SANRIZUKA 日誌 HP版   2005/10/1〜31    

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 2005年10月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 


(10月3日) 北延伸 計画概要を説明(10/4朝日、読売、毎日、日経、産経、東京各千葉版、千葉日報)

 成田国際空港会社は3日、成田空港暫定平行滑走路の北延伸による2500メートル化の計画概要を成田市、下総町など11市町村と千葉、茨城両県に説明した。この中で、平行滑走路でジャンポ機などを運航し、発着可能回数(年間ベース)も現在より3万5000回多い10万回とすることに伴う2本目の誘導路の新設案と、新たな騒音影響範囲の線引き(騒音コンター)を公表した。
 環境影響調査を行った後、2006年夏に航空法に基づく施設変更許可手続きを行い、同年秋に着工。09年度内の供用開始を目指す。成田空港全体の発着回数は当面、現在より2万回多い22万回にとどめる。
 新誘導路は、成田市東峰地区の住民らが所有する畑や東峰神社などを避け、滑走路南東側に曲折した形で設置する。カーブ部分に翼端が接触する恐れがあってジャンボ機が通行できなかった現誘導路は、一方通行にして中心線を変更するなどし、ジャンボ機を通行可能にする。
 騒音コンターは、北延伸で滑走路北端が本来計画(南延伸)より1145メートル北にずれるため大幅に見直される。防音補助の対象となるWECPNL(騒音の大きさの単位、通称・W値)75以上の地域と、移転補償の対象となるW値80以上の地域が、現在よりそれぞれ北に約1キロ延びた。新たに下総町高倉地区(約20戸)の一部がW値80以上の区域になり、同地区では全戸を移転補償の対象とするよう空港会社と県に求める。
 一方、国土交通省の石指雅啓・成田国際空港課長は3日、成田市などを訪ね、国と県、空港会社が今後の騒音対策について、周辺自治体や住民と具体的検討に入ることを説明した。成田市の小林攻市長は、「計画概要に盛り込まれなかった一般廃棄物最終処分場の空港用地転用も含め、時間をかけて検討したい」と述べた。

 【本紙の解説】
 今回の計画概要発表の中に、北延伸攻撃の本質が現れている。北延伸に強く反対しているのは天神峰・東峰の用地内農民であり、成田市久住地区などの騒音下住民である。用地内農民に対しては東峰の森を破壊する新誘導路建設攻撃の正式発表、騒音下住民に対しては騒音コンターを示して、強制移転攻撃による廃村化攻撃をかけてきた。
 暫定滑走路を320メートル北側に伸ばすためには、国道51号のトンネル化工事の方法、成田市の廃棄物最終処分場である成田クリーンパークの移転、東関東自動車道の上に進入灯を設置するためのトンネル化の問題など、北延伸工事の難題は数多くある。しかし、それらの問題には触れることなく住民対策の2点を発表した。切り崩しや取り込み懐柔攻撃を開始するという宣言である。
 東峰の森を縦断する新誘導路は幾多の問題点がある。ひとつは、東峰の森を住民の承諾なしには潰せないことである。03年1月の「東峰貨物地区構想」に対する東峰地区の「申し入れ書」に対する公団側の「回答書」(03年2月20日付日誌を参照)に「森につきましては、区の皆様とご相談することなしに、公団が一方的に計画を策定し進めていくことはあり得ませんと、重ねてお約束いたします」と明言しているのである。
 ふたつめは、滑走路先端の飛行コースを2回も横切るという、世界でも例を見ない危険きわまる設計である。
 さらに、誘導路の長さから自走距離が3〜6キロにもなり、燃料代がかさみ各航空会社が敬遠していることである。これでは09年の羽田国際化に勝てるはずもない。
 暫定滑走路を2500メートル化し、年間発着回数を10万回としたことは、現状の倍の発着回数とジャンボ機の爆音という脅しで住民のたたき出しを狙ったものだ。現状の上限は6万5000回となっているが、実際は4万5000回が限度だと空港会社は言っている。つまり現状の倍の航空機を飛ばすと発表したのである。
 86年二期着工、99年暫定滑走路着工と二度の軒先工事があったが、今回は3回目である。反対同盟と三里塚闘争はこの軒先工事と新誘導路の建設を許すことなく闘い抜く決意だ。
 騒音コンターについては、国交省と空港会社は当初、騒音コンターは変更はしないとの思惑であったが、騒音下住民の抗議から約1キロ北へ伸ばすと発表した。しかし、具体的線引きはなく、各対象地区からの抗議はさらに激しく起こっている。騒音コンター拡大は移転補償と騒音対策費での買収攻撃であり、騒音下の廃村化攻撃である。このことは空港南側を見れば明らかであり、住民のさらなる怒りの決起が巻き起こることは必至である。
 さらにこの計画で許せないことがある。「本来計画より1145メートル北 」と発表していることである。暫定滑走路時に800メートル北側にずらし、2180メートルにしたと言っていた。今回320メートルさらに北側に延伸するのであるから、合計して1120メートル分、本来計画から北側に延びたことになる。しかし、発表は1145メールである。25メートル分計算がおかしいのである。これは暫定滑走路の時に実は800メートルではなく、825メートル北に伸ばしていたのである。騒音対策のためであろうか、こんなペテンを弄していた旧公団=現空港会社を許してはならない。

(10月6日) 滑走路延伸問題 堂本知事「自ら国と交渉」(10/7毎日千葉版、千葉日報)

 成田国際空港平行滑走路の北伸計画で、成田国際空港会社(黒野匡彦社長)が騒音予測範囲を公表したことを受け、堂本暁子知事は6日、「国とは私自身が交渉にも当たる予定」と述べ、自ら国に騒音対策を要望していく考えを示した。県議会で、成尾政美県議(自民)の質問に答えた。
 空港会社は3日、騒音範囲を示した「予測騒音コンター」を公表。これに関し、堂本知事は「平行滑走路北側で現行の騒音区域の範囲を超えることが明らかになった」と指摘。コンターの内容を精査した上で「必要な騒音対策について国、空港会社、関係市町村と早急に協議をしたい」と表明した。
 騒音対策については石渡哲彦総合企画部長が「民家防音工事などの助成対象区域を定めた騒音防止法の区域を超えることが明らか。対策が後追いとならないよう、国や空港会社が騒音区域の見直しを早急に検討し、防音工事など必要な対策を実施するよう求めたい」と述べた。

 【本紙の解説】
 堂本知事は、県議会で地権者との交渉に何度も訪れるべきではないかとの質問に「段取りも重要で、回数よりも必要な時に行くことが大事。最も効果のある形で協力がいただけるよう行動する覚悟と決意だ」などと述べ、失笑を買ったと伝えられている。これは、今年の7月11日に東峰を堂本知事が訪問したことに、国交省関係者から「今さら出てこられても。それならもっと前から出てくればいいのに」と文句が出て、航空業界関係者からは「何もしないのに、羽田の国際化に横やりを入れてもらいたくない」と言われたことにかんする、堂本知事への批判的質問であった。
 堂本知事は、国交省と空港会社とともに住民たたき出しの先兵になると言い放ったのである。騒音下で住民をたたき出す法律は騒音対策特別措置法(騒特法)である。それは、特別防止地区の移転補償と防止地区の防音工事を行うという形での買収攻撃である。しかし、防止地区になった瞬間、土地の時価は一挙に下がる。騒音下に組み込まれて、いかほどの騒音対策費が出ようが住民にとって経済的にも利益はないのだ。それ以上に騒音により身体も精神も蝕まれていくのである。北延伸を絶対に許してはならない。

(10月6日) 管制塔元被告 管制塔賠償請求に1億円一括返還(10/7朝日千葉版)

 成田空港の建設反対を掲げた過激派が、開港直前の78年3月に管制塔を襲撃し、最高裁で元活動家らに約5千万円の支払いを命じる判決が確定した民事訴訟で、利息を含めた全額の約1億円を元被告側が一括して11月に支払うことが6日、分かった。
 判決は確定したが、元被告からの支払いはなかった。このため、損害賠償を求めた国と新東京国際空港公団(現成田国際空港会社)は債権の時効を中断させるため、元被告の元活動家ら16人に給与差し押さえなどの手続きをとっていた。
 関係者によると、今年7月中旬から支援活動が始まり、現在までに約8千万円が集まったという。このほか、元被告個人の持ち出し分や支援団体などからのカンパも含め、約1億円の支払いのめどがたったという。

 【本紙の解説】
 脱落派はすでに崩壊し、権力の空港建設の先兵になっているが、その支援党派も国家権力の1億円損害賠償の強制執行攻撃に全面的に屈服し、反権力の砦=三里塚闘争に泥を塗っている。78年3月の開港阻止闘争が正しいとの立場に立つならば、国への賠償金支払いなど拒否以外にありえない。相手は国なのだ。なぜ敵権力に“謝罪”するのか? あの開港阻止闘争で権力に殺された仲間に、党派としてどう顔向けするのか? 「苦渋の選択」などとはあまりに見苦しい責任逃れだ。恥ずべき屈服と言う他はない。
 1億円賠償請求の強制執行はすさまじい攻撃である。しかしそれを管制塔闘争の当人たちが全額支払うという選択はありえない。「給与の4分の1と賞与その他の差し押さえ」という攻撃に対しても、法的な面でも反撃する手段はあったはずだ。その過程での元被告へのカンパ支援闘争を組織するという方法もあっただろう。
 当初、脱落派各党派は、元被告に対する損害賠償攻撃に対して、「親の財産は相続はするな、財産は形成するな」等の方針を出していたと聞く。給与差し押さえ攻撃に対しても、その精神を貫けば、闘うすべはいくらでもあるではないか。
 1億円を集めることを闘争と言っているが、権力に屈服した運動は闘争とは呼べない。

(10月9日) 10・9全国総決起集会

 全国集会は雨の中、ぬかるみの中で1200人を結集し開催された。ぬかるみの畑全面にビニールをはり、その上にゴザを敷き、座れるようにしたたため、遅れて開催となった。
 集会は、北延伸計画決定後の最初の全国集会であり、北延伸粉砕、新誘導路建設阻止の決意を打ち固め、戦闘的にかちとられた。詳しくは本紙参照。

集会プログラムスローガン特別声明集会宣言をPDFファイルで添付。

(10月11日) 成田空港で不審物騒ぎ 第2ターミナル(10/12朝日千葉版)

 成田空港で11日午前11時20分ごろ、「第2ターミナル1階北側の女子トイレ内に不審なバッグがある」と、巡回していた警備員から、成田空港署に通報があった。
 同署によると、鍵のかかったトイレ個室のベビーベッドの上に、不審なバッグが置いてあったため、県警空港警備隊の爆発物処理班が出動した。バッグの中身は衣類などだった。現場は一時、騒然となったと言う。

 【本紙の解説】
 中身が衣類などの忘れ物は、成田空港でも、交通機関の駅などや乗り物の中でも日常茶飯事である。数量も数知れない。成田空港での落とし物、忘れ物は多い。単なる落とし物か、爆発物の可能性もある不審物かと判断する違いは警戒心にある。成田空港への爆破攻撃が現実化し、その観点から警備を見直しているため、警戒心が高まっている。そのために、落とし物を不審物と判断したのである。成田空港はいま、日本でもっとも警戒が必要な、ゲリラのターゲットなのである。

(10月13日) ハイジャック検査後、ロビーへ逆行禁止(10/14朝日千葉版)

 成田空港の出国審査場で、指名手配容疑者らが通路進行方向を逆に通って空港外に出る事案が相次いだのを受け、成田国際空港会社(NAA)は13日、ハイジャック検査をいったん受けた旅客は原則、出発ロビーに戻ることができない方針を公表した。同日、成田空港で開かれた航空会社の会議で、NAAが新しい規則を説明した。
 旅客は出国ロビーからハイジャック検査場に入り、手荷物検査を受けた後、入管が管轄する審査場で旅券を提示し、搭乗する。審査前に出発客が忘れ物などでロビーに戻る場合、これまでは検査場の検査員に搭乗券を示し、戻ることができた。
 ところが今夏以降、審査場で指名手配されていることが判明した容疑者や、出国審査をすませた旅客がハイジャック検査場の出口から通路進行を逆に通り、空港外に出る事案が相次いだ。
 20日以降、適用される指針では、旅客は原則、逆戻りができなくなる。検査場から逆行して出発ロビーに向かう場合、検査場の検査員が旅客の進行をいったん止めた上、戻る理由を尋ねる。

 【本紙の解説】
 警備の不祥事が続いていたが、この方針を公表した13日の前の日も同じ事件がおきた。
「12日午前8時半ごろ、成田市の成田国際空港第2旅客ターミナルビルで、出国審査場を反対側からすり抜けてきた男を、空港職員が発見。男は入国ビザを持っておらず、県警空港警備隊員が入管法違反(不法上陸)容疑で現行犯逮捕した」(10/13毎日新聞)
 ゲリラへの警戒心は高まっているが、その体制はずさんそのものである。成田空港での不法入国は簡単だとの情報が国際的に流れていて、このような事案が相次ぐのである。このような情報に基づいて、成田空港を次のゲリラ戦闘のターゲットにしているのであろう。

(10月13日) 羽田空港滑走路、3本のうち1本を短期集中工事で閉鎖(10/13読売夕刊)

 羽田空港に新滑走路を建設する再拡張事業を巡り、国土交通省は13日、現在3本ある滑走路のうち1本を全面閉鎖して誘導路などを建設する集中工事を開始した。
 作業は1日24時間休みなく続け、2カ月後の今年12月に完了する。
 空港施設工事は定期便の離着陸が減る夜間作業が一般的だが、2009年の4本目の滑走路完成まで、工期に余裕がなく、国交省では異例の“突貫工事”に踏み切った。
 集中工事では、新滑走路と並行する予定のB滑走路(2500メートル)に着陸した飛行機が、素早く滑走路外に退避するための「高速誘導路」などを新設。南北に2本並行するA、C滑走路とほぼ垂直に交わるB滑走路は、主に強い南風時に使用しており、国交省では、集中工事にあたって南風が弱まる時期を選んだ。
 しかし、B滑走路が終日使用できなくなるため、悪天候時には、日本航空などの一部の航空機が羽田に着陸できなくなるケースも出る。また、B滑走路近くに格納庫がある海上保安庁は、緊急出動ですぐに離陸できないなどの不便もある。
 この日は、午前7時までに滑走路端には、誤着陸防止のために大きな白地の「×」印が付けられ、クイ打ち機などを運び込んで一斉に作業を開始した。施設工事は12月以降も続けられ、高速誘導路の使用開始は来年7月ごろになるという。

 【本紙の解説】
 この工事はB滑走路とA滑走路をつなぐ誘導路の新設工事である。新滑走路のD滑走路が完成するまでに終わらなければならない工事らしい。通常の夜間工事を行うと、A滑走路の運用時間は、6時から23時までになっており、クレーン車の移動などがあり、実質上の工事は5時間前後と言われている。24時間の終日の突貫工事で2カ月かかる工事は、通常の夜間工事では1年から2年かかる。
 成田空港の暫定滑走路の天神峰トンネルも夜間工事はなかったが、約2年間かかっている。24時間の工事をすれば半分の1年間ですんでいたのかもしれない。しかし、24時間の突貫工事の1年間分を夜間工事だけに置き換えたら、その5倍以上掛かるのである。この計算だと、暫定滑走路の北延伸の51号トンネル化は5年以上の工期を必要とする工事になる。だから、空港会社も難工事と言っていたのである。その工事を含む北延伸を4年ですませようなどという計画は絵空事である。
 成田の滑走路建設には、10年以上に歳月を要している。A滑走路は67年に着工して暫定開港したのが78年で、11年掛かっている。B滑走路も二期工事を86年秋に開始して、暫定として「完成」したのが02年4月であり、足かけ17年も掛かっている。
 北延伸はA滑走路、暫定滑走路以上に難工事も多い。また、東関道のトンネル化や成田クリーンセンターなどの処理(移転を含む)をどうするのかの道筋も明らかになっていない。10年以上掛かることは明白である。

(10月18日) 成田空港 爆発物検査装置、新型検知装置の導入(10/18産経千葉版、10/19毎日千葉版、10/21読売千葉版)

 成田国際空港で来年6月、預け入れ荷物の検査に精度の高いDES(爆発物検知装置)を導入するのに合わせ、成田国際空港会社は、EDSでも判別困難なケースの場合に用いるETD(拭き取り式爆発物検査装置)の実証実験を進めている。
 モニターに爆発物成分が表示され、1回の検出時間は10〜16秒程度という。
 現在の荷物検査はX線を使ったもので、検査官が搭乗手続き前にしている。不審物を発見した場合、その場で荷物を開けて確認するため時間がかかり、混雑の原因にもなっていた。EDSとETDへの移行で、大幅な短縮が期待できるという。
 同社は第1旅客ターミナルビルにETD6〜7台を導入する予定。

 【本紙の解説】
 米国において、EDSは2001年9・11以来、ニッチ(すき間)市場の枠から飛び出して巨大に発展している。05年1月に、米国国土安全保障省が管轄する運輸保安局(TSA)はそれを加速させている。TSAは米国内の9社を指定し開発資金を供与した。GEなどは100万ドル以上の助成を受けている。
 現行のEDSは、エックス線CTスキャンシステムで荷物を検査し、爆発物を探すシステムだ。しかし、この方法は誤作動が多く、時間もかかり欠陥が多い。
 次世代の爆弾検知器開発は、「物体に向けて中性子を発射して、発生したガンマ線を分析する」方法とのこと。この推進計画に「マンハッタン2」というコード名をつけた。「マンハッタン計画」は原子爆弾の開発計画であった。「原子爆弾が原子核の中性子による核分裂連鎖反応を利用した爆弾」であることにちなんで命名されたのである。
 今回、成田に導入されるEDSは旧来型である。
 ETDは「マンハッタン2計画」とまったく別なシステムである。「拭き取り式爆発検査システム」と呼ばれ、手荷物の表面を特殊繊維の布で拭き取り、手荷物についている爆発成分をナノ(10億分の1)グラム単位でも十数秒間で検出する方法である。日本の日立製作所が製造した。
 これから世界各国で米国の現行EDS、次期開発機「マンハッタン2」と日本の拭き取り型ETDの優劣を競うことになる。成田でのETDの導入は最初の市場競争なのである。
 いずれにせよ世界中の空港がゲリラ戦の最大のターゲットになっていることは間違いない。その対策までがビジネスのネタになるというのは、資本主義の末期症状というべきか。

(10月20日) 成田空港 航空機事故で総合訓練 (10/21毎日、産経、東京各千葉版、千葉日報)

 成田国際空港で20日、航空機事故を想定した消火救難総合訓練が行われ、脱出シューターによる訓練などを通じて、あってはならない本番に備えた。
 訓練には県、成田市、国土交通省成田空港事務所、成田空港会社(NAA)など67関係機関から総勢1100人が参加。A滑走路に着陸した全日空1020便(乗客乗員100人)ボーイング777型機が誘導路A−4近くで第1エンジンが爆発炎上し機体に延焼、多数の負傷者が発生したことを想定して行われた。訓練参加者がふんした軽症者らの乗客は、両手を前に突き出し上体を起こした姿勢で脱出シューターを滑り降りた。また、隣のドアからは救助隊が機内に入り、けがが重い乗客らを抱えて救出した。
 このほか、消火訓練、陸上自衛隊や千葉市消防局、県警ヘリコプターによる重症者の搬送などにも取り組んだ。
 昨年度の訓練は63機関、1066人で行われたが、24回目の今年度は四街道市消防本部、印西地区消防組合消防本部、NAA関連企業2社が新たに加わった。

 【本紙の解説】
 昨年の04年は、1月19日「テロ訓練」、6月25日「侵入事件想定した訓練」、6月29日「夜間航空機事故を想定した訓練」、9月9日放射性物質テロを想定した合同訓練、10月21日航空機事故に備えて初の夜間総合訓練――と5回もの訓練を行った。
 それに比べると、今年の本格的訓練は、5月12日の成田空港B滑走路で事故訓練(05年5月12日付日誌参照)以来である。3月1日に、非常用管制塔での訓練を合計しても3度目である。非常用管制塔設備の訓練は6日間行われたが、実際は訓練というより非常用管制塔の使用方法の習得であった。
 昨年はゲリラ戦闘のターゲットに成田空港がなったことで急遽さまざまな訓練が行われたが、そのために、空港と航空機は危ないということが一般化したので、訓練を少なくしたのであろう。実際に一般会社でも経営陣の複数の海外出張は便を変えたり、日航機を外したりしている。
 火災訓練で実効性あるのは、トリアージ訓練と言われている。トリアージ(Triage)は、治療(Treatment)、搬送(Transport)とともに、災害時医療で最も重要な3つの要素(3T)の一つであり、傷病者を傷病の緊急性・重症度に応じ、次の4区分に分類し、トリアージタグをつけることである。第1は最優先治療群(赤色)、直ちに処置を行えば救命が可能な者、第2は非緊急治療群(黄色)、多少治療の時間が遅れても生命には危険がない者、第3は軽処置群(緑色)、軽易な傷病で、ほとんど専門医の治療を必要としない者、第4は不処置群(黒色)、既に死亡している者または直ちに処置を行っても明らかに救命が不可能な者――と4群に分け、タグをつけることである。
 事故、火災、ゲリラ戦闘のいずれかは分からないが、このような事態が迫っていることだけは事実のようだ。

(10月21日) 不法入国阻止 抜け道に金網 成田空港職員通路(10/21読売千葉版)
 東京入管成田空港支局は20日、成田空港出国審査場わきの航空会社職員専用通路のドア(高さ約2メートル、幅約1・5メートル)の上に、不法入国者の侵入を防止する金網を設置した。
 審査場は同空港の2つの旅客ターミナルビルに、それぞれある。空港内には、出入国審査を受けなければ旅客は出入りできない「制限エリア」があるが、許可を得た空港内従業員は専用通路から出入りができる。
 このうちエリア外に出る通路には暗証番号で開閉する自動ドアがあるが、今年9月、出国手続きをすませたベトナム人の男性がドアによじ登り、天井との約50センチのすき間をすり抜けて空港外に出るトラブルが発生した。同支局は「すき間が不法入国者の抜け道になる懸念がある」として、今回の措置を取った。一方、成田国際空港会社は20日、旅客が制限エリアから不用意に出ないようにするため、出国審査前の「保安検査場」を逆戻りさせないよう、各航空会社に文書で徹底を呼びかけた。

 【本紙の解説】
 成田空港の「厳戒態勢」とは裏腹に、拘束者の逃亡や不正規な侵入者が跡を絶たないのは理由がある。警備を基本的にアウトソーシングしているからである。警察や警備会社に依存し、機械や装置に頼っているからである。空港会社の職員は基本的に危険を感じていない。それはまだ、本格的にゲリラ戦闘が起きていないからである。ことが起こった後では遅いのだが、警備とはそんなものである。経験の裏打ちがない限り、真の警備体制はつくれない。ゆえに警備は常に敗北する。

(10月20日) 日航 成田−バリ島直行便を運休(10/21千葉日報)

 日本航空は20日、同時爆弾テロの影響でインドネシア・バリ島への旅客が急減したため、成田空港とバリ島・デンパサール空港を週7往復ノンストップで結んでいた路線を、来月11日から12月21日まで運休すると発表した。週7往復の関西−デンパサール線は週3往復に減便する。
 日航によると、10月から12月までの間、既に1万3000人の予約取り消しがあった。本年度は旅客半減を見込む。
 成田発の直行使の運休により、これまで成田−ジャカルタを結んでいた路線を成田−ジャカルタ−デンパサール−成田と3地点を結ぶ路線に変更する。

 【本紙の解説】
 航空機運輸産業が戦争やゲリラ、自然災害や感染症に弱いことを端的に示した事態である。
 航空需要の予測はバブル崩壊以降に一貫して右肩上がりである。IATAの国際航空需要予測はここ数年は毎年約5パーセント、アジア圏は約7パーセントの上昇が続くとしている。国交省の予測も12年まで国内線が毎年約3パーセント増、日本発着の国際線が毎年約5パーセント増となっており、成田空港の発着機の増加を12年まで毎年約5パーセント増としている。
 しかし、航空需要の伸びをここ十数年間支えていた第一は観光旅行である。それも格安航空会社と格安チケットの出現によっている。日本でも国内旅行よりも安いということでここ数年アジア近隣諸国、ハワイ、グアムなどの需要が増大している。しかし、格安航空会社の出現で航空会社がかなり倒産している。01年の9・11以降、倒産が軒並み起こっている。ナショナルフラッグのスイス航空、カナダ航空、ベルギーのサベナ航空なども国家的支援があっても倒産を余儀なくされた。米国では今年、上位7社のうち4社が倒産の憂き目にあっている。2位ユナイテッド航空(2002年12月から連邦破産法保護下)、3位デルタ航空(NWと同日、連邦破産法適用申請)、4位ノースウエスト航空(デルタと同日、連邦破産法適用申請)、7位USエアウエイズ航空(昨年2度目の破産法適用申請)である。
 大手7社のうち4社が会社更生手続きの保護下に入るという異常事態である。その結果は航空会社の寡占化が進み、独占化した路線の格安チケットは消滅する。その結果、観光旅行は半減すると言われている。つまり、航空需要が概算で4分の1減少するという予測が米国経済界にはある。それ以上にイラク侵略戦争の拡大も確実であり、鳥インフルエンザの再流行も不気味に進行している。航空需要が激減し、羽田4本目の滑走路も成田の暫定の2500メートル化も必要なくなりそうなのだ。

(10月21日) 航空管制また障害 外部の電波影響か(10/22全紙)

 21日午前11時20分ごろ、国土交通省が民間機の管制用に使っている東京都と千葉県内の無線施設5ヵ所に障害が生じた。3ヵ所は、まったく使えなくなったが、いずれも約30分後に復旧し、周辺上空にいた29機に影響はなかった。国交省は、外部からの強い電波が影響したとみて調べている。
 障害が起きたのは、羽田空港と伊豆諸島の八丈島、千葉県館山市にある距離測定装置と、伊豆諸島の大島、新島にある距離方位測定装置。
 いずれも航空機と電波をやりとりし、装置と機体との距離や方位を操縦席に示すシステム。
 復旧後に調べたところ装置には異常がなく、国交省は外部から強い電波を受信し、システムがダウンしたとみている。
 羽田空港では17日、米軍横須賀基地の艦船から発信されたとみられる電波で、無線装置に障害が生じて滑走路が一時、使用できなくなるトラブルがあった。21日の国交省の照会に対し、在日米軍は「調査中」、防衛庁は「干渉する電波を使っていない」と回答した。

 【本紙の解説】
 航空無線は、VHF帯エアーバンドは118〜136MHz。UHF帯エアーバンドは250〜380MHzを使うことが義務付けられている。この周波数帯とダブるのは、在日米軍無線の137〜163・2MHz帯だけである。航空無線でVHF帯は着陸などの地上との無線交信、計器着陸などに使うバンドである。
 したがって、混信の原因が米海軍横須賀基地の艦隊から違法電波が出ていることにあるのは確実なのである。米軍は「調査中」などと言い逃れをしているが、在日米軍司令官のブルース・ライト中将が「影響を真剣に受け止め、原因を調査し、結果は日本側にも提示する」とまで言っているのだから間違いない。17日と21日と二度の違法電波を発信した理由は何であろうか。それはイラク侵略戦争の訓練と密接な関係があるのではないかと思われる。
 イラク侵略戦争を軍事技術の観点からみると、Net Centric Warfare(NCW)と言われる無線技術の利用が顕著であることである。91年の湾岸戦争は兵站技術が決定的に戦局を左右すると言われ、兵站技術の飛躍的改善が行われた。これはその後、単行本になり(W・Gパゴニス著『山・動く』)日本でも評判になった。その兵站を支えたのが、貨物にタグを付けインターネットで追跡する方法である。貨物追跡システムといい、運輸業界ではいまでは常識となって、全世界で導入されている。
 それと比べ、イラク侵略戦争は無線通信の利用が戦局を左右すると言われている。宇宙無線まで含む無線技術が軍事的に使われている。GPSを使った位置確定、米イリジウム・サテライト社の衛星電話を使った交信から始まって、イラク人民の抵抗闘争の基本手段の手製爆弾、「即席爆発装置」(IED)の防御対策も無線で行っている。
 「ゲリラに特効薬的な解決策はない」と敗北感を募らせているが、これを何とか無線で防ぐ方法を考えているのである。「離れた場所からIEDに送信される起爆信号」を遮断する無線装置で爆発を未然に防ぐ方法である。「信号を爆弾に届かなくし、爆発は起きない」方法である。妨害無線である。また米軍の攻撃戦闘もターゲット情報キャッチからその伝達、攻撃とすべてにわたって無線交信とコンピュータで行っている。
 エピソードに「軽装甲車両に乗った1人の海兵隊員は、車両内部にいる隊員とヘッドセットを使って車内通話装置で連絡を取り合う。分隊長から無線連絡があると、ヘルセットを脱いで携帯無線機を手に会話する。近くにいる海兵隊の一団と連絡するときは、別の無線機に持ち替える。そして、海軍特殊部隊員との連絡には、さらに別の無線機が必要になる。こうして機器を取っ替え引っ替えする間も、友軍と敵の位置を示す2台のノートパソコンに目を配っていなければならない」とある。
 横須賀にいる艦隊も妨害無線の実験でも行ったのであろう。17日の羽田空港の離着陸は午前7時ごろから午前11時47分まで距離情報提供装置に異常が起こり、計170便に最大1時間半の遅れが出た。米軍はイラク侵略戦争のために軍事訓練を日本の民間航空に実害があるかどうかで行ったのであろう。妨害無線が17日と21日と二度もある。単なる間違いや事故は二度も続かないものである。

(10月27日) 成田空港の工事現場で作業員倒れる 6人軽症(10/27読売、日経、産経各夕刊)

 27日午前零時ごろ、成田空港の工事現場で、夜間工事中の男性作業員5人が倒れ、救急車で運ばれた。5人は一酸化炭素中毒だったが、いずれも意識があり軽症。また、同じ現場で働いていた別の男性作業員1人も気分が悪くなり、病院で診察を受けた。
 成田国際空港会社は「現場に設置されていた溶接用発電機の換気が十分でなかった可能性が高い」としている。同社によると、トラブルが起こったのは同空港第2旅客ターミナルビル3階の工事現場で、飲食店が入居するための改修工事を行っているところだった。

 【本紙の解説】
 事故があった27日に、空港会社は「平行滑走路北伸整備に伴う環境影響調査(計画書)」の概要を発表した。事故は一酸化中毒であり、重症だと人命も奪いかねない。軽症に終わったらしいが、北延伸工事の「環境調査書」の発表の日であり、その行く末を暗示しているかのような事故である。
 計画書の公表日は11月1日。これについての意見書の提出期限は11月1日から11月30日となっている。この調査は本来、環境アセスメント法に基づくものでない。環境アセスメント法は高速道路、ダム、鉄道、空港、発電所など13項目の公共事業に適用される。北延伸も空港建設の計画変更であり、当然、この法の適用を受けなければならない事業だ。
 黒野社長も事実上北延伸が決定した7月15日、北側国交相との会談後の記者会見で「環境アセスメントの実施などを経て、完成には6年程度かかる見通し」と述べていた。
 しかし、北延伸が最終決定した8月5日に、環境アセスメント法の対象外の自主的な「環境影響予測・評価」を1年実施し、「環境とりまとめ」として公開すると変更したのである。理由は、完成期限を2011年としていたのを羽田再拡張完成の2009年に合わせるためであった。
 騒対協もこれに反発して環境アセスメント法に基づく「環境影響調査」を要求している。この日、発表されたのは、工事を急ぐためのアリバイ的「影響調査」である。そのために、マスコミにも相手にされず、新聞掲載もなかったのである。
 第2旅客ターミナルビルの工事事故も、何らかの都合で急いでいた結果なのであろう。

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