SANRIZUKA 日誌 HP版   2003/02/01〜28    

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 2003年2月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 

(2月3日) 暫定滑走路継続に北原派が抗議声明(2/4読売千葉版、千葉日報)

 成田空港の暫定平行滑走路で先月27日、エアージャパン機がオーバーランしたトラブルで、空港公団の黒野匡彦総裁が同滑走路の従来通りの運用を継続する考えを示したことに対し、空港反対同盟北原派は3日、「事故は暫定滑走路の構造的欠陥によるもので、機材の制限もしないまま運用を続けることは無責任」として同滑走路の即時閉鎖を求める抗議声明を発表した。

【本紙の解説】
 黒野公団総裁は事故が連続的に発生しているにもかかわらず、何も対策せずに今まで通りの運航計画を推し進めようとしている。これは成田空港にいつ大事故が起こっても不思議ではない事態になっている。(03年1月30日付日誌を参照)
 反対同盟はこの黒野発言に再度の暫定滑走路の即時閉鎖を求める声明を発表した。
 以下はその全文である。

■黒野公団総裁の会見発言に対する抗議声明

 1月30日に行われた黒野匡彦公団総裁の記者会見は、オーバーラン事故の責任を明確にせず、何ら対策を講じないまま今後も運用を続けるとしており看過できない。反対同盟はこの会見発言に強く抗議するとともに、暫定滑走路の即時閉鎖をあらためて要求する。
 オーバーラン事故は暫定滑走路の構造的欠陥によるものである。2180メートルの短縮滑走路を国際線に供用したことが事故の根本原因である。
 事故機(B767−300型)の着陸滑走路長は約1700メートルとされている。雨天ではこれが15〜20パーセント伸びることになる。この事実を考慮すると滑走路端までの余裕は180メートルしかなく、追い風の要素が加われば危険がさらに増大する。着陸時の航空機の速度は秒速83メートルであり、この欠陥構造のもとではわずか2秒程度でオーバーランとなるのである。
 公団総裁は「いくつかの不幸な原因が重なって起きた事故」だとして、何ら特別な安全対策を講じないまま「従来通りの運用を継続する」と表明した。最悪の事態を開き直り、機材の制限もしないまま運用を続けることは無責任の極みである。
 さらに、この事故を捉えて「2500メートルの必要性を痛感した」というに至っては言語道断である。事故の責任を農家に転嫁し、移転を迫る口実にしようとしている。
 構造的欠陥は暫定滑走路の計画当初から指摘されてきたものであり、あいつぐ事故の責任のすべては、これを承知で押し切った国土交通大臣と空港公団総裁にある。
 以上、反対同盟は黒野公団総裁の会見発言に強く抗議するとともに、暫定滑走路の即時閉鎖をあらためて要求するものである。

2003年2月3日
三里塚芝山連合空港反対同盟
(連絡先)事務局長・北原鉱治  成田市三里塚115

(2月5日) 成田空港地域共生委/公団民営化への対応話し合う(2/6朝日、毎日、東京、各千葉版、千葉日報)

 成田空港の運用や環境への影響などを監視する第三者機関「成田空港地域共生委員会」(山本雄二郎代表委員)が5日開かれ、来年4月に予定される新東京国際空港公団の民営化への対応策などを話し合った。今国会に提出される民営化法案に「地域共生」の考えや住民の意向が反映できる空港運営を政令や覚書の形で盛り込むよう国土交通省に求めた。民営化後の共生委員会のあり方については来年春までに関係者で検討して決ある。
 会議後、山本代表委員は「空港が株式会社になった場合、現在の委員会ではなくなるかもしれないが、空港がある以上、衣替えして存続させていく。90年代のシンポ・円卓会議での流れを受け継ぐもので、設立に合意した国、公団、地域連絡協議会のメンバーらとも話し合う」と説明。「資本金1000億円の巨大会社との経済共生も意見交換していく」と述べた。
 委員会に先立ち地域の農家など委員15人が再任され、委嘱した堂本暁子知事は「暫定滑走路供用開始、公団民営化と新しい時代、互いに協力していきたい」と述べた。

【本紙の解説】
 成田空港の民営化で共生委員会は「衣替えして存続」とはいっているが、基本的に消滅する。そのために、民営化法案に「政令や覚書」で盛り込むと確認している。しかし、昨年の12月民営化法案の概要(02年12月27日付日誌を参照)が発表されたときに、空港周辺の環境対策は「国が監督権限」をもつことだけを法案に明記するが、その具体的指針などは明文化しないことを決めている。国交省と公団、千葉県に空港周辺自治体を加えた4者協で自治体などが具体策を法文化することを要求したが、国交省、公団は一歩も譲らなかった。共生委員会において国交省と公団は正式な構成団体であり、この方針は変わるはずもない。
 民営化は千葉県と周辺自治体が推進してきたが、以上のように空港周辺の住民の利害と完全に対立するものである。とりわけ上下分離でなく完全民営化を唯一、推奨してきた小川国彦成田市長の責任は大きい。市長はこの問題の釈明をまだ一度も行っていない。

(2月5日) 航空機低周波音調査結果「人体への影響低い」(2/7千葉日報)

 成田空港の離着陸機による低周波音の影響について、新東京国際空港公団は5日、その調査結果を公表した。
 航空機の離着陸の際、家や建具ががたつくなどの指摘が以前から周辺地域住民により指摘されていたもので、調査は昨年9月2〜5日の4日間、空港周辺の10地点で実施した。
 調査では、各地点で測定された低周波音の周波数特性結果を環境庁発表の研究データ等と比較。
 建物等ががたつくなどの物的影響、睡眠や圧迫感などの心理的影響、健康面など生理的影響について検討した。その結果、建物や建具のがたつきの発生は確認されたが、心理的、生理的といった人体への影響については「出現する可能性は極めて低い」との結論を得た。
 この調査結果は同日開かれた成田空港地域共生委員会にも説明されたが、委員からは「4日間だけの調査で影響なしと結論していいのか」などの意見があった。
 このため、空港公団では時間・季節・気象などの異なる条件下についても、引き続き調査を続けると回答した。

【本紙の解説】
 この低周波騒音(02年5月20日付日誌を参照)の調査は完全にデタラメである。すでに「薄気味悪い」「頭痛がする」「精神的圧迫がある」などということが報告されている。にもかかわらず、公団の調査は物理的な騒音調査で基本的に終わっている。住人への聞き取り調査を行っていないのである。
 「建物や建具のがたつきが発生」するということから、低周波が発生していることは確実だ。また、その周波数に人体の背骨などの一部が共振し、身体的影響がでることも確実である。公団は、この程度の「がたつき」なら身体的影響はないと強弁しているにすぎない。「がたつき」が認められるなら、低周波騒音の発生源を明らかにし、防音対策を具体的に施すことが騒音源たる空港運用者の義務である。
 騒音源である空港公団が低周波騒音の調査をしていることも問題である。最低でも第三者が調査しなければ真実は解明されるはずもない。環境問題で大気汚染や河川汚染の発生源である疑いがある企業に、その調査を公式に依頼することなどありえない。しかし低周波騒音がまだ大きな社会問題として取り上げてられていないので、このような奇っ怪なことが行われているのである。
 成田空港地域共生委員会も「4日間だけの調査」を問題にしているが、調査主体のことには文句を付けていない。「第三者」だとか「共生」とか言っているのなら、共生委みずからが行うべき調査ではないのか。しかし共生委の構成員にも公団は入っており、公団の調査と本質的違いはないともいえる。

(2月6日) 芝山鉄道・開業3カ月/採算ラインの3分の1(2/6千葉日報)

 地元の期待を乗せて昨年10月27日に開業した「芝山鉄道」が、運行3カ月を経過した。1日あたりの駅乗客数は約900人、1日の乗降客数の平均でも1750人どまり。同社が採算ラインとした予測乗降客数5400人を大きく下回り、同社では「厳しい数字。促進PRを図っていきたい」としている。
 まとめの利用実績をみると、芝山千代田駅の乗客数は10月(5日間)7716人、11月2万6970人、12月2万5744人。芝山鉄道を利用した輸送人員数(※乗降客数となる)は11月4万9939人、12月5万4283人で、それぞれ1日平均1664人、1751人となる。
 開業日初日は、千代田駅で3615人を数えた。日本一営業距離が短い鉄道として、鉄道マニアやファンなどでにぎわい、乗車したり記念乗車券を買い求めたが、以後それを超える利用はないという。
 芝山鉄道は第三セクターで、成田空港内の京成東成田駅と芝山千代田駅間の約2・2キロ。1日32往復で京成電鉄で都内と直結、上野駅まで最短80分で結ぶ。
 地元からは延伸要望が強いが、当初から採算面は懸念されていた。延伸計画の検討はなく、実績からも暗い影を落としそうだ。
 同社では「今のところ厳しい数字。これからも成田空港整備地区内の企業に勤務する人にPRしたり、芝山町や多古町の通勤者に町営駐車場の利用促進を呼びかけて利用を伸ばしていきたい」としている。

【本紙の解説】
 昨年11月13日の朝日新聞の報道では、芝山鉄道の利用者は見込みの2割以下となっていた。(02年11月13日付日誌を参照)
 1日平均1000人の利用者(乗降客)であった。それが、1700人平均となった。それは、空港整備地区に勤務する4000人に芝山鉄道の使用を呼びかけた結果である。つまり、行き帰りで1人が2回の利用になるので、約350人がマイカー通勤をやめて芝山鉄道を使うことになった。その理由はマイカー通勤だと通勤手当は出ないが、芝山鉄道利用なら通勤手当が出るからである。しかし、芝山鉄道利用を強く呼びかけても350人しか応えていない。自宅の最寄り駅までの交通手段がないからである。
 また、芝山町民で芝山鉄道を使っているのは、運転免許をもっていない高校生ぐらいである。利用を町民に呼びかけているが、町民にとって使いようがない鉄道なのである。
 この状態では芝山町の中心の小池までの延伸がピンチと言われているが、空港が民営化されたら、真っ先に公団のリストラ対象になるのが芝山鉄道だ。この赤字状態では存続そのものが問題になっているのである。

(2月10日) 国際便、深夜に受け入れ/成田着陸できないときに(2/11毎日、2/13朝日、千葉日報)

 国土交通省は10日、天候や航空機のトラブルなどで離陸が遅れ、成田空港の利用時間(午前6時〜午後11時)に、到着できなくなった航空機の着陸を羽田空港で受け入れる方向で調整に入った。成田空港は国際定期路線、羽田は国内定期路線と役割を明確にした空港の運用を行ってきたが、一般利用者の利便などを考慮して限定的に見直すことになった。関係自治体や航空会社の意見などを聞いた上で、年内にも運用方針を変更する。
 成田空港は騒音など地元への配慮から午後11時から午前6時まで利用できず、この時間帯では、到着便を受け入れていない。海外からの離陸が遅れて、着陸時間が成田の運用時間外にかかる場合は、成田が利用可能な翌朝まで離陸を待たなければならず、アジアの空港を中心に、年間50便程度が当日の離陸をあきらめている。今回の見直しでは、離陸前に成田に着陸できないことがわかった場合、羽田への着陸、乗客の降機を認めるというもの。
 羽田空港は、新滑走路が供用を開始した97年から24時間の利用が可能になり、は01年2月からは深夜・早朝のチャーター便に限って国際線の運航を行っている。国交省は成田市など関係自治体や主要航空会社から事情を聞き始めており、ある航空会社幹部は「羽田への着陸を歓迎する乗客もいるはず」として、羽田空港の運用見直しに前向きに対応する姿勢を示している。着陸が深夜・未明になるため、空港職員の確保、乗客の宿泊・交通手段の提供、羽田に人員配置していない海外の航空会社の対応をどうするか、など調整課題は残っている。

【本紙の解説】
 これは、羽田空港の国際定期便受け入れの出発点である。アジアの周辺空港からの成田便は利用時間の関係から夕方発は比較的に少なかった。それは報道にあるように、成田到着が午後11時までに見込まれない場合は、出発を翌朝まで見合わせなくてはならず、航空機の運用に支障をきたすからである。
 しかし、整備や天候で出発が遅れた場合に羽田着ができるようになると各航空会社は大幅に運航時間が拡大できるようになる。そのために、いままで、成田への出発を見合わせた便が年間50便程度であったが、羽田利用が可能となれば遅い時間の出発便が増え、年間で羽田到着が数倍化し、200便ぐらいになると予測している航空会社もある。
 そうすると、羽田の国際線入国体制と各航空会社の受け入れ体制も整備が必要で、それは早晩、アジアからの深夜羽田着の国際定期便の受け入れ態勢になることは確実である。
 09年羽田に4本目の滑走路ができると、アジア便は基本的に羽田に移ることは確定している。成田は欧米便とその欧米便への乗り換えのためのアジアからのトランジット便と北米線への乗り換えのための路線だけになる。現在の成田の航空便は約半分がアジア便である。その大半が羽田に移ることになる。成田の暫定滑走路は基本的に必要なくなるのである。

(2月13日) 公団民営化で環境骨子合意(2/14朝日、読売、毎日、産経、各千葉版、千葉日報、日経)

 新東京国際空港公団の民営化に際して、県と成田空港周辺9市町村は13日、国や公団と取り交わす覚書の骨子案について合意した。環境対策や共生策などの継続、充実などについて取り決めるもので、県が国や公団と最終案の取りまとめを進める。
 同空港の騒音対策や地域振興策は、国側と県、一部反対派が空港問題の話し合い解決を図った「シンポ円卓会議」(91〜94年)などでの合意に基づき、公団が行っている。骨子案はこれらの約束を引き続き守ることを明記。民営化法案で周辺住民の生活環境の改善に配慮規定を設けるよう定めた。
 民営化に当たり、周辺市町村から、2本の滑走路の間に位置する「谷間地区」の騒音対策や、住宅防音工事など助成制度の恒久化や拡充を求める要望が出されている。こうした要望については、「今後協議し、完全民営化までに結論を得るよう努力する」とした。

【本紙の解説】
 事前に堂本暁子知事と周辺9市町村の首長は県庁で協議し、「民営化に関する覚書(骨子案)」を取りまとめ、それを公団と国交省が認めた格好である。骨子の内容は、これまで約束事の順守と助成制度の恒久化を求めている。これまで行っていることは、民営化法案に「配慮規定」として盛り込まれるという。しかし、助成制度の恒久化要求などは事前協議することとなった。
 周辺自治体はこれで周辺対策の「担保」になると踏んでいるがそうはならない。まず公団は「地権者との合意なき滑走路建設はしない」という「シンポ・円卓会議」の合意事項を踏みにじって、暫定滑走路を建設し開港した。「合意順守」が東峰神社の立ち木伐採にまで化けているのである。
 また、公団は空港建設を強硬手段で行う見返りとして、周辺対策を他府県の空港に比して異常なまでに手厚くしてきた。極端な「ばらまき」行政である。周辺自治体は、環境対策と称してこれまで通りの「ばらまき」を要求しているが、財源的にも限界があり、民営化後は全廃されることが明白である。
 民営化によって空港は、周辺住民の生活とは相容れない、「共生」不可能な代物であることが最後的にはっきりする。

(2月13日) 離陸まで最大で41分/目立つ誘導路の渋滞(2/14朝日、読売の各千葉版、千葉日報)

 新東東国際空港公団は13日、成田空港で航空機が駐機場から滑走路まで走行する際の所要時間などを調査した「航空機の地上走行調査」の結果を発表した。調査によると、離陸まで最大で41分かかったケースもあった。
 調査は暫定B滑走路の供用開始以降、誘導路内の「渋滞」が多くなったため、昨年8月、10日間実施された。調査員による目視で、出発568機、到着461機の計1029機を調べた。
 調査結果によると出発機の平均所要時間は、第1ターミナルからはA滑走路まで20分、暫定B滑走路までが28分、第2ターミナルからA滑走路が24分、同じく暫定B滑走路までが18分だった。
 最も時間がかかった例では、出発機の多い正午過ぎに、第2ターミナルからA滑走路を利用して出発した航空機に計41分かかった例があったという。
 一方、到着機の平均所要時間は第1ターミナルまで、A滑走路からは7分、暫定B滑走路からは20分、第2ターミナルまではA滑走路からが13分、暫定B滑走路からが12分などだった。
 原因について公団は、(1)2本の滑走路を結ぶ区間で地上走行に使える誘導路が1本しかない。(2)暫定滑走路と第2ビルを結ぶ誘導路が一方通行になっている。(3)暫定滑走路の誘導路が「へ」の字に湾曲している。などの点を挙げている。所要時間を巡っては、航空会社からも発着ダイヤの乱れの要因として指摘されていた。

【本紙の解説】
 渋滞時間の平均が出ているが、データとして正確であっても数字のまやかしでもある。ラッシュ時時帯の航空機は搭乗率が高く、早朝や夜間の航空機の搭乗率は低い。そのため、航空機の平均渋滞時間ではなく、渋滞時間を味わった人を基準に平均を割り出すと、それは30分を越えているはずである。

 無理やり暫定滑走路を建設し供用したツケが回っているのである。そもそも、誘導路もまともにできていないのに、第2ターミナルビルを建設・運用したり、暫定滑走路を暫定的に開港したことが異常なのだ。
 しかも、第2ターミナルビルにはアジアの航空会社だけが入ることになっていた。そして、設計当時はジャンボ機はなかったのでアジア便はすべてB滑走路を使う計画で設計されていた。第2ターミナルビルからA滑走路を使うのは日本の航空会社の欧米便と、例外的に他のアジアの航空会社の北米へのトランジット便だけであった。
 そのような設計の空港であるにもかかわらず、B滑走路への連絡誘導路が一方通行で、蛇行し、信号機まである。さらに、第1ターミナルビルと第2ターミナルビルの間の木の根にある誘導路が1本で、それも不完全であるにもかかわらず、暫定滑走路は供用されたのである。第1、第2ターミナルビルの入居航空会社の区別なく、A滑走路とB滑走路を使っているのである。渋滞するのは当然だろう。
 公団は開港さえすれば、地権者は騒音に耐えられず出にていくとの判断であった。開港すれば用地問題は解決するとの腹づもりだった。その思惑が外れ、世界の空港にも例がない誘導路上の渋滞問題が発生したのである。
 公団は一坪共有地を民法上の争いにすり替えて強奪し、木の根地区にもう1本の誘導路を建設しようとしているが、通らない話だ。仮に暴論がまかり通ったとしても、裁判が終わるのは最低でも数年先のことだ。それまでに羽田の4本目の滑走路は着々と整備が進む。
 暫定滑走路は事実上の閉鎖状態に陥るだろう。そうすればおのずと渋滞問題は解決しそうだ。

(2月14日) 日本アジア航空機、飛行中にエンジン破損(2/14朝日)

 13日午後1時ごろ、成田発台北行き日本アジア航空機で飛行中にエンジンが破損するトラブルがあり、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は事故につながりかねない「重大インシデント」に当たるとして、原因調査に乗り出した。
 同省などによると、同機(ボーイング747−200型)は鹿児島県沖永良部島の北北西約285キロの高度約7200メートルを飛行中、第2エンジンに不具合が発生したため、那覇空港に着陸した。けが人はなかった。着陸後に機体を調べたところ、第2エンジン内の羽根1枚が折れ、エンジンケースを貫通していた。

【本紙の解説】
 「重大なインシデント」ということは大事故の前の異変である。この事故は整備問題だが、この間の暫定滑走路で起きた事故との関連もある。成田における航空機の整備・運用がぞんざいにになっているのである。
 航空会社の経営危機は、整備部門の手抜きを生んでいる。暫定滑走路の開港で発着便数は増大しているのに、航空機整備の人員は削減されている。人件費コスト削減のための機械化というが、手抜き整備は隠せないといわれている。
 航空機管制も同じである。発着の増加に見合った管制官の増員はない。
 本紙は何度も指摘してきたが、これは成田空港での大事故の前触れ、前兆である。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会も「重大なインシデント」として認め始めた。
 昨年12月12日のルフトハンザ機と日本エアシステム機の接触事故(02年12月1日付日誌を参照)の時に、「重大なインシデント」として調査すべきであった。しかし、この時公団は事故の発生そのものを隠蔽しようとした。ルフトハンザ航空に「事故と認定していない」といわせ、ルフトハンザ機が飛び去ってから、24時間もたってから公表したのである。「事故原因の調査」を口にしたのはそれから後だ。
 暫定滑走路の運用は成田空港にさまざまな無理を生じさせている。その結果、航空機の安全運航がなおざりになっていることは震撼すべき事態だ。

(2月16日) 無駄な公共事業「地方空港」乱立に歯止め(2/17東京、千葉日報、2/18読売)

 国土交通省は、今年4月から地方空港の滑走路新設、延長事業を新規採択する際の整備指針を16日にまとめて公表した。目的ごとに具体的な評価基準を明記したのが特徴で、事業化を目指す地方自治体にとっては厳しい内容。
 「無駄な公共事業」として批判が多かった地方空港の乱立に歯止めをかけるのがねらいだ。
 整備指針で示された評価基準は15項目。例えば、滑走路の処理能力向上を目的に滑走路を新設する場合には、「年間離着陸回数が10万回を超え、ピーク時の1時間あたりの離着陸回数が30回程度」など。大型ジェット機を就航させるため、2500メートル滑走路を新設するか、滑走路を2500メートルに延長する場合には、「供用時に最大路線の需要が年間50万人以上」など――となっている。
 実情とかけ離れていると批判された需要予測については、同省が定めた手法と最新のデータを用いることを義務づけた。このほか、整備指針に合わせ、構想・計画段階から住民との合意形成を図るため、住民らが参加するパブリック・インボルブメント(PI)のガイドラインも定めた。
 国交省では2001年に地方空港新設を抑制する方針を打ち出しており、昨年12月の交通政策審議会航空分科会の答申を受け、整備指針案などの検討を進めてきた。

 【本紙の解説】
 無駄な公共投資に歯止めとは、国交省もよくいったものである。国交省が無駄な公共投資の大半を推し進めてきたのだ。今回だされた地方空港の新滑走路建設抑制は、無駄な公共投資への歯止めとは少し違う意図で作られている。「年間離着陸回数10万回」をクリアーするのは、国際空港である成田、関空をのぞけば、羽田、伊丹、福岡、那覇であり、新千歳はそれ以下でクリアーしていない。
 つまり、新滑走路が問題になっている福岡と那覇の建設抑制なのである。空港特別会計が逼迫しているので、設備投資に財源を回せない。そのために福岡、那覇の建設を抑制したいのである。
 とりわけ福岡では近距離の場所に北九州空港が開港している。福岡まで車で30分の距離である。したがって、福岡空港の滑走路造成や新福岡空港の建設でなく、この北九州空港を使えということなのだ。福岡空港が増設されれば、この北九州空港がほとんど使いもものにならなくなるのである。倒産寸前の佐賀空港の二の舞になりそうなのである。

(2月16日) 成田空港周辺11市町村、法定合併協設置に合意(2/17千葉版全紙)

 成田市や芝山町など成田空港周辺11市町村は16日、成田市役所で「第6回任意合併協議会」を開き、11市町村で法定合併協議会を設置することに合意した。これを受けて11市町村はそれぞれ3月議会に設置の是非を諮るが、合併方式をめぐり議会に反対論が残る市町もあり、すんなり設置が決まるかは流動的だ。
 この日の協議では(1)合併方式は成田市が10市町村を吸収する「編入」(2)名称は「成田市」(3)市役所は現・成田市役所庁舎――の3項目も決めた。3月議会で11市町村議会すべてが可決すれば、正式に設置が決まる。
 会見した小川国彦・成田市長は「一つの区切りにたどり着いた」と語った。しかし富里市や芝山町などの議会内には「11市町村が対等合併する『新設』が望ましい」と編入方式への反対論もあり、合併の枠組みなどは各議会の審議結果いかんで変わる可能性もはらんでいる。

 【本紙の解説】
 空港公団が支払う固定資産税の約9割が成田市に入る。年間64億円である。その他の税収入をあわせると100億円が公団から成田市に入る。成田市の人口は10万人であり、1人あたり10万円であった。この税収入を目当てに25万人、面積508平方キロメートルという千葉県最大面積の都市が生まれようとしている。民営化されると、これに法人税が加算されることになると試算しているようだ。
 しかし、近隣都市の思惑通りにはならない。いままで財政指数が1・5で全国の市でトップであったが、合併すると0・8になり、豊かな財政ではなくなる。民営化される「成田空港会社」は国への出資金の返済が1500億円ある。羽田の新滑走路が建設されれば、経常収支でも大赤字になることは確実である。そのために、お目当ての法人税もたいした額にはならない。また、民営化された空港は騒音対策と安全対策を削減してくる。この住民対策費が自治体負担として重くのしかかってくる。
 そのうえで漫画なのは栗源町である。栗源町はすでに財政破綻しており、その解決策としてボートピア(場外舟券売り場)を建設しようとした(02年9月2日付日誌を参照)。栗源町は香取郡市として佐原市中心の合併に参加するはずだったのが、空港財源に取りつかれ成田市との合併を懇願した。
 その理由がふるっている。成田空港反対派の団結小屋が栗源町にあるということなのである。ボートピアの時は建設反対運動を恐れ、団結小屋撤去運動を町長と町役場が先頭に立って展開した。今度はその団結小屋の存在のおかげて成田市との合併が実現しそうなのだ。「団結小屋を撤去しなくてよかった」と町役場幹部は漏らしている。

(2月17日) 反対同盟3・30集会招請状を発出

 反対同盟は2月17日に3月集会に招請状を全国に発送した。以下全文を掲載します。

■招請状

 闘う仲間のみなさん。米ブッシュ政権によるイラク侵略戦争が切迫し、小泉内閣は参戦へと踏み出しています。通常国会で有事3法案の成立を強行しようとしています。私たち反対同盟は、米日のイラク侵略戦争と有事3法案に反対し、「成田空港の軍事基地化阻止」「暫定滑走路の即時閉鎖」を掲げて3月30日に全国総決起集会を開催します。みなさんの総結集を訴えます。
 孤立を深める米・ブッシュ政権は、3月上旬にも国連決議を経ないまま、単独で武力行使に踏み切る構えです。石油利権のためのイラク人民大量虐殺を許してはなりません。この戦争への日本の参戦を阻止しなければなりません。
 イラク侵略戦争や北朝鮮侵略戦争では、空港と港湾の軍事使用が不可欠です。反対同盟はベトナム侵略戦争において羽田空港が果たした軍事的役割を教訓に、「軍事空港建設反対」「成田空港を侵略のための軍事基地にするな」をスローガンとして闘ってきました。全世界で高まるイラク反戦闘争と連帯し、日本における反戦・反核の砦=三里塚闘争の真価にかけて決起すべき時がきたと決意を新たにするものです。
 暫定滑走路の強行開港から1年、反対同盟は闘争破壊攻撃をうち破り意気軒昂と闘い続けています。そして今、保安のための国際標準をも無視した暫定滑走路の欠陥と破綻が、重大事故の続発として現実のものとなっています。
 昨年12月1日には市東同盟員宅前の変形誘導路上で航空機同士の接触事故が発生しました。1月27日には、韓国・仁川から飛来したボーイング767─300型機が暫定滑走路南端から70メートルオーバーランし、航空灯火を破壊して東峰神社のわずか50メートル手前で停止しました。さらに暴走すれば小見川県道と人家を巻き込み、乗客と乗員労働者に多数の死傷者をもたらすことが必至でした。
 度重なる事故の原因は、当初計画より320メートルも短縮し誘導路を曲げて建設した暫定滑走路の構造的欠陥にあります。危険極まりない滑走路は閉鎖しかありません。ところが国土交通省と空港公団は事故原因の究明もないまま運用を再開したばかりか、一坪共有地強奪のための不当提訴や東峰地区における物流基地建設計画など住民を敵視する暴挙で危険を増幅させているのです。
 暫定滑走路延長策動の背後にあるのは、成田軍事空港の完成と三里塚闘争つぶしです。イラク侵略参戦と切迫する北朝鮮侵略の戦争準備です。反対同盟は暫定滑走路粉砕闘争の勝利の地平のうえに、その閉鎖と軍事空港の廃港をなんとしても闘いとります。
 バブル崩壊後の不況は深刻さを深め、その矛盾のすべてが首切りと賃下げ、増税と社会保障制度の改悪となって私たちの生活を脅かしています。通常国会では有事三法案とともに、労働基準法を始め各種労働法の改悪が策動されています。これに対して動労千葉を先頭とする闘う労働者の春闘決起が始まりました。私たちには今、平和を求め生きていくために闘うことが求められています。
 高まる全世界のイラク反戦闘争と連帯し、日本で帝国主義の侵略戦争に反対する大運動をまきおこそう。3・30全国集会に総結集されるよう呼びかけます。
 2003年2月17日

   記

【集会名称】
イラク侵略戦争反対・有事立法粉砕
暫定滑走路を閉鎖し軍事空港を廃港へ
 3・30全国総決起集会
【日時】3月30日(日)正午
【会場】成田市天神峰 反対同盟員所有地
【主催】三里塚芝山連合空港反対同盟

(連絡先)事務局長・北原鉱治 成田市三里塚115
               TEL 0476(35)0062
(会場案内)
▼JR成田、京成成田駅からタクシーで「東峰十字路」まで2000円
▼車は成田インターから国道295号線に入り芝山町(空港)方向。日航ホテル手前で小見川県道を小見川方向。「東峰十字路」へ

(2月17日) フランス航空会社2位が破産(2/18日経夕刊)

 フランスのクレテイユ商事裁判所は17日、仏航空業界2位のエアリブに破算を宣告、会社清算を命じた。オランダの金融グループに資本参加と債務の肩代わりを求めていたが交渉は決裂。航空業免許も今月5日までで切れ、経営破綻した。同社は仏政府に対し約1億ユーロ(130億円)の負債がある。
 エアリブはフランスとアンティーユ諸島、アルジェリア、キューバ、仏領西インド諸島などを結ぶ路線を運航。格安料金を売り物にしていたが、仏航空首位のエールフランスや新幹線TGVとの競合などもあって乗客数が伸び悩んでいた。航空機などの過剰投資も重荷となったとみられる。約3200人の従業員の再就職先は未定。操縦士や客室乗務員は制服を着てパリ郊外のオルリ空港や仏各地の空港で雇用の維持を求めてデモを展開している。

 【本紙の解説】
 アメリカの航空会社第6位のUS航空、第2位のユナイテッド航空の倒産につづき、フランス第2位の格安航空会社のエアリブが倒産した。いままで、旧来の航空会社はコスト高で倒産は仕方がない、格安航空会社がそれに代わるとの見方があったが、欧州での格安航空会社のエアリブが倒産したことに航空業界は震撼している。
 9・11以降に連続した航空会社の倒産は、80年代のアメリカの航空競争になぞらえて、コスト高の旧来の航空会社が格安航空会社に代わるだけと航空関係者は見ていた。しかし、いま起こっている航空不況はそんなレベルにはない。航空需要の中心が軍事目的で、それが実需の倍以上になっていたのである。航空機製造業はそのまま軍需産業であり、民間機は軍用機のノウハウをそのまま使って生産される。航空機の所有数と製造力は軍事力そのものである。また現代戦争は民間航空機を使って兵員や物資の大半を運ぶのである。民間航空会社そのものがもう一つの軍隊なのである。そのために各国は航空需要を作りあげ、国策的航空会社を育て上げてきたのである。
 世界的不況に9・11が重なり、この虚業的粉飾が飛び散り、航空業界は一挙に危機を露呈させ、倒産が相次いでいるのである。
 イラク侵略戦争開始の情勢の中で航空業界は一段と危機を深めている。その一つは、航空機ジェット燃料が世界的にイラク戦争に関連した原油高から、今年になって20パーセント上昇していることである。アジアの取引市場であるシンガポールのジェット燃料価格は現在、1バーレル40ドル前後である。昨年同期から約8割高騰している。その理由はイラク情勢の中で「米国の原油在庫の低さ」といわれている。
 そのために、アメリカを中心とする航空会社は航空料金を一律片道10ドル、格安航空は3ドルの値上げで対応している。しかし、9・11以降、ダンピング的ディスカウントで何とか需要をつないできたのである。ここでの値上げは航空需要を一挙に引き下げる結果になるであろう。
 もう一つは、米国によるイラク攻撃の開始が不可避になったことによる航空需要の一挙的減少である。「米国を中心に複数の航空会社が確実に破綻する」とIATA(国際航空輸送協会)のチーフエコノミストのピーター・モリス氏は見通している(2/21日経新聞)。91年湾岸戦争が開始された翌月の航空旅客は15パーセント減少した。今度も同じようになると予測している。03年は航空会社と空港は受難の年である。

(2月20日) 青森空港でオーバーラン(2/21朝日、読売夕刊)

 20日午後8時55分ごろ、青森市大谷の青森空港で、羽田発青森行きの日本エアシステム(JAS)169便(エアバスA300─600R型)が着陸した際、滑走路(2500メートル)から約90メートルオーバーランし草地に止まった。乗客・乗員150人にけがはなかった。
 21日は空港滑走路を終日閉鎖し、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会の調査官3人が原因を調査する。
 青森空港管理事務所などによると、機体は北東から南西方向に入り、追い風の中で着陸していたことが分かった。青森地方気象台によると、当時の空港の天候は雪で、北北東の風が秒速7メートル吹いていた。着陸の30分前には滑走路の除雪を終えたが、路面は凍結していた。一方、同機は着陸の約50分前から雪で視界不良のため、空港上空で待機していたが、機長の判断で着陸したという。青森空港では2000年3月にもJAS機がオーバーランを起こしている。

 【本紙の解説】
 エアバスA300─600R型はほぼ、ボーイング767型機と同じ大きさである。青森空港の滑走路は2500メートル。積雪と凍結の滑走路に7メートルの追い風で着陸してオーバーランである。航空機は通常は向かい風に離着陸するが、風向きが急変したときなどは、追い風でも離着陸することがある。
 成田空港周辺は、春になると北風と南風が交互に現れる荒れた気象になりやすい所である。また天神峰周辺は千葉県としては最も寒さが厳しい所である。年間平均気温は東北の仙台と同じである。滑走路の凍結も多い。A滑走路のある三里塚より、暫定滑走路がある天神峰、東峰の方が冬は2、3度寒いといわれている。したがって南岸性低気圧の通過による積雪時は恐ろしいものがある。
 この点からも、暫定滑走路は直ちに閉鎖すべきである。

(2月20日) 空港拡張構想 公団が回答書/東峰地区の了解が前提(2/21朝日千葉版)

 新東京国際空港公団が成田市東峰地区の住民に空港拡張構想を打診し、住民側が拒否の申し入れをしていた問題で、同公団は20日、計画を進める場合は地区の了解を前提にすることなどを確約した。
 回答書を地区の代表に提出した。回答書はまず暫定B滑走路供用にともなう騒音や、オーバーランなどで迷惑をかけたことについて住民に謝罪し、旧県有林(東峰の森)の伐採や貨物施設などの構想については「地区の了解をえないで一方的に計画を推し進めることはしない」としている。
 また、構想は考え方の一つに過ぎないと改めて強調し「東峰地区をこれ以上分断せず、一体としてとらえる」として、地区の細分化をしない方針を示した。同地区は空港用地や用地外の騒音区域などに分かれているが、公団としては、今後も地区全体としてとらえていく考えを回答書に盛り込んだ。

 【本紙の解説】
 東峰地区は1月30日に、公団に対して貨物地区は受け入れられないと拒否の回答を提出していた(03年1月30日付日誌を参照)。その回答と称して黒野総裁自身が「計画を進める場合は地区の了解を前提にする」との文書を東峰地区の区長に提出し、それのうえで計画の声明を東峰地区にしたいなど称して「話し合い」を申し入れてきたのである。
 この貨物基地なる構想は現実の計画でなく、あくまで黒野総裁がいっているように、東峰を丸ごと話し合いに持ち込み、全体を切り崩すことを目的に作りあげた架空の計画である。
 成田空港で取り扱い貨物量が増加していることは事実だが、貨物基地は現在2カ所で建設中である。芝山町千代田にある第5ゲート近くの成田市桜台の地番になる旧日航グラウンドと成田市取香に千葉県企業庁が「成田国際物流複合基地」を建設している。この2つが完成すれば貨物基地としては十分である。それ以上に羽田にアジア便が移ることを前提に、羽田空港の跡地約200ヘクタールに国際線旅客ターミナルと国際線貨物施設を建設することが決定している(02年10月18日付日誌を参照)。この国際線ターミナルと貨物基地は巨大である。そのためもあってか、取香に建設している物流複合基地は計画を縮小している。これ以上の貨物基地は必要ないのである。
 つまり、貨物地区構想攻撃は、東峰地区を丸ごと条件交渉に引き込むためのだけのものである。そのために東峰地区全体を「空港敷地内」にして集団移転させることだけを目的にしているのである。
 公団が言うように貨物基地構想は、「東峰地区をこれ以上分断せず、一体としてとらえる」ものであり、あくまで一体として「話し合い」に引きずり込むための計画である。黒野総裁は、このような道具立てで東峰地区を切り崩せると考えているのである。黒野総裁の考え方の浅さが見える稚拙な構想であり、攻撃である。この構想を持ち出した根拠は、暫定滑走路で飛行機を飛ばせば地権者は騒音地獄で出ていくと踏んでいた自分の見通しの甘さと破綻を示しているものである。

(2月22日) 隅谷三喜男さん死去(2/23読売、毎日、東京、産経の各全国版、朝日、読売、毎日、東京の各千葉版)

 成田空港問題を話し合いの方向に導いた有識者グループ「隅谷調査団」の団長で、東大名誉教授の隅谷三喜男さん(86)が死去した22日、県内の関係者からも惜しむ声があがった。ボタンのかけ違いから激しく対立した国と農民の間に立って調整役を果たし、話し合い・共生路線を確立した信念の人だった。
 隅谷さんは91年に始まった成田空港問題シンポジウムから円卓会議が終了するまで、約3年にわたってそれぞれの座長を務めた。
 93年の第1回円卓会議では「ここは話し合いの場だから必要ない」として、警備のために会場内にいた私服警察官に退席を求める場面があった。「関係者が対等の立場で空港と地域の共生のあり方を話し合ってほしい」とこだわった。
 その後も、暫定B滑走路の建設や東峰神社の立ち木伐採について「国や空港公団は反対派住民と協議を尽くしたとはいえない。話し合い路線から逸脱している」と、常に毅然(きぜん)とした態度を示していた。

 【本紙の解説】
 91年からの「話し合い」問題に、隅谷を中心とする調査団が成立した要因はいろいろある。その最大の要素は、当時の熱田派が「90年決戦で中核派に破防法が適用される、ゲリラ戦闘もなくなり、現地支援体制もなくなる。これで三里塚闘争も終わりだ。このままで終わってはなにもなくなってしまう」と隅谷などに泣きついたことであった。それは熱田派の石井新二と組んで地域連絡協議会の会長となり、「話し合い」の中心に座った村山元英(もとふさ)千葉大教授があまりにうさんくさかったで、石毛博道らが隅谷を担ぎだしたのである。隅谷の登場で村山は調査団にも入れなかった。そのことで石井新二は熱田派からも脱落し、シンポ・円卓会議にも参加しなかった。
 政府・運輸省が隅谷を抜擢した理由は、87年国鉄分割・民営化で国鉄再建監理委員会の政府委員として、国労や人民の側ではなく政府側の立場を貫いたことであった。
 戦後民主主義的幻想をふりまきながら人民を欺き、政府の施策(国鉄分割・民営化、三里塚闘争の解体)を貫こうというのが隅谷の基本的立場である。戦後民主義が政府の立場に取り込まれていく典型的な例をこの隅谷の変遷にみることができる。
 しかし国鉄分割・民営化にしても、16年経ても動労千葉、国労の闘いにより破産している。三里塚においては最初から反対同盟を「話し合い」に取り組むことに失敗しており、シンポ・円卓会議の破産も当初から目に見えていた。事実、マスコミの喧伝にもかかわらず、シンポ・円卓会議は「民主主義の模範」にはなりえなかった。その後、国交省が強引に暫定滑走路建設に走る口実を与えたに過ぎなかった。三里塚闘争の対立構造は1967年当時と基本的に何も変わっていない。

(2月23日) 地元自治体が航空会社支援(2/24千葉日報)

 02年度、22空港で全国46の主な地方空港のうち、秋田や岡山など約半数の22空港を運営する県や市などの地元自治体が、東京便や国際便の着陸料軽減など、路線維持のため2002年度で航空会社に計22億円を支援したことが23日、共同通信社の調査でわかった。利用客への運賃助成やPR活動など、周辺市町村などと共に実施している間接的な利用促進策も含めると、自治体の支出は37空港で総額約31億円の規模となる。
 経営が厳しい航空会社は採算性が悪い地方路線の減便を進めており、目標搭乗率を下回った分の収入を補てんする「保証」を導入する空港も出るなど、自治体の負担はさらに増える見通し。
 利用客増などに成功している空港もあるが、もともと需要が少ない空港では効果は限定的で、「1県2空港」の乱立状態を招いた航空行政の在り方も間われそうだ。
 路線維持の支援は、新規乗り入れ会社のスカイネットアジアの運航経費などを02年度に限って県が8億円を補助した宮崎空港分が最も多く、総額8億4600万円。次いで秋田が2億5900万円。

 【本紙の解説】
 航空需要の停滞と落ち込みで、日本の航空会社も経営危機であり、まず、不採算路線からの撤退が相次いでいる。利益が見込める幹線に集中している。新幹線や高速道路と比べて、インフラに費用がかからない航空はローカルや離島との交通に適している。にもかかわらず赤字であり、政府援助もないので、自治体が援助し、地方路線を必死に維持している。しかし、その自治体にしても、あらかじめ、需要を考えずに、箱物行政的に空港建設を野放図にやってきた付けが回ってきたというべきである。

(2月24日) 反対同盟・郡司一治さん逝去

 反対同盟本部役員の郡司一治(かつじ)さんが2月24日午後7時30分、ガンのために入院先の病院で亡くなられた。享年82歳。自宅療養しながら、闘争と日常生活を営んでいたが、1週間前から容態が急変し帰らぬ人となった。(告別式は27日に行われた。詳細は『週刊三里塚』参照)

(2月24日) 成田空港民営化「4〜5年必要」(2/25朝日、毎日)

 国土交通省の洞駿航空局長は24日、政府の特殊法人等改革推進本部参与会議(飯田亮座長)で、新東京国際空港公団を解散して設立する特殊会社「成田国際空港株式会社」(仮称)について、「株式上場には4〜5年かかるのではないか」との見通しを示した。また、「上場には、新会社の収益の安定性を確保するため、暫定平行滑走路を予定通り2500メートル化することが必須条件だ」と述べた。

 【本紙の解説】
 「上場には4〜5年」とは、03年から4〜5年なのか、04年の民営化後の4〜5年なのか、記事の文言からは分からないが、上場時期は07年から09年の計画である。しかし「暫定滑走路の2500メートルを必須条件」にするというなら、それは永遠に不可能というほかない。
 「必須」とした理由は「新会社の収益の安定性の確保」。暫定滑走路が暫定のまま運営されると赤字になるとの告白だ。「開港すれば地権者は直ちに出て行く」と踏んでいたが目算がはずれ、経営的に赤字になっているのである。やはり暫定滑走路は営利第一主義の民営化後は廃止されかねない代物なのである。

(2月25日) 成田空港の満足度調査/出発時17位、到着時8位 世界21空港中(朝日、読売の各千葉版)

 空港公団は、成田空港を利用する日本人を対象とした満足度調査の結果をまとめた。同種の調査を行っている世界21空港内のランキングでは、出発時が17位、到着時が8位だった。出発時の総合満足度トップは韓国・仁川空港、4位が香港・チャクラプコク空港。いずれも近年開港したばかりで、成田空港のライバルだ。空港公団では「利用者が少ない空港なので、ゆったり感じられるためではないか」とコメントしている。
 成田空港の出発時の評価では、出国手続きを終えた後の搭乗ゲートエリア内で、休憩施設や時間をつぶす施設が少ないという不満が多かった。到着時については、駅や駐車場へのアクセスの悪さや電車の待ち時間が長いことに不満の声が集まった。
 旅客ビル内の清潔さや治安の良さ、各種表示の分かりやすさなどは国際的にも上位の評価だった。調査は昨年10月19日から1カ月間、到着客5000人に調査票を配布し、郵送で1607人から回答を得た。

 【本紙の解説】
 01年の同じ調査では、成田は出発時8位、到着時3位だった。それが、2年間で出発時が17位、到着時が8位と満足度が一挙に下がっている。各国が航空競争の激しい中で競い合ってきたからである。一昨年は出発、到着ともシンガポールのチャンギ空港が第1位であった。仁川空港、チャクラプコク空港の躍進が著しい。にもかかわらず、公団は新設空港の努力を認めようとせず、「利用者が少ない空港」なので上位になったとしている。これでは成田はここ1〜2年でワースト1位になりかねない。

(2月26日) アメリカン航空、破産申請へ

 世界最大手の航空会社、アメリカン航空をめぐり、複数の米メディアが26日、同社のパイロット労組内の見方として「5月にも連邦破産法11条(会社更生法)の申請を余儀なくされる可能性がある」と伝えた。同労組は「公式見解ではない」と否定したが、同社の親会社AMRの株価はイラク攻撃への懸念などと相まって急落した。ダラス・モーニングニューズ紙やAP通信が伝えた。
 パイロット労組は声明で「地域労組の会議での一部の試算が報道された。労組が経営側から得ている情報に基づくものではない」と否定した。しかし、26日のニューヨーク市場でのAMRの株価の終値は26セント安の2ドル58セントに下落した。
 AMRは02年決算で、最終赤字が01年の約2倍に当たる35億ドル(約4100億円)にのぼった。今月4日には、年18億ドルの人件費削減策を労組に提示。AMRのカーティー最高経営責任者は「人件費やその他のコストを著しく削減できない限り、将来は保証できない」と訴えていた。

 【本紙の解説】
 すでに今年に入ってからアメリカン航空の倒産は話題になっていた(03年1月22日付日誌を参照)。倒産はほぼ確実となった。アメリカンは全米1位。2位のユナイテッド航空がすでに倒産している。アメリカ航空業界は一変しつつある。イラク侵略戦争の開始はそれを促進するだろう。全世界の航空会社の半分が過剰であり、倒産が予測されている。
 しかし民間航空会社といえども、現代戦争では重要な軍事力の構成単位である。オープンスカイ政策(航空自由化)を推し進めてきたアメリカは、9・11以降、航空会社の経営危機の中で政府援助を次々とやってきた。国家的保護政策である。これは航空運輸業がもうひとつの軍隊だからである。
 国家がひとつの国策的航空会社をもつ時代に逆戻りしつつある。

(2月28日) 民営化後の成田空港運営/従来の共生策継続/国、県など4者が覚書(3/1朝日、読売、毎日、日経、東京各千葉版)

 国土交通省と県、成田空港周辺の2市6町村、新東京国際空港公団の4者は28日、民営化以降の成田空港の運営について「新会社は周辺地域対策など地元との約束事を引き続き順守する」などとする覚書を締結した。空港の民営化法案に盛り込めない騒音・大気汚染対策や地域振興策など、従来からの空港と地域の共生策について「適切かつ確実に実施を確保する」としている。覚書に記されたのは(1)滑走路計画、(2)空港の運用、(3)騒音対策、(4)地域振興策の4項目、計54の施策。04年4月から公団に代わる特殊会社が、従来からの共生策を継続することを明記した。県や地元が国に要望してきた環境対策・共生策の恒久化などについては「完全民営化までに結論を得るべく努力する」とした。国が07年をめどに目指している完全民営化の際には、改めて4者で協議する。覚書をめぐっては、県と地元が空港民営化後も共生策を担保するため、民営化法案に書ききれない各施策の明文化を要望。県が骨子を作った。法的強制力はないが地元側は「約束」として順守を求めていく。

 【本紙の解説】
 2月13日に千葉県と周辺市町村で作成した環境対策骨子が、成田空港の民営化にともなう「覚書」として国交省との間で確認された(03年2月13日付日誌を参照)。
 成田空港が上下一体の民営化になることが確実になってから周辺自治体では、「担保」という言葉がはやっていた。環境・周辺対策の担保策のことであった。
 成田空港が完全民営化されたのでは営利目的第一主義になり、環境・周辺対策がなおざりになるという危機感である。それに対して上下一体の民営化を周辺自治体の中で唯一主張していた小川国彦成田市長は「国が株式を100パーセント所有する特殊会社、あるいは自治体も株式を所有することで担保できる」といっていたが、数年後に完全民営化することになり、無惨にもその主張は否定された。小川市長は当時、市町村合併にも反対しており、上下一体の民営化されれば、莫大な法人税が成田市だけに入るという思惑があったといわれている。
 その後、周辺自治体や共生委員会では民営化法案に「明文化」を期待した。「明文化しても実行効果がない」という意見に対して「ないより、あったほうがいい」などという意見もでていた。黒野公団総裁は「上下一体でも何らかの形で対策を担保できると思う」といっていた。
 結局は民営化法案には明文化はされず、あくまで国交省と自治体との間で「覚書」を交わすことに落ち着いた。法的強制力もなく、あくまで「配慮規定」であり、営利目的第一の民営会社では最初のコスト削減対象になるものである。
 民営化は官僚的特権・利権が廃止され効率的運営になると、マスコミにも歓迎されている。しかしそれは、そこで働く労働者に犠牲が転嫁され、結局のところ利用者、住民にしわ寄せがいくことになる。また、利権はあらたな形で継承されるだけである。空港の場合は周辺住民の生活が破壊されることと、安全性が軽視され、巨大航空機事故によって利用者の生命が危険にさらされることになるのである。

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