連合空港反対同盟(連絡先)事務局長・北原鉱治 成田市三里塚115

 地元農家にジェット噴射を浴びせる日航の旅客機(ボーイング767型機)

誘導路の手前約50メートルのところに民家がある。噴射口から吹き出す排気ガスは、手前の「対策塀」の上を通りこして農家を直撃する。成田市は、公団にフェンスを高くさせ、汚染調査を行うべきです。

(7月5日) 成田高速鉄道/鉄道事業を認可(7/6朝日、毎日、東京、産経、日経各紙の千葉版、千葉日報)

 成田新高速鉄道の建設主体となる第三セクター「成田高速鉄道アクセス」(興村猛代表取締役)と、運行業務を担う「京成電鉄」(大塚弘社長)が国土交通省に申請していた鉄道事業の認可が5日、同省から下りた。
 成田高速鉄道アクセスが行うのは北総・公団線の印旛日本医大前一成田空港間の19・1キロの新線整備など。総事業費は1261億円。
 鉄道事業許可が下りたのは、同社が申請していた印旛日本医大前一成田市土屋間の10・7キロの線路建設と、京成電鉄が申請していた京成高砂―成田空港間の運行業務。
 堂本知事は「成田新高速鉄道の実現への第一歩。県としても最大限努力する」などと意欲を語った。一方で、同鉄道の計画ルートをめぐっては日本野鳥の会県支部(志村英雄支部長)など市民団体から「鉄道の通過予定地域の印旛沼には絶滅危ぐ種の鳥類などが生息している。路線変更や地下トンネル化などで鳥類との共生を図ってほしい」との要望が出されている。これについて堂本知事は「私も環境派。市民団体との板挟みになって大変悩むところだが、開発と自然・環境との調和を取っていくことが大変重要。環境アセスメント(環境影響評価)の結果を真しに受け止めていく」との考えを示した。
 成田高速鉄道アクセスでは近く環境アセスヘの手続きに入り、年内に着手する方針。同鉄道は2005年度に着工、2010年度の開業が予定されている。

 【本紙の解説】
 堂本知事は、「私も環境派」といいながら「開発と自然・環境との調和」といって開発を積極的に進め、その限りで「自然・環境」を残すというものだ。経済的発展のための開発と自然環境を守ることは矛盾するものである。本来は、経済的発展を阻害してでも自然環境を守るのが環境派の考え。しかし、堂本知事の考え方には経済発展の「阻害」という言葉はない。あくまで「調和」である。つまり、経済のためには自然は破壊されても仕方がないとの考え方なのである。

(7月7日) 成田空港騒対協が総会/「騒音下の地域振興策を」(7/8千葉日報)

 成田市内の騒音地区関係団体代表で構成される「成田空港騒音対策地域連絡協議会」(平山正吉会長)は7日、2002年度の総会を成田市内で開いた。
 総会では、暫定平行滑走路の運用開始を受け、新たな騒音・環境対策を盛り込んだ活動方針を了承。防音工事実施済家屋の遮音効果の維持対策の確立や、従来以上に遮音性の高い防音設計・施工方法の実現、航空機落下物対策で「落下物があり、生活および仕事上危険性のある地域については移転も含めた防止対策」などを掲げて活動していくことになった。
 さらに、暫定平行滑走路の運用といった空港機能の拡充が進む反面、「騒音下の地域づくりは、十年一日のごとく新たな展開は全くみられず、光の当たる地域との格差は拡大するばかり」として、国や空港公団が標榜する「空港づくりは地域づくり」の原点に立ち返って、騒音対策を中心とする共生策の充実・実現、「影となっている」地域の地域振興策の積極的な推進を関係機関に強く望む決議を採択した。
 特に地域振興策については、議事に先立ってあいさつした平山会長が「平行滑走路がオープンして、地域にいろいろな問題点がでている。空港公団はもろもろの問題を解決しながら、地域振興策に真剣に取り組んでほしい」と要請。

 【本紙の解説】
 騒対協はこのかん基本的な活動が低迷している。原因は国交省と公団が「地域振興」という地元見返り事業と騒音対策費を出し渋っていることにある。
 地域振興策の財政的な柱であった成田財特法(新東京国際空港周辺整備のための財政上の特別措置法)は、2004年度で打ち切られることが決定している。成田財特法は70年に期限10年間の時限立法として制定されたが、空港完成の遅れを理由に、その後2度延長された。99年に暫定滑走路着工情勢の中で、これ以上の再延長はないことと、5年に限るという条件付きで3度目の延長が決まった。
 騒対協は、成田財特の期限切れ情勢で活動の動機そのものを失っている。騒音・環境対策や航空機落下物対策をいくら要求しても反応は薄く、言葉だけなのである。国交省は羽田空港の再拡張とそれによる羽田国際化に走っており、成田への見返り事業は成田新高速鉄道で終わりだと言われている。
 やはり空港は、騒音と落下物、事故などの危険だけを運んでくるものだ。喧伝されている経済効果も怪しい。むしろ空港のために周辺が過疎化し、経済的発展がそがれている。周辺の山野の荒廃や土地価格の下落も甚だしい。「見返り」もなくなったことで、空港建設を積極的に推し進めてきた騒対協への住民からの風当たりも強まっている。

(7月8日) 空港警備の裏で私腹/収賄逮捕の公団職員高村容疑者(7/9、10全紙の千葉版)

 新東京国際空港公団の課長代理が8日、出入りの業者からわいろを受け取ったとして、汚職事件で逮捕された。
 収賄容疑で逮捕された同公団事業課長代理高村文彦容疑者(52)が、寝具リース会社「オタフク」(千葉市)からわいろを受け取ったとされるのは1999年ごろ。サッカーW杯の開催をにらみ、運輸省(現国土交通省)が暫定滑走路建設の方針を決めた時期と重なる。
 99年5月に年内着工の方針が打ち出されると、反対派は一斉に反発。特に最強硬派の三里塚・芝山連合空港反対同盟北原派は「暫定滑走路阻止」「成田空港粉砕」を掲げ活動を活発化させ、県警や公団は例年以上に集会やデモの警備に人員を投入する状況にあった。
 集会の際、公団職員などは泊まり込みで対応するため、そのたびに数千組に上る寝具が用意されるという。高村容疑者はこうした状況を利用し、業者からわいろを受け取ったとみられる。
 「オタフク」は公団の寝具リース業務を長期間受注していたほか、機動隊の空港警備のための寝具も独占的に納入していた。99年度に同社が成田関連で受注した寝具リースの契約額は、前年度比で四倍弱の3700万円に上ったという。

 【本紙の解説】
 警備のための貸布団納入で業者からわいろを受け取り、その金で何度もフィリピンへの遊興旅行に出かけていたとは、怒り以上になんとも情けない話だ。公団の収賄体質の露呈と言われても仕方がない。
 逮捕された高村容疑者は「人当たりの良い親分肌タイプ」と仲間から言われ、公団人事担当の小山理事も「評判の良い、しっかり仕事をする男だった」としている。公団職員の“模範的人物”だったのだ。その模範生が「フィリッピンに行きたい。金が欲しい」と零細企業にたかっていた。
 空港公団には、関連業者からの接待は当然という雰囲気がある。これまで何故か捜査の手が入らなかっただけで、高村容疑者の件は氷山の一角にすぎない。もっとたちの悪い贈収賄は腐るほどあるはずだ。公団職員は今、もみ消しに大わらわらしい。
 いま民営化論議の真っ最中だが、仮に空港公団が民営化していれば、今回のような贈収賄事件は立件できなかった。その一点でも、公団の民営化は国民の利益に反する。民営化されれば贈収賄は合法となる。公団の関連業者へのたかり体質がますます増長することは火を見るよりも明らかだ。

(7月9日) 全日空社長、3空港の「上下分離」方式に反対表明(7/10朝日、毎日)

 全日本空輸の大橋洋治社長は9日の記者会見で、成田、関西、中部の3空港を「上下分離」方式で民営化する国土交通省の方針に反対する意向を表明した。社長は「成田は成田で民営化してやっていけばいい。羽田再拡張にも資金を活用できるかもしれない」と語り、成田単独で民営化して株式を上場後、株の売却資金を羽田の4本目の滑走路をつくる再拡張事業に充てる考え方を示した。
 大橋社長は、民間航空会社でつくる定期航空協会の会長を兼ねており、定航協としても同様の意向を伝えた模様だ。
 国交省が推す上下分離方式には、巨額債務を抱える関空の救済策だとして、成田や中部地方の自治体や財界が反対。定航協も、成田の着陸料引き下げが困難になると反対してきた。
 上下分離を見送れば関空の経営はより厳しくなるが、進行中の2期工事について大橋社長は「まず羽田でやったように(管制などの)ソフト面を工夫して発着容量を増やし、滑走路の着工時期はそれから検討すればいい」と述べた。

 【本紙の解説】
 国交省の「上下分離による3国際空港統合民営化」案は難航しそうだ。自民党政調会、IATA、定期航空協議会、千葉県と成田空港周辺自治体、中部空港関係者などから反対されている。賛成しているのは関空関係者だけだ。大阪府、関西ゼネコン、関西選出自民党国会議員である。
 そもそも国交省は空港の民営化に反対の立場だ。空港建設とその運営権益を手放したくないとの動機から、名目だけの民営化案として上下分離・3空港統合案を出したのである。
 こんな動機の民営化案がすんなり通るほど、昨今の航空業界は甘くはない。航空需要の長期的落ち込みで、各国航空会社は生き残りのために減便、リストラ、合併をやっている。成田の着陸料の高さをそのまま維持できる情勢ではない。
 この問題は、成田空港などの空港建設の歴史的失敗を背景に、国交省航空局が21世紀の航空業界全般への対応能力を失っていることを示している。

(7月12日) 国交省/航空運賃下げ目標明記(7/13朝日、毎日)

 国土交通省は12日、空港整備の成果を外部にわかりやすく説明するため、次期空港整備計画(8空整)に、航空運賃の引き下げ目標などを盛り込む方針を固めた。具体的な数値は、交通政策審議会空港整備部会での論議を踏まえて詰める。
 同省は公共工事でどの程度国民にメリットが生じたかを評価するため、各種の長期計画で具体的な項目ごとに目標を設定する作業を進めている。
 同省案では、平均旅客運賃や地方空港と国際空港間の便数、空港ビルのバリアフリー化進ちょく率、航空事故発生率など24項目で目標値を設定。空港利用者へのアンケート調査などを基に、「空港快適度指数」を設けることも検討する。
 国交省は「航空運賃引き下げのためには羽田空港の発着枠を増やし、航空会社間の競争を促進することが必要」と指摘。目標設定も利用して1兆円規模といわれる羽田再拡張計画の財源確保を図りたい考えだ。

【本紙の解説】
 8空整で日本の空港整備計画は一変する。整備計画はいままでの放漫な空港建設をやめる。アジアのゲートウエーという考え方とハブ空港論の撤回、さらに地方空港建設の抑制である。空港整備資金の枯渇を解決するためである。いまのままでは羽田のD滑走路の建築費用1兆円の捻出と関空の赤字補填のための無利子資金の投入ができなくなっている。
 そのために、今回の「アウトカム(成果)指標」がある。この指標を掲げることで地方空港建設要求を抑制することを目的としている。さらに直接的には羽田空港を中心とした国内路線の集客を図り、空港整備特別会計の財源である着陸料を増加するためである。
 8空整の最大問題は、空港整備特別会計が1兆円以上の借り入れ超過になっていることの是正にある。国交省としても、航空需要掘り起こしのために、「客の立場」での「成果指標」などと言い始めたのである。

(7月12日) 羽田空港新滑走路 都など7自治体に3000億円負担要求(7/13産経)

 国土交通省は12日までに、羽田空港の四本目の滑走路建設の財政負担の一部を、東京都のほか、神奈川、千葉、埼玉の3県、政令指定都市の横浜、川崎、千葉の3市に求める方針で本格検討に入った。羽田は国の全額負担で整備する「第一種空港」に指定されている。だが新滑走路については事業負担が重く、国交省は費用の一部を地元に求める方向で調整していた。
 これを踏まえて、国交省は同日の交通政策審議会空港整備部会の最終審議で「羽田は東京都にあるが、どこの人が多く利用しているか視野に入れて、経済や雇用への効果も考えるべきだ」と指摘。東京都以外の周辺自治体にも負担を要求する考えを示した。
 羽田は国内線の最大拠点で第一種空港。整備費用などは国が全額負担する必要がある。発着枠不足解消のため、早期建設が求められている第4滑走路の建設費用も本来なら国の負担だ。だが国交省は、総事業費が約9000億円と巨額で、空港整備特別会計だけで調達できず、一般財源の追加投入も難しいとしている。
 このため、一部負担を東京都や神奈川県などに求める検討に入った。地方負担の割合について同省は「最大でも3分の1以内だろう」(幹部)としている。 また「1都3県」と政令指定都市を負担対象とする根拠は、羽田利用者の出発・目的地の9割弱、居住地の5割が「1都3県」に占められているほか、経済・雇用への波及効果も踏まえた。関係自治体の負担は総額で最大で約3000億円になる見通しだが、国交省は負担割合の調整を各自治体に委ねることも視野に入れている。
 東京都の石原慎太郎知事はすでに反対の意向を表明。各自治体としても財政事情は厳しく、特に、成田空港を抱え、羽田再拡張で着陸ルートの新たな騒音を懸念する千葉県の反発も必至だ。

【本紙の解説】
 国交省は空港整備特別会計の大赤字で、羽田空港D滑走路の建設資金の捻出に四苦八苦している。いままでなら、航空需要予測データを過大に見積もり、財政投融資などの借入金でまかなえるとしてきた。しかし、羽田の建設費を借入金にすると、空港整備特別会計の収入の大半が借入金の利払いだけで終わってしまう現実になっている。そのために、借入金での建設ができなくなっている。
 これまでの航空行政がこの事態を生み出した。首都圏においては成田空港への治安的観点での異常なまでの固執と、地方空港の放漫な建設が作り上げた現実である。その結果、空港整備として最重要な首都圏の国際空港の建設で、それも、日本で1番収入のある空港の再拡張であるにもかかわらず、財政難に陥ったのである。

(7月12日) 日航機ニアミス事故最終報告(7/13全紙)

 静岡県上空で昨年1月、日本航空機同士が異常接近(ニアミス)した事故で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は12日、事故は、管制官の指示間違いや空中衝突防止装置(TCAS)の指示と異なる操縦など、14の要因が連鎖して起きたとの最終調査報告書を、扇千景国交相に提出した。再発防止のため、管制官、機長、TCASの三者間のルールの明確化を柱に、国際民間航空機関(ICAO)と国交相に対し、10項目の安全勧告を盛り込んだ。調査委は「一日も早く国際的な改善策を」と訴えている。
 事故は、羽田発那覇行き日航907便と韓国・釜山発成田行き同958便が駿河湾上空で接近。両機とも下降して相手機を避けようとしたため、さらに接近し、907便が衝突回避のため急降下した結果、乗客・乗員100人が負傷した。
 調査委の認定では、両機の最接近時の距離は105〜165メートル、高度差は20〜60メートルで、空中衝突寸前の際どさだった。
 事故の主因としては(1)管制官が便名を間違え、958便に出すべき「降下」指示を907便に与えた、(2)907便の機長は、TCASが「上昇」の指示を発したのに、管制指示に従って降下した、(3)907便は衝突回避のために急激に降下した――をあげた。これに、管制の異常接近警報の作動遅れやTCASの回避指示(RA)に関する規定の不備など、11の要因が連鎖して起きた複合事故とした。
 再発防止策の目玉は、ICAOへの初めての安全勧告。「航空界の憲法」とされるICAO規定に「RAの指示が最優先」「操縦士は管制官にRA作動を初期通報する」などを明文化するよう求めた。
 調査委は、現行の規定のあいまいさが、危険を招いたと指摘した。例えば、TCASは接近機の片方に「上昇」、片方に「下降」を指示する仕組みであるため、片方が指示とは逆の操縦をすれば、衝突の危険性は増大する。ところが、航空界ではその認識が薄いという。ドイツの空中衝突事故でも、一方の機長は管制指示を優先し、RAとは逆操作をしたとされる。
 一方、国交相には、RA作動が管制機関のレーダー画面でもわかるよう改良を求めた。同省は来年秋から順次進める方針だが、全国の主要空域で実現するまでには約5年かかるという。

【本紙の解説】
 世界的趨勢でも管制官や機長の判断より、TCASの指示を優先するとなっている。これはおかしなことである。航空機事故は大惨事なり、それがいままで頻発している。その結果、管制官の指示と機長の判断のミスが事故の原因であり、そのために、機械であるTCASの指示を優先するということである。しかし、TCASがその信頼に足りるものであるとの歴史的検証は未だなされていない。また、TCASが正しく作動していることを今回の報告書は前提にしている。TCASは機械である。事前点検の見落としや、離陸後の故障も多いはずである。それを整備点検者や機長が気づかなかった場合は、どうなるのか。航空機が衝突直前になってもTCASが故障で空中衝突防止装置が作動しなかったらどうなるのか。衝突しそうな2機のうち1機のTCASが作動していれば、衝突は回避できるとでもいうのか。しかしその点も実証的点検、歴史的検証はされていない。
 管制官や機長という人間の判断が間違うことがあるということで、機械の方が信用できるということだ。しかし、機械の故障もあれば、間違いも多くある。これは近代、現代で幾多の例がある。
 航空機が安全に運航できるためには、まだまだ、多くの大惨事という経験が必要らしい。航空機はいまだ、安全な乗り物ではない。それなのに、なぜこんなに航空機がつくられ、航空機路線が空中衝突するほど、多くの路線が運航されているのか。それは民間機の製造と運航が営利を至上目的にしているため、安全性は本質的に犠牲にされる構造になっているからだ。軍用機開発の資金づくりのために、民間機が必要以上に乱造されるという問題もある。

(7月15日) 空港建設で衝突/メキシコ(7/16毎日)

 メキシコ市の東30キロにある町サンサルバドル・アテンコで国際空港建設に反対する農民が警察と衝突し、政府職員ら15人を人質に町を占拠する事件が起きた。政府が農民ら12人を釈放したのを受け、人質は15日未明、無事解放された。「ビジネス政府」を掲げて2年前に就任したフォックス大統領は23億ドル(2760億円)規模の空港建設を目指してきたが、農民を支援する左翼系組織の反発が広がりそうだ。
 アテンコは高速道路と幹線道路が交わる交通の要衝。メキシコ市の空港は滑走路2本と手狭なため、フォックス政権は昨年10月、新空港建設のため約4000ヘクタールの農地を接収する大統領令を発令した。実現すれば、約3000世帯が土地を奪われアテンコの町は消える。農民らが11日、反対集会を開いていたところ、警察が急襲して衝突に発展、30人が負傷し12人が逮捕された。代わりに農民側は政府職員や警官ら計15人を拉致し「建設を中止しなければ処刑する」と迫った。
 大統領令の接収価格は1平方メートルわずか7ベン(約90円)。

【本紙の解説】
 これはメキシコの三里塚闘争である。それにしても、1平方メートル90円ということは、あまりにも安い買い上げ額である。1世帯あたりの農地所有面積が平均1・3ヘクタール。1世帯の買い上げ額は、約120万弱になる。この額で、農地を手放し、町からでて行けということだ。代替地の補償もなく、ただ120万円ほどの金を持ってどこにでも行けということである。これはメキシコの経済危機の中で、転職の可能性もまったくなく、農民に死ねということと同じことである。
 アンテコ空港反対を闘っている農民組織や支援している左翼組織の思想、路線、方針がよくわからないので断言はできないが、メキシコ全土をゆるがす内乱的闘争に間違いなく発展する。3000世帯が死ぬ覚悟で闘い抜こうとしている。約20000人の大闘争である。
 現在、アンテコの町の2キロ四方は武装した農民が制圧し、警官、軍隊をたたき出している。メキシコ政府はいままで農民や、先住民の要求をのんだ例はないらしい。すぐ軍隊を派遣し制圧することが慣例らしい。しかしアンテコの農民は「占拠」「人質」作戦などを敢行、さらにテレビなどに占拠の状況を中継させ、政府の強攻策を牽制している。
 メキシコの例は生々しい例だが、三里塚の原点も同じである。農民から農地を問答無用で一方的に取り上げることは、農民に「死ね」ということと同じなのである。

(7月15日) 芝山町 産廃搬入禁止を求め提訴(7/16朝日、東京の各千葉版)

 芝山町大台の山林に違法に産業廃棄物を搬入しているとして、同町と周辺住民14人が15日、千葉市若葉区内の建築工事業者(49)と土地を所有する成田市内の電気工事会社を相手に、産廃の搬入禁止と撤去を求める訴えを千葉地裁八日市場支部に起こした。
 訴えなどによると、建築業者は今年1月ごろから約330平方メートルの山林に、廃棄物処理法に基づく許司を受けずに産廃を搬入、堆積させており、3月と5月の県の指導にも従っていないという。このため、住民らは有害物質の飛散や地下水汚染などで、健康被害が発生するおそれがあるとしている。町は、毅然とした態度を示し、被害の拡大をくいとめるため、原告に加わったという。

【本紙の解説】
 芝山の住民14人が裁判闘争に決起し、産廃業者を訴えたことは高く評価できる闘いである。
 しかし問題は、空港建設に問題の根本があることだ。産廃は千葉県、埼玉県、群馬県南部、茨城県西部の全域で問題になっている。その中でも、空港周辺は不法産廃の銀座通りになっている。それは、空港のために騒音地区の無人化が進行していることと、土地価格の下落で里山が荒れ放題になっていることによる。また、空港のために高速道路が整備され、首都圏で東京からもっとも近い産廃ゾーンになっていることもある。
 不法産廃が成田周辺に多くあることの原因は、空港建設そのものにある。

(7月16日) 反対同盟、成田市へ航空機エンジンの排ガス対策を再度要望

 7月16日、反対同盟は成田市空対部に市東さん宅で、ジェット噴射の排ガスフェンスについての空港公団の回答(7月2日の回答書参照)のデタラメぶりを説明し、成田市にあらためてフェンスの設置を迫った。成田市の小泉空対部長は、市東さんと反対同盟の訴えに、「対策フェンスをつくらせる立場で空港公団に要望する」と確約し、7月末日までに回答することになった。
 この日、反対同盟は実地検証と噴射の直撃のビデオ映像で実態を説明した。成田市は被害状況を認め、公団回答のデタラメを確認した。(詳しくは本紙参照)
(7月19日) 成田新高速鉄道/環境アセス手続き開始へ (7/20千葉日報)

 成田空港と都心を結ぶ新たな交通アクセスとなる成田新高速鉄道(B案ルート)と北千葉道路の環境アセスメント(影響評価)の手続きについて、19日までにルート予定地となる成田市と印旛村の自治体、関係住民への説明会が終了、来月初旬から最初の手続きとなる環境影響評価方法書の縦覧が始まることになった。
 環境アセスは、北総・公団線の印旛日本医大駅から成田空港駅間までの新線建設区間について新会社が行うもので、8月上旬から1カ月間、環境影響評価方法書の公告・縦覧を実施。2004年度中に終了させる。
 一方、北千葉道路(市川〜成田間、総延長約45キロ)も、成田新高速鉄道と同じタイムスケジュールで行われることになった。
 成田新高速鉄道と北千葉道路が同時に環境アセスの手続きに入ることになったことで、両事業の一体的な整備を求める沿線自治体には朗報。
 その一方で、自然保護団体などから数多く生息する野鳥・水鳥など印旛沼周辺の自然・生態系への影響に対する懸念も表明されており、環境アセス結果が注目される。

【本紙の解説】
 このような環境アセスメントで公共事業そのものが中止に追いやられて例も数多いが、しかし、大半は事業計画のまま承認されるか、部分的工事計画の変更である。
 このことを「環境派」を標榜する堂本知事はよく知っている。そのために、工事中止の意見に対して、環境アセスメントの結果を重んずるとしか言わないのである。つまり、堂本知事は鳥類の絶滅危惧種などにはお構いなしに、鉄道工事を予定通り進めるという方針なのだ。
 しかし、大赤字が出ることが確実な不採算線であり、財務省その他、政府部内でも反対意見は多い。また、成田新高速鉄道が成田市の発展につながらないことを小川市長と成田市幹部も自覚し始めた。成田新高速鉄道もまだまだ、ジグザクしそうだ。

(7月20日) 反対同盟/恒例の団結海水浴

 反対同盟は夏恒例の団結海水浴を、東京からの参加者をふくめて7月20日、九十九里浜で行った。海水浴とレクレーションで楽しみながら、暫定滑走路供用開始以降の激しい農民追い出し攻撃と闘い抜いてきた労をねぎらい、秋の10月全国集会までの闘争方針を確認した。(詳しくは本紙参照)

(7月23日) 成田商工会議所/暫定滑走路「北延長」要望へ(7/24千葉日報)

 成田商工会議所(野間口勉会頭)は23日の正副会頭会議と常議員会で、成田空港の暫定平行滑走路について、滑走路南側の空港反対派との用地交渉に今後も進展がなければ、北へ延長して2500メートル滑走路を完成させるよう、国や空港公団などに要望する方針を確認した。
 来月末に開かれる、空港周辺2市7町の商工業者でつくる「空港周辺商工業経済団体連絡協議会」に提案し、同意を得た上で、空港周辺商工団体の総意として要望したい考え。

 【本紙の解説】
 暫定滑走路の「北側延長」が三里塚闘争を解体するために一部で取り上げられているが、8空整(第8次空港整備計画)策定の政策的判断としてはまったくの空論である。
 今回の成田商工会議所の意見は、北側に300メートル延長して当初計画の2500メートルにしてジャンボ機が飛べるようにしろというものである。
 しかし、仮に300メートル延長しても、暫定滑走路からジャンボ機は飛べない。滑走路にいたる連絡誘導路の全体幅が、基準より7・5メートルも狭い93・5メートルしかない(基準は101メートル)からである。ジャンボ機はここを通過できない。滑走路を延長してもジャンボ機が滑走路に入れないのである。
 この北側延長問題は、すでに様々な技術的問題として不可能という結論が出たものだ。そもそも暫定滑走路の計画段階で「北ずらし」が検討された時、ギリギリ最大限のずらし幅として800メートルが確保された。これで南側予定地の切断部分を差し引き、暫定路は最終的に2180メートルとなった。国際空港の滑走路として前代未聞の短さだが、これ以上どうにもならなかったので着工・開港に踏み切ったのである。
 この期に及んで「北ずらし」が取りざたされる理由は、一点農民切り崩しのための脅し材料である。成田空港問題を引き起こした根本問題である農民無視という意味でも、未買収地の農民を逆なでにする実に悪らつな物言いである。国交省と公団は、滑走路の東側や西側に新たに連絡誘導路を造ることも検討したようだが、これも不可能との結論がでている。
 また仮に300メートル北に延長しても、現行の国道51号線が滑走路の真下を通過することになる。そのために、国道51号のトンネルを本格的に造り直す(現在のトンネルは天井部が薄く、滑走路に耐える強度がない)か、国道のルートを300メートル以上北側に迂回させることが必要になる。
 新たな用地買収を避けるならトンネルの造り直しだが、これは難工事となる。小見川県道の「天神峰トンネル」(暫定滑走路南端部)の工事も大きなクレーンが林立した工事であった。滑走路を運航しながらの工事となるので飛行時間帯は不可能だ。滑走路の進入表面や転移表面をクレーンが突き抜けるからである。
 そうすると、工事は23時から6時までの深夜・早朝の7時間しかない。この間にクレーンを立て、明け方6時までに倒さなければならない。一日の工事時間は実質3時間程度しかとれない。深夜で1日3時間ほどの工事では工事の進捗(しんちょく)ははかどらない。暫定滑走路の工事で最も時間がかかったのが、小見川県道トンネル工事だった。2年ほどかかっている。ぶっ通しの夜間工事も含む突貫工事で2年間である。1日3時間ほどの工事時間では10年以上かかる工事である。
 国道のルート付け替えも簡単ではない。渋滞する地域の国道ゆえ無理な迂回はできず、2キロから3キロ程度の大規模な付け替え工事となる。新たな用地買収問題も多数発生し、商業地の移転・補償問題なども含め(大規模な産廃処理場の移転問題も発生する)、解決までの時間がどれだけかかるかまったく未知数だ。用地問題が絡むと、この近辺の多くの事例で証明済みだが、一朝一夕では絶対に片付かない問題になることは目に見えている。
 また「2500メートルの当初計画」では、無理を重ねて延長する意味はほとんどない。実は3000メートル滑走路にならなければ、ジャンボ機は(連絡誘導路問題を棚上げにした仮定の問題だが)アジアの近距離便にしか使えない。2500メートルでは、燃料を満載して離陸できないからだ。
 結局、暫定滑走路は3000メートルまで延長できなければ、滑走路自体の能力として意味がないのだ。もろちんこの想定も、駐機場(エプロン)との連絡誘導路問題が解決不可能なので無意味である。
 しかも今度は、東関東自動車道のルート迂回問題、それもずらし幅約1キロ、付け替え全長約12キロという、とてつもない大問題が発生する。予算規模も3000億〜4000億円にもなり、これだけで地方空港がひとつ出来上がる金額だ。これは現在の国家財政破綻下では不可能な問題だ。(本紙記事および7月25日付日誌参照)
 結論。「北側延長論」は現実論ではありえない。三里塚闘争の破壊、反対派地権者切り崩しのための、ためにする脅しである。
 成田商工会議所は99年に、地権者への反動的圧力を組織する目的で「平行滑走路の早期完成を求める10万人署名」をデッチあげた中軸団体である。この成田商工会議所が三里塚闘争への全面的敵対行為にのりだした。絶対に許すことのできない問題である。

(7月25日) 熱田派支援者経営者の食品加工工場/特例で防音工事へ(7/26読売千葉版)

 空港公団は25日までに、成田空港の平行滑走路建設予定地にあり、反対同盟熱田派の支援者が経営する食品加工会社「三里塚物産」の工場に対し、防音工事を行うことを決めた。法律による対策ではなく、「特例的な措置」として実施する。工事は8月10日ごろに始まる予定だ。
 工場は、暫定平行滑走路から約400メートル南の成田市東峰地区にあり、飛行ルートのほぼ直下にあたる。
 暫定滑走路供用後、約85デシベルの騒音被害を受けるようになったため、同社が防音工事を要請。公団は「騒音被害が起きており、人道的な立場から対策をとる必要がある」として、窓を二重サッシにするなど対策を講じることにした。
 工場は空港予定地内にたっており、騒音対策を定めた「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」(騒防法)の対象外のため、公団は、被害を軽減する「特例的な応急措置」として実施する。
 同社は、工場の敷地約195平方メートルを平行滑走路予定地に所有している。
 防音工事を受けることについて同社は、「従業員の健康を守るためで、用地交渉とは切り離して考えている。工場の移転や土地の売却には応じない」と話している。

 【本紙の解説】
 三里塚物産は、三里塚農民が公団からの防音工事を拒否して闘っているにもかかわらず、公団に特例で防音工事を要望するというとんでもない支援勢力である。そもそも、三里塚闘争に日中友好協会の現地支援者として入り込みながら、三里塚物産は、成田市当局の便宜供与も受け、公団、行政の「話し合い」攻撃や切り崩しの水先案内人といわれても仕方がない行動と立場をとってきた。
 今回の例はその典型である。最初は本格的防音工事を要望したが、建物本体が工事用のプレハブなので本格防音工事は無理で、「窓を二重サッシ」という簡易工事となった。このような工事は自前でやって頑張るのが、三里塚闘争のこれまでの考え方である。

(7月25日) 中村公団総裁/暫定滑走路の北延長も(7/26千葉日報)

 近く任期が切れる新東京国際空港公団の中村徹総裁は25日、反対派農家が残るため難航している成田空港暫定滑走路の2500メートル化について「任期中の解決は無理。待てないとなれば、北に伸ばすという手だてをとらざるを得ない」と述べ、今後も用地交渉に進展がなければ、滑走路を居住者のいない北側に伸ばす計画変更は現実的との考えを示した。共同通信の取材に答えた。
 中村総裁は29日に退任予定で、次期総裁には黒野匡彦元運輸事務次官が内定している。
 2本目の滑走路は本来計画より約300メートル短い2180メートルでオープンせざるを得なかった現状について、中村総裁は「誠に力不足で申し訳なく、残念」とした上で「新総裁が就任しても解決には時間がかかると予想され、『待てない』という判断になる可能性は高い」と語った。
 「北伸ばし案」について、「投資額は百数十億円規模と思われ、将来的に(用地問題が解決し)南側に伸びたとしても無駄金ではない。敷地を遊ばせておくよりもつくった方がよい。安全性確保のためには、滑走路は長ければ長いほど良い」と述べた。

 【本紙の解説】
 成田商工会議所につづいて、中村公団総裁も北側延長論を唱え始めている。北側延長は技術的にも困難で無理である。にもかかわらず、この問題が再三再四浮上する意味は、「北側延長するから、闘争を継続しても無駄だ」という農民への脅し効果を狙ったものだ。
 中村総裁が北側延長論を唱えるもう一つの意味は、暫定滑走路はやはり使い物にならないことがはっきりしたことにある。鳴り物入りの開港からわずか3カ月で、2180メートル滑走路の致命的欠陥が露呈し、「やはり当初計画の2500メートルを」という言い草自体が無責任の極みである。
 そもそも公団は、暫定滑走路から飛行機を飛ばせば地権者は必ず折れる、空港反対闘争は解体できるとの腹づもりで開港を強行した。しかし、思惑ははずれ、暫定滑走路の欠陥性だけが全世界に公表されてしまった。反対同盟と地権者農民は全存在を賭けて、国家犯罪ともいうべき開港を告発する道を選んだ。いまや中村総裁は、無理な開港を強行した責任を問われる立場に追い込まれている。その責任回避が、中村総裁の北側延長論の狙いである。
 暫定滑走路の最大の欠陥は、連絡誘導路の片側通行問題と天神峰の逆くの字誘導路だ。ここで航空機は信号機で停止を余儀なくされる。結果、スポット(空港の搭乗口)を離れてから離陸するまでの時間が、最長で40分から50分もかかっている。評判はすこぶる悪い。
 またこの連絡誘導路は片側通行問題だけでなく、幅が狭くジャンボ機が通過できないことも決定的な欠陥だ。滑走路長を2500メートルにしようが、3000メートルにしようが、連絡誘導路が今のままではジャンボ機は使えない滑走路なのである。
 中村総裁の最終的な意図は、「北側延長」で天神峰・東峰地区の地権者を脅して屈服させ、連絡誘導路をジャンボ機も通れる交互通行幅を確保すること。または連絡誘導路を必要としない当初計画の南側延伸の道筋をつけることだ。ジャンボ機が飛べるようにするには、この方法しかない。現状で滑走路をいくら北側に延長しても意味がないのだ。
 北側へさらに800メートル以上延長し、3000メートル滑走路にしろという主張を成田空港対策協議会の前会長・鬼沢伸夫などが出していたが、これも空論であり暴論である。
 北側へ800メートル以上延長する場合は、東関東自動車道の迂回路が必要になる。1キロ北側に迂回するためには、約12キロの高速自動車道の付け替え建設が必要になる。高速自動車道の建設費は膨大で、第二東名の実績で1キロあたり187億円。土地代が安い関越道でも、1キロ100億円から150億円かかっている。東京外環自動車道は1キロ1兆円とも計算されている。
 東関東自動車道では、12キロで大雑把に計算して約2400億円となる。また、国道51号の本格トンネル化工事も必要で、これは夜間大工事になる。夜間工事は通常の工事費の数倍にもなる。これだけで1000億円以上といわれている。滑走路本体の工事費は数百億円。暫定滑走路の工事費も1320億円であった。問題は道路の付け替えなのだ。
 羽田再拡張で1兆円かかり、その地方自治体への分担金3000億円を国交省は要請しているが、調整がつかない。資金調達の目処もたたず、羽田の再拡張はその工法(メガフロートかハイブリッドか)もきまらず、計画が来年度は持ち越しになりそうである。
 この国交省の財政事情下で、暫定滑走路の北側延長に数千億円の予算が立つべくもない。しかも連絡誘導路、誘導路逆くの字問題、空域問題などがすべて解決しなければ、滑走路だけ長くなっても使い勝手の悪さは同じだ。
 公団は「北側延長」をもっともらしく誇張し、反対闘争を解体することで、本来計画の南側延長に道筋をつけたいのだ。そのための農民切り崩しの脅し文句が「北側延長論」の正体である。

(7月26日) 新東京国際空港公団総裁に黒野氏(7/26読売、日経)

 国土交通省は25日、新東京国際空港公団の総裁に、元運輸事務次富の黒野匡彦港湾近代化促進協議会会長(60)を充てる人事を固めた。
 懸案だった成田空港の暫定滑走路が4月に運用を始めたのを機に、中村徹総裁(67)が任期の7月末で退任する。30日の閣議で了解を得た後、正式発令する。
 黒野匡彦氏(くろの・まさひこ) 64年東大法卒、運輸省(現国土交通省)入省。航空局長などを経て97年次官。99年7月から現職。愛知県出身

 【本紙の解説】
 黒野の運輸事務次官の在任期間は1997年から1999年7月までである。この在任期間中の99年に平行滑走路の「2000年完成」が完全に破綻した。当時の黒野事務次官は99年5月に、2500メートルの平行滑走路はいったん断念し、暫定滑走路の計画をつくり、発表した当事者である。使い勝手の悪さを承知で、滑走路一本だけの成田空港の欠陥を補完できないことが明白になってなおかつ暫定滑走路を計画立案し、発表した張本人である。
 当時の黒野事務次官は「飛行機を飛ばせば地権者は出て行くだろう」という考えだった。その黒野元事務次官が、完成しても出て行かなかった農民と三里塚闘争との全面対決のために、公団総裁に就任する。
 黒野は成田空港建設で2度失敗している。「平行滑走路2000年度完成」の断念と、暫定滑走路による農民たたき出しの失敗である。今回の総裁就任では、暫定滑走路延長に失敗するだろう。自身3度目の敗北となりそうだ。

(7月26日) 騒音測定の信頼性疑問/成田市土室地区 (7/28千葉日報)

 成田空港暫定平行滑走路の運用開始で、新たに騒音区域となった成田市土室地区の「土室空港対策委員会」は26日夜、地区住民を対象に実施した「空港問題アンケート調査」結果の報告会を土室共同利用施設で行った。
 暫定平行滑走路の運用開始を受けて、航空機騒音や日常生活に対する変化、民家防音工事の効果、今後の居住意向などについて質問した。同地区に居住する中学生以上の184人が回答した。
 航空機騒音では「大変うるさい」「かなりうるさい」が82・6パーセントを占めた。騒音による迷惑が大きい時間帯としては「夕方」が34・2パーセントと最も多く、
 「航空機落下物」「墜落事故」の不安についてはそれぞれ79・2パーセント、79・7パーセントあった。
 生活への変化では「住みにくくなった」が38パーセントあり、その理由として55・4パーセントが「航空機騒音」をあげた。
 それでも、5割を超える住民が「現在のまま住み続ける」と答え、「他所へ移りたい」という回答は34・8パーセントだった。
 防音工事については、騒防法一種区域内に住む28世帯に対し質問。8割の世帯で防音工事をしているが、「効果がある」と答えたのは11世帯、「ない」が12世帯。防音工事の満足度で「不満」を感じているも11世帯となった。「防音工事の補償に都市型住宅と農家住宅の差が考慮されていない」「家全体の防音工事をして初めて生活できる防音工事補償といえる」などがあった。
 同日の報告会には県、成田市、空港公団の担当者も出席。調査結果を踏まえて質疑も行われた。 
 住民からは、資産価値が減じた山林の買い取りの要望、現在の騒音測定に対する信頼性への疑問などが相次ぎ、法・制度の壁に制約された現状が対策への不満となって噴出していた。 

 【本紙の解説】
 成田市土室地区は暫定滑走路の北端から3〜4キロの集落である。移転地区はなく、集落の中に騒防法一種区域内の家が28軒あり、防音工事をしている。この騒防法適用区域以外は、なにも措置はおこなわれていない。実際は暫定滑走路が800メートル北にずれたことにより、その分、騒防法の補償適用の範囲が広がるはずであったが、元の計画のままの騒音コンターで騒防法が適用されたままになっている。
 アンケートによれば、航空機騒音で住みづらくなり、航空機落下物や墜落事故の不安にさいなまれ、あげくのはてには山林の資産価値がなくなるというものでしかない。空港は経済的効果も薄く、騒音地区には迷惑至極の代物以外なにものでもないことを、このアンケートは示している。

(7月29日) 成田空港地域共生委員会「7割が要改修・改築」/防音住宅の調査報告(7/30朝日、読売、毎日の各千葉版、千葉日報)

 成田空港の運用や環境への影響を監視する第三者機関「成田空港地域共生委員会」(代表委員=山本雄二郎・高千穂大客員教授)の29日の会合で、新東京国際空港公団は今年3月から行っていた「防音工事済み住宅の経年変化調査」の結果を報告した。調査した住宅のうち73パーセントについて「修理や再工事、改築が必要」としている。
 公団は78年から航空機騒音防止法に基づき住宅防音工事を行っているが、成田市や芝山町など1市4町の275戸を対象に、工事から10年以上たち老朽化しても防音機能を保っているかを約3カ月かけて実地調査していた。
 また、共生委員会は広大な騒音区域を抱える成田空港の特殊性など、空港公団の民営化に関しての留意すべき5項目を「論点メモ」としてまとめた。今後、メモを中心に国土交通省などと意見交換し、民営化の議論に地域住民の意見を反映していきたい考えだ。

 【本紙の解説】
 「論点メモ」は、成田と関西、中部との騒音被害の違いをあげている。関西、中部は海上空港であり、成田は内陸空港であり、9000ヘクタールの騒音地域を抱えている。騒音対策が関西、中部とは大きく異なる。この「決定的な差」を民営化の中で国交省に認めてもらいたいということである。
 公団が今年の3月から大々的に防音効果の低下の調査を始めた(02年3月18日付日誌参照)。その理由は騒音下住民の生活環境の破壊により、空港建設への批判や不満が高まっていることによる。公団はその不満をアンケートにとりまとめ、3空港合体の民営化反対を主張しようとしているのである。
 関空、中部の海上空港と成田空港との「決定的な差」を問題にして、成田の「140億円」が毎年、関空の借金返済に回されることに反対している。このことに、今回の共生委員会での空港公団の「防音効果の低下」と共生委員会の「論点メモ」の報告の真意がある。
 それにしても、空港公団と共生委員会がタッグを組んで、国交省との民営化のスキーム論議を始めたことは、第三者機関であるべき共生委員会の存在の否定そのものである。公団の下請、御用機関に名実ともになったことを示している。

(7月29日) 中村空港公団総裁退任/滑走路延長は慎重に(全紙の千葉版、千葉日報)

 新東京国際空港公団の中村徹総裁が29日、成田空港内で退任の記者会見を行った。在任は94年から2期8年で、歴代総裁では最長になった。
 中村総裁は「一番記憶に残る」として、96年の本社機能移転をあげた。
また、B滑走路の運用については実現したものの、当初計画の2500メートル滑走路の用地がある成田市東峰地区には反対派地権者らが住み、依然として用地交渉に応じていない。
 「2500メートルの道筋をつけられなかったのは、自分の力不足。成田問題は東峰問題の解決なくして終わらない」と述べた。
 東峰地区の用地を外し、その北側にさらに延長して2500メートル滑走路を造る構想については「強制的な手段を使わずに2500メートル滑走路を造る場合、ごく少ない選択肢しかなく、北延ばしも可能性はある。技術的にも用地にも問題はない」と話した。
 さらに、東峰地区の用地問題に関しては「まさに人の心の問題。努力しても及ばないこともある。空港というものがなければ、地権者の方々の人生はまったく違っていた。どうにか、生活環境でも改善できないか考えていた」と述べた。そのうえで、「東峰の方々には、空港というくびきから解放されて、新たな幸せを求めてもらいたい」とし、同地区からの住民移転に期待を寄せた。

 【本紙の解説】
 「空港というくびきから解放されて、新たな幸せを求めてもらいたい」とは許し難い言動である。空港を住民無視で勝手に持ってきて、農地の強奪をどうして「くびきからの解放」といえるのか。それなりの対価を支払うことから「新たな幸せを求めてもらいたい」とでも言えるのか。
 中村前総裁の言葉は、空港建設によってそれまでの生活を全面的に否定され、生活転換を余儀なくされたことへの怒りと、そのことの痛みを寸毫も感じていない。これが国交省と公団の基本姿勢である。「空港のくびきから解放させてやる」、これは公団の公式的見解なのか。これは中村前総裁だけなのか。しかし、こんな発言がでる公団の体質では、だれが総裁になっても「用地交渉」が始まらないことだけは確実である。

(7月30日) 「地域の要望聞く」 黒野・新総裁が会見(7/31全紙の千葉版、千葉日報)

 新東京国際空港公団の総裁に30日、元運輸事務次官の黒野匡彦総裁(60)が就任した。黒野総裁は成田空港内で会見し「2500メートル平行滑走路計画の未買収地問題、公団民営化などの課題に地域の意見、要望を聞きながら取り組む」と抱負を述べた。
 任期は4年。また同日、中村徹前総裁(67)が公団特別顧問に就いた。黒野総裁は「成田を世界有数の国際空港にすることが旅客や国、世界、地域社会への責務だ」と話し、“日本の表玄関”充実への決意を示した。
 その後、記者会見し、「2500メートル平行滑走路の完成が最重要事案」、反対派農家との用地交渉について「1年とか2年とか期限を作る自信はない。粘り強く続けるしかない」と話した。用地交渉について国土交通省OBなどの間で話題に上っている暫定平行滑走路を320メートル北に伸ばす案については「選択肢として否定はしないが本来計画の2500メートルが理想でベスト。当面はそれに向け努力する」と述べた。
 また、用地問題をめぐる国や県などとの関係について「責任は公団にあるが、関係の方々が協力していただけると助かる」と話し、連携を呼びかけた。

 【本紙の解説】
 公団総裁の引き継ぎ会見で新旧総裁の基本方針がこれほど「対立」している例は過去にない。
 まず、「北側へ300メートル」の延長問題では、黒野新総裁は「選択肢として否定はしない」として言っているが、「本来計画の2500メートルが理想でベスト。当面はそれに向け努力する」として、否定している。官僚的用語では全面否定の言葉である。中村前総裁が退任間近になった急に「300メートル」と言い出したことは、黒野新総裁への最重要の引き継ぎ事項だからである。それをマスコミを通じてまでおこなったのは、黒野新総裁に無視されないためである。にもかかわらず、新任の総裁に即却下されてしまった。
 用地交渉に関しても、中村前総裁は、千葉県の堂本知事の介入を頑なに拒否してきた。しかし、黒野はすでに千葉県庁を訪問し、堂本知事と(用地交渉)を「一緒にやりましょう」と約束をしている(7/31千葉日報1面から)。
 黒野氏が運輸事務次官のときに、平行滑走路を北側にずらして短縮し、暫定滑走路とした。このときに、最後まで当初計画の2500メートルに固執したのが、中村前総裁であった。このときの因縁が両者の対立を増長させているとしか思えない。
 しかし黒野は、平行滑走路の完成に「一命をなげうつつもり」(7/31産経千葉版)と言い放ち、敷地内と地権者の切り崩しに躍起になっている。ここに、暫定滑走路延長をめぐる具体的攻防が開始したことをあらためて確認し、夏から秋の三里塚闘争を闘い抜かなければならない。10・13全国闘争と現地攻防に勝利しよう。

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