SANRIZUKA 日誌 HP版   2003/05/01〜31   

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 2003年5月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 


(5月1日) 新型肺炎、関係閣僚が初会合(5/2東京)

 政府は1日、首相官邸で新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)対策に関する関係大臣の初会合を開いた。新型肺炎に関する東南アジア諸国連合と日中韓、香港の保険担当相会合から3日帰国した坂口力厚生労働相が報告を行い、今後の対策などを協議した。
 坂口厚労相に続き、扇千景国土交通相が航空機内のマニュアルを作成したことを紹介。発熱やせきなど感染が疑われる乗客にはマスクを装着させて周囲に他の乗客がいない席へ移動してもらい、目的地の空港検疫所に連絡するとした。
 遠山敦子文部科学相は、国内患者の発生に備えて、大学病院にウイルスが外部に漏れない「陰圧」の病床223床を確保したことを報告。中国などの日本人学校の一時帰国者にも必要な対応をしていくとした。
 茂木敏充外務副大臣からは、日本人が海外の空港の検疫によって強制入院となる可能性があることを国民に認識してもらう必要があるとの意見が出された。

 【本紙の解説】
 世界保健機関(WHO)はSARSの患者数が5月1日現在、5865人、死亡者は同19人増の391人になったと発表した。現時点で死亡率が約6・7パーセントである。死亡率はさらに上昇する見込みであり、最終的には11パーセントになるという予測がある。
 SARSは経済的影響を世界的に及ぼし始めた。日本や米国の航空産業・旅行業界だけでなく、中国に生産拠点を移した日本の基幹産業や、欧州の航空産業や旅行業界にも深刻な影響が出始めている。
 日本政府も日本への感染を避けるために大わらわになりはじめた。しかし、国土交通省の航空機内のマニュアルは「感染が疑われる乗客にはマスクを装着」「乗客がいない席へ移動」という、マニュアルがなくとも誰でもやるたぐいのことであり、泥縄的対策でしかない。
 感染症対策はワクチンの完成を待つしかないようだ。マスクをかけ、うがいをし、手と顔を洗うことが最善の防止策といわれている。

(5月2日) 厚労省が成田に体温測定ブース(5/3毎日千葉版)

 厚労省成田空港検疫所は2日、SARSの典型的な発熱症状を旅客自らが確認、申告できるよう「体温測定ブース」を新たに設置した。
 このブースは、旅客ターミナルビルの検疫所内に計4カ所を設置。電子体温計をそれぞれ3本ずつ、計12本用意した。「発熱はSARSの典型的症状です。体温の測定をしましょう」と書かれたポスターを張っている。
 この日午後、感染が拡大している中国の上海から成田空港に帰国した旅客の数人がさっそく利用。商用で上海に滞在していた東京都国立市の会社員男性(45)は「水際対策はやり過ぎるくらいでちょうどいい」と体温計を手に話していた。

 【本紙の解説】
 成田空港検疫所は前日の5月1日に、問診票回収と検温も呼びかけるポスターを提示した。また、帰国してから10日間は人に会うのを最小限に止めるよう呼びかけるカードも配り始めた。しかし検診を呼びかけても、空港内で検診しようにも、場所も体温計も準備がないと帰国者に指摘され、急きょ体温測定ブースを設置したのである。
 これには理由がある。成田空港では4月22日、SARS対策のために人権侵害の疑いの高い「体温計測機能付きカメラ」を設置した(03年4月22日付日誌を参照)。つまり、帰国者の体温を計るまでもなく、公団と検疫所は掌握しており、高熱者を割り出し、診察を始めているからである。
 そのうえで5月1日に出したポスターとカードは帰国後10日間の発病の危険を訴えるためであった。
 公団と検疫所は検温の要求に対して「すでに体温計測機能付きカメラで皆さんの体温は計測しています」ともいえずに、体温測定ブースの設置となったのである。

(5月2日) 日航などに緊急融資(5/3朝日、毎日)

 日本政策投資銀行は2日、イラク戦争と重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響で需要が激減している日本航空システム(JALグループ)と全日本空輸に対し、緊急融資を行う方針を明らかにした。
 両社は中国路線を中心に減便を余儀なくされており、SARSの影響は半年近く続くと予測している。このため、両社の減収が03年度の当初計画比で計1100億円を超えると予想されている。
 国際線の比率が高いJALグループは大幅な減便となっており、4月からの約半年で約900億円の減収となる見通し。全日空も210億円の減収を見込んでいる。このため、政投銀は数百億円規模の資金を低利融資する方向で検討している。

 【本紙の解説】
 低利の融資とは借入金の肩代わりということになり、民間会社への国家援助である。9・11以来の国家による緊急融資である。米欧が航空会社への国家援助を早々と決めたことにより、日本政府も日航と全日空への援助を決めた。それは、航空会社の対外競争が民間会社の競争の域を超えて、国家間の競争であることによる。もうひとつの理由は、民間航空会社が国家の軍事力の強力な一翼を担っているからである。現代の戦争では、兵員・軍事物資の輸送に民間航空会社の空輸力が欠かせないからである。
 日本もイラク・中東への参戦、朝鮮侵略戦争情勢の急切迫のなかで、国内航空2社への援助を決めたようだ。

(5月2日) ICAO 乗客の検査勧告(5/4読売)

 国際民間航空機関(ICAO)は2日、SARSの感染地域を旅行後に到着した乗客の検査などを勧める6項目のガイドラインを188の全加盟国・地域に通達した。世界保健機関(WHO)の勧告に基づくもので、新型肺炎の感染が拡大して以降、ICAOがこうしたガイドラインを通達するのは初めて。
 ICAOによると、機内での感染例はこれまで5件足らずと少ないが、通達は利用者の感染不安を和らげ、航空需要の落ち込みに歯止めをかけるのが狙い。ガイドラインには、感染地域から直接、あるいは経由して到着した乗客の検査や、搭乗前の乗客の感染チェック、感染したとみられる症状が乗客にでた場合には操縦士が早い段階で地上に無線連絡することなどが含まれている。

 【本紙の解説】
 IATA(国際航空運送協会)は5月5日に、今年の航空業界の被害は100億ドル(約1兆1800億円)に達するとの見通しを発表した。イラク戦争の影響よりも大きい。SARSによるアジア中心の乗客が激減していることが主な要因である。
 一方、今回のICAO通達は「航空機内でのSARS感染例はこれまで5件足らず」という“安全宣言”ともとれる内容を含んでいる。「利用者の感染不安を和らげ、航空需要の落ち込みへの歯止めが狙い」としているが、どうだろうか。
 「5件しかない」といっても、機内感染の事実は明らかになっている。また現在実施されている予防対策で完全なものはない。したがって、いかなるガイドラインにもとづいてチェックしても、感染予防に万全の対策はないのである。
 このICAO通達後にSARSに感染した場合、ICAOはどういう補償を出すことになるのか。その点の記述はない。あくまで、乗客を呼び戻すことだけが目的の通達でしかない。通達はSARSをさらに世界に拡大する結果を生みそうだ。しかし、この通達で海外旅行の需要が回復するとも思えない。これも事実である。

(5月4日) 成田遅れ羽田へ(5/4産経、千葉日報)

 国土交通省が、成田空港の利用時間内に着陸できない国際線の羽田への着陸を認めたのを受け、ワシントン発成田行きの全日空1便が3日、着陸先を羽田空港にあらかじめ変更して出発、4日未明に到着した。乗客は羽田で入国手続きをした。
 これまで悪天候などで臨時着陸した航空機の乗客らを例外的に入国させたケースはあるが、4月25日に受け入れを正式に認めた後、成田行きの国際定期便の乗客が羽田で入国するのは初めて。
 以前は、午前6時から午後11時の成田の運用時間に間に合わないと出発前に分かった場合は、到着が翌日になるよう出発をさらに遅らせる必要があった。国交省によると、年間50−60便程度が翌日出発を強いられていた。
 全日空によると、同便はエンジンカバーの不具合で、3日未明(現地時間2日昼すぎ)の出発が9時間余り遅れた。乗客は79人で、予約客のうち15人が搭乗しなかったが、行き先変更の影響があるかどうかは不明という。
 羽田への到着後は交通機関がないため、乗客の要望を聞き、バス輸送などで対応。同機は4日早朝に成田空港へ出発、貨物は成田で降ろす予定。

 【本紙の解説】
 この国際定期便の羽田乗り入れは羽田国際化の第一歩である。今年の2月10日に国土交通省が「成田空港は国際定期路線、羽田は国内定期路線と役割の限定的な見直し」と発表したが、そのとおりである(03年2月10日付日誌を参照)。羽田国際化、羽田への国際定期便の乗り入れの既成事実化である。
 しかし、そのときに国土交通省は千葉県を配慮して「関係自治体などの意見を聞いた上で、年内にも運用方針を変更する」としていたが、わずか3カ月で運用になった。その理由は、千葉県がすでに羽田国際化に反対しない方針を決めているからだ。
 これで羽田側の各種事情さえ許せば、羽田国際化は一挙に進むことになる。現在はチャーター便のみ許可されている夜間国際線の定期便化は時間の問題になった。それは羽田の4本目の滑走路が出来る前に実現するだろう。

(5月6日) IATA 航空機での安全性をPR(5/7産経)

 国際航空運送協会(IATA)は、航空機の利用客を少しでも呼び戻そうと、WHOと共同で、SARSに対する航空機搭乗客の不安解消を狙った問答集を6日までに作成し、「安全PR」に乗り出した。
 問答集では回答として、4月以降、SARSの疑いがある乗客を乗せた旅客機も6便あったが機内感染は起きていないことや、大手航空会社の大半は細菌やほこり、飛沫(ひまつ)を除去できる手術室と同等の高性能フィルターを使っていることなどを挙げている。

 【本紙の解説】
 ICAOに続いてIATAも「航空機はSARSに対して危険でない」として、利用客を呼び戻すことに躍起になっている。
 しかしこれは問題である。SARSウイルスは飛沫感染が主な感染源だが、「空気感染」の疑いも指摘されてきた。WHOの研究者が実験でそのことを明らかにしたと、5月3日、英国の科学誌『ニューサイエンティスト』で発表されたのだ。
 SARSウイルスは飛沫で空気中にでてもなかなか死滅せず、ウイルスの1割が24時間後に生存しているという結果であった。飛沫感染は「患者の周囲2メートルほど」といわれ、乾燥すればウイルスは死滅するというのが通説であった。しかし、この飛沫感染説だけでは、SARSがマンションや航空機内で感染した事実を説明できなかった。SARSウイルスがこれほどしぶとく生存するとなると、航空機内はますます危険になる。ICAOのガイドライン通達もIATAの問題集もこの深刻な問題に対応していない。

(5月8日) 成田空港のGW出入国者数4割減 SARSと戦争響き

 ゴールデンウィーク期間中(4月26日〜5月5日)に成田空港を利用した出入国者数は約39万6000人で、過去最高だった02年の63万7115人より約38%減少した。東京入国管理局成田空港支局が8日、速報値を発表した。同支局は重症急性呼吸器症候群(SARS)とイラク戦争の影響で海外旅行が手控えられたのが要因としている。
 日本人の出国者数は約12万2000人(前年比約47%減)、入国者数も14万3000人(同44%減)で前年を大きく下回った。また、外国人も入国者数が約6万4000人(同10%減)で、出国者数も約6万6000人(同18%減)と軒並み減った。

 【本紙の解説】
 ゴールデンウィークの成田空港利用客が4割減で、日本人の出国者数は47パーセント減の半減である。黒野公団総裁は今年の3月27日には公団収入が1割ダウンすると発表し、4月24日には、半年で収入の15パーセント減という試算を発表した(03年3月27日付および4月24日付日誌を参照)。しかし、その時も黒野総裁は、試算の2倍になりそうだと発言している。そしてその翌日の4月25日に公団は「ゴールデンウィークの成田空港利用者3割減」と発表したのである(03年4月25日付日誌を参照)。
 しかし結果はそれを上回る4割減であり、日本からの出国者数は半減した。今後の試算としては、日本人出国者が最大の関心事である。出国者の数がその後の日本人入国者になるからである。つまり成田空港の利用者はほぼ半減した状態で推移するいうことだ。SARSの影響もさらに拡大し、いつ収まるかメドもたたない。
 公団の収入は半減以下になりそうだ。15パーセント減を前提に何とかそれを補う経費削減の試算を出したが、半減となると試算も成り立たず、大赤字を覚悟するしかなくなる。これでは成田空港の民営化もおぼつかなくなる。空港整備計画の基本財源である空港整備特別会計の破産も現実化する。羽田新滑走路の建設費も危うい羽目に陥りそうだ。こうなると羽田の新滑走路は、近郊都県と政令都市にお願いするしかなくなる。

(5月9日) 新型肺炎感染疑いの仏人搭乗便に邦人22人 追跡調査(5/10読売)

 新型肺炎(SARS)に感染した疑いのあるフランス人2人が乗っていたソウル―パリ便に、日本人22人が同乗していたことが判明、外務、厚生労働両省が名簿を入手して追跡調査を進めていることが、9日わかった。すでに12人が日本に帰国したが、いずれもSARS感染の症状はないという。残る10人については、帰国直後に健康状態を確認できるよう、帰国便などの情報を収集している。
 フランス厚生省の発表によると、この便は2日にソウルからパリに到着した大韓航空、エールフランス共同運航の便。2人は中国国内で6週間働き、南京からソウル経由でフランスに帰国、感染の疑いがある「可能性例」と「疑い例」と判断された。

 【本紙の解説】
 ICAO(国際民間航空機関)やIATA(国際航空運送協会)が、航空機はSARSに強く、航空機内での感染は少ないと宣言したが、SARSが航空機を媒介にして世界的に伝播したことは確実である。厚生労働省も空港から伝染するとして、国際空港での監視対策を最重要視している。
 中国でも当初、SARSを過小評価してきた。SARSが中国経済に与える影響を恐れていたからである。またGDP至上主義ともいわれている、経済成長を最優先した政策が公衆衛生対策を遅らせたことが、SARS感染の爆発的広がりを作ってしまった。
 しかし世界の航空業界も日本も、基本的には当初の中国と同じ姿勢である。経済的落ち込みを恐れ、SARSに過剰反応することを警戒している。
 いまやSARSは航空業界、旅行業界だけでなく、日本のGDPも押し下げ始めた。また東アジアの経済に大混乱をもたらしている。SARSは、最終死亡率が17パーセント近くなり、60才以上の人は半数の人が死亡するといわれている。
 過剰反応であっても、SARS対策は強化した方がいい。SARSの流行は少なくとも数カ月は続くと予想される。だとするならば抜本的な長期対策が必要である。
 中国では北京に出稼ぎにきていた労働者が帰省し始めた。そのことで中国大陸部の西部に感染が拡大しつつある。SARSが中国で本格化するのはこれからである。

(5月13日) JALグループ、新型肺炎で国際線の約25パーセント減便

 日本航空システム(JALグループ)は13日、成田や関西空港と北京、台北を結ぶ路線を減便するほか福岡―上海線を運休にするなど、16日以降に中国と台湾を中心とした8路線で新たに減便、運休を実施すると発表した。
 新型肺炎(SARS)の影響が収まらず、航空便の需要が大きく低迷しているため。すでに減便を実施している分も含めると、国際線の全路線の提供座席数が、当初計画比で5月は22パーセント減、6月は26パーセント減になる。同グループの業績に大きな影響がでるのは必至の情勢だ。
 今回、減便を決めたのは5路線で、成田―北京線を計画の週14便から7便(5月20日―7月14日)、関西―台北線を週14便から7便(5月26日―6月30日)、成田―台北線を週24便から14便(6月1日―30日)、関西―北京線を週7便から3便(6月1日―30日)、名古屋―バンコク線を週4便から2便(5月16日―6月30日)に減らす。運休は、福岡―上海線(6月1日―7月14日)、関西―シンガポール―クアラルンプール線(6月1日―7月14日)、広島―ソウル線(5月20日―7月14日)の3路線。

 【本紙の解説】
 北京、台北線を半減しても、搭乗率が10パーセントを切る便も多い。世界の航空業界は9・11の経験から、航空需要の減退に機動的に対応し減便することで、燃料費や人件費、空港着陸料などの経費削減で赤字を減らそうと努めてきた。しかし犠牲はすべて航空産業に働く労働者が受けることになる。日航システムでも乗務員の「リフレッシュ休職」という名の無給の一時休職を減便の割合に応じて強制させられている。つまり、乗務員にとって30パーセントの減便はイコール30パーセントの賃金カットだ。
 また続いて全日空も5月15日に、中国路線などの減便を発表した。週6便の成田―大連を週3便に、関西―大連―瀋陽を運休、すでに運休になっている関西発着のシンガポール、北京、台北線も運休期間の延長である。
 日航、全日空ともアジア路線は半減ともいえる状況である。しかしSARSによる減便はこれから本格的になる。航空会社の書き入れ時の夏までに収まるはずもない。
 日航システムは16日の決算発表で、03年3月期の連結決算では売上高2兆834億円、経常利益158億円、最終損益116億円の黒字となった。しかし、04年3月期の決算では1620億円の減収を見通している。経常利益、最終損益もそれぞれ、220億円、430億円の赤字になると見込んでいる。しかし、SARSの収拾時期が遅れると減収はこれ以上になる。

(5月14日) 新型肺炎対策 旅行・航空業を支援(5/15朝日、東京)

 厚生労働省と国土交通省は14日、新型肺炎(SARS)の影響で経営状況が厳しくなっている旅行関連業者と航空会社を支援するため、雇用調整助成金の支給対象事業者を15日から拡大すると発表した。11月14日まで半年間、実施する。
 対象となるのは、厚労省が不要不急の旅行の延期を勧告している香港、中国・北京市、広東省、台湾の台北などで、前年度の売り上げなどが全体の15パーセント以上を占めている事業主。最近2カ月の売上高などの月平均が前年同期比15パーセント以上落ち込んでいることが条件。休業手当や出向する労働者の賃金などの2分の1(中小企業は3分の2)を支給する。
 雇用調整助成金は、景気の変動など経済上の理由で事業活動の縮小が余儀なくされて休業など雇用調整を図る事業主に対し、休業手当などの一部を助成し失業を予防する制度。

 【本紙の解説】
 この雇用調整助成金制度は、労働者の生活を守るというより、事業主の経営基盤を強化するために設立されたものである。景気の変動、産業構造の変化によって事業を縮小し、労働者を積極的に休業、出向させるための制度である。事業主に休業手当、賃金又は出向労働者にかかわる賃金負担額の一部を助成するものである。うたい文句は「失業を予防する制度」だが、労働者の休業、出向、最後的には解雇を積極的に行うことがこの制度の狙いである。事業主への助成も6カ月である。休業、出向に業務命令がでて、その6カ月後に解雇という例が多いのである。直ちに解雇でなく6カ月後に解雇という形で、実は積極的に休職、休業、出向、そして最終的には解雇を奨励するものだ。あくまで資本を倒産させないための制度である。

(5月14日) 米政府、国内航空各社の安全対策強化に23億ドル補助(5/15日経夕刊)

 米国土安全保障省は14日、米国内の航空66社に対して総額約23億ドル(約2700億円)の補助金を週内に交付すると発表した。イラク戦争やSARSで旅客減に苦しむ航空各社のため、国が安全対策費の一部を肩代わりする。
 補助金はイラク戦争関連の補正予算から拠出される。各社の補助金はデルタ航空が3億9000万ドル、アメリカン航空が3億6000万ドル、ユナイテッド航空が3億ドル、サウスウエスト航空が2億7000万ドル、ノースウエスト航空が2億500万ドルなど。太平洋、大西洋路線を持つ大手9社には、役員報酬を前年並みに抑制することを交付の条件として求めている。

 【本紙の解説】
 日本、欧州でも航空会社は大赤字でかなりの航空会社が倒産寸前になっている。その最大は米国である。トップテンのすべてが倒産してもおかしくないレベルであえいでいる。そのために、米政府は本格的な救済策を始めた。
 しかし23億ドル程度で米航空業界の経営危機は乗り切れない。米航空業界は90億ドルの政府援助を要求していた。9・11直後の米政府の航空業界への直接的援助は80億ドルであった。税の軽減措置、融資への政府保証なども含めるとこの数倍であった。今回、9・11並の政府援助を要求したのは、米航空業界が9・11直後より、危機を深めているからである。
 しかし、米政府も経済の停滞、財政難からブッシュは「イラク戦争に直結関係するコストだけにする」といっていた。米帝のイラク侵略戦争の兵員・物資輸送にかかわった、戦争貢献度の割合で政府援助を決めようということであった。額もその通りになったようである。救済財源もイラク戦争関連の補正予算であり、まさに戦争予算、戦費である。現在の民間航空会社がその国の軍隊を構成する重要な一部だからである。
 経営危機は欧州の航空会社も同じである。ルフトハンザ・ドイツ航空、エールフランス航空とも大赤字である。ブリティッシュ航空もそれ以上の危機である。いま、世界の航空会社で黒字を出しているのは格安専門の航空会社の一部だけである。
 今後存続できる航空会社は、各国政府から軍隊の一部と指名され、政府援助を戦争予算からふんだんに提供してもらえる会社だけになりそうだ。
 軍隊の一部という意味では空港も同じである。民間専用と称する空港も、戦争が始まるやいなや軍事空港に転用される。成田空港は、福岡空港などとともに朝鮮侵略戦争の時は、日本で最大の軍事空港になる。

(5月16日) 空港公団民営化 早期上場に意欲(5/17朝日、産経各千葉版)

 新東京国際空港公団を04年度から民営化するため、国土交通省が今国会に提案した「成田国際空港株式会社法案」の審査が16日、衆院国土交通委員会で行われた。参考人として出席した同公団の黒野匡彦総裁は、民営化後3、4年としていた株式上場の時期について「なるべく早く市場に出して頂いた方が望ましい」などと述べ、07年度より早い上場を目指す方針を示した。
 上場時期について「07年度になるのか」と問われた黒野総裁は「公団の意見だけでは決められない」としつつ、「遅くともその時期に上場できると思う」と話し、早期の上場に意欲を示した。
 この日はほかに、暫定B滑走路の延伸問題も取り上げられ、県選出の林幹雄代議士(自民)が「決断の時期が来ているのではないか」と質問。扇国交相は「明日にでも2500bにしたいのが本音。北伸案もあるが、いまはそうしないで、本来の計画を達成できるようにしていきたい」と答弁した。
 一方、黒野総裁は未買収地の用地交渉について「日夜努力している」と説明。本来計画とは逆の北側に延伸する案については「総合的に判断しなければいけないと思うが、いましばらくはお時間を頂きたい」と話すにとどまった。

 【本紙の解説】
 成田民営化の国会審議がはじまったが、SARSによる成田空港の大赤字とそれによる民営化時期の延期は問題になっていないようだ。成田空港の民営化法案を成立させる国会審議なのでそれは当然だが、黒野総裁の答弁は精彩を欠く。民営化した会社は、3年間ぐらい様子を見て上場するのが東証ルールとなっている。そのことを黒野総裁本人も百も承知しているはずだ。だが国会答弁では、「07年度になるのか」との質問に、「遅くとも」と答弁してしまった。04年に民営移行して「3年間様子を見る」とした場合、もっとも早く上場できる場合でも07年である。
 また、北延伸論についても、もったいぶった言い方をしている。暫定滑走路を北側にさらに320メートル延伸させて2500メートルにしても、ジャンボ機は使えない。理由は、東峰地区にある連絡誘導路の幅が基準の101メートルより7・5メートルも狭い93・5メートルしかないからだ。これではジャンボ機が通過できない幅である。
 ではなぜ、最初から1120メートル延伸させ、2500メートルにしなかったのはなぜか。それには2つの理由があった。ひとつは、800メートル北側に延伸させ、そのことによって地権者を屈服させ、当初計画の2500メートルが完成した場合、合計3300メートルの滑走路になる。これならジャンボ機が北米大陸へ直行できる長さの滑走路である。2500メートルを完成させても、アジアの近郊便しか使えない。また現在の地権者が全員条件交渉に応じなければ、101メートル幅の誘導路が建設できず、2500メートルにしたとしてもジャンボ機は使えないからである。
 もう一つは1120メートル延長させた場合には騒音地域の全面的見直しが必要であり、騒音コンターを新たに作成し、騒音地域を特定するために、数年間の作業が必要になることであった。
 つまり、北側にさらに320メートル延伸することは技術的にも運用的にもできないことは明白なのである。にもかかわらず、黒野総裁が「いましばらくはお時間を頂きたい」と、もったぶった言い方をしていることは、北側再延伸論で地権者を脅し、たたき出したいからである。
 三里塚闘争は、「農民を金と権力で脅せば何とでもなる」という国家権力と闘ってきた歴史である。この北延伸説をいまだ唱えている公団の姿勢は、「ボタンの掛け違い」といわれている成田空港位置決定時の運輸省の態度と同じである。

(5月17日) 空港北側の用地取得 北伸ばしは否定/空港公団 (5/18朝日、毎日各千葉版)

 新東京国際空港公団が成田空港の暫定平行滑走路(2180メートル)北側の土地約11万平方メートルを取得していたことが、17日分かった。平行滑走路の2500メートル化を目指す同公団は、滑走路南側の反対派農家の用地が取得できておらず、北へ320メートル伸ばす代替案が浮上している。同公団は「航空保安施設のための用地で(北伸ばしは)現時点で、あり得ない」と否定している。
 平行滑走路は昨年4月、計画より320メートル短い状態で暫定的に供用を開始した。ジャンボ機が離着陸できないうえ、未買収の土地の影響で誘導路が狭く折れ曲がり、着陸機がオーバーラン(今年1月)したり、誘導路上の航空機同士が接触(昨年12月)したりするなど、安全面の問題が指摘されている。
 北側の土地は、公団が「騒音区域」に指定して開港前年の77年に取得を開始。2年ほど前に大半の取得を終えたといい、現在、居住者はいない。区域内で移転を希望する住民には公団側が代替地を提供した。
 来春の特殊会社化に向け準備を進めている公団は、将来の民営化のために2500メートル化を目標にしているが、黒野匡彦(まさひこ)総裁は今年初め、「(南側に土地を持つ反対派との)話し合いを進める。従来計画しか考えていない」と述べた。成田市は北伸案について「あってはならないこと」と反発している。しかし、交渉が長引いた場合、北側の用地を使った計画再変更の可能性もある。

 【本紙の解説】
 暫定滑走路北側の土地買収は基本的に2年前に終わっている。このことを今ことさらにマスコミを通してあおっているのは公団である。北側延伸をさもさもらしく脅しに使い、条件交渉に持ち込もうとの見えすいた魂胆だ。
 空港は、滑走路先端から約1000メートルを無人化する義務がある。成田空港はアプローチエリアを設計段階で計画しておらず、その結果、A滑走路は、4000メートルありながら、南側進入の時は3250メートルしか使用できないのである。進入灯が滑走路に食い込む形になってしまったからだ。本来のアプローチエリア地域にある岩山鉄塔などの用地を取得できなかった結果である。
 もともと空港本体の設計図にアプローチエリアがないので、同用地は事業認定申請からはずれていた。そのため公団は土地収用法も適用できなかった。そうした経緯から、公団は平行滑走路の北側延長上の土地取得も暫定開港前の77年から急きょ始めていた。
 2年前に終わったアプローチエリア用地の買収を朝日や毎日がそろって報道したのは、公団が17日に“情報”をリークしたからである。北側延長問題を脅しとしてあおることが目的である。
 黒野総裁は暫定滑走路の2500メートル化について「本来計画が基本。しかし北側延長も選択枝のひとつ」と発言している。話し合いを拒否するなら、北側に滑走路を延長してジャンボ機を頭上に飛ばすという脅しだ。
 しかしこれはあくまで脅しである。暫定滑走路の南側の土地取得が解決しない限り、連絡誘導路も拡幅できず、ジャンボ機は滑走路に入れない。また延長分は管制塔からの視界からまったくはずれる。そもそも延長は無理なのである。
 国家権力を背景に農民を脅し、屈服させる。これは成田空港建設決定時以来、一貫した運輸省・公団の姿勢だ。彼らは何度も「反省」したはずなのだが、体質は変わらず、今もなお農民を虫けらのように扱っている。

(5月19日) WHO調査/新型肺炎の機内感染は4便、16人(5/20朝日、読売各夕刊)

 世界保健機関(WHO)のヘイマン感染症対策部長は19日、新型肺炎(SARS)の感染者が搭乗した航空機が、確認されただけで35便にのぼり、このうち4便の16人が機内感染していたとの調査結果を明らかにした。
 調査は今月12日までの感染状況をまとめたもので、航空機が新型肺炎感染を拡大させる危険性を改めて示した。

 【本紙の解説】
 ICAO(国際民間航空機関)やIATA(国際航空運送協会)が航空機搭乗はSARS感染に安全であるとも受けとれる報道をした(03年5月2日5月6日付日誌を参照)。両方ともWHO勧告に基づくとか、共同発表であるとして「SARSの感染注意」という触れ込みだが、発表内容は「注意」すれば航空機内の感染は「いままで5便しかなく安全」というアピールだった。
 このあまりの無知ゆえに、WHOが航空機は危険だと改めて発表した。航空機感染の怖さはSARSが一挙に世界中に蔓延することにある。日本でのSARS感染は成田空港の可能性が一番高い。
 ICAOやIATAが「安全だ」と言っても、それは航空業界を擁護する立場からの発言であり、乗客の航空機離れを防ぐためでしかない。多くの人はそのまやかしを見抜いており、ICAOやIATAの「安全宣言」にもかかわらず、その後も航空機離れはおさまる気配がない。

(5月19日) 成田空港/入国の検温 全到着便に(2/20朝日)

 成田空港検疫所では5月19日から、入国時のサーモグラフィーによる検温を欧米も含む到着便全便を対象に始めた。中国などからの便だけに実施しようとしても、他便と交ざり、検温漏れがでるためだ。ロープを張るなどして誘導し、全員に受けてもらっている。
 質問票回収も、中国、香港、台湾からの各便については、検疫官が搭乗口まで行き、降機する際に1人づつ回収するように変えた。体調に異常のある人は、そのまま機内にとどまってもらい、検疫所の医師が診断するようにしている。

 【本紙の解説】
 SARSの影響は日本経済のGDPを押し下げるところまで及んできた。中国経済停滞の影響が大きい。航空業界、旅行業界は底が見えない不況に覆われている。
 国土交通省は航空会社への緊急融資実施を決定した。融資総額は未定で、貸付期間、金利などの条件はこれから検討されるが、2001年の9・11時は2400億円を貸し付けた。通常金利より2パーセント低くするだけで、貸付期間の年数に毎年48億円を援助する内容であった。
 一民間企業にこれだけの融資をするとなれば、単なる民間会社とは言えない。航空産業が国力・軍事力の大きさを示すものゆえ、絶対に倒産させないという国家の意志である。
 しかし、SARSの日本への感染、中国、台湾、香港でのよりいっそうの拡大はこれからである。成田空港の中もかなりの人がマスク姿で異様だが、京成電車とJR成田エキスプレスなどの外国人にマスク姿が目立つようになった。空港利用者が多く乗るJR成田エキスプレスや京成スカイライナーは航空機と同じでSARS対策を施すべきであろう。京成特急やJRの快速電車のエアポート成田も同様にすべきだ。厚生労働省は、SARS流行地からの帰国者は10日間外出をひかえ、人と接触を避けるべきと勧告している。流行地からの人が多く乗る総武本線、京成成田線は最も危ない電車である。
 成田消防署は23日と24日に救急隊員を対象にSARS対策のための講習会開催を決めている。行政以上に交通機関はSARS対策を強化すべきだが、JRも京成電鉄もその動きはまだないようだ。

(5月20日) 成田空港25周年記念式典/何が何でも滑走路2500メートル化へ(全紙千葉版)

 成田空港が20日、開港から25周年を迎え、空港近くのホテルで記念式典が行われた。暫定平行滑走路の2500メートルへの延伸や、空港公団の民営化、新型肺炎(SARS)による空港の減収など、難問山積の中で迎えた四半世紀の節目。
 記者会見した新東京国際空港公団の黒野匡彦総裁は、滑走路延伸問題に対し、「暫定の二文字を取り除くため死力を尽くす」と述べ、課題解決に決意を新たにしていた。
 式典には黒野総裁、堂本暁子知事ら400人が出席。黒野総裁は「なによりすばらしいのは、大きな事故もなくこの日を迎えたこと。これからも日々緊張感を持って、空港運営に当たりたい」とあいさつした。
 その後の記者会見では、「厳しい25年ではあったが、80点をつけたい」と合格点をつけた上で、滑走路の延伸問題では「北側への再延伸で2500メートル化を図ることも一つの選択肢だが、いまは本来の計画実現を目指したい」と述べ、あくまでも建設予定地内の反対派農家との用地買収交渉を優先させる考えを強調。「何が何でも2500メートル化したい。死力を尽くして前進する」と決意をみせた。
 一方で、用地交渉が困難と見られる現状を背景に、用地交渉を断念して北側延伸する計画についても、「タイミングがある。一方的に決めるわけではないが決断の時期は迫りつつある」と述べ、用地交渉の進捗次第では、北延伸を決断する可能性もにじませた。

 【本紙の解説】
 暫定滑走路の「北伸ばし」計画は本紙でも、この日誌でも現実的に不可能といってきた。2500メートル化しても連絡誘導路が狭く、ジャンボ機は滑走路に入れない。仮定の話としてジャンボ機を飛ばしたとしても、韓国、台湾、香港と中国の一部など近距離便にしか使えない。滑走路が短すぎて離陸時のジェット燃料が制限されるからである。
 ジャンボ機をアメリカ大陸まで飛ばすには3300メートル以上の滑走路が必要である。南側に本来計画の滑走路をつくり、暫定滑走路建設で北側に延長した800メートルを加えると3300メートルになる。北側にだけ暫定滑走路を延長しても使い道がないことは公団が一番よく知っている。「選択肢の一つ」といっているのは、地権者を屈服させるための恫喝でしかない。
 しかし、開港から25年たっても空港が完成しない現実は、成田空港をめぐる農民との攻防に完全に敗北したことを示している。「死力を尽くして」と黒野総裁が力んでも負け犬の遠吠えのようだ。
 黒野総裁は東峰地区に出した謝罪文(03年3月28日付日誌を参照)では「おしかりを受けたい」とかいっている。脅して(北側再延長)、すかして(おしかりを受けたい)、力ずくで(死力を尽くして)と力んでいるが、脅し・すかし・力ずくの空港建設と37年間闘ってきたのが三里塚闘争である。勝敗は明らかである。

(5月22日) 成田空港/消火救援訓練に300人が参加(2/23毎日、産経、東京各千葉版、千葉日報)

 航空機の事故に備えた消火救援訓練が22日、成田空港で行われ、新東京国際空港公団や成田市消防本部、警察、医療、航空会社などから約300人が参加、消防車や救急車など車両約60台が出動した。
 同空港は年2回、大規模な訓練を行っているが、今回は4000メートル滑走路北側から着陸した中型旅客機が滑走路西側の芝生地帯に突っ込み炎上して15人が重軽傷という想定で行った。
 この日の訓練は午後2時ごろに開始。連絡をうけた消防車が駆け付け、事故機に見立てた看板を目標に消火活動を行い、負傷者を運び込むテントの設営や、負傷の程度に応じて搬送−治療する活動を行った。

 【本紙の解説】
 成田空港の消火救援訓練が行われた。昨年まではたんなる年中行事だったが、今年の訓練は真剣味があったらしい。理由は暫定滑走路で事故が頻発しているからである。
 昨年の消火救急訓練も「4000メートル滑走路上でジャンボ機が着陸に失敗、乗客・乗員にけが人がでたとの想定」で行われた。それまでは空港内企業は自主参加だったが、昨年から義務化された。これは2001年9・11を受けた対応であった。今年は「滑走路西側の芝生地帯に突っ込み炎上して15人が重軽傷という想定」であり、暫定滑走路の短さからオーバーランが常態化しかねない現実からの訓練である。
 これはA滑走路ではなく、本当に暫定滑走路でやらなくては意味がないのではないか。

(5月26日) 地域共生委/暫定B滑走路影響報告求める(5/27朝日千葉版)

 成田空港の運用と建設を監視する第三者機関「成田空港地域共生委員会」(代表委員=山本雄二郎・高千穂大客員教授)が開かれ、成田空港問題円卓会議で国、新東京国際空港公団と地域が交わした合意事項について議論があった。
 供用開姶から1年経過した暫定滑走路について、出席者が騒音などの環境への影響について年間報告をまとめる必要があると指摘。空港公団の出席者は早急にまとめるとの返答をした。また、合意事項で10回以内に抑えることになっている午後10〜11時の発着が、12〜13回になっている点についても議論。山本代表委員は「約束は約束。しっかり守るよう求めていく」と話した。

 【本紙の解説】
 暫定滑走路は、800メートル北にずらして建設され供用開始されたが、騒音コンターは当初計画のままであった。その公団側の理由はジャンボ機を飛ばさないので、騒音は低くなるということであった。しかし、騒音レベルがジャンボと同じB777(トリプルセブン)を発着させている。
 問題は、騒音地区での騒音測定をしていないことである。その理由は、当初計画の騒音コンター(騒音の等高線図)とは、まったく違う騒音状況になっているからである。ジャンボ機と中型機の騒音の違いはあまりない。それは01年の反対同盟の調査でも明らかである。(01年2月3日付日誌の資料、長田所見を参照)
 したがって公団には、本格的な騒音コンターを早急に作り直す責任がある。しかしそれは騒音地域の拡大になるから絶対に行われない。あくまで「騒音などの環境への影響についての年間報告」でお茶を濁そうとしている。
 その点は「第三者機関」と称する「成田空港地域共生委員会」も同罪である。供用開始前から指摘されていた問題であり、騒音コンターの見直しはすぐにも必要なことだ。ここに公団の地域住民無視の姿勢が現われている。
 さらに公団は「北側に再延長しジャンボ機を飛ばす」との脅し文句を陰に陽に振りまいているのであり、騒音コンターを1120メートル(800+320)分北側に拡大して騒音補償をやり直すことが必要ではないか。
 しかし、それには莫大な補償費用がともなう。公団は決して騒音コンターの引き直しには手をつけない。

(5月28日) 日航、国際線旅客ほぼ半減(5/29日経)

 日本航空システム(JAL)グループの日本航空は28日、5月の国際線旅客数が前年同月比でほぼ半減する見通しを明らかにした。イラク戦争とSARSが重なったためで、単月の減少幅は湾岸戦争直後の32パーセント、反米テロ直後の41パーセントを上回るもよう。今後の動向次第では業績への影響が強まりそうだ。
 日航はJALグループの国際線旅客輸送規模の約85パーセントを占める。同社によると、昨年5月の国際線旅客数102万人に対し、今年度見込みで50パーセント近く減るもよう。中国路線が前年比7割以上減っているほか、東南アジア路線が5割以上減っている。6月の全体の予測も前年同月比で4割弱減るとみている。
 SARSは中国の一部で拡大が一段落し、旅行各社もツアーを再開するなど最悪期は脱したとの見方が多い。ただ、湾岸戦争時は旅客数が前年比プラスに転じるまで9カ月、反米テロでは約1年かかった。

 【本紙の解説】
 乗客が半減しているにもかかわらず、日航兼子社長は「甚大だが、一過性」「来年3月には回復」との見通しを述べている。減収は1620億円の見込みであり、9・11の時の1910億円にはならないと発言している。(5/20朝日新聞インタビュー)
 来年3月に回復という見込みはどこからくるのか不明である。SARSワクチンの完成のめどがたっていないのに、予測できるはずもない。兼子社長の根拠は91年の湾岸戦争や9・11での需要の急激な落ち込みも約1年で回復基調になったということだけだ。
 国際的な航空業界が大再編時代に突入している中で、こうしたSARS流行の影響に対する評価は、深刻さの自覚がないと言うしかない。政府による特別融資と日航社員に対するレイオフの強制で危機が乗り切れるとでも算段しているのか。航空業界の危機はそれで収まるレベルのものではない。
 根本的には航空資本の過剰という問題がある。航空会社と国際線が半減するまで危機と再編は続くのである。

(5月29日) 公団定例記者会見/SARSで旅客44%減(5/30朝日、読売、毎日各千葉版、千葉日報)

 暫定滑走路延長で新東京国際空港公団の黒野匡彦総裁は29日、成田空港の暫定滑走路の延長について「公団の民営化会社が上場する予定の2007年までに、完成させるか開業時期が明示できるのが望ましいが、最低でも着工の時期が見通せるようにしたい」と述べ、民営化後3年で着工にめどをつける考えを明らかにした。
 また、滑走路南側の東峰地区の住民との用地交渉が難航しているため、代案として浮上している北側に延長する案については「今は東峰地区との話し合いを精力的に進めている状態で(南側の)本来計画に全力を挙げたい」とした。
 公団は04年4月に民営化し、国が全額出資する成田国際空港株式会社となる。
 一方、黒野総裁は、新型肺炎(SARS)の影響による相次ぐ減便で、成田空港の5月1日から24日までの1日平均出国旅客数は約1万7600人で、昨年同期の1日平均の約56パーセントだったと発表した。SARSの影響が出始めた4月は3割減だったが、さらに深刻さを増している。旅客減に伴う減収は4月が約19億円で、5月はさらに増えて約28億円、2カ月で計47億円になる見通しだ。5月の減収の内訳は国際線着陸料が11億円、空港施設利用料8・5億円、給油施設使用料4・4億円などとなっている。
 業績悪化による民営化スケジュールヘの影響について黒野総裁は「管理費の削減や不急の工事を先送りして対応し、予定通り来年4月から進めたい」と強調。その上で「新型肺炎の影響が長引けば、(民営化効果の中心である)着陸料引き下げに時間がかかる可能性もある」と述べた。

 【本紙の解説】
 SARSによる公団の減収は毎月15億円、4月から9月まで6カ月つづき計90億円になるという見通しであった。すでに2カ月で3カ月分になってしまった。6月以降も減収はさらに拡大しそうだ。5月レベルの減収が続くと、9月まで毎月30億円の減収で、合計約170億円になる。4月予測の倍近い額になりそうだ。
 公団は9月には収まる見込みを立てていたが、今年度一杯まで収まりそうにない。減収は260億円近くになるだろう。公団の収入は月に約100億円、年間で約1200億円である。5分の1が減収になる。これ以上の可能性もある。これでは来年4月からの民営化の展望は真っ暗である。
 にもかかわらず、黒野総裁は、暫定滑走路の再延長について「2007年までに、最低でも着工の時期が見通せるようにしたい」と述べている。「着工の見通し」とは用地問題の解決ということである。上場時の株価に影響するというのが理由だ。
 航空需要が後退している中で、暫定滑走路の再延長は事実上必要なくなっている。しかし株価の上昇のために農民を脅し、生活を破壊し、農地を強奪しようというのである。「成田空港会社」株上場時の株価つり上げのための農地強奪である。こんな所業を絶対に許してはならない。

(5月29日) 成田空港テナント対象にSARSで講習会(5/30千葉日報)

 新型肺炎SARSに感染した台湾人医師が関西国際空港を利用したことを受け、新東京国際空港公団は29日、空港内で営業するレストラン、物販店などを対象にSARS講習会を実施する一方、感染が疑われる患者が発生した場合の消毒実施をテナント側に通知した。
 講習会は公団本社ビル講堂で開かれ、エアライン、飲食や物販、サービス関係の構内営業者の代表180人が参加、佐倉保健所の担当者がSARSの現象や消毒、防護方法を説明した。
 関西空港で感染医が水際である空港検疫所の網をすり抜ける形で関西旅行をしていたことが発覚しただけに、成田空港でもいつ起きてもおかしくない状況にあると、関係者は緊張感を募らせていた。
 佐倉保健所の担当者は「人から人へと感染するので、石けんによる手洗い、うがいをひんぱんにやるのが極めて有効。消毒も効果的だ。窓を開けるだけでも違い、たとえば航空機内は換気が非常にスムーズなのでWHO(世界保健機構)の報告例にも機内感染はない」などと語った。
 一方、空港公団は、日常の清掃業務に消毒液を用いた清掃を実施しているが、SARSが疑われる患者が空港内で発生した場合、感染防止のためロビーなどを対象にしたエタノール消毒の実施をテナント各社に通知した。エタノール消毒は揮発性が高く無色、無臭でSARSウイルスの殺菌に極めて有効とされる。
 消毒は不特定の旅行者が利用する出発、到着ロビーのエスカレーターベルトやトイレ、ドアの取っ手部分など人が触れやすい場所のほか、常勤者が使う空港内事務棟共有エリアの廊下や通路、エレベーターなどが対象となる。

 【本紙の解説】
 23日と24日には、成田消防署が救急隊員を対象にSARS対策のための講習会を行った。それに続いて空港公団が空港内のテナント各社にSARS対策の講習を行っている。しかし「航空機は換気がいいのでWHOの報告例でも機内感染はない」という保健所の言いぐさはデマもいいところだ。デマまで使った講習会は本当の意味でSARS対策ではない。消毒と換気をすれば空港は怖くないという「安全宣言」に近いものであり、本末転倒の講習会である。
 すでにWHOは5月19日に、「16人が機内感染している」ことを調査報告している(03年5月19日付日誌を参照)。
 このことを公団はどう説明するのか。中国が当初SARS感染統計のウソの報告したことが対策を遅らせ、大流行の一つの要因となったことは明らかである。公団の姿勢は、ウソをついた中国政府の衛生部と同じものである。
 成田空港と航空会社は乗客を取り戻したいならば、もっと本格的なSARS対策をすべきだろう。成田空港に乗り入れているJRや京成電車、さらには空港に乗り入れているバスも対策を強化すべきだ。成田空港に乗り入れている交通機関は空港内のテナントと同じ危険にさらされているのに、なぜか対策はまったく講じられていない。

(5月31日) 新型肺炎の疑いで一時騒然/成田空港 日本人男性(6/2東京千葉版)

 成田空港で5月31日、香港に出発しようとした50歳代の日本人男性が高熱を出し、新型肺炎(SARS)に感染した「疑い例」として、成田市内の病院に運ばれた。
 厚生労働省成田空港検疫所によると、検査の結果、この男性は陰性だったが、一時は関係機関が空港内などを消毒する騒ぎになった。
 同検疫所や新東京国際空港公団によると、男性は同日午後、香港に向かうため同空港第2ターミナルビルに電車で到着。出国手続きを済ませる前に発熱を感じたため、午後2時40分ごろ、同ビル内のクリニックで受診した。
 男性は数日前に香港から帰国していたことから、クリニックの医師が県健康促進課に相談した結果、午後6時ごろ、同課が同検疫所に「疑い例」として搬送するように依頼し、感染症専用の救急車で市内の病院へ運ばれた。
 同10時ごろ、陰性の検査結果がでたが、同公団などはこの間、万一に備えて男性が到着した駅からクリニックまでの経路、搬送に使用した救急車などを消毒した。

 【本紙の解説】
 今までの成田空港のSARS対策は航空需要の落ち込みを回避することを狙いにしたものであった。それは「機内感染はない」というレベルの完全にウソの「安全」であった。そのために、実際にSARSの「疑い例」がでた瞬間に「騒然」としたようだ。
 また、陰性と判明するまで報道管制がおこなわれた。この記事も、5月31日のことが1日おいて6月2日に報道されている。もしも陽性であった場合には、飛沫化したSARSウイルスは場所によっては24時間生きているので、「疑い例」がでた瞬間に立ち入り禁止にするのが正しいSARS対策であろう。
 成田空港のSARS対策が「安全」宣言のためであったことは、このことを見ても明らかである。

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