SANRIZUKA 日誌 HP版   2002/04/01〜30    

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 2002年4月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 


(4月1日) 羽田の深夜・早朝国際チャーター便/増枠したのに意外と不人気(4/2朝日)

 1日から発着枠週2便から70便に大幅に増えた羽田空港の深夜・早朝の国際線チャーター便が不人気だ。国土交通省によると、この先2カ月間の申し込みは、用意した発着枠に対して約2割。旅行会社が「ツアーを組むには時間帯が悪い」と冷めているほか、18日に成田空港に新滑走路がオープンすることから、航空会社も「成田シフト」をとったことが響いた。東京都などは「羽田国際化への布石」と期待していたが、肩すかしの離陸となった。
 「羽田は成田より都心から近く、国際線を飛ばして欲しいという旅行者の潜在需要は十分ある」との判断もあった。ところが、同省によると、1日から6月1日までの期間で運航が決まったのは、発着合計で約120便。平均で1日2便と、用意した枠の約2割にとどまっている。日韓共催のサッカー・ワールドカップ(W杯)の期間中にあたる6月分も受け付けを始めたが、申請は約20便しかないという。
 大手旅行会社の担当者は、不人気の一番の原因に「時間帯」をあげる。都心にいくら近くても、深夜や早朝の集合・解散にはまだ抵抗が強いという。
 また、チャーター便のほとんどは、集客を宿泊施設込みのパックツアーに頼っているが、長引く不況や米国の9・11同時多発ゲリラの影響で海外旅行にかげりがでている現状では売りにくいという。W杯期間中はパックツアーを組みやすく売りやすいが、宿泊施設や観戦チケットの予約が取れず、断念せざるを得ないという。
 発着枠の拡充が、成田の新滑走路の供用開始と時期的に重なってしまった間の悪さもある。羽田のチャーター便申請が4〜5月で計18便の日本航空は、4月から成田−韓国間の定期便を大幅に増やす。このため、供給過剰を心配して、「羽田を抑え気味にした」という。

 【本紙の解説】
 羽田深夜・早朝チャーター便の不人気は国交省などの思惑がはずれた格好だ。各航空会社がスロット確保の思惑で成田シフトをとったことが原因のひとつである。各航空会社が航空機を配分しなかったことである。しかし、チャーター便は航空会社が計画し旅行会社に売り出すより、むしろ、旅行会社が計画し航空会社に臨時便を要求する方が多い。旅行会社が海外ツアーの企画を抑えていることが羽田臨時便が少ないことの最大原因である。原因は9・11以降の海外旅行の落ち込みが一貫して続いていることである。
 成田の暫定滑走路の供用開始で韓国、中国、台北への便が2倍近くになるが、それを埋めるだけの航空需要はない。

(4月2日) 暫定路コース 初の実機体験/16カ所で環境基準こえる騒音値(全紙の千葉版)

 新東京国際空港公団は2日、中型ジェット機を暫定滑走路の飛行コースで飛ばし、25カ所(空港外は22カ所)の騒音値を実測した。16カ所(同13カ所)で環境基準(70デシベル)をこえる最大騒音値を計測したと公表した。
 実機飛行は、午前10時半にスタートし、ボーイング767、エアバス320が現行滑走路から離陸して、暫定滑走路飛行コースを飛んだ。離着陸はしないで暫定滑走路の上空150メートルを南から北に通過した。これにあわせて成田市内、芝山町内など25カ所で騒音値を実測。
 暫定滑走路の供用開始で町面積の65%が騒音区域になる芝山町では、町職員や町議らが4カ所で実測。コース直下の菱田辺田地区で同79デシベル、大里加茂地区で同78デシベルを計測した。
 成田市も、当初計画の平行滑走路(2500メートル)建設計画地にあたり暫定路南端先400メートルに位置する東峰地区など市内9カ所で実測。東峰の農家宅上空をボーイングが低空飛行した際は96・7デシベルを計測した。

 【本紙の解説】
 中型機にもかかわらず、ジャンボ機並みの騒音である。公団の騒音測定とは別に成田市、芝山町、下総町なども独自に測定を行った。測定値は合計で約40カ所になったが、その多くが大半で環境基準の70デシベルをこえる騒音値になった。北側に800メートルずれたが、使用航空機が中型機なので、「騒音地区が本来の範囲より小さくなると予想」という公団のこれまでの説明がペテンとウソであることが全面的に明らかになった。
 公団はこの間、実機による騒音テストをやること自体を拒否してきた。下総町などの要求で実施せざるを得なくなった。その結果、公団のペテンが明らかになった。
 滑走路上空は高度150メートルまでしか航空機は降下していない。にもかかわらず、96・7デシベルという「ガード下」なみの爆音が測定された。実際に離着陸する時はこれ以上の騒音になる。公団はこの爆音で住民をたたき出そうとしているのである。
 同日、反対同盟は、北原事務局長、萩原事務局次長、市東孝雄さん、郡司一治さんらと現地支援中心で35人が集まり、集会デモを行った。(詳しくは本紙参照)

(4月4日) 成田空港 ゲリラ対策を強化(4/5読売、東京、産経各千葉版、千葉日報)

 成田空港の暫定滑走路が18日に供用開始されるまで、残すところ2週間。県警警備部や空港公団は、反対派のゲリラ事件に対する警戒を強めている。4日には、空港内や周辺の3か所で警備状況が報道陣に公開された。成田空港では1978年、排水管に潜んでいた過激派が管制塔を襲撃し、開港が2カ月延期される苦い歴史があるだけに、警備部などでは「二度と同じ失敗を繰り返すわけにいかない」と気を引き締めていた。
 空港南側の空港敷地内では、空港公団がコンクリート製の排水管の開口部に鉄製の格子を取り付けた。過激派が空港の外側から排水管に潜り込み、管の中を通って敷地内に侵入しても、開口部から出られないようにするためで、公団職員らは排水管の壁にボルトを打ち込んで、格子をしっかりと固定していた。
 また、警備部は警察犬2頭を使って、4000メートル滑走路北側の荒れ地で、金属弾などの発射装置が設置されていないか調べたほか、JR空港第2ビル駅では、爆発物が持ち込まれていないか警戒にあたった。同部によると、成田空港では開港以来、空港に向けて金属弾などが打ち込まれる事件が17件起きているという。

 【本紙の解説】
 78年開港は闘争の結果として開港が遅れたが、暫定滑走路はそれ以上に運用上、計画通り使えるかどうかをわからない代物である。
 「進入表面」から突き出た立ち木があること。2カ所も「への字」に曲がって信号機がついた誘導路は、航空機の離着陸時には、滑走路側にせり出す部分を通過できない。
 それ以上に問題になっていることは、今年の2月25日(同日付日誌参照)にA滑走路と暫定滑走路の同時離着陸のテストを行ったが、安全運航のため、2本の滑走路からの同時離陸は不可能になったことである。2〜3分の間隔が必要になった。関係者は「暫定滑走路が誘導路の渋滞で運用が計画通り進まないと、A本滑走路の運用も遅らせざるを得なくなりそうだ」と心配している。
 暫定滑走路の運用開始が成田空港の機能をストップさせかねないということである。

(4月4日) W杯会場上空は飛行禁止/半径3キロ テロ対策で日韓合意(4/5毎日)

 サッカーワールドカップ(W杯)の安全対策を協議する日韓定期協議が4日、ソウルで開かれ、テロやフーリガン対策について話し合った。両国は、小型飛行機によるテロを防止するため、競技場上空の飛行を禁止することで合意した。日本で警備のために飛行禁止措置をとるのは初めてという。
 警察庁などによると、競技開始2時間前〜終了1時間後の間、競技場を中心に半径3キロ以内、高さ約750メートル以下の飛行を禁止する。周辺空域を自衛隊機などがレーダー監視し、不審機の侵入に備える。

 【本紙の解説】
 「自衛隊が不審機の侵入に備える」となっているが、侵入機があった場合にはその航空機を撃墜するということである。航空機の侵入禁止は自動車の侵入禁止とは違い、侵入を実際に阻止することはできない。侵入した場合に航空無線で警告を発し、無視されば即刻撃墜となる。また警告とその反応を待てない場合も多い。侵入即撃墜ということになる。
 ワールドカップ期間中は「戦争」体制になるということである。入管体制、治安体制などすべてが疑似有事体制となる。

(4月4日) 横田基地 米軍、作物被害認め補償(4/5東京)

 昨年9・11以降、在日米軍横田基地が夜間警戒のため設置した投光器の光で畑の農作物が異常生育していた問題で、米軍側が作物への被害を認め、日本政府が農家に補償金約200万円を立て替え払いしていたことが4日、わかった。
 防衛施設庁によると、補償金が支払われたのは、基地に隣接する東京都武蔵村山市の2軒の農家。昨年9月中旬以降、投光器の光がホウレンソウやブロッコリー畑に一晩中当たり、作物に花が咲くなどの異常がでて出荷できない状態になった。
 被害の報告を受けた同庁が昨年11月、都中央農業改良普及センターや同市と調査を開始。その結果、同センターが「異常生育は投光器の照射が原因と思われる」との見解を示し、同庁もこれを認めて被害額を約200万円と算定した。

 【本紙の解説】
 成田でも夜間、進入灯などが灯火され、作物への影響が心配されている。横田の例は「警戒のため設置した投光器」となっているが、成田も航空機着陸のための進入灯だけでなく、警備のための照明や投光器は数多い。
 暫定滑走路の騒音とともに、進入灯、警備のための投光器などの作物などの影響を監視していく。空港が人の生活に影響があるのと同じように作物や、鶏などの動物にも甚大な被害がでることが予想されるのである。

(4月4日) 芝山鉄道・芝山千代田駅/工事の安全願い起工式(4/5千葉日報)

 今年10月に開通する芝山鉄道(出山隆社長)の芝山千代田駅前広場の建設工事起工式が4日、同所で神事にのっとり行われ、工事の安全を祈願した。8月に完成予定。
 広場面積は約3700平方メートル。ロータリーにバス・タクシー・一般車両の乗降場や待機場の接車レーンと通過レーン、バリアフリー歩道を整備して、中央部に埴輪(はにわ)像のモニュメントと時計塔を設置する。総工費は約1億2900万円。
 芝山鉄道は、成田空港開港前の1977年9月に、町が国に敷設の要望書を提出してから四半世紀にわたる待望の鉄道。81年に第三セクター芝山鉄道株式会社が発足して反対派用地を迂回するルート設定などでようやく開通のめどがついた。東成田駅と芝山千代田駅を結ぶ約2キロだが、町では町中心部までの延伸を国や県に求めている。

 【本紙の解説】
 10月開通となっているが、大赤字覚悟の営業開始である。公表された試算でも「開業16年目で単年度黒字、28年目で累積黒字」となっている。つまり、開業して15年間は完全赤字という計算である。それも、1日の利用客数が5400人あったとしての計算である。現在の東成田駅の利用客は1日2000人で、そのほとんどが空港勤務者である。暫定滑走路が供用開始されても、整備地区での従業員はリストラその他で増えないという。そのため、1日の利用客は実際には3000人を切ると予想されている。永久の大赤字鉄道になる。

(4月5日) 大都市圏での空港整備促進/次期5カ年計画を諮問(4/6日経、千葉日報)

 扇千景国土交通相は5日、2003年度からはじまる次期空港整備5カ年計画のあり方を交通政策審議会に諮問した。羽田空港の再拡張に必要な事業費の負担を東京都を含む地元自治体にも求めるため、空港整備法を改正するなど大都市圏の空港整備の促進策などが焦点となる。
 この日はじまった同審議会の航空分科会(会長・杉山武彦一橋大教授)では、空港整備、航空保安システム整備を審議する2部会を設置した。03年度予算概算要求に合わせて中間とりまとめを行い、12月の予算編成までに最終答申をまとめる。
 空港整備部会は(1)新東京(成田)、関西、中部の三国際空港の滑走路の管理と整備は一体化、運営はそれぞれ民営化する上下分離方式、(2)地方空港の航空需要予測の再検証と需要に合わせた空港整備の方策などを検討。
 航空保安システム部会は、ニアミス再発防止策などの安全対策や昨年の9・11米中枢同時ゲリラを受けた危機管理のあり方を議論する。
 地方空港は、02年度予算編成過程で打ち出した新規事業の抑制方針を盛り込み、原則として継続事業に限定する。

 【本紙の解説】
 発表された第8次空港整備計画の内容を交通政策審議会に諮問したのだが、審議会での航空関係の最大テーマは空港の整備問題ではなく、民営化問題となっている。さらに警備、危機管理ということだが、実際は戦時における空港の軍事利用とそのための空港の警備、防衛問題が中心テーマにあがっている。
 米帝のアフガニスタン侵略戦争からはじまった戦争の時代への突入の中で、あらためて空港の軍事利用が問題になっているのである。戦争の勝敗を決める一大要素として兵士と物資の交通手段の確保がある。現代戦争ではその大半が航空機によって行われている。空港の確保とその軍事利用が決定的課題になっている。

(4月6日) 飛行中の故障で引き返し・目的地変更/異常運航昨年238件(4/6朝日夕刊)

 日本発着の定期航空便が飛行中、エンジン不調や計器故障などで出発空港に引き返したり目的地を変更したりした「異常運航」が、昨年1年間に238件発生したことが、国土交通省の統計でわかった。国交省は、航空会社の定時運航性や整備力、機体の安全性の指標の一つとしている。
 国交省によると、鳥の衝突や悪天候、急病人による引き返しなどは除外されている。海外の空港から日本への便が海外の空港に引き返すなどしたケースは、日本企業の件数には含まれるが、外国航空会社の場合は除かれている。
 発生件数の上位10社を、便数に対する発生率でみると、ジャルウェイズが1056便に1回と最も高い。次いで中日本エアラインサービスで、1206便に1回。日航など国内大手3社は、約5000〜6500便に1回の割合だった。
 原因は、計器や空調など機材関係の不具合が8割、エンジンの不具合は1割弱だった。空港が安全対策のため滑走路を閉鎖するなど他機の運航に影響を与えた航空会社については、国交省航空局が年度末の安全性確認検査の中で注意したという。
 航空局によると、比較的軽いトラブルでも念のため引き返すなどした例もあり、異常運航が多くても直ちに危険とは言えないが、航空会社の信頼性の目安にはなるとしている。

 【本紙の解説】
 日航など国内航空会社の異常運航は、約5000〜6500便に1回の割合と計算されているが、航空機事故は発生した場合の死亡率は極めて高い。外国航空会社は異常運航の率が高いので、成田では年間13万5000回の発着回数の内約50回ほど異常運航がある。大事故につながらないのが不思議なのである。航空機の開発は軍事利用としての研究が中心である。すべての民間機が軍用機で開発した技術の応用である。航空会社は一国の軍事力の決定的要素である。航空会社と航空機メーカーの競争の応援に政府が全力をあげるのもそのためである。
 航空機の運航は軍事利用を前提にしている。そのため、安全な運航という点では実際の使用に耐えるものになっていないのである。

(4月9日) 神社の木伐採で空港公団を提訴(4/10全紙の千葉版)

 新東京国際空港公団が昨年6月、成田空港予定地内にある東峰神社の立ち木を伐採したのは、違法だとして9日、成田市東峰地区の住民7人が空港公団を相手に、1400万円の損害賠償を求める訴訟を千葉地裁に起こした。
 訴状などによると、神社の敷地約154平方メートルは実質的に集落の農家6戸と1法人が所有しているが、登記上は便宜的に所有者1人を記載。空港公団は2000年末、実体的権利のないこの登記簿上の所有者から土地を買い、移転登記手続きを行った。公団は移転登記後、ただちに暫定滑走路に着陸する航空機の妨げになるとして昨年6月16日にスギやヒノキ、サクラなど立ち木25本などを伐採した。
 原告は、神社敷地は地区住民が共有していることの確認、立ち木を復元し植え直すことなどを公団に求めている。

  【本紙の解説】
 公団は立ち木の伐採の悪行を「土地は公団が取得した。民法上、立ち木と土地は一体化しており問題はない」と理由付けをおこなっている。これは二重に間違っている。「立ち木と土地は一体化」としているが、民法上もかならずしもそうではない。氏子が奉納した立ち木は御神木であり、神社のものになる。これは土地の所有関係にかかわらず神社のものである。
 それ以上に「土地は公団が取得した」としているが、これは不可能なことである。東峰神社を建立した1953年に寺田増之助氏が土地を東峰地区に贈与した。その結果、東峰神社の土地は部落の共同の所有である「総有」になったのである。日本では部落の共同墓地、神社、寄合所などは、基本的に「総有」である。この所有形態は、土地の近代的所有形態が確立する以前の所有形態であり、近代の登記に適さず、登記になじまない所有形態である。そのため、登記がなくとも第三者に対抗できると解されている。(2000年8月24日付の「うんちく講座」参照)
 つまり、公団が移転登記したとしても、それは無効なのである。無効な移転登記を根拠に立ち木の所有を主張し、伐採したことは違法なのである。この裁判は成田空港建設の違法性を暴く裁判になる。公団は空港建設のために、何の法的根拠もないのに部落の財産たる立ち木を盗伐した。この事実が、神社の土地所有権を争うことで明らかになるだろう。

(4月10日) 成田暫定滑走路近くの農家向け、防音休憩所設置へ(4/11読売)

 18日の成田空港の暫定滑走路供用開始を控え、新東京国際空港公団は、ガード下並みの騒音が見込まれる千葉県成田市東峰地区の空港反対派農家宅などの前に、防音設備を施したプレハブ仮設休憩施設4棟を設置する方針を固め、10日までに同地区に提案した。
 同公団などによると、設置場所は反対派農家3戸と漬物工場1棟の前の公団用地計4か所。プレハブは平屋建て広さ約17平方メートルで、二重サッシなどの防音設備が施され、内部には冷暖房設備やテーブル、イスなどが用意される予定だ。
 同公団は、用地交渉が難航していた同地区を避け、当初計画(2500メートル)の滑走路距離を短縮し、北に800メートルずらして暫定滑走路を建設した。空港そのものに反対する農家は、家屋の防音工事を希望しておらず、供用開始後はガード下並みの騒音が予想される。
 今後、ジャンボ機が就航可能な2500メートル滑走路の実現を目指す公団は、「今後も(用地交渉の)話し合いを続けるが、プレハブ設置で少しでも騒音を軽減できれば。休憩時間に使ってほしい」と説明、供用開始までに設置したい考えだ。これに対し、反対派農家などは「騒音直下で話し合えというのは頭を殴られながら話をするようなもの」と反発している。

 【本紙の解説】
 防音休憩所の設置とはふざけきった所業である。こんな「休息所」を使う人は誰もいない。「あなたをこれから殴るので、痛かったらこれを使いなさい」と消炎湿布剤を渡すようなものだ。殴るのをやめればいいのである。
 公団はこの防音休息所を誰も使わないことは百も承知している。それなのになぜ建てるのか。頭上40メートルに航空機を飛ばし100デシベルを超えるような騒音を引き起こすことで、公団に対する社会的批判が巻き起こることは確実だ。それを見越して、批判から逃れようという実にこすっからい考えなのである。

(4月11日) 成田着陸料の19パーセント値下げ要求(4/12読売)

 世界の航空会社で組織する国際航空運送協会(IATA)は11日、新東京国際空港(成田空港)を管理・運営する新東京国際空港公団に対し、2本目の滑走路の運用をはじめる18日から国際線着陸料を19パーセント値下げするよう要求した。だが、空港公団は現行料金を継続する方針で、世界一高いとされる着陸料に航空会社の不満が高まりそうだ。
 航空業界は2本目の滑走路の運用開始により、離着陸回数が現在の1・5倍の年間20万回に増えるとして、航空機重量1トンあたり2400円の現行料金の1950円までの引き下げを要求している。

 【本紙の解説】
 IATAの値下げ要求は当然である。成田の着陸料は異常に高い。国内航空会社も外国との競争に勝てないので値下げ要求を前から出している。しかし、国交省と公団に理由があるらしい。それは、IATAがいうように、暫定滑走路が供用開始しても、「離着陸回数が現在の1・5倍の年間20万回」に増えないことである。暫定滑走路は年間発着回数6万5000回となっているが、現実は3万5000回程度であり、そのうち、着陸料の安い小型ジェット機が約1万回である。また、国際線も距離が伸びないので中国、台北、韓国がほとんどであり、完全に供給過剰になっている。運航便が継続できないことが確実なのである。そのため、IATAがいうように、暫定滑走路の供用開始は成田空港の経営効率を良くするものではない。むしろ赤字にする公算が高いのである。
 また、国交省は成田、中部、関空を3空港を上下分離案で統合し、それぞれ上ものを民営化する計画を立てている。つまり、成田のいままでの黒字分で関空の赤字分を埋めるという腹づもりだ。IATAや国内航空会社の要求はとうてい飲めるものではない。それどころか公団は昨年10月18日、IATAに航空機重量1トンあたり2400円の現行水準を2600円に引き上げたいとする値上げ要求を出しているのである(同日日誌参照)。

(4月11日) 成田空港/爆発物探知犬4匹デビュー(4/12千葉日報)

 東京税関は11日、サッカーのワールドカップ(W杯)を控え、テロリストやフーリガン対策として導入した爆発物探知犬4匹を初公開した。同日午前、成田空港でデビューし、W杯終了までの間、入国手荷物のチェック業務に当たる。
 同税関は米中枢同時テロなどを機に、日本の税関で初めて爆発物探知犬の導入を決め、火薬や爆薬のにおいをかぎ分けられるように訓練を続けていた。
 犬は7〜9歳のシェパードやラブラドルレトリバーで、麻薬探知犬として実績を積んだベテランぞろい。
 空港近くの訓練所で行われたデモンストレーションでは、慣れないカメラの放列に顔を背けるなど緊張気味だったが、火薬のにおいを染み込ませた布入りのスーツケースがベルトコンベヤーで運ばれてくると、すかさず反応し「おすわり」の姿勢をとっていた。

 【本紙の解説】
 サッカーワールドカップにおいては、成田空港をはじめとして日本全土が韓国とも共同で厳戒態勢に入る。韓国ではワールドカップ会場では地対空ミサイルを設置し、航空機からの攻撃やゲリラに対応することになった。日本でも航空自衛隊がAWACS(早期空中警戒機)と戦闘機を上空で待機させ、迎撃・撃墜体制に入る。サッカー場周辺は完全に戦争状態となる。治安体制、入管体制も戦時体制さながらの様相となる。日韓共同で朝鮮半島の有事に向けての事実上の予行演習である。

(4月12日) 成田空港/新鮮な千葉県農産物を販売(4/12千葉日報)

 成田空港周辺地域をはじめ、県内産の新鮮な農産品を販売する「ちばマルシェ 空の駅」が16日、成田空港第2旅客ターミナルビル1階到着ロビーにオープンする。
 “千葉ブランド”の農産品を成田空港を利用する全国の人に知ってもらおうとの堂本知事の発案で実現するもので、合わせて千葉県の情報発信コーナーともなる。同ロビー1階だけでなく、2階通路ロビーでもワゴン販売を予定。オープン当日は午前11時から1階販売所でオープニングイベントを開催、知事や周辺市町村長も出席して「空の駅」の門出を祝う。

 【本紙の解説】
 堂本千葉県知事は、三里塚闘争の歴史的経過をまったく理解していないが、国際空港に関する見識もないようだ。「旅行者が空港でコメを買ってくれるわけがない」とはある町長の声。「地元産だからといって特定の野菜ばかり持ち込まれても困る」(同=4/11産経千葉版特集「38年目の成田空港」から)
 国際空港でその空港の地元の農作物を売っている例は諸外国にもよくある。別に悪いことではない。それ自身がおそらく採算がとれているのであろう。しかし、堂本知事はこれが国際空港の発展のためだとか、国内線の充実になるとかいうのだ。これは的外れもいいところである。千葉の野菜やコメを購入するためにわざわざ航空機に乗って内外からやってくる人はいない。国際空港の発展にはまったく関係がないのである。
 では、千葉県特産品の販売促進にはなるか? そうでもなさそうだ。商取引を空港の物産店ではやらない。「ちばマルシェ 空の駅」はあくまで旅行者を対象にしたショップである。やはり大半の人が予測しているように、大赤字が確実な出店である。これを千葉県の補助で出すという。これは知事の個人的趣味であり、税金の無駄遣いとしか理解できない。公団、各自治体、県職員もあきれ顔である。まるで裸の王様だ。

(4月14日) 反対同盟4・14全国総決起集会
 4・14三里塚全国集会は天神峰・市東さん方の畑で開催された。集会参加者は1550人。反対同盟は集会で、4月17日に開港式典粉砕、記念飛行阻止闘争を午前10時、天神峰・市東孝雄さん方集合、4月18日は1番機飛行阻止闘争を午前7時東峰十字路北側開拓道路集合、開港粉砕現地闘争を午後1時東峰十字路北側開拓道路集合で闘いぬく方針を明らかにした。(詳細は本紙記事参照)
 以下は闘争プログラムと集会宣言

<プログラム>
暫定滑走路開港阻止、有事法制粉砕4・14全国総決起集会
三里塚芝山連合空港反対同盟
開会:2002年4月14日(日)正午  (於)成田市天神峰

■司会挨拶    木内 秀次さん  宮本 麻子さん
■開会宣言    伊藤 信晴さん
■基調報告    北原 鉱治さん
■特別報告    動労千葉
■反対同盟決意表明
敷地内の決意       萩原 進さん  市東 孝雄さん
菱田廃村化阻止の決意   鈴木 幸司さん
婦人行動隊あいさつ    木内 敦子さん
■三里塚裁判闘争報告   反対同盟顧問弁護団
■カンパアピール    鈴木 加代子さん
■決意表明
住民団体 関西新空港反対住民、北富士、沖縄、反戦被爆者の会、部落解放同盟全国連合会、都革新・長谷川英憲さん、婦民全国協、「障害者」、山谷
反戦共同行動委員会、三里塚・木の根全国共闘、二期阻止全国共闘
共闘団体 野戦病院、中核派、解放派、戦旗派、蜂起派
■ 集会宣言、閉会宣言、デモコース説明    鈴木 謙太郎さん
 *デモコースは小見川県道→東峰神社左折→青行団結の家右折→小見川県道→団結街道→現闘本部先まで約3.5キロ

 <集会宣言>
 本集会は4・18暫定滑走路開港に対して実力闘争を宣言する。反対同盟は開港による農家追い出し攻撃を粉砕する。延長を阻止し、平行滑走路を最終的に破綻させる決意である。
 開港は農家の命と生活を踏みにじる権力犯罪である。民家上空40メートルでジェット機を飛ばし、50メートル先の誘導路からジェットブラスト(ジェット噴射)を民家に直撃させる空港が世界のどこにあるというのか。生活を脅かして移転を迫るなどは言語道断である。
 反対同盟は一切の「話し合い」を拒否する。開港のために強行した東峰神社立木伐採の暴挙に対して、東峰部落が原状回復を求める裁判を起こした。生活と権利、社会的正義は守られなければならない。
 暫定滑走路は欠陥滑走路である。切り縮めたためジャンボは使えない。誘導路が滑走路に向かって「へ」の字に曲がっている。本来の着陸帯には巨大な穴があるために、着陸帯は国際基準の半分になった。誘導路の3分の2が管制塔から見ることができない。南側進入表面を突き出す立木がある。これらの欠陥は農民を敵視してきたことの結果である。暫定滑走路は重大な欠陥を固定したまま永遠に完成しない。
 シャロン政権によるパレスチナ人民虐殺を徹底弾劾し、パレスチナ人民の闘いを全面的に支持する。三里塚は反戦・反核―反権力の砦であり、有事立法と鋭く対決する闘争拠点である。本集会をもって小泉内閣の有事立法―改憲攻撃粉砕の闘いに総決起しよう。「労農連帯」の旗を高々と掲げ、戦後最大の資本攻勢をうち破ろう。反対同盟は闘いの先頭に立つ決意である。
 4・18開港日に、反対同盟は開港粉砕の現地総行動に決起する。早朝7時、滑走路まで50メートルに迫る開拓組合道路に結集しよう。一番機飛行阻止デモと現地闘争(午後1時開拓道路)への大結集を訴える。
 2002年4月14日  三里塚芝山連合空港反対同盟

(4月14日) 成田、滑走路を北側に320メートル再延長計画(4/15産経、読売夕刊、4/16読売千葉版)

 成田空港暫定滑走路が反対派の未買収用地に阻まれ、当初計画より320メートル短い問題で、国土交通省航空局の複数の元幹部らが、滑走路を北側に「再延長」し、計画通りの2500メートル滑走路を建設する案を地元に打診していたことが14日、明らかになった。
 成田空港は現在、4000メートル滑走路1本で供用されており、1978年の開港から24年を経て18日、2本目の平行滑走路が供用される。この平行滑走路は、用地買収が進まなかったため、計画を北側に「800メートル延長」することで完成。それでも「2180メートル」と当初計画より短かったため、アジア向けに限定して航空機が利用するという「暫定」の措置だ。
 国土交通省や新東京国際空港公団は「成田空港の機能を発揮するには、当初計画通りの滑走路が必要」として、計画通りの2500メートル滑走路の早期完成に向け、反対派と交渉しているが、メドはたっていない。
 今回明らかになったのは、完成した2180メートルの暫定平行滑走路をさらに北側に320メートル程度延長し、当初計画通りの2500メートル滑走路を建設しようという案。
 関係者によると、これまで複数の国土交通省元幹部や、新東京国際空港公団の幹部が成田空港の地元や、反対派に「反対運動が続くようなら反対派の土地を使わずに再延長して2500メートル滑走路を建設せざるを得ない」などと通告。北側への「再延長計画」を明らかにしたという。
 国交省元幹部は、国土交通省の意向を受けて発言しているとみられ、反対派への揺さぶりという側面もありそうだ。
 北側再延長により、滑走路が国道51号を越えるため、大規模な工事が必要になるほか、航空保安施設用地が「東関東自動車道路」にかかるなど、建設コストは高くなるが、「早期完成のためにやむをえない」との判断もありそうだ。

 【本紙の解説】
 この公団の暫定滑走路の北側再延長計画は、14日の全国集会で萩原進事務局次長が暴露したもの。国土交通省大臣官房審議官・伊藤鎮樹が今年1月、東峰地区の住民にだした手紙に、その「計画」のことが書かれていた。
 この北側再延長計画は、実は国交省と公団自身がすでに検討済みで「不可能」との結論をだしていたものだ。そもそも実現不可能な計画で机上の空論なのである。東峰地区の人々も、この問題は国交省と公団の農民切り崩しのための悪辣な脅しだと断定している。
 この計画を机上の空論に終わらせた最大の問題は、連絡誘導路が確保できないことである。現行の連絡誘導路の誘導路本体の幅は基準の23メートルあるが、全体幅は基準より7・5メートルも狭い93・5メートルしかない(基準は101メートル)。これはジャンボ機が通過できない幅だ(このことは15日の毎日新聞が詳しく記事にしている)。仮に滑走路を北側に延長しても、ジャンボ機が滑走路に入れないのである。では、暫定滑走路脇にまったく別のターミナルビルを造れるか? そんな用地はどこにもない。すると航空機の整備も点検も給油もできない。つまり空港として成り立たない。「北側延長計画」は荒唐無稽な脅しのための作り話である。
 国交省と公団は、滑走路の東側にあらたに連絡誘導路を造ることも検討したようだが、これも不可能と結論がでている。そもそも用地が確保できない。東峰部落の開拓組合道路などが阻んでいるためだ。しかも、誘導路が滑走路延長上を横切るという、ありえない設計となる。もちろんそんな例はない。航空機の進入の安全を妨げるからである。また、例の信号機を設置して解決できるような問題でもない。
 またこれは空論だが、仮に安全性や用地問題を無視して東側誘導路を夢想しても、絶対的に片側通行分しか造れない。現行の連絡誘導路も片側通行(しかも大型機不可)で、航空機が交互に滑走路に侵入、しかも滑走路を横切るというのでは大混乱は必至だ。
 もしこんな計画が実現可能なら、暫定滑走路をわざわざ2180メートルなどという論外の短さにする理由はなかった。最初から北側に800メートルずらすのではなく、1100メートルずらせばよかったのだ。検討を重ねたあげくにそうしなかった理由は、そもそも不可能だったからである。
 現実不可能な「再延長計画」をもちだす意図は何か? ただ一点、農民を脅すことである。「反対運動を続けるのなら、ジャンボ機が飛べる滑走路に延長して生活できなくしてやるぞ」ということだ。これは旧運輸省、国交省・公団の成田空港建設における農民対策の根本精神なのだ。「軒先工事」のやり方、地上げ屋の発想である。「工事を始めれば農民は屈服し、出ていくだろう」という考えだ。人を人と思わぬ、絶対に許すことのできない考えである。
 この手紙は今年1月に東峰地区に届いた。明らかな脅しである。99年12月の暫定滑走路着工当初、公団は「工事を始めれば東峰地区は進入コース直下になる」「ガード下並みの騒音で生活は不可能。必ず出ていく」と確信していた。
 しかし、その確信は見事に崩壊した。暫定滑走路が暫定滑走路にとどまり、2500メートルの当初計画は無惨な失敗に終わったのだ。それで国交省官房審議官・伊藤鎮樹があらたな脅迫行為にでたのが、この北側再延長計画なる情報操作なのである。
 この問題は、暫定滑走路の建設があくまで農民たたき出しのためのプロジェクトであることを証明した。彼らは失敗にこりず、また再び脅しを始めたのだ。
 国土交通省の小幡政人事務次官は翌日の15日の定例記者会見で、北側再延長計画は「現段階で考えられる話ではない」と否定している。しかし、官房審議官の伊藤鎮樹が脅迫の手紙を書いた責任をどうとるのか、国交省は明らかにする義務がある。

(4月15日) 誘導路の一部で航空法基準外 国交省、特例で認可(4/15毎日)

 成田空港は18日、暫定平行滑走路が供用開始される。滑走路とターミナル地区をつなぐ「取り付け誘導路」の一部が、未買収地に挟まれ航空法の基準より狭いことがあらたにわかり、滑走路が短いだけでなく、誘導路でも主流機のボーイング747機(ジャンボ)の運航はできないままでのスタートとなる。国土交通省は誘導路の走行を中型機以下について、「安全が担保された」として例外的に認可した。
 誘導路は長さ400メートル。半径60メートルのカーブで、ゆるやかな坂となっており、離着陸機が自走する。
 航空法施行規則は、誘導路本体は幅23メートル以上、側帯(作業車両用道路と緑地)はフェンス(高さ10メートル)などとの間を片側39メートル以上とり、合計で101メートル以上と定めている。
 新東京国際空港公団によると、誘導路の中央カーブ付近20メートルは本体幅23メートルは確保したものの側帯の幅は東33メートル、西37・5メートルで、全体幅は93・5メートルと基準より7・5メートル狭くなった。東外には空港反対派農家15人の共有地400平方メートルにプレハブ出荷場が建つ。西外は開拓農家組合所有の農道が直角にのびる。いずれも買収のめどは立っていない。
 公団はジャンボ機について「翼先端とフェンス間が15メートル以下に狭まり、安全を担保できない」と判断し、誘導路の走行を禁止。中型機以下に制限した。さらに、フェンスに照明16基を設置したり、誘導路中央線を反射塗料で描き、夜間や視界不良時に航空機から確認しやすくするなどの安全対策をとった。

 【本紙の解説】
 暫定滑走路の欠陥は、多くある。滑走路が2180メートルという短さ。着陸帯幅の国際基準は150メートルだが、90メートルしかない。連絡誘導路が片側通行のため、信号待ちがある。滑走路わきの誘導路も滑走路に近づく形で「逆くの字」にまがり、着陸機のあるときは信号機の赤色点灯でストップになる。さらに、誘導路全体の3分の2が管制塔から死角になる。南側進入表面を突き出す立木がある、等々。
 今回、明らかになった連絡誘導路の幅も国際基準に達していない。しかも「連絡」なので、本来なら両側通行でなければ航空機が空港内を移動するのに安全は確保できない。それが片側通行で、しかも国際基準に達していない。
 暫定滑走路とは、欠陥空港という表現を超えた危険空港なのだ。事故の発生は避けられそうもない。

(4月15日) 金海国際空港/滑走路が短い「危険な空港」(4/16毎日など)

 15日、中国国際航空機が死者126人の事故を起こした釜山の金海(キメ)国際空港は、滑走路の短さや山が空港近くに迫る地形などから、航空会社の機長が「悪条件下で絶対着陸したくない」と口をそろえる空港だ。
 韓国の主要国際空港としては、昨年3月に開港した仁川国際空港をはじめ、ソウルの金浦空港と済州島の済州国際空港が、国際民間航空機関(ICAO)の基準を満たした空港だ。しかし金海空港は、ICAOの基準では国際空港の基準を満たさないため、米連邦航空局(FAA)の基準で運営されている。
 入院中の呉新禄機長(30)から事故当時の状況を聴いた。呉機長は金海空港での離着陸を4、5回経験しているが、同空港付近の旋回飛行は初めてだったことを明らかにした。これまでのところ、事故機は悪天候による視界不良の中で旋回地点を誤り、山に衝突したとみられており、慣れない旋回飛行が事故につながったとの見方が強まった。

 【本紙の解説】
 金海空港は3200メートルと2743メートルの2本の滑走路をもつ韓国空軍と民間の共用空港である。計器着陸装置も装備している。事故当日は気象条件が悪く、空港周辺は深い霧で覆われており、視界は約3キロしかなかった。「滑走路が短い危険な空港」となっているが、3000メートル級を2本もっている。航空機もボーイング767機であり、中型機である。
 今回の事故を成田暫定滑走路に当てはめると戦慄が走る。暫定滑走路を使う主要な航空機はボーイング767機クラスの中型機である。暫定の滑走路距離は「短く危険」な金海空港にもさらに及ばず、きわめて短い。成田は山こそ付近にないが、霧の名所である。特に秋から冬には、太平洋の暖流の暖かい空気と内陸性の冷たい気候がぶつかりあって霧の発生する日が多い。天神峰とか東峰の「峰」で温度の違う気候がぶつかりあうのだ。
 春の「赤風(あかっかぜ)」も成田名物だ。視界距離が2〜3キロになってしまい、航空機の着陸を度々妨害している。また、天神峰周辺の冬の冷え込みは千葉県にしてはかなりのものがある。天神峰の平均気温は東北の仙台とほぼ同じだ。冬場は暫定滑走路が凍結することも多くなるだろう。そうした気候条件に加えて2180メートルという極端に短いのが暫定滑走路なのだ。ここにボーイング767機や777機が離着陸すること自体が、機長に強烈プレッシャーを与える。危険きわまりない滑走路である。
 国交省は、航空機を飛ばす現実を示せば反対派農民をたたき出せると踏んでいた。しかし、それは失敗に終わった。その結果、開港と同時に欠陥空港、危険空港の責任を改めて追及されている。その批判を回避するために、「北側再延長」なる架空の計画で反対農民を脅しにかかっている始末なのだ。

(4月16日) 羽田再拡張、3工法を検討 最安で5300億円の工費(4/17朝日、読売、毎日)

 羽田空港再拡張事業工法評価選定会議(座長=椎名武雄・日本IBM最高顧問)は16日、多摩川河口付近に建設予定の4本目の滑走路の工法について各業界団体から意見を聞き、3種類の工法が候補にあがった。
 (1)鉄製の箱(メガフロート)を並べて係留する浮体工法、(2)従来型の埋め立て工法、(3)基礎くいの上に床板を並べる桟橋工法の3つ。埋め立て工法の場合は多摩川の流れを妨げないよう、桟橋工法を一部併用する。
 各団体が示した建設費は、浮体工法が最も安い5300億円ながら、維持費は597億円と最も高かった。工期は3工法とも2年半程度だ。最終的には、国土交通相が工法を決定する。
 3月下旬の初会合で「早期着工、早期完成」を強調した扇千景国交相は今月上旬、民放の番組で「いちばん早いのはメガフロート」と、浮体工法採用に前向きな発言をしている。

 【本紙の解説】
 最低5年以上かかると見ていた建設期間が2年半程度になりそうである。また、通常2年9カ月かかる環境アセスメントの期限を1年程度に短縮することを国交省と東京都が検討している。そうすると、4年後の完成も不可能でなくなってきた。羽田の新滑走路が完成し、それが国内線需要で満杯になるまで、空いている発着枠を国際線定期便に回すことが千葉県と国交省との間でも確認されている。そうすると、最短で2006年春には羽田の昼間に国際定期便の運航も実現しそうだ。成田の地盤沈下は確実だが、とりわけ暫定滑走路はまったく使い物にならなくなりそうだ。

(4月17日) 物々しい警備の中、祝賀式典 成田空港(4/17夕刊、4/18全紙)

 2本目の滑走路の供用開始を翌日に控えた17日午前、成田空港では5500人を動員した物々しい警備体制下、数々の記念イベントが開かれた。
 午前11時からの記念式典で、扇千景国土交通相は、「ここに至る道のりは平坦ではなかった。日本のゲートウエーにふさわしい空港へと飛躍していかなければならない」と述べた。これに先だって開かれた「女性パイロットによる小型飛行式典」に出席した堂本暁子千葉県知事は「やっと、やっとでございます。暫定平行滑走路がオープンします」と終始笑顔だった。
 正午すぎ、「離陸1番機」となる鹿児島へのチャーター便が離陸した。同機の木川裕機長は「最初のフライトで光栄です」。だが、「私は成田市出身。騒音の下で2カ月間暮らした。反対している人々の気持ちはわかる。早く円満に解決してほしい」とも話した。
 この朝、千葉県警の成田空港警備本部は、通常の2000人態勢を5500人態勢に増強し、滑走路と周辺施設、管制塔などを重点的に警備した。12日に時限発火装置によるゲリラ事件があった京成電鉄やJR東日本の成田空港駅にも多くの警察官が配備された。
 午後0時10分すぎ、新滑走路の南端から約400メートルの千葉県成田市東峰地区に暮らす島村昭治さん(55)宅にごう音がとどろいた。離陸1番機のエンジン音だ。成田市の騒音測定では、91デシベルだった。島村さんは自宅の作業小屋の屋根にあがり、機影をじっとみつめた。その騒音について、家族は「みなさんが感じた通りです」と話した。「国は、おれたちの気持ちを何もわからずにやってきた。おれは絶対に土地を売らない。日本にこんなところがあってもいいじゃないか」とも。
 18日からは、電車のガード下並みの騒音がほぼ丸1日続く。
 三里塚・芝山空港反対同盟は朝6時半から、約50人が作業を開始。飛行機から見える場所に、21枚のパネルを組み合わせた「Down with Narita Airport 成田空港絶対反対!」と書かれた幅20メートル以上の看板を設置した。

 【本紙の解説】
 この日、反対同盟は横23メートルの大看板の設置作業と、1番機の抗議闘争を天神峰の市東さん方で行った。強風の中での看板設置も成功した。この看板で成田空港絶対反対運動の存在を全世界に発信することになる。国交省と公団は空港絶対反対の三里塚闘争の存在を無視して、暫定滑走路はすぐに延長され3300メートルになると全世界に宣伝してきた。各国航空会社は延長されることを前提にスロット(発着枠)確保のために赤字覚悟で運航便を設定している。
 世界で航空用地の確保で難航している例は過去に、ドイツのフランクフルト空港拡張反対運動があったが、それもすでに終結しており、あまりない。そのために、空港反対運動の結果として、平行滑走路が2180メートルの暫定になり、今後も延長阻止を課題として闘いぬいていることが知られていない。この反対同盟の大看板は三里塚闘争を全世界にアピールするものとなるであろう。
 この日は南風の強風といっても南西の風であった。そのために南側に離陸した航空機は風の抵抗を求めてか、西側に偏りながら離陸し、滑走路から150メートル西側に離れている市東さんの家の方向へ向かってくるようであった。また、市東さんへの家と畑に航空機が誘導路を自走するときの排気ガスの臭気が激しく臭う。畑の作物への影響が心配である。

(4月17日) 風でエンジンこする けが人はなし 成田空港で全日空機(4/18各紙の千葉版)

 17日午後4時15分ごろ、成田空港に着陸したロンドン発の全日空202便(ボーイング747−400型)の右主翼エンジン2基の下部にこすれたような傷があるのが見つかった。全日空によると、傷は長さ約4メートル、幅約1メートル。着陸の際、風を受けて機体が揺れ、エンジンが滑走路をこすったらしい。乗員・乗客計215人が乗っていたが、けが人はなかった。
 同空港では午後0時半に最大瞬間風速が秒速21・6メートルを記録。同機が到着した午後4時すぎも秒速11メートルの強い南西風が吹いていた。この風の影響で、同空港では午後6時までに計16便が羽田空港や関西空港に目的地を変更した。

 【本紙の解説】
 4月17日も強い風で、午後から「赤っかぜ」になり視界不良ではあった。しかし、離陸不可能までの視界不良ではなかった。目的地を変更した理由は、南西風となっているが、西風に近い西南西の風だったことにある。本来なら「横風滑走路」を使うべき風向きであった。横風滑走路がないので、羽田や関空に着陸地を変更したのだ。やはり成田は不完全な暫定空港である。

(4月18日) 暫定平行滑走路/供用開始(4/18夕刊、4/19全紙)

 成田空港2本目の滑走路となる暫定平行滑走路は18日朝、通常ダイヤの本格供用をスタートした。午前7時半すぎ、バンコクからのタイ国際航空便が着陸したのを皮切りに1日96便の離着陸が最大5分に1回のペースで続いた。
 暫定路は、南側の未買収地を避けて建設したため、南端先約400メートルの空港反対派農家3戸の頭上約40メートルを航空機が飛ぶことになった。午前9時すぎまでに中型機7機が着陸し、農家では最高102デシベルという「ガード下並み」の騒音を記録した。
 空港周辺では、厳重な警備の中、朝から反対派による抗議のデモ活動が続いた。上空約40メートルを1番機が通過すると、周囲に音がとどろき、反対派から「滑走路の使用を許すな」などと声があがっていた。
 着陸機から降りた乗客は「記念の飛行機に乗れてうれしいが、着陸時、『空港反対』の横断幕をもった人が見え驚いた」と話していた。

 【本紙の解説】
 反対同盟による騒音調査の18日の結果は以下の通りである。
 18日の南側飛行回数は33回で、着陸は9回、離陸24回であった。報道では18日の発着回数は96回となっていので、離陸と着陸が同じ回数ならば、北側着陸39回、北側離陸24回となる計算だ。
○東峰の島村さん宅付近の18日の騒音
・騒音レベル
 南側からの着陸騒音
  最大値 101デシベル
  平均値 95デシベル
 南側への離陸騒音
  最大値 98デシベル
  平均値 89デシベル
・うるささ指数(Wecpnl)の換算で85・5になる。
○市東さん方の付近の騒音
 南側からの着陸騒音
  最大値80デシベル
  平均値75デシベル
 南側への離陸
  最大値98デシベル
  平均値86デシベル
誘導路騒音
  最大値84デシベル
  平均値75デシベル
・うるささ指数(Wecpnl)の換算で84・3になる。
 ※なお、騒音は風向き、気候などで変化するので、1日だけの測定では不正確である。これはあくまで速報値と理解してもらいたい。。
 いずれにしろ、すさまじい騒音である。島村さん方付近での最高値101デシベルもすごいが、かならずしも飛行コース直下ではない市東さん方付近でも直下と同じレベルの騒音であった。とりわけ、南側への離陸では島村さん方付近と最大値で同じになっている。それに加えて、市東さん方付近では、北側へ離陸するときの発信音、北側からの着陸にときの逆噴射音もかさなり、騒音回数はすさまじいものになる。18日の96回の離発着の回数すべてが大騒音になった。また誘導路騒音もそれに加わる。とりわけ、北側離陸のときに滑走路に入るときの自走音と、信号停止から再発進の発進音はすさまじものがある。
さらに、市東さん方で航空機が自走するときの排気ガスの臭気がたまらない。風向きにもよるが、東風だともろに市東さんの家と畑を襲うことになる。反対同盟はこの騒音と排気ガスとの闘争をあらたに取り組むことを検討している。
 (反対同盟の闘争報告は本紙参照)

(4月19日) GWの旅客便予約、国内線は前年上回る

 航空各社は19日、ゴールデンウイーク(4月27日―5月6日)の旅客便の予約状況を発表した。国際線の出国のピークは4月27日と5月3日、入国は5月5、6日。国内線の下りのピークは4月27日と5月3日、上りは5、6日となっている。国内線の予約客は前年を上回った。
 国際線の予約客は昨年9・11の反米ゲリラの影響が残り、前年を下回った。成田空港の暫定滑走路が使用開始となったため、中国方面は日本航空が21・5パーセント、全日空が35パーセント増加した。国際線の予約客数は26万4784人で、前年比8・4パーセント減。米国方面は各社とも2割ほど前年を下回り、韓国方面も昨年を下回った。国内線の予約客は昨年より1パーセント多い270万9419人。沖縄方面で全日空が11・6パーセント、日航も7・9パーセント、前年を上回った。一方、大阪入国管理局によると、4月27日から5月6日までの関西国際空港の予想出入国者数は27万6500人。昨年より6万4200人の大幅減で、4年前の水準まで落ち込む見込み。

 【本紙の解説】
 国際線旅行客が正月に前年比で6パーセント減ぐらいまで持ち直して、空港公団などは暫定滑走路供給前にかすかな光明を見ていたが、ゴールデンウイークを前にして「全体で前年比8・4パーセント減。米国方面は2割減」となり、航空需要の落ち込みは回復しそうもない。前年比8・4パーセントまでに持ち込んだのは、成田暫定滑走路の中国便の増便と、ツアー代金の激安による。日航と全日空が中国への旅行客を2〜3割増やしているが、中国への便数と搭乗可能者数が2倍近くになっているにもかかわらず、実需が2〜3割の増加ではたかがしれている。むしろ搭乗率では、ゴールデンウイークにもかかわらず、暫定開港前より下がっているのではないか。
 また、関空の激減ぶりはすさまじい。前年比で19パーセントの落ち込みである。これでは関空の経営破綻はより深刻になる。二期工事どころではない。

(4月19日) 米航空大手の1〜3月期、6社が赤字(4/20日経、千葉日報)

 米航空大手7社が19日までに発表した1〜3月期決算は全社が前年同期比2ケタの減収、サウスウェスト航空を除く6社が大幅な最終赤字となった。企業業績の低迷や、昨年9・11の後遺症で旅行客が減っているのが原因。赤字の6社は4〜6月期も黒字転換が困難としている。
 7社の最終損益は合計で20億ドル(約2600億円)を超す赤字。大手各社は9・11後に2割前後も便数を削減、人員も減らしてスリム化してきた。企業の出張が減少、ビジネスクラスより格安航空券を使いエコノミークラスで旅行するケースが増え、旅客収入が伸び悩み利益も確保が難しい。米ビジネス旅行協会の調べによると、2001年の大手企業184社の出張支出は29億ドルと前年比16・5パーセント減ったが、この傾向は今年1〜3月期も続いた。

 【本紙の解説】
 米国の景気は底をつき、景気回復過程に入りつつあるとの希望的観測もでているが、航空業界を見ている限り、景気回復はほど遠いとの感が強い。これは企業の出張需要を中心に旅客の減少が続いている上、激しい値引き競争で料金水準が下がったまま止まっていることが主な要因。米国の航空券価格(3月末)は9・11前より約4割下がっている。安全対策や保険のコストが上がったことも響いているとのこと。 3月の有償旅客マイル(お金を払った旅客数に飛行距離をかけた値)は国際線で前年同月比10・8パーセント減、国内線で同8・1パーセント減だった。相次ぐ値下げで割安感がでていても、この数字である。

(4月22日) 千葉県に対するゲリラ戦闘

 4月22日未明、千葉県職員・嶋野栄治宅に火炎攻撃を敢行し、長屋門と車3台を完全に燃焼させた。嶋野は3月末まで、千葉県企画部地域振興課主査として、空港周辺の振興施策の立案を担当し、周辺住民の切り崩し工作を行っていた(革命軍軍報速報より)。 詳しくは本紙および『前進』の報道を参照。

(4月23日) 日本野鳥の会/成田高速鉄道のルート変更求める(4/24読売、毎日の各千葉版、4/26千葉日報)

 日本野鳥の会県支部(志村英雄支部長)は23日、環境省が「絶滅危惧」に分類した鳥類が生息している印旛沼の環境を守るため、同調整池を通過する計画の成田新高速鉄道のルート変更やトンネル化を求める要望書を、堂本暁子知事に送付した。
 同支部の調査では、印旛沼には、絶滅が危惧されている生物の生息状況などをまとめた県のレッドデータブックに載っている鳥類45種が生息し、うち10種は環境省のレッドデータブックにも載っている。同鉄道の建設予定地周辺のアシ原には、同省の分類で「近い将来における野生での絶滅の危険性が高い」とされる絶滅危惧TB類のサンカノゴイ(サギ科)やオオセツカ(ウグイス科)、同U類のチュウヒなどの貴重な鳥が生息している。
 志村支部長は「サンカノゴイは十数つがいおり、これだけの数は日本では印旛沼だけ。鉄道が繁殖地を横切ったり、飛行中の鳥が衝突しないよう配慮してほしい」と検討を求めている。

 【本紙の解説】
 千葉県交通課では鉄道建設の前に行う環境アセスメントの手続きの中で、どういう動植物がいるか把握し、工法・設計を考えて鳥類などを守るようするといっているが、疑わしい。「環境問題で費用を考えると大幅な迂回ルートや地下トンネル化は現実的に難しい」ともいっているが、これが本音である。
 本紙では 「成田新高速鉄道のBルートは、印旛沼を架橋し横断するルートであり、沼の自然破壊が問題になっている。堂本知事を選挙で推薦した環境派とよばれる人たちは、印旛沼の自然破壊につながるこの成田新高速鉄道のBルートに反対しないのか」と再三再四警告してきた(01年5月29日付日誌参照)。
 堂本知事と千葉県はA、B、Cの3ルートのうち、印旛沼の自然破壊がもっとも激しいBルートを費用の点で選択している。その点で印旛沼の自然破壊は折り込んでのことであり、千葉県野鳥の会の意見である「トンネル化」はあらかじめ無視する考えであった。堂本知事の環境問題への姿勢は開発優先だ。その中での「できる限りの環境保全」という、非常にペテン的な「環境派」なのである。

(4月25日) 空港公団定例記者会見(4/26朝日、読売、毎日、東京の千葉版)

 新東京国際空港公団の中村徹総裁は25日、定例会見を行い、18日に成田空港でオープンした暫定滑走路について「多くの人の協力で供用開始できたが、まだまだ課題は山積している。努力を重ねたい」と語った。
 暫定路南端先400メートルの農家3戸や鶏舎、漬物工場、野菜出荷場の頭上を暫定路の離発着機が飛び、80〜100デシベル超の騒音が起きていることについては「(退避用の)防音プレハブを用意した。特効薬にはならないが今できる精いっぱいの対応」とし、理解を求めた。暫定路と空港ターミナル地区をつなぐ「取り付け誘導路」が未買収地に挟まれ狭く、混雑時には飛行機が渋滞する問題については「往来には普通より余計にかかっているようだ。改善すべく担当者と研究を重ねる」と語った。
 同時に公団は、成田空港暫定平行滑走路の供用開始から4日間(18〜21日)の運用状況を発表した。4日間で離着陸できる総枠704便(1日176便)に対し、実際の離着陸は378便(1日平均94回)。利用率は53・7パーセントだった。暫定滑走路を発着した定期便は東南アジア線が22パーセント、中国便が21パーセントなどアジア路線が63パーセントを占めている。
 公団は10月までの平均利用率を63パーセントと見込み「今は航空会社も様子見の状況。航空需要が回復してくれば、今秋のダイヤ改編時には8割程度の利用率は見込める」と話している。
 公団は、成田空港の出国者が4月前半プラス(1〜17日)の出国者数が、前年同期比2パーセント増の52万4900人となり、昨年9・11後、初めて前年比プラスに転じたことも発表した。
 空港公団によると、9・11直後の昨年9月12〜16日の出国者数は、前年比42パーセント減の11万1722人まで激減。日本人旅客の海外旅行を控える動きが加速し、昨年末までは20〜30パーセント減、今年に入ってからも10パーセント減の状態が続いていた。

 【本紙の解説】
 暫定滑走路が供用開始したことでその欠陥性がテレビ、新聞などで暴露されたことと、頭上40メートルの100デシベルを超える騒音を引き起こしていることへの社会的批判が巻き起こっている。そのため、暫定滑走路開港後初めての定例会見で、中村公団総裁には、開港セレモニーで見せた喜びの表情はなかった。むしろ「難題山積み、努力を重ねる」という苦渋の表明となった。
 非人間的な騒音環境を住民に強制した問題で、総裁は「防音プレハブを用意」といって社会的批判をかわそうとしている。絶対に使われることのない防音プレハブ小屋設置の効用は、この責任逃れだけであった。「避難小屋」を造ったのだから、100デシベル超の騒音も許されると公団はいうのだ。
 国交省と公団は今年の2月、暫定滑走路オープン直後の4月末時点の暫定路発着数は利用率57パーセントの見込みと発表していた。しかし実際は53・7パーセントの運用で、見込みを下回った。また定期便の行き先割合は、アジア便が半分程度との予測だったが、63パーセントにまで拡大した。
 公団は4月前半の出国率が前年比で2パーセント増したことで、昨年の9・11から半年が過ぎ、『9・11後遺症』が薄れてきたと分析、暫定滑走路の使用率も02年後半に向けて高まるといいたいようだが、それは当てはまらない。
 4月前半の出国は海外赴任や留学などの固定的出国が多く、旅行など不安定な出国数が少ないのが通例だ。また旅行客にしても、アジア便を中心にダンピング的大安売りのツアーが多く、そこに若者が飛びついて前年比並の2パーセント増となったものであり、航空会社の赤字拡大に貢献しているだけだ。北米線はいまだ20パーセント減のまま回復の兆しもない。
 米国の航空会社もチケット安売りの影響で、搭乗者数はそれほど減っていないが、赤字は膨大な額になっている。日本の現状もこの類である。
 ゴールデンウイークとサッカーワールドカップが終われば、暫定滑走路の利用率が50パーセントを割るのは確実である。

(4月25日) 成田新高速鉄道が始動/建設主体の新会社設立登記(4/26読売千葉版、千葉日報)

 成田新高速鉄道の建設主体となる第三セクター「成田高速鉄道アクセス」(本社・成田市)が25日、千葉地方法務局成田出張所に会社設立登記を申請、受理された。これで、同鉄道建設事業は2005年度着工、10年度開通を目指して本格的に動き出す。
 同鉄道について、国土交通省は、開通時の利用者数を1日3万7400人(うち空港利用者が2万5900人)と予測、第三セクターの収支については、開通26年目で単年度赤字を解消するとの見通しを立てている。総事業費は1286億円で、国が補助率を18パーセントから約33パーセントに引き上げ、424億円を拠出することで、借入金は359億円に抑えた。だが、地方負担分の334億円について、県と周辺市町村の拠出割合が決まらず、今後の協議に委ねられる。

 【本紙の解説】
 成田高速鉄道の道のりは遠い。昨年末には財務省が資金スキームと採算性にクレームをつけ、来年度予算から成田新高速鉄道の調査費1億円を見送ろうとしていた。これを国土交通省が最終調整でようやく予算に盛り込んだ経緯もある。また、成田市は土屋駅を設置しないなら地方負担金を拒否するぞと、国交省および千葉県に対してすごんでいる。地方負担金334億円の割合は半分が千葉県であり、残りの半分の大半が成田市と決まっていた。成田市の負担分は約150億円。総事業費の資金スキームの1割以上が宙に浮いた状態での、異例の新会社設立登記となった。
 さらに、今月の23日には日本野鳥の会千葉県支部が建設ルートの変更か、地下トンネル化の要望書も出されている(4月23日付日誌参照)。
 これでは10年後の完成などあり得ない。また、そのころは首都圏の航空・空港情勢も一変し、成田は廃港か貨物空港ないしは国際空港の補助空港になっている可能性が大である。やはり成田高速鉄道は不必要な鉄道であり、無駄遣い公共投資の典型となることは確実である。

(4月26日) 引き返しJAL機/着陸は暫定滑走路を避ける(4/27読売の社会面、4/27産経、東京の各千葉版)

 26日午前10時50分ごろ、成田空港発中国・大連行き日本航空797便(乗員・乗客172人、ボーイング767型機)から、国土交通省新東京空港事務所に、「速度計のトラブルで成田空港に引き返す」と連絡があった。同機は正午ごろ、無事着陸した。成田空港の暫定滑走路(2180メートル)を飛び立った航空機のトラブルは、今月18日に同滑走路がオープンして以来、初めて。
 同機は26日午前10時半に暫定滑走路を離陸したが、引き返した際には、機長が4000メートル滑走路への着陸を要請し、管制官がこれを認めた。暫定滑走路は距離が短いため、パイロットからは安全面で不安視されており、同事務所は「着陸の場合、機長からの要請を受け入れるので、今後もこうしたケースは出てくるだろう」としている。

 【本紙の解説】
 暫定滑走路はやはり危険である。トラブルがあった場合には使えない滑走路である。滑走路が2本になっても飛行コースが1本であるために、同時離着陸はできない。それは、北側から着陸、北側へ離陸の場合には、通称「成田トンネル」といわれる霞ヶ浦上空で片側一方通行の狭いトンネルを通るからである(01年7月26日付日誌参照)。
 本来、複数の滑走路をもつ空港は、すべての滑走路に進入路と発進路が独立して飛行コースを設定しなくてはならない。成田空港に当てはめればA滑走路、B滑走路のそれぞれに進入、発進で計4本の飛行コースが必要なのである。それが成田トンネルで1本になるのだ。
 そもそも着陸順番待ちは、A滑走路だけでも常に起きていた。滑走路が2本になって、渋滞の待機時間が長くなるだけである。公団の発表やそれを鵜呑みにするマスコミが、暫定路の供用開始で成田の発着枠は1・5倍になるとしているが、この成田トンネル問題が解決しない限り不可能である。
 ただしこの問題を解決し、A滑走路とB滑走路の進入路と発進路を2組、計4本の飛行コースを完全に独立させて設定するためには、米軍空域と自衛隊百里基地空域の全面再編が必要となる。現在の日米帝国主義によるアフガニスタン侵略戦争や、朝鮮有事の切迫性の中で、それは不可能である。
 結局成田空港は、滑走路が2本になっても、1本とほとんど変わらない運航状態になる。現在の運航状況は従来の1・26倍となっているが、成田トンネルの通過がより過密になったので、極めて危険な状態だ。
 また、滑走路が2本になったことで、連絡誘導路の通過で最大1時間近い遅れが生じており、そのためにA滑走路の運航にも支障が及んでいる。暫定滑走路がA滑走路の運航を妨害しているような状況なのだ。
 国交省・公団は「完全空港化」を唱えているが、この飛行コース問題の解決なしには意味がない。

(4月30日) 混雑増し、2便が目的地変更=新滑走路供用開始の成田空港(5/1時事通信社)

 4月18日に新滑走路の供用が始まった成田空港で、空港への着陸コースの混雑が原因で30日午後国際線の2便が、羽田空港に目的地を変更し着陸した。新滑走路の供用開始後、混雑による目的地変更は初めて。「ピーク時に2、3分に1機が発着する」という慢性的な混雑状態にあった成田空港は、新滑走路の完成で一層混雑が増している。

  【本紙の解説】
 暫定滑走路で懸念されていた着陸コースの混乱が早くも起こった。これは重大問題である。先週の4月26日のJAL機が速度計のトラブルで成田空港に引き返したことで、成田の進入問題を解説したが、数日もたたずに混乱が発生した(4月26日付日誌参照)。
 成田空港は暫定滑走路が供用を開始し滑走路は2本になったが、飛行コースは南北とも1本しかない。成田周辺空域が自衛隊百里基地空域と米軍横田空域にはさまれていることにより、成田空港空域が狭いことが原因である。また、内陸空港のために、航空機騒音の影響を狭い範囲にとどめるためである。そのために、飛行コースは南北とも1本ずつしかない。北側は利根川をわたる地点で幅2・5キロ幅、南側は九十九里浜の地点で幅4・5キロ幅で飛行コースが設定されている。この幅の中でしか航空機は飛んではいけない。そのために、滑走路が2本になっても、1本の滑走路と同じ運用になる。先行航空機が離陸し、6・5キロ離れてからしか次の航空機は離陸できない。衝突を避け、後方乱気流に巻き込まれることを防ぐためである。
 A滑走路と暫定滑走路が同時に発着するためには、航空機の飛行コースは、衝突を防ぐために、「逆ハの字」型にそれぞれ15度の角度で外側で向かわなければならない。これを設定するには、騒音地域の全面的見直しが必要になる。成田の騒音対策費用はいままで3000億円以上もかかっている。地方空港がひとつできるほどの額である。この騒音対策を全面的にやり直すことは、住民対策、その費用、技術的な面のすべてで無理がある。それ以上に成田空域の狭さからそれは不可能である。
 そのために、暫定滑走路ができたにもかかわらず、成田空港の1時間当たりの離着陸回数制限は32回から30回に減らされている。いままでA滑走路だけで、発着回数は32回があった。暫定滑走路の1時間の上限は12回と決められた。滑走路が2本になったのだから、当然1時間当たりの発着回数は増えると誰もが予測する。合計して44回と思うのが普通である。しかし、滑走路1本の時より2本になった方が、1時間当たりの発着回数は少なくなった。その原因は、前述の飛行コースの問題と暫定滑走路の運用の複雑さにある。連絡誘導路が片側一方通行である問題、「逆くの字」部分での信号機による一時停止の問題などである。
 成田空港の1時間当たり32回の発着回数制限は、01年の3月末から導入された管制方式である(01年2月15日付日誌参照)。1時間当たり最大発着回数をそれまでの30回から32回に増やしたのである。これは騒音規制のため1日370回の総回数は変えないが、ラッシュ時間帯に多くの便を飛ばそうという方式である。この方式は、航空機が飛ばない“空き時間”「ファイアーブレーク(防火帯)」を1日のうちに数回設けて遅延を吸収し、1時間当たりの最大発着回数を増やしたのである。
 1時間30回枠でも、成田の発着回数は計20万回になるといっている。しかし、実際には、1時間30回×1日17時間×365日で18万6150回にしかならない。これは、ファイアーブレイクをゼロにしている計算である。さらに、早朝・深夜でも最大限の運用になっている計算である。
 しかし、早朝・深夜はラッシュ時なみの発着はない。したがって、成田空港では暫定滑走路が供用されても1本の滑走路と比べて、20パーセントぐらいの増便がやっとなのである。暫定滑走路はどうしても年間2万〜3万回の発着回数が上限にならざるを得ない。それ以上になると、滑走路の運用でも渋滞し、飛行コース上空でも着陸待ちの渋滞が発生し危険になる。“ファイアーブレーク”がゼロ化しているからだ。今回、危険が生じたため、国際線2便が羽田への着陸に変更になったのである。こういう事態は頻発しそうだ。
 内陸空港の欠陥性がここにきて全面的にあらわになっている。暫定滑走路が供用開始になっても、発着便数が増える可能性は少ない。

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